第47話 私、結婚するから

「ただいま」


 自宅の国営マンションに帰って来た。

 狭い玄関の三和土。


 靴を脱いで、下駄箱に入れる。

 そうしないと三和土が靴だらけになるし。

 ウチ、元々家族で住む想定のマンションだけど、三和土は狭い。

 まるで1人暮らし用みたい。


 ……真虎くんの家は大きかったな、と思い出す。


 結婚したら、私、あそこに住むのかな?

 それとも新居?

 ……いや、それはないか。

 まだ未成年だし。


「おかえりのぞみ」


 リビングに入ると、お母さんがエプロンつけて夕飯の準備をしていた。

 今日のごはんが何なのか気にはなったけどその前に


「お母さん」


「なぁに?」


 私は台所に向かって行って、お母さんの背中に向かって


「私、真神くんにプロポーズされたから、受けてきた」


「ええっ?」


 お母さん、メッチャ驚いて振り向いて、同時に


「……あなたがお付き合いしてる男の子だよね?」


「……うん」


 ……実はまだ、お母さんに真虎くんを紹介してないんだよね。

 その前に、結婚決めてしまったからね。


 そこが問題だから、入籍するのは互いの家に行って、互いの両親にご挨拶してからにしようって言って。

 そう決めた。


「どんな子なの?」


「とても賢くて、頼りになる人だよ……年下だけど、私より大人だと思う……」


 そこは本音。

 私、真虎くんを自分より下だとは多分ずっと思ってない。


 ……ちょっと、彼を支えられるのかという自信が無いかもしれないけど。

 私を選んでくれたんだ。ちゃんと、私の美点を見出してくれて。


 そこ、よく分からなかったんだけどね。


「今度、紹介する。……まあ、当たり前だけど」


 そこで「紹介する前に結婚決めてごめんなさい」と謝った。

 するとお母さん、年下というところに引っかかったのか


「……あなたより年下なのね? 1才下? 2才?」


 そう、訊いてきた。


 それは……


 ……4才下。実質中1。

 お母さん、これを知ったら驚くだろうなぁ……


 うん……これは……


 実際の真虎くんを見て貰って、知ってもらった方が良い気がする。

 言葉で伝えると、絶対に拗れる。

 真虎くんは、実際に会わないと多分伝わらない。


「それは会ってみてのお楽しみってことで……」


 そう言って、その場は誤魔化した。




 自室に戻った。

 そこで、部屋着にも着替えずに、ベッドに倒れ込んだ。

 

 やった! 私、結婚できる! まともな人と!

 国外追放も、とんでもない男の人の玩具にされる人生も無いんだ!


 巨乳認定証を持ってしまった女の子としては、理想的。

 そういう嬉しさ。

 思わずにやける。


 ……これでやっと、徹子と同じ場所に行ける……


 親友と同じ次元で話ができることが嬉しい。


 それと同時に。

 これははじまりでもある。


 真虎くんからの愛を失わないように、そして相手の家に拒絶されないように。

 そのための努力がはじまるんだ。


 ……その辺、徹子の動きを見てれば理解できる。


 彼女は経験者、先輩なんだから。

 その辺、よくよく教えて貰わないとなぁ……


 ギューッって。

 枕を抱きしめながら。


 私はそう、これからの私の進む道を想い、やる気を燃やした。

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