第6話 グリーンスライムとの死闘

 ステータスに関しては初めてダンジョンに潜る以上、低いのは承知の上。

 問題なのは先程購入したばかりの特級スキルの方である。


 なにせ呪殺ボーナスは100万DP、ボーナス超強化は250万DP、そして千変万化は500万DPもしたのだ。


 それだけ掛けて購入したスキルがスキル欄になかったら大問題というものである。


 残ったDPは好きにしても良いと言われているが、今は何が必要なのかも全く分からない。


(とりあえずは後回しでいいか)


 この後はスライムと戦う予定なので、それで何が必要なのかが分かるかもしれない。


 その上で何を買うか選ぶとしよう。


 そうして俺は、ようやくダンジョンへと足を踏み入れる。


 その背後にはカメラのレンズが付いたドローンのようなものが付いてきており、ダンジョン内に入ったことで本格的に起動したようだ。


 これこそがダンジョンカメラであり、このカメラによって俺の行動は常に神サイトに流れている訳だ。


(だけどその映像も何もなければ一週間で消える。作成したチャンネルでアーカイブとして保存するつもりもないからな)


 別に今回は怪しい動きをするつもりはないので映像が残っても構わないのだが、不特定多数に自分の行動を見られるのは慣れていないせいか、ちょっとゾワゾワする感じがし否めない。


(まあ気にしないようにしよう。カメラを意識した行動なんて、初心者の俺には無理難題だしな)


 そんな感じでカメラの存在を無視して俺は先に進む。


 なおこのカメラは破壊不可能だし、下手に攻撃するとペナルティが課されるので、どうやっても映像を取られるのは避けられない。


 そうして迷路のように入り組んだ通路を進むことしばらく、遂にそいつは現れた。


(グリーンスライムが一体か)


 最弱のブルースライムよりは強いが、それもあくまで比較した時の話。


 魔物の中では最弱に近い事には変わりない、初心者でも倒せるとされる雑魚の内の一体だった。


 こいつを倒せないようではダンジョンで活動することなど絶対に不可能。

 となればここは戦うしかない。


「って、しまった。武器を買ってなかったな」


 ここにきて初心者のポカが出てしまった形だ。


 前もって武器を買うべきというネットの情報は見ていたのに、他の買い物に気を取られてすっかり忘れていた。


(でもここのスライムの倒し方は調べてきてある。一体くらいなら大丈夫なはず)


 そう思っていた頃が自分にもありました。


 プニプニした身体で跳ねるスライムの攻撃方法は突進してくるだけ。


 よく見れば回避できるとのことだし威力もたいしたことはない、というのが俺の知っている情報だった。


 だが実際にその突進を受けてみたら、いかにネットの情報があてにならないのかを理解させられた。


(ふざけんな、滅茶苦茶痛いじゃねえか!)


 確かによく見て警戒していれば回避はできる。

 だけどそれだと此方から攻撃ができない。


 だから下手にギリギリで回避しようとすれば、回避し切れずに突進を受けてしまう。


 それでもなす術なく受けることなく腕で防御しているのだが、ぶつかった瞬間にズシリとした重さと威力が伝わってきて弾き飛ばされそうになった。


「これが魔物か」


 甘く見ていた。


 最弱候補の一つとはいえ、こいつらはダンジョンという未知の場所に生息している怪物なのだ。


 何の武器もスキルもない素人が簡単に勝てるような相手ではなかったのである。


 だがそれでも、このまま負けてなどいられない。


 ダンジョンでは死んでも入口で復活できるとはいえ、それにペナルティが全くない訳ではないのだから。


 レベルが低い内は保有ポイントから一定の数が失われるだけとはいえ、そんなペナルティを嬉々として受けるつもりはない。


 なにより時間がない俺が、この程度の相手に時間を食っている暇などありはしない。


(スライムの弱点は中心のコア。そこを狙う)


 そんな決意と覚悟を持った俺だったが、その過程でこれまた嫌というほど思い知らされた。


 それは武器と防具というものが非常に大切なだということを。


 なにせスライムのコアはプルプルの身体の中心付近にあり、そこに攻撃を届かせるのは素手では困難を極めたので。


 またプルプルした身体はこちらの殴打の威力を減衰させるのか殴っても蹴ってもダメージを負っている様子はなく、相手の突進も痛いことには痛いが、こちらを倒しきるには至らない。


 その結果、戦いは泥沼の様相を呈して、最後は殴打によるダメージが少しずつ蓄積したスライムがコアに砕かれる前に身体を維持することができなくなることで戦いは終了となる。


「はあ、はあ、疲れた」


 腕や体の所々に痣ができている。


 たった一体、しかも雑魚を相手にしただけでこの疲労困憊具合。


 これで配信映えなんて気にしている余裕なんてあるものか。

 戦うだけで精一杯でしかない。


「よし、帰ろう」


 こんな疲れ切った状態で次の戦闘に勝てるとも思えない。

 ここは戦略的撤退を敢行する所存である。


 次回のために適当な武器と防具を買うのは決して忘れずに。


 これらの買った品々は基本的にダンジョン外に運び出せないが、ダンジョン入り口のモノリスに預けておくことが可能なので、次に入った時に引き出せばよい。


 なおグリーンスライムを討伐したことで3DP、初めての魔物討伐で500DPが手に入ったが、あまりに低い討伐報酬には落胆の溜息を吐くしかなかった。


総DP 10万2503DP

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