第73話 お前のHカップなんて要らないね

「のぞみ」


 御所を飛び出したとき。

 私は背後から声を掛けられた。


 振り返る。

 それが誰だか分かってはいたけれど。


「真虎さん」


 御所の門の前に彼がいて、私に駆け寄って来た。

 そして


「僕も行くよ」


 そう言って私に先行しようとした。

 そんな彼に


「待って」


 私はそう言った。

 彼はそれで足を止める。


 振り返る彼に、私は続けた。


「……相手は悪堕ち巨乳。男性は眷属化されてしまう……」


 私は視線を逸らしながら、彼に告げた。

 こんなこと、言いたくない。

 あなたは戦力外だ、なんて……


 だけど彼は


 私につかつかつかと歩み寄って来て。

 私のおっぱいを両手で鷲掴みにしてきた。


 そしてこう言ってくれたんだ。


「これ以外、僕は要らないから」




 真虎さんは、私の胸以外要らないって言ってくれた。

 だから私は信じる。


 彼のことを。


 そして私の上に覆い被さっている彼は。

 私に口づけをして、私の身体を弄って来た……



~悪堕ち巨乳視点~


 ……一体何なの?

 私の目の前で……


 ショタがEカップとヤリはじめるなんて!


 ショタが上になり、Eカップと深い口づけを交わしていた。

 ぴちゃぴちゃぴちゃ


 Eカップは全く何の抵抗もしていない……

 完全に受け入れて、ショタに身体を差し出している。


 そしてショタの手がEカップの胸に伸び、そのスカートの中にまで……


 な、な、な……!


 私は混乱し、動けなくなったが。


 ……死ぬ前に、性欲を解消しようという魂胆か。

 そこに思い至り。


 私は心で冷笑を浮かべた。

 ……なんて哀れなの。


 弱者は惨めね。


 殺されるとなったら、そうやって現実から逃げるしか無いのね……


 私はそう思い、せせら笑った。

 お前は真実の愛を気取ってたつもりかもしれないけど。


 お前たちの真実の愛なんて、そんなものよ……!


 せめてその、現実逃避の中で、命を絶ってあげるわ……!


 私はもう片方の胸を捧げ持つ。


 私の空裂乳刺驚スペースリパー・スティンギーミルクは乳房内部の乳腺で生産した母乳を、乳首から超高圧で噴き出す技。

 一回やると乳房内部の母乳がゼロになる。

 再チャージできるまで、再度出すのは不可能だ。


 だが、女には乳房は2つある。

 片方撃っても、もう片方があるのだ。


 ……私の空裂乳刺驚スペースリパー・スティンギーミルクは、鋼の鉄板も切断できる。

 人体なんてイチコロだ。


 そのままショタとサカってヌチョヌチョしてろ。

 重ねて4つにしてあげるわ……!


 そして狙いを定めて、私が意思の力で発射を決断しようとしたとき……


 突如、私の周りの眷属たちが、私に掴みかかって来たのだ。


 ……な、何で!?



~真神真虎視点~


 はじまった。

 僕はのぞみと愛を交わすのを中断し、立ち上がる。


 悪堕ち巨乳は眷属たちに襲われていた。


「何故だッ!? 何故私を襲うお前たちッ!?」


 眷属たちは悪堕ち巨乳を押さえつけ、その乳房に取りすがろうとしていた。


 ……気づかなかったんだね。とうとう。

 僕は彼女の浅はかさに溜息をつく。


 そして教えてあげた。


「……お姉ちゃん、その技は乳首から母乳を超高圧で噴き出して、その力で万物を切断する技だよね?」


「そ、そうだッ! だからなんだッ!?」


 混乱している悪堕ち巨乳。

 まだ理解できていないらしい。


 全く……どうしようもない。


「……技の構造上、その技を出すと服とブラに穴が開くよね」


 その技には致命的な欠陥がある。

 だから、僕は待つだけで良かったんだ。


「つまり、乳首が剥き出しになる」


 悪堕ち巨乳の顔が驚愕に染まる。

 そこでやっと、気づいたようだ。


「……そんな状態を放置したら、周りの眷属化したおっぱい星人たちが、放っておくわけがないよね」


 そう。

 そんな状態を放置したら。

 まず間違いなく吸いに来るんだ。


 ……おっぱい星人たちは。


「や、やめろッ! お前たち! この私の言うことが聞けないのかぁッ!?」


 暴れる悪堕ち巨乳を前にして、僕はさっき、のぞみと愛し合いながら渡してもらった切り札……貧乳薬を取り出した。


 これを注射すれば、全てが完了する。


 悪堕ち巨乳は、これが何なのかは分からない。

 分からないけれど……


 これが致命的なものだということは、直感的に分かったらしい。


 だから


「……お願い……助けてッ! 助けてくれたらお姉さんがアナタに良いことをしてあげるから……Hカップよ? ……Eカップの3段階上なんだよ……?」


 悪堕ち巨乳が、僕に媚びる笑顔を浮かべ、そう言って来るんだけど。

 僕は溜息をつき……こう、答えた。


「EがHに劣ると誰が決めたの?」


 ゆっくりと彼女に近づき、僕は貧乳薬の注射器の針を彼女の首筋に当てた。


「僕が僕の子供に授乳して欲しいおっぱいが、たまたまEカップだっただけの話。お前のHカップなんて要らないね」


 そしてそのまま、中の薬液を悪堕ち巨乳に注射した。


 ギャアアアアアアッ!!


 悪堕ち巨乳の悲鳴。

 それを背に、僕はのぞみに向き直った。


「終わったよ、のぞみ」


 そして彼女に歩み寄る。

 彼女の前で膝を折ると彼女は


 無言で僕に抱き付いて来た。

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