最終話 巨乳に生まれて良かった

「のぞみ、綺麗よ」


 お母さんにそう言って貰えた。

 私は純白のウエディングドレスを身に纏っていた。


 今日は結婚式。

 私は今日、神様の前で真虎さんの妻になる。


 控室を出ると、お父さんが待っていて。


「さあ、行こうか。お前の晴れ舞台だ」


 私は頷いて、歩き出した。

 お父さんの腕を取りながら。


 バージンロードを歩く私。

 バージンじゃ無いけどね。


 向かう先に真虎さんがいる。


 ここに来るまで色々あった。


 最初は空手部。

 空手部で、好きになれる人に出会った。


 そして、そこで別の人に見初められ。

 その人との恋はダメだったけど、そのおかげでこの、最高の旦那様に出会えた。


 全ての出会いは無駄では無かったんだ。


 ……イエーイ!


 パンッ!


 私の心のピースサインに、心の破裂音が応えてくれた。


 あの破裂音が、私と真虎さんを結び付けてくれた。

 何が何に働くのか、分からないよね。


 お父さんの手を離れ、私は真虎さんの元に向かう。

 これから私は、お父さんの手を離れる。


 真神真虎の妻、真神のぞみとして、真神家を一緒に継いでいくんだ。

 きっと、大変なこともあるはずだ。


 でも、この人となら、きっと乗り越えていける。

 一緒に、頑張ろうね。


「のぞみ……これからもよろしく」


 真虎さんはそう言って、微笑んでくれる。

 私も微笑み返した。


「おめでとう!」


「おめでとう!」


 この教会に集まってくれた、私たちの大切な人たち。

 徹子、真霧さん、そして……月心げっしんさん。


 月心さんは結局、その人となりをよく知ることは無かった。

 最初に好きになった人。


 これからは、あなたの義妹としてよろしくお願いします。


「真虎良かったな! のぞみさんは最高にいいお嫁さんだ!」


 そう、お義兄さんが言ってくれた。

 昔はひょっとしたら寂しさを感じていたかもしれないけど、今はとても嬉しい。


 そして私は真虎さんと並んで神父さんの前に立った。


「新郎真神真虎さん。あなたは新婦真神のぞみさんを妻とし、病める時も健やかなる時も、悲しみの時も喜びの時も、貧しい時も富める時も、これを愛し、これを助け、これを慰め、これを敬い、その命のある限り心を尽くすことを誓いますか?」


 神父さんの問いかけ。

 誰でも聞いたことのある台詞だけど、実際に自分たちが言われるのは違う。


 それを問われた真虎さんは


「はい、誓います」


 そう、答えてくれたんだ。


 そして私も……


「新婦真神のぞみさん。あなたは新郎真神真虎さんを夫とし、病める時も健やかなる時も、悲しみの時も喜びの時も、貧しい時も富める時も、これを愛し、これを助け、これを慰め、これを敬い、その命のある限り心を尽くすことを誓いますか?」


 私の答えは決まっている。


「はい。誓います」


 ……結婚式って、すぐ終わる。

 前に、小説で読んだことがあった。


 本当かな、と思ったけど。


 ……少なくとも、私にとっては本当だったよ。

 あっという間に教会の前でブーケトスの場面になった。


 とても、幸せ。


 ……巨乳判定。

 とても巨乳に厳しい、この国の政策。


 最初それをされたときは絶望したけど。

 最終的に、そのおかげでこうして幸せになることができた。


 世の中、単純じゃないんだね。

 それを今、理解できた気がする。


「皆、いくよー!」


 私はそう言って、思い切り、手の中のブーケを投げ放った。

 笑顔の女性参列者たちが手を伸ばした。


 イエーイ!(パンッ)


(了)

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