第16話 私はこんな女なの

 巨乳認定証。

 私が巨乳判定を出された2週間後くらいに家に送付されてきたライセンス。

 全体像は、運転免許証に近い。

 お父さんの免許証を見せて貰ったときに感じた印象だけど。


 私の顔写真と、私のブラのサイズ。生年月日。そして年齢。

 毎年誕生日の前後1か月以内に、国指定の産婦人科へ更新手続きに出向かないといけない。

 非常に面倒だけど、これを50才になるまで続けないといけないんだ。


 その代わり……色々無料になる。

 代表的なのは各種講習会。料理だとか、マナーだとか。

 恋愛指南だとか。あと、法律。


 その他に……


 月1回の、指定の衣料品店での買い物の無料化。

 そして男性同伴時の飲食代会計の無料化。

 スポーツジムの利用代金も無料になる。しかもインストラクター付きだ。


 他にもなんかあった気がするけど……


 この服の代金も、それで払った。


 そしてこのごはん代も払うつもり。


 ……でね。


 ちょっと申し訳ないんだけど、今ちょっと、彼を試してる。

 この機能説明の時に言われたんだ。


「この各種無料化の話を聞いたとき、自分も何かおこぼれに預かれないかと相手の男性が考え出したら警戒しましょう」


 そういう男性はヒモになる可能性が高い。

 結婚したら酷い目に遭うかもしれないから、避けるべし。


 それが脳裏に残ってるんだよね。


 だから、あえて「自分の分は自分で払う」って言ったんだよ。

 さあ、なんて言うの……山田くん?


 すると


「……それで払えるんですか?」


「うん」


 それを聞いて、少し考えて


「分かりました。実はちょっと、女性に奢ってみたかったんですけどね」


 そう言って「会計別で」って言って、支払いしてくれた。

 ……ほっ、良かった。


 試して申し訳なかったけど、問題なくて本当に良かった。


 折角、この人となら上手くやれるかもしれないって思い始めていたんだから。




 その後、一緒に本屋に行って本の話をして。

 本のネタだけで2時間近く話していた気がする。


 夕方近くになったので。


 京都駅の駅前まで戻って来て。


「今日は楽しかったです」


 そう言ってくれる山田くん。


「私も面白かったよ」


 これはお世辞じゃないと思う。

 色々面白かった。……楽しかったって言った方が良い?

 ん、まあこれくらい良いかなぁ?


「次はいつデートできますか?」


 お……?

 私はNGじゃなかった?

 それはそれは……嬉しいんだけどさ。


 1個だけ、それならそれで確かめたいことがある。


「……山田くん、ちょっとだけ教えたいことあるんだよね。……いい?」


「え……?」




 そして私は、いつもの行きつけの大好きなゲームセンターに彼を連れて行く。

 どうしても教えておきたいんだよね。後から知られてドン引きされても困るし。


「ここは……?」


 山田くんは店内を見回している。

 山田くん、こういうところは来ないのかぁ……やっぱり。


「どうしても事前にあなたに教えておきたい。……これが私の趣味だって」


 言って。

 ちょうど対戦台が空いていたあのゲームの席に座った。


 そしてコイン投入口に100円玉を投入する。


 無論、乱入だ。

 私は乱入プレイで他人と技を競うことを趣味にしてる女なんだよ?


 使用キャラは二軍キャラのサキュバスを選択。

 選んだ理由は、さすがにこの場面で女の子らしくないキャラを選ぶのは怖いもの知らず過ぎ、と思ったせい。

 ようは、ちょっとだけ日和った。


 この場面で知ってもらいたいのは、血で血を洗う乱入対戦を喜びにできる女がお嫁でもいい? ってことだから。


 で、戦闘開始。

 相手は……


 猫娘を使ってる。

 このキャラって……


 知り合いの対戦者は、このキャラが持ちキャラの人、居ないんだよなぁ……


 戦闘経験値が気になるので、少しだけ不安だったけど。


 戦闘自体は楽勝だった。

 ほぼ完封。

 こっち二軍なのに。


 ……このキャラ、三軍キャラ?


 あまりにも弱すぎる。

 まぁ、いいや。


 目的は果たしたわけだし……


 そう思った私は、席を立った。

 後は対戦台が双方フリーになるだけだ。


 ……そのとき、私は気が付かなかった。

 立ち去る私の背中で「ニューチャレンジャー」の表示が画面に出ていたことを……。

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