第74話 転落の覇王

「わ……私の胸が……ち、縮んでいく……!」


 悪堕ち巨乳……草麗満子さんのHカップが……みるみる縮んでいった。


 Hカップから……Aカップに。

 ブラがぶかぶかになり。胸の形状が歪に変形していた。


 あまりのショックのためか、草麗さんは人の目があるのに、ブレザーの前を開けて確認してしまう。


 そこには……


 大きく盛り上がった覇王の乳は無く……

 慎ましく、乳首だけが存在する薄い胸があるだけだった。


「こ……こんな貧しい胸になってしまって……私はどうすればいいのよ……!」


 崩れ落ち。


 草麗さんは泣いていた。

 泣きじゃくっていた。


 頭を抱えながら。


 ……いつの間にか、草麗さんの顔の隈取、そして額の「悪」の字が消えていた。


 そして周りの眷属だった男性たちは……


 ぞろぞろぞろぞろ。

 貧乳になってしまった元悪堕ち巨乳への興味を無くしたのか、自分の仕事や家庭に戻って行く。

 散っていく。


 ……これが王を名乗った巨乳の末路なの……


 力に溺れた者が行きついてしまう姿……

 私はそれを思い、胸に刻みつけた。


 真虎さんはそんな彼女を冷たく見つめながら


「……これからはまとも勉強して食べていくんだね。それぐらいの胸は残ってるでしょ」


 そう、冷たく告げた。

 ……自業自得の結果だ、と。


 真虎さん……。


 そしてくるりと背を向け、立ち去っていく真虎さん。

 私はその後ろに付き従った。


 だって夫婦だから。


 そして私は心でこう言った。


 立って歩け、前へ進め。あなたには立派な乳首がついてるじゃない。




 ……こうして、再びこの国を滅ぼそうとした悪魔は退けられた。


 草麗さんは巨乳認定証を剥奪された。

 そして法定巨乳の認定者としての登録も抹消された。


 ……しかし。

 Hカップに胡坐を掻き、他者を侮り、あらゆる勉強を怠って来た彼女。


 国外追放と強制結婚の恐怖から解放されても、彼女はこれからの人生をどうやって生きていくんだろうか?


 そして……


 今日は真虎さんの誕生日。

 そして、私たちの結婚式の日。

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