第37話 巨乳互助会の話・前編

 巨乳互助会。

 巨乳判定を出された女の子の集まり。

 同じ境遇の女の子が相互に助け合うために作られたサークル。


 夏休み最終日に、その集まりがある。

 今回は……大阪のカフェ。


 大体、巨乳判定を出される子は、中学ひとつに1人か2人。

 3人はまあ居ない。

 なので、全国規模の集まりでも、膨大な数では無いんだよね。

 年代ごとに区切ってるのもあるし。

 つまり、全員同い年。

 私たちが今日出るのは、今年17になる子の集会。


「ここね……皆どうなってるのかなあ?」


 徹子と一緒に会場のカフェに来て、一緒にドアを潜った。

 ……ちなみに制服。

 ここは、皆が自分の通っている学校の制服を着て参加することが決まり。


 中には50人くらいの女子高生がいて。

 全員、巨乳。


「あ、徹子じゃない! 久しぶり~!」


「旦那さんは元気~!?」


 笑いながら。

 徹子は人気だ。


 巨乳優等生だから。


 私もちょっとだけ申し訳程度に挨拶。

 私はそれに返事して……


 カフェのテーブル席のひとつに座った。




 この会場、食べ物は無いけど、飲み物はある。

 お茶。

 ジュースは無い。


 ……まあ、そういうことだよね。

 太ると不味いし。


「舞子の結婚生活ってどうなのかな?」


「まぁ、まだ2カ月だっけ?」


 ……周りの話。

 結婚生活がどうとか、自分の旦那がどうとか。

 そういう話が多い。


 ……だって、もう高2だし。


 高2なのに、結婚してないのひょっとして私だけ?


 そんなことを頭の片隅で考えて、他の子の左手の薬指を目で確認する。

 だいぶ、指輪してる子多いなぁ……


「子供どうしてんの?」


「ああ、そういえば咲子の旦那は社会人だったっけ」


「……まあ、1年以内にって感じかな」


 ……当然こういう話題も出る。

 うーん……。


 いたたまれなくなる。


 妊活の話をする女子高生がいるんだよなぁ……。

 一般じゃこういうの無いよね。絶対。


 そんなことを考えながらお茶を飲んでいたら


「咲子はどこで旦那に出会ったんだっけ?」


「ああ、担任」


 ブッ!


 思わずお茶を吹いてしまった。

 慌てて台拭きを貰ってきて、後始末する。


 ……た、担任と現役JKが結婚して許されるなら、私が実質中1の子と結婚しても許されるよね!


 私は他人の会話を盗み聞きし、自分の決断に対する自信を深めた。


「のぞみ」


 そんなところに、他の子から解放された徹子がやってきた。

 私は


「あのさ徹子」


 お茶を飲みながら訊く


「何のぞみ?」


 彼女は私の方を向く。そして私の傍の席に腰を下ろした。


「徹子はお見合いから結婚まで何カ月くらいかかったの?」


 ……これ、聞いときたいよね。

 実質的な交際期間の目安みたいなもの分かるかもだし。


 そしたら

 徹子は少し思い返す仕草をして


「1年」


 えっと……


「それは……最初のお見合いパーティで出会った人とそのまま結婚したっていうこと?」


「うん」


 おお……!

 私はさらに訊いていく


「結婚を決めたのはいつなの?」


 それに関しては

 ちょっと照れ臭そうに


「最初」


 おお……!


「ちなみに向こうもそうなんだよね。彼が読んでる本の話をして……」


 すっごい、笑顔の徹子。

 ……なんか、惚気られそうだなぁ……


 そう思って身構えていたら


 カランカラン……


 ドアが開いて、また巨乳女子高生が入って来た。

 茶髪ツインテールの女子だった。


「満子……」


 徹子が気づいて、表情が変わった。

 その子……表情が絶望一色だったんだよ。

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