第48話 結婚に向けて色々

 自室のベッドの上で悶々としていたら。


 ブブッ、と振動して。スマホに電話が掛ってきた。


 相手は……真虎くん。

 表示が「真神くん」ってなってるし。


 ……この電話終わったら、名前を書き換えておかないと。

 いずれ同じ名字になるのに、名字で電話番号登録はおかしいよね。


 ……まあ、高確率で私が名字変えることになるよね、と頭の片隅で思いつつ。


 だって彼、真神家の跡取りとして養子に出されてるのに。

 真虎くんが名字を変えるなんておかしい。


 私が変えるしかない。


 ……ウチの家、絶えるなぁ……

 でも、しょうがないかな。

 その辺は相談して決めるということで。


 ……幸い、ウチの家は先祖の墓が無いから。

 無法時代のゴタゴタで、無くなってしまったらしい。

 だから家が絶えても問題あるのは両親だけ。

 今なら話し合いでなんとかなるかも?


 ……これ、幸いって言って良いんだろうか?


 そんなことを考えつつ、私は電話に出た。


「……もしもし真虎くん?」


『のぞみ、結婚のこと、家族に話したよ。そっちは?』


 電話から彼の声が聞こえてくる。


「お母さんには話した。お父さんはまだ」


『そっか』


 真虎くんは嬉しそうにそう返してくれた。


「お母さんは真虎くんに会いたいって言ってるよ」


『義母さんが? ……分かった』


 私の言葉を聞いて、しばらく沈黙。

 そして


『のぞみ、ゴメンね』


「……何が?」


 いきなり、謝られる。

 ちょっと、わけが分からない。


 それに対して真虎くんは


『婚約指輪、買ってあげられなくてゴメン』


 ……それに私は


「え? そんなの当たり前でしょ? 私たち学生だよ?」


 実質中学1年で私をお嫁さんに選んでもらうだけでもありがたいのに、この上婚約指輪を寄越せだなんて。

 そんな強欲なこと、無いでしょ?


 すると、電話の向こうの真虎くんが


『……ありがとう。のぞみ』


 ……え?


 電話の向こうで、真虎くんは感激してるみたいに思えた。


『僕、すぐに稼げるようになるからさ。安心してて欲しい』


 彼の言葉を聞くたびに、私の心臓が高鳴っていく。


 必ず幸せにするから、って力説された。

 ……元々好きだったけど。ますます好きになっていく。


『じゃあね。……週末、よろしくね』


 電話の切り際に、そう言われる。

 無論、どちらの家から挨拶に行くかの話。


 真虎くんは一刻も早く私の両親に会いたいって言ってたけど。

 私としては、家の規模から考えて、それはありえないって言って。


 結果、週末に私が佐上家に挨拶に伺うことになった。


「うん……頑張る。これからよろしくお願いします……あなた」


 思わず、テンションが上がっていたから言っちゃった。


 あなた、って言っちゃった!


 言ってから、カァァァ、と顔に血が上っていく。


 ……真虎くん、気づいたかな?

 どう思っただろうか……?


 まあ、直後に電話が切られたので分からなかった。

 メールでも確認しなかったので、やっぱり分からなかった。




 ピンポーン。


 そして週末。

 佐上家のお屋敷前に、制服を着て現れた私。


 ……これから、挨拶するんだ。


 正式に、この家のお嫁になることを認めて貰うんだ……


 私は門の前でインターホンの返答を待ちながら、自分の姿を確認し続けていた。


 真虎くんの立場を悪くするようなこと、絶対にできないし……!

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