第61話 年末年始の予定

「これから冬休みに入るわけですが、休みの間も生活リズムを崩さずに……」


 壇上の校長先生の話が長い。

 休みを控えてウキウキしているのに、こういうの、辛過ぎる。


 本音を言えば「もう切り上げてくださいよ」って言いたいんだけど。

 そんなこと言えないよね。

 それが社会の秩序ってもんだし。


 そんなことを、体育館で整列し、立ち続けながら考えていた。




「のぞみ、冬休みどうするの?」


 前の席の徹子が私にそんなことを。

 どうするの、って。


 そりゃあ……


「真虎さんの家でクリスマス会とお正月。あと、巨乳互助会の忘年会でしょ。……それぐらいかなぁ? ……徹子も似たようなもんでしょ?」


 そう返答したら


「アタシはそうだね。ほとんど向こうの家に居るつもり。巨乳互助会の忘年会の日、以外は」


 ……向こうのお姉さんと仲良くする予定なのかなぁ?

 そう、思ったから


「それって、子供のため、だよね?」


「当たり前っしょ」


 即肯定された。

 やっぱりか……


「旦那の姉と仲良くしておかないと、おなかの子供が伯母さん2人に可愛がってもらえなくなるかもしれない」


 弟が産ませた子供と、妹が産んだ子供って、違うって講習会で言ってたしね。

 人は、血の繋がりがあっても、産んだ女が身内でないと子供を愛せないんだ、って。


 ……うん。

 確か講師の人はそんなことを言ってたね。


 おそらく異論もあるんだろうけど、参考にはしておきたいよ。

 やっといて損も無いし。相手の家族の一員になる努力。


 ……じゃあ、私も頑張んないとなぁ……


「じゃあね、のぞみ。次に会うときは忘年会だね」


 徹子はそう言って私に笑いかけ、背中に幟を掛けて帰っていった。




「ただいま」


 自宅マンションに戻って来た。

 靴を脱いで下駄箱に仕舞いながら


「おかえり」


 お母さんの言葉を聞いた。

 そのままリビングに行って


「明後日、真虎さんの家に泊まるから」


「分かってる」


 お母さん、振り返って


「……下着は綺麗なものを持って行きなさいよ」


 うっ


 一瞬、親にセクハラされた! って思ったんだけど。

 ……泊るってことは、お風呂をいただくってことだし。


 それはつまり、相手の家に下着を把握されるってことだよね。

 嫁候補が、きったない、クチャクチャの下着を持ってきたとしたらどうだろう……?

 それは絶対マイナス要因だよね。


 多分、そういうことだよ。


 だから……


「分かった。新しい下着をおろすよ」


 素直にそう答えた。




「明日のパンツと、ちょっとのお金……」


 言いながら、自分の部屋のタンスの中の新品の下着を探した。

 探しながら


(……真虎さん、大学出るまでエッチはしないって言ってたけど)


 明後日、相手の家に泊まるわけだしなぁ。

 何が起きるか分かんないよね……


 高校生活の思い出に……とか


 無いとはいえないし。

 むしろ、将来結婚することが確定しているわけだし……


 だったら……


(清潔な綺麗なやつ以外に、可愛いのも探しておいた方が良いのかな……?)


 そういうの、あるのかなぁ……?

 腕を組んで、考える。


 ……正直、自信ない。

 これは……


(明日、探しに行くしかない、かなぁ……?)


 それしかない気がする。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る