第66話 バレンタイン

「いよいよ2日後か……」


 結婚後、はじめてのバレンタインが迫っている。

 去年までは危機感を覚えていたものだ。


 来年こそはチョコをあげる男の子を作らないと、私の人生終わるって。


 それが今年は、ちゃんと男性にあげられる。

 ……どんなチョコにしよう?


 定番のハート型?

 それとも、チョコケーキの様な変化球?


 悩む。

 どうすれば、彼に愛を伝えられるだろうか?


 悩んだ私は、スマホを使ってネットでも検索してみたんだけど……


 その中で、気になるものを見つける。


 全身チョコレート……


 私の身体にチョコを塗りたくり、彼に舐めとって食べて貰う。

 まさに恋人間、夫婦間でしかできない御業……


 これ、どうかな?


 アウトかな?


 私はしばらく考え込んで。

 結論を出した。


 ……やっぱ、衛生的に良くないかなぁ。

 残念だけど。


 ……しかし。

 そういう「私がプレゼント」的な行為はやってみたいかも。

 これこそ、既婚者の、巨乳認定証持ちの特権というか。


 だけど……


「のぞみには大学に行ってもらいたいんだ」


 そういう、真虎さんの想いを無下にしたくない。

 だから、避妊は絶対にしなきゃいけないんだけど……


 ……そういえば


 巨乳認定証って、ピルの処方も無料になるんだよね。

 そしてコンドームよりピルの方が避妊効果高いんだよね。その辺も講習で習ったけど。


 確か妊娠率0.3%まで下がるんだっけ?


「未成年の間はセックスを拒否したことが離婚理由にはなりません。しかし、夫婦間レイプの成立が通常の婚姻関係同様に困難であるという点に変わりは無いんです」


 ……だからだろうねぇ。

 ピルに関する費用まで無料になる理由は。


 セックスを拒否しても良いけど、だからといって暴走した旦那さんがあなたを無理矢理孕ませようとするのを国は止める気は無いよ。

 それが法律的な立て付け。


 どうしても未成年での妊娠が嫌なら、ピルで自発的に避妊しろ。

 それをしないで妊娠してしまったら、それは自己責任。

 そう言ってるんだね。


 ……まあ。

 真虎さんが「のぞみ、今日は危険日だよね……」なんて言ってきて。

 私の身体を求めてきたら、私はちょっと拒否する自信無いんだけどね。


 ピルを飲むとそれが起きなくなるのか……

 ちょっと寂しい……




「真虎さん、チョコレートです!」


 そしてバレンタイン当日。

 学校の教室で私は夫にチョコレートを渡した。


 ……結局、チョコレートは定番のハート型にしました。


「ありがとう、のぞみ」


 真虎さんは少し照れ臭そうな顔をして、私のチョコを受け取ってくれた。

 ……きゅんとしてしまった。


 そして


「……本当に好きな女の子にチョコを貰ったのは、これが初めてだよ」


 そんなことを言われて、私は轟沈した。

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