525 こう考えてみてはどうッスかね?

 時間が進む毎、体の変化を起こした原因に成り得る事象は絞られて行く筈なのだが、何故か、なに1つとして要因は見つからないまま、思い出されるのは幸せだった時間のみ。


このままなにも見付からずに、昨晩の出来事は終わってしまうのか?


うぬぬぬぬ……( ˘•ω•˘ )


***


「あの、所で奈緒さん」

「うん?今度はなに?」

「あの、これはネタじゃなくて、本気で聞いてるんッスけど。本当にベース弾かないんッスか?」

「うん?なに?豪くベースの件を気にしてるんだね」

「あぁ、まぁ一応、俺自身も楽器屋で試し弾きはして来たんですけどね。そのベースが奈緒さんの好みの音を奏でるか、どうかまではハッキリしないんですよ。……気に入らない音だったら、あんま意味がないなぁって思って」

「あぁ、さっきのって、そう言う意味だったんだ。突然あんな事を言うから、何事かと思って笑っちゃったよ。……ごめん、ごめん」

「あぁ、それは、全然良いんッスよ、全然」


だから、一旦、ベースをケースに直してくだされ。


話に続きがあるもんで。



「でもさぁ~~、クラ。ベース弾くのって、もぉちょっと後でも良い?」

「うん?いや、別に、俺は、いつでも構わないッスけど。またなんで、そんな事を聞くんッスか?」

「ふふっ、君って、相変わらず、そう言う所は鈍感だね。……もぉちょっと、クラとの時間を満喫したいなぁ、って思ったからだよ。私、君と、こうしてるだけでも幸せ感じてるのよ」


神ですか、アナタは……


女性に、こんな事を言って貰えるなんて一生ないと思っていたから、嬉しさのあまり……俺、このまま死ぬかも知れない。


……いや、死んでる場合じゃないな。

こう言ってくれる奈緒さんを、もっと幸せに出来る様に、自分に磨きを掛けなきゃな。


……にしても、この言葉は幸せ過ぎる……



「あぁ、すんません。そう言う事ッスか」


でも、そうは思っていても、返答はヘチョイ俺。



「ふふっ、そう言う事、そう言う事。……じゃあ、一旦ベース直すね。それとソッチに行って良い?」

「あっ、はい」


奈緒さんは、ケースに直そうとする。


でも、此処で慌てない所が、奈緒さんの凄い所だよな。

普通なら気焦りして、もっとガチャガチャしながら慌てるもんなんだけどな。


ヤッパ、俺の奈緒さんは凄い!!


あぁ……しかしまぁ、豪く違う方向でベースをケースに直す事になったな。


まぁ良いけど。



「あぁぁああぁあぁ~~~!!なにこれ?最悪だよ」

「はえっ?なっ、なにが最悪なんッスか?俺、またなんか変な事しましたか?」


えっ?えっ?えっ?なにが最悪なん?


ケースの中に『指輪』なんて演出したのが最悪なのか?


なんだ?なんだ?



「違う違う、最悪なのはクラじゃなくて、私だよ。もぉホント最悪だよ。なにしてんだろ」

「どっ、どっ、どうしちゃったんッスか?なにがあったんッスか?」

「此処だよ此処。ほら見てよ」


そう言って奈緒さんは、俺の目の前にベースを差し出して、何かを指さしている。


なんだ?


俺は訳も解らずに、その差し出されたベースの、奈緒さんが指差す場所を見てみる。


あれ?……なんかベースに小さい傷がついてるな。

なんだこれ?俺が飛行機の中で確認した時は、こんな傷は1つも無かったんだけどなぁ。


いつ付いたんだ?



「あっ、なんか小さな傷が有りますね。けど変っすね、クリスマスプレゼントにするものだから、B級品を買った筈じゃないんッスけどね」

「そうじゃないのよ。ごめんねクラ」

「えっ?」

「私が、さっき不意にキスした時、これを不用意な扱い方をしちゃったから、机の角に当てちゃったんだよ。折角、綺麗なコンディションで貰ったのに……ごめん」


あぁ……さっきキスした際に『コツッ』って鳴ったのって、ベースが机に当たった音だったんだな。


けど、別に、そんなに気にしなくても……



「あぁ、そんなの気にしなくて良いですよ。楽器なんてもんは、使ってりゃ、その内、嫌でも傷付くもんなんッスから。気にしない、気にしない」

「でも……でも……折角、クラが、一生懸命選んでくれたベースなのに、大切にしないなんて最悪だよ」


うぉ!!選んでないだけに『一生懸命』とか言われると、逆に俺が心苦しいな。



「あぁっと、じゃあ、捉え方を変えちゃいましょう」

「この状況で『捉え方を変える』?って……どう言う事?」

「いや、あのッスね。この傷ってのは『2人でキスしたからこそ生じた傷』なんッスから、これって、ある意味、俺と奈緒さんの『クリスマスの思い出』に成るんじゃないッスかね?だったら、その傷も、そんなに悪いものじゃないっと、思うんッスけど。……こんなんじゃあ、ダメッスかね?」


言い分は、言うまでもなく無茶苦茶だ。


だが!!彼氏彼女の関係なら、そんな無茶苦茶な言い分でも通る!!


それに女の子は『思い出』って奴が大好きだ。

だから、この意見は必ず通る!!


いや、通れ!!


いや、やっぱり、通って下さい。


……切にお願いします。



「ダメじゃないけど。……ちょっと強引過ぎない」

「いやいや、全然、強引じゃないッス。……それに、ほら。奈緒さん、ツアーとかで逢えない時があるから、その傷で、少しでも俺の事を思い出してくれたら……なんか嬉しいかなぁとか」

「そっか。そう言う捉え方もあるか。……それにしても君、そうやってナンデモカンデモ、上手く良い方向に言っちゃうんだね」

「そりゃあそうッスよ。だって俺、奈緒さんの悲しむ顔なんて、出来れば一生見たくないッスもん」

「そっか。……じゃあ、折角そう言ってくれてるんだから。此処は変に意固地にならず、そう想わせて貰うね」

「是非そうして下さい」

「あぁ~~~あっ、けど、またやられたよ。今日は私、クラにやられっ放しだね」


少し口惜しそうな表情と、嬉しそうな表情を混在させながらも、奈緒さんはベースをしまい始める。


すると『コツッ』っと、ケースの方から音が鳴る。

どうやら今度こそ、本当に『指輪の入った袋』にベースが当った様だな。


なら、仕掛けは上々の様だ。


でも、あれって。

ハードケースの中の色と、指輪を入れてる小さな袋の色が同じだから、ベースを出し入れしないと中々気付かないんだよな。


でも今回は、どうにか上手く行ったようだな。

(↑イベント・プランニング:仲居間崇秀)


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


少しでも奈緒さんが傷付かない様に頑張る倉津君。

この辺については、崇秀に言われた注意『少しは自分の彼女に気付かえ!!』が心に染みているんでしょうね(笑)


えぇこっちゃ、えぇこっちゃです♪


ですが、矢張り、体の変化を齎せた要因が見えてこない。

本当に、何故、こんな状況に陥ったのでしょうね?(。´・ω・)?


……っと言いつつも。

次回は『奈緒さんがハードケースから発見した指輪』のお話になりますので。

その指輪が『実は奈緒さんが、倉津君が女性に成る事を望んでいて、その願いを叶える指輪』でもない限り、ただの惚気話に成ると思いますので……その辺はご了承ください。

(*'ω'*)b


原因究明までが長ぇわ!!( ゚Д゚)=〇))з`)ちぃまちぇん!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る