第18話 小さい救世主

「彼氏ならちょっと前に青くなって逃げたぜ」


「可哀想になぁ」


 怒り狂ってる男の後ろにいる、この人の仲間っぽい男たち……が私にそれを教えてくれた。

 絶望が加速する。


「……知ってるか? 前の社会が壊れた後、数年間無法状態になったらしいんだけどさ」


 その時代、自分を守れない男を選んだ女が、他の男にいきなりヤられても、それは自業自得って言われてたらしいぜ?


 ……うん。知ってる。

 そういう時代があったって。


 聞いたことがある。


 恐怖で私は動けなくなる。


 それが楽しいのか


「おい……よく見るとこいつ、結構可愛いし、それにチチがデカいじゃん」


「お詫びにちょっと遊んでもらうってどうだ?」


 そう言って、彼らはニヤニヤしていた。

 それを見て、私はこれからどんな目に遭わされるのかを考えて……


 目の前が滲んで来た。

 涙だ。


 ……怖くて泣いてしまった。


「泣いて許されると思うなよ」


 怒り狂ってる男が告げる。

 そして……


 その男が、私の方に足を向けて進んで来たとき……


 いきなりだ。


 向こうの方から、小さい影が飛び込んで来て。


 その男の腿の後ろに、飛び蹴りをかました。


「うぉっ!?」


 男は驚き、バランスを崩す。


 ……それは……


「……バッカじゃねえの? こんな人目につくところで自分より明らかに弱い女相手にスゴんでさぁ?」


 ……真神くんだった。真神真虎くん……


 ブルーのジャンパーと白いシャツ、茶色の半ズボン姿。

 そんな格好で。

 飛び蹴りで倒れて、倒れたまんまで挑発する。

 声の調子が絶妙で。

 最高に言われた方の神経を逆撫でる言い方。


 加えて。


 素早く起き上がり、お尻ペンペンをしたんだ。


 すると


「……このガキ! 舐めやがって!」


「ブチ殺すぞ!」


 激高。


 口々に真神くんへの怒号が飛ぶ。

 だけど彼は


「……やれるもんならやってみれば……? 絶対にお前らみたいなカス野郎には負けないけど?」


 不敵に笑って……


 逃げ出した!


 すると男たちは全員火がついて


「待ちやがれ!」


「殺してやる!」


「クソガキ!」


 全員そっちに向かっていく。


 あとに残される私……


 助かった……の?

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