第25話 佐上家訪問

『今度、お互い三軍キャラでヤらない? 100円使うの勿体ないかな? 三軍だと』


 真神くんからのメール。

 うん。確かにちょっと勿体ないかな。

 流石に三軍まで落とすと、チェーンコンボを決めるのがやっと、みたいなキャラばかりになるし。

 CPUなら余裕だけど、対人でやるには100円勿体ない気分になる場合あるよね。


 だったら……


『ウチくる? サターンなら私も持ってるし』


 そう、返信。


 すると


『いいの? って言いたいところだけど、もうすぐ期末テストだよね。それは大丈夫なの?』


 うお。

 いきなり聞きたくない言葉の真面目メールが来た。


 ……そういやそうだ。

 あと2週間後に期末じゃん。


 やってる場合じゃ無いかも。

 確かに。


 私は成績はそんなに悪くないけどさ……油断できるほど良くも無いんだよね。

 ……私は数学と化学は安定して点取れるんだけど……英語がちょっと苦手なんだよね。

 すっごい理不尽。

 英語なんて、大学でドイツ語、漢文、中国語との選択のひとつにしとけばいいのに!

 だって使わないじゃん!


 なんで高校や中学で教えるのさ!


 なんて、考えていたら


『苦手科目は?』


 うう……さすが天才少年。

 私が今、何で黙っているのかを予想して、打って来た。


 そこに畏怖に近いものを感じながら


『英語』


 そう、打った。

 すると


『僕がもう使ってない、父さんからの下げ渡しの単語連語の教科書あるけど、要る?』


『これをひとつ覚えれば、かつては英検1級いけた、ってやつ』


 ……なんですと!?


『欲しい!』


 即答。すると


『じゃあ、明日土曜日だし、ウチ来てよ。あげるから』


 おお……

 真神くんの家。

 つまり、佐上くんの家だ。


 ……そんなところに行けてしまう。

 これは夢じゃ無いだろうか?


 英語と婚活が、同時に進展してしまう!



 

 あくまで友達の家に行くのだから、女を主張するようなデート服は違うよね。

 だから、ゲームセンターに行く時に合うような、若者ファッションにした。

 具体的には……


 青白いジーンズと、英語が書かれている大きめの白いTシャツ。

 そこに白いニット帽子を被って。


 ちょっとストリート、的な。

 どうだろう……


 で。

 教えられた住所に行くと……


 でーん、と。


 大きなお屋敷が。

 表札に「佐上」とある。


 ……デート服とはいかないまでも、正装に近いもので来るべきだったか……?


 私はガクブル状態になりつつあった。

 だけど……


 ここまで来たら、後には引けない!


 インターホンを押した。


 ピンポーン


 ちなみに塀で囲われたお屋敷で、門は典型的な柵タイプ。

 ちょっと素手では開けられない気がする。

 中から開けて貰わないと。


 なんて、観察しながら待っていると


『どなた様でしょうか?』


 誰かが出た。女の人だ。


「真神真虎くんの友達の、高野のぞみと言います。今日は真神くんに要らなくなった参考書を貰いに来ました」


『……少々お待ちを』


 その言葉の後、ブツ、と通話が切れた。




 しばらく待った。

 すると


「やあやあやあ。のぞみ姉ちゃん。よく来たね」


 真神くんが応対に出てくれて。

 門を内側から開けてくれた。


 そして……


 お屋敷に案内されたんだけど。


 まず、ちょっと変な家政婦さんが玄関先に居た。


 どんな風に変なのか?


 青い色の、身体にぴっちりフィットする衣装を着てるんだ。

 メイド服とかじゃなくて。

 で、首回りに革鎧みたいに見えるパーツがついてて。

 ここ、室内なのに革製のブーツを履いてる。

 皆、靴脱いでるのに。


 髪型はボブカットで、黒。

 そして目の色が……赤。


 え? 今の時代に外国人?

 それとも何かの病気?


 私がこの人が家政婦さんかな、と思ったのは


「真虎さま、奥様には……その……」


 私をチラチラ見ながら、そんな風に、何か言いたそうな雰囲気を感じたため。

 あ、こりゃ主従だ、みたいな。


 真神くんはそんな家政婦さんに


「のぞみ姉ちゃんは良いんだ。友達なんだから」


 そう、一言で切って捨ててくれて。

 それを聞いた途端


「失礼しました。それでは別の仕事に戻ります」


 と一礼。

 去っていく家政婦さん……


 ……奥様……真神くんのお母さんだよね?

 一体、何を言われてたんだろうなぁ……?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る