第39話 文化祭何にする?

 夏休みが明けて。

 二学期になった。


 二学期早々のイベントと言えば……


 文化祭。


「何をやりますか?」


 ……文化祭は


 前の社会と構造自体はあまり変わらないんだよね。

 まず文化部の展示。

 そしてクラスごとの出し物。


 このうち、文化部のものは私とは関係ない。

 文化部私は入ってないから。


 で、クラス出し物。


 大きく分けて、3つあるんだよね。


①食べ物系

②教室を使った展示、アトラクション系

③体育館を使用する舞台系


 ……まあ、常識だから説明なんて要らないよね。


 で、今意見出しをしてるんだけど……


「コスプレ喫茶」


 男子がさ、それ以外出さないんだよね。

 あとは衣装のアイディアしか出してこない。

 モ〇ガンとか。不〇火舞とか。


 う~ん。

 目的が透けて見えるというか……


 私は手を挙げた。


「先生! 持ち主の決まってる巨乳にコスプレを強いるのは犯罪だと思います!」


 徹子は既婚者なのに。

 そんなのいけないよね。


「確かに高野の言うとおりだ。却下だ」


 ……成り行きを見守っていた先生の言葉で、黒板に書かれていた文字が消された。


「……のぞみ、一応お礼言っておくね。アリガト」


 前の席から、徹子が少し振り返って、そう私に言葉をくれた。

 まあ、明日は我が身だし。


 じゃあ、何をするのか。

 展示系? アトラクション?


 すると


 誰かが手を挙げた。


「巨大地球儀」


 その意見が出た瞬間、ざわついていた教室が静まり返った。

 皆、複雑な表情。


「……ご、ゴメン。今のナシ」


 言い出したのは男子だったんだけど。

 自分の発言を撤回した。

 ちょっとしたふざけ気分だったのか。

 それとも意識高いと思ったのか。


 うん……その辺は

 ひょっとしたらナイスアイディアだったかもしれないとは思うけど。

 私にはまだ、無理かな。


 その発言でなんだか白けてしまったのか。

 結局、出し物は「お化け屋敷」なんていう、手間が掛からずあまり面白くなさそうなものに決まってしまった。




「お化け屋敷って、暗くして蒟蒻を吊るすだけだしね」


 あとは暗幕や段ボールで作った迷路を歩かせて、手を突然引っ張るとか。


 作るものがね、無いんだよ。

 前の社会では、脅かし役が化け物のコスプレをして盛り上げたらしいんだけどさ。


 そういうの、無法時代を馬鹿にしている、不謹慎だって言って怒る人が結構いるから。

 今のお化け屋敷はそういうもの。


 誰も文句を言わない形に流れて行った結果。

 楽なんだけどねぇ。


 今では「手抜き文化祭」の代名詞。

 こんなんで良いんだろうか? 私の青春。


「まあ、楽だからさ。スタッフも要らないし。一緒に文化祭回ろうね」


「うん。高野さん」


 今は交際中。

 つまり私の恋人の真神くんに、そのあたりを詰める意味で話をしていた。


 で。

 ……ふと、思ってしまったことがあって


「真神くん、ちょっと聞いて良い?」


「何?」


 ……気になるんだよね。

 彼は私を可愛い目で見上げている。

 うーん……


「さっきのコスプレ喫茶、やりたかった?」


 気になっちゃうんだ。

 どうなのかなぁ? って。


 中学生って一番エッチだって、徹子も言ってたし。

 やっぱやってみたくて仕方なかったのかなぁ? って。

 止めなかったし。


 すると……


「そりゃあ……高野さんもコスプレするのかなぁ、って考えてて、迷ってはいたかな」


 ……え?

 徹子じゃ無くて、私?


 意外だったから、ちょっと驚くと。


 それに気づかれて。


「結婚前提で交際してるんだよね。僕たち」


 それをしょうがないな、みたいな感じで言われて。

 ちょいちょい、と耳を貸せという風なジェスチャーをされたのでそうしたら


「……自分の発言、その辺よーく考えてからやってよね。のぞみ」


 ……心構えが出来ていなかったので。

 私は心臓を撃ち抜かれたような気がした。

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