第36話 ご両親に挨拶に行ってみた4

「……ちなみにこれは三軍ね。バレ〇タはキャラクターが面白くて好きなのよ」


 二軍では勝てなかった。

 けど、まあ勝負にはなった。


 そこだけは一矢報えた気がする。

 対戦戦士として。


「さて」


 お義母さんはそう言ってソファから立ち上がった。


「ご飯にしましょうか」


 ……笑顔だった。




 テーブルを7人で囲む。

 私、真神くん、真霧さん、お義母さん、お義父さん、竜太くん、月子ちゃん。


 今日はお昼ご飯を一緒に食べるために来たんだし。本来は。


 お昼ご飯は……ピザだった。


 ……ここから導き出されることは……


 これは、私がろくでもない女の子だった場合、ダメージが少ないメニュー。

 そういうことなのかな……


 出前ってことはそういうことな気がする。

 手作りだった場合、ろくでもない子が来た場合に「なんであんな子のために……」って気になるもんね。

 そうなんじゃないかなぁ……?


 まだ、受け入れて貰えてるって思わない方がいいのかも……


「ピザは原価率が低くて頼むのが馬鹿らしくなるよね」


 手作りしたら安いのに。

 隣で食べながら、真神くんが言った。


「……真神くん、作れるの?」


 ちょっと意外だった。

 男の子はそういうの興味ないと思ってたのに。


「簡単だよ。時間は掛かるんだけどね」


 そうなんだ……




「また来なさい」


 佐上家を去るとき、お義母さんがそう言ってくれた。

 ……社交辞令、かも。


 笑顔で手を振ってくれたので、頭を下げて。


「今日はありがとうございました」


 そう一言お礼をして、お屋敷を去る。


 ……緊張したし、不安。

 大丈夫なのかなぁ……?


 家路につきながら、私は親友のことを考える。

 ……徹子は定期的に旦那さんの家に行って、相手の家族に馴染む努力をしてるけど。

 具体的にどうしてるのかは聞いて無いんだよね。


 ……昨日の段階で聞いておけば良かった。




「ただいまー」


 自宅。

 私の自宅は国営住宅。


 この国の再発足時に沢山設定された住宅のひとつ。

 元々は誰が建てた住宅なのかは知らないんだけど。


 外観はただのマンション。

 別に高級じゃ無いんだけどね。


「おかえり。どうだった?」


 お母さんがリビングから出てくる。

 私のお母さんは普通のお母さん。

 なんてことない、特徴が無いのが特徴。

 平凡。


「……よくわかんない」


 正直な気持ちを口にした。




 自室に戻って、壁際に座ってポケー、としていた。

 制服のまんま。


 ……今日は、大丈夫だったんだろうか?


 で


 あ……!


 自分が今日の予定を完了していないことに気づき、スマホを取り出して


『今日は招待してくれてありがとう』


 真神くんにお礼のメールを打った。

 こういうの、即座にしないと失礼だし。


 気づくの遅すぎ。

 私、ダメダメだ。


 これで明日まで忘れ続けていたらと思うと、ゾッとする。


 すると返信がすぐにあって


『母さんも気に入ってくれたみたいで安心した』


 ……え?

 そうなの?

 本当かなぁ……?


 でもま


『良かった。嬉しい』


 ……こう打つべきだよね。


 そして返信した後、私は


 ……真神くん、絶対に良いよね……

 気遣いしてくれるし。


 今日だってそうだったし。


 こういうの、忘れたらいけないと思うんだ。

 講習会でも、注目すべき事例でああいうのあった気がする。


 そうやって、ブツブツ言いながら考えていると。


 スマホがブブッと鳴った。


 あれ? また真神くん?


 メールだ。

 確認した。


 ……徹子からだった。


 こういう内容のメールだった。


『夏休み最終日の巨乳互助会の集まりはアンタ出るよね?』


 あ……!


 すっかり忘れてた……!

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