第43話 2回目の初デート

「真神くん、お弁当作ってるの、お義母さん?」


 思い切って、聞いた。

 お昼の時間だ。


 あの文化祭以降、徹子と食べるのをやめて真神くんと食べている。

 徹子に相談したら


「アンタ、時間無いし、やれる手は全部打つべきだと思うし。相手が良いって言うならそっちの方がいいかもね」


 って言われたので、決断。

 お昼一緒にしていい? って聞いたら「良いよ」って言われたので、そうしてる。


「僕の弁当は……お手伝いさんが作ってるね」


 口の中のものを飲み込んでから、教えてくれた。

 ついでに


「母さんはあれで忙しいから」


 って教えてくれる。

 しかもどうも、専業主婦では無いらしい。


 5人も子供を産んだのに。


 ちょっと、意外だった。

 ウチのお母さん、専業主婦だけど、子供は私ひとりなんだが……?


 それを思わず言ってしまうと


「……まあ、ウチが異常なんだろうね。きっと」


 ……多分、相当言葉を選んでくれたんだろうなぁ。


 そんな気遣いに感謝しながら


「だったら、私が作っても良い?」


 そう、訊いた。

 ……正直、これはやっとかないといけないんじゃないのかと思うんだよ。

 私の料理の腕は知っておいてもらわないといけないよね。


 ……料理出来るのかって?

 巨乳認定証所持者向け講習に、料理もあるんですが?


「やってくれるなら、是非」


 ……帰って来た返答は、そんな感じだ。

 ヨシ!




 食後にふたりで会話する。


「今、映画館で洋画の面白いのがやってるらしいね」


「洋画の面白いの?」


 ……まあ、映画館でやる洋画は大体売れたのをやってるから、大体面白いんだけど。


「タイトルは?」


「有名な海難事故を題材にしたやつ。週末に一緒に観に行かない?」


 ……ああ、あれ。

 確かに有名かも。


 私は見たこと無いけど、有名ではある。

 有名な恋愛映画。


 ……でも真神くん、そういう映画は観ないんじゃ?


 彼の家の彼の本棚に、映画関係の書籍は1冊も無かった気がするし。

 だとしたら……


 真神くん、女性が喜びそうな映画を自分なりに考えて、選んできてくれたのかな?

 映画館の前の告知ポスターやネットの告知を見て、うんうん悩んでいる彼を想像すると……


 愛しい、って気持ちになる。

 私のために悩んでくれたんだから。


「うん。行こう行こう」


 正直、私はそういう映画は観ないけど。

 折角選んでくれたんだし。




 さて……

 自宅に帰って来て、服。


 真神くんとは初デートかもしれない。

 一緒に遊ぶのはこれまでも良くやってたけど。


 衣装入れのクローゼットを開けた。

 このマンションに備え付けのやつ。


 作られてから確実に20年は経ってるのに、キチンと使えるクローゼット。

 中に入ってるのは……


 まあ、色々あるんだけど。


 デート服、一着しか無いなぁ……

 お姉さんっぽい、涼し気な衣装。

 涼し気なシャツとスカート。


 ……この服で行くの?

 ちょっと考えた……。


 どうしようかな……?

 これ、前のデートのために買った服なんだけど……


 この服は、私が男の子に見捨てられたときに着ていた服。

 そして同時に、真神くんに助けてもらったときに着ていた服でもあるんだ。


 ……どうしよう?

 これ、さらに「徹子に選んでもらった服」でもあるんだよね。


 ……ん~。

 今回は……これで行くかぁ……?


 ……これ買ったの、夏に入る前で、今は秋……

 時期もズレてる……


 でも……


 これ以上の装備を今の自分で選定できる自信が無いし。

 う~ん……


 ……あ、そうだ。

 映画を観終わったら、買い物に付き合って貰おうかな。

 そっちの方が、彼の好みを知ることもできるかもしれないし。


 そっちの方が良いよね。


 ……うん。そうしよう!

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