第46話 婚活レース卒業しました
究極奥義「イエーイ」
……NTRの脳破壊を応用し、ストーカーを撃退する技。
山田くんはNTRのショックに耐えらえれず、脳が破裂して死亡した……。
そう……「死亡した」んだ。
「……のぞみ……」
目の前に横たわる、ガチムチの首なし死体を見つめつつ。
真虎くんが言った……
「キミなら知ってると思うけど、イエーイで死亡しても殺人罪は適応されない……あくまで現実を認められず脳を破裂させたのは自己責任だからだね……」
うん……知ってる。
だから、使うのには躊躇いがあった……
あまりにも残酷だから。
こっちが不貞でも何でもないのに、勝手にショックを受けて脳を破裂させた。
つまりイエーイ死は自分勝手な自死。責任なんぞ問うことが出来るはずがない。
違法なNTRの結果であるなら、それは不貞、もしくは強姦被害である。
それはそれで裁く。イエーイとは別。
そういう判例が出ていると、講習会で習ったよ。私も。
「そこの君ら、何があった!?」
ドドドド、と。
今頃警察が駆けつけてきた。
誰かが通報してくれたのか。
今更遅いけど。
制服のお巡りさんが2名、私たちのところに駆け寄って来る。
そしてその1人が、すぐに死体に気づく。
「栗木巡査! 首無し死体です!」
「……この死体は何だ?」
目付きの鋭い、声が男臭い巡査が真虎くんをじっと睨み据えている。
真虎くんは目を逸らさないで、こう……ハッキリ言ってくれた。
「僕の婚約者のストーカーです。彼女を守るために……やむなくイエーイしました」
彼女、巨乳認定証もちの女性なので、僕の婚約者なんです。
真虎くんはそう、私を説明してくれた。
それにお巡りさんは納得してくれて
「イエーイか……」
ちらり、と山田くんの死体を見て、しばらく考えて
「……確かに、この死体はイエーイで死んだとしか思えない。爆発物を使った形跡も無いのに、内部から破裂しているように見える……」
そう言って、お巡りさんは仲間の警官に「現場を保全しろ。鑑識に調べさせる」そう、指示を出し。
真虎くんと私を見て、こう言ってくれた。
「……一応、連絡先は控えさせて貰う。住所と電話番号、あるなら身分証を見せてくれ」
警察には警察の都合がある。
無論、私たちは従った。
京都第一高校の学生証を提出する。
お巡りさんはそこに記載されている情報を、手帳に書き写していく。
その後、電話番号を聞かれたので、携帯の番号を伝えた。
「OK。今日はもう大丈夫だ。後で連絡させて貰うことになるかもしれないが、おそらく大丈夫だ。安心してくれていい」
そうして、私たちは解放された。
私たちの行為は何の罪にも問われない。
……だけど。
罪には問われなくても、私たちは人を死に追いやった。
それは逃れられようもない事実。
……私たちの関係には、人の死が関わっている。
立ち去るとき。
私は後ろを振り返り、心の中で別れを告げた。
さようなら。
ひょっとしたら、あなたが私の旦那さんだったのかもしれないんだよね……
こんな結果になって、本当に悲しい……
なんで、あれで諦めてくれなかったの……
「……のぞみ」
無目的に歩きながら、彼は私に話してくれる。
もう、一緒に買い物なんて無理だよね。
……だって、さっき一緒にイエーイで死なせてしまったんだし。
やむを得ないとはいえ、人の死に対しては作法がある。
並んで歩きながら、私は真虎くんの言葉を待った。
彼は私を振り返り、私の目を見つめながらこう言った。
「……結婚しよう」
……うん。
そうだね……
山田くんを死に追いやってまで、守った愛なんだ。
入籍するしか……ないよね。
私は足を止めた。
真虎くんも止まる。
向き合う、私たち。
……気合を入れる。
「……はい。よろしくお願いします」
そう、返答。
おなかに、臍のあたりに力を入れながら。
そして
そっと、身を屈めて
顔を下げて。
瞳を閉じて。
……もう一度、真虎くんとキスをした。
さっきは戦いの中のキス。
今度は、プロポーズを受けた証のキスだ。
……この日、私は自分より4つも下の男の子のお嫁さんになる約束をした。
改めてご挨拶、いかないとなぁ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます