第5話 初めてのダンジョン探索と爆買い
やってきたのは前に配信でも見ていたことのあるスライムダンジョンだ。
ここは下級に分類されるダンジョンであり、出現する魔物もスライムばかりで危険が非常に少ないダンジョンである。
なにせこのダンジョンで出現するスライムはどれも雑魚ばかり。
それこそスキルが何もない奴でも倒せるくらいに弱いとのこと。だから初心者が慣れるために活動するのにうってつけの場所でもあった。
そしてだからこそ、多くの新米配信者をこのダンジョンでは見かける。
そしてその内の一人である俺が注目されることは、まずあり得ないというのがモーフィアスの作戦だった。
(さてと、まずは言われていた通りの用意をしますかね)
モノリスは内部に入ると、ダンジョンの入口へと繋がるロビーが現れる。これはどのダンジョンでも変わりはない。
ここは着替えをしたり、装備を整えたりしてダンジョンに挑む準備を整える空間だ。
ダンジョン出現当初は何もなかったそうだが、今ではどのダンジョンのロビーでも男女別のロッカールームやお手洗いなどの施設が勝手に充実されていったそうである。
(たぶんモーフィアス達が進んでダンジョン配信をしてくれる人を増やそうと、色々と対応したんだろうな)
不便な空間だとそれを理由にダンジョン配信を止める人が現れてもおかしくはないし。
なおロビーやロッカールームではダンジョンカメラも機能を停止しており、着替えなどが撮影される心配はない。
だから配信の準備をするのにもここは最適な場所となっていた。
そして入り口にはこれまた入口とは別のモノリスが設置されており、そこではDPを対価としてスキルやアイテムなどを購入できるのだ。
(それでDPは……本当に1000万DP以上もあるのか)
どうして俺がこんなにDPを持っているのか。それにはとある理由があった。
実は俺はこのダンジョンに入る前に、別のダンジョンに一瞬だけ潜っている。
それは俺の部屋に現れたモノリスから行けるダンジョンであり、そこはなんと特級ダンジョンだったのだ。
ダンジョンの分類は、アイテムからスキル、そしてダンジョンそのものなども含めた全てが下から五段階。
下級、中級、上級、特級、神級となっている。
そして現在、世界で見つかっているのは上級ダンジョンまで。つまり前人未到のダンジョンに俺は世界の誰よりも先に足を踏み入れた形だ。
(まあそれも一瞬のことだけど)
どうしてそんなことをしたのか。それはDPを稼ぐためだ。
DPを稼ぐ方法は多種多様で、魔物を討伐したり配信したりする以外でも色々とある。
例えば、前に見ていたハルテルチャンネルがやっていたような特定のダンジョンでのタイムアタックに挑戦することだ。
一部のダンジョンでは、条件を満たすと入口でタイムアタックに挑戦できるようになり、そのタイムによってDPなどの報酬が得られる場合がある。
またタイムアタックで上位に入ると、一定のDPが与えられるなどもあるとのこと。
その代わりなのか魔物を倒しても経験値は手に入らないようだが。
つまりあのハルテルという配信者は、配信で稼ぎながらタイムアタックでも報酬を得ようとしていたらしい。
そう考えると一度で二度美味しい稼ぎだったようだし、かなり頭の良い稼ぎ方なのかもしれない。
そしてそんな多種多様な稼ぎ方の中には、特定の条件を達成するというものがある。
例を挙げると、初めてダンジョンに潜るとか初めてスキルを手に入れるとか、あるいは強敵を倒すとか。
要はゲームでいう実績と報酬みたいなものだ。
そしてその実績の中には、特級ダンジョンに到達するというものがあったのだ。
(俺がクリアした実績と報酬は、初めての特級ダンジョン挑戦で10万DP。チャンネル作成記念で2000DP、人類初の特級ダンジョン挑戦で1000万DPか)
合計で1010万2000DP。
新米では1万DPを貯めるのも難関とのことなので、普通ではあり得ないほどの総DP数だった。
あるいはこれだけのDPを所持している人は他にいないかもしれない。
それくらい大量のDPである。
このDPを使って強力なスキルや武器を手に入れる。
そうすれば瞬く間に新米ではなくなって、ある種のスターの道を駆け上がれることだろう。
もっとも今の俺はそんなものよりもずっと大事なものがあるので、そんな手段を取る気は更々ないが。
「えっと、これだな」
まずはモーフィアスから買うように指示されていた、幾つかのダンジョンカメラの機能を拡張する特典を選択する。
これだけで150万DPも消費することになったが、必要なことなので仕方がない。
もっとも今日それは使わないが。これらの特典は後々に利用するものなので。
それに本当の爆買いはここからだ。
スキルの中でも特別な、世界でただ一人しか保持することのできない特級スキルの項目を開く。
そのどれもが購入するのに最低でも100万DP、高いものであれば億を超えるDPが要求されるバカ高い代物ばかりだ。
でもだからこそ、それらに秘められた効果はどれも強力無比。
その中から今後の自分に必要となるスキルを購入していく。
あっという間に消えていく、あれだけ大量にあったDPの欄を視界に端に捉えながら。
俺が購入した特級スキルはグレーアウトした上でSOLD OUTという売り切れ表示が追加されている。
これ自体はどうしようもないので、いずれ特級スキルを購入した何者がいることに気付かれるのは承知の上だ。
「さてと、それじゃあ次はステータスの確認だな」
その確認方法は簡単だ。
ただ念じれば良いだけで、それでモノリス内なら目の前に提示される。
そうして現れたステータスボードと呼ばれるものを、俺はしっかりと確認して頷いた。
氏名 伊佐木 天架
性別 男性
年齢 18歳
レベル 1
HP 7
MP 4
STR 6
VIT 5
INT 9
AGI 5
DEX 3
LUC 9
保有スキル
特級スキル 『呪殺ボーナス』『ボーナス超強化』『千変万化』
保有DP 10万2000DP
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