第13話 服選び

「週末にデートする? 決断速いね」


 またお昼休み。

 お弁当が終わった後に、徹子に報告した。


「うん。初デート」


 ……そうなんだよ。

 初デートなんだよねぇ。


 今まで口説かれたことはあったけど、信頼できなかったから応じたことが無かったから。

 で、今更だけど、気づいたことがあって


「でね、デート服がさ、ちょっと無いと思うんだ」


 ……デートに普段着で行って良いわけがない。

 そして私は……


 デートに何を着て行ったらいいのかが分からない!


 そこに気づいて、ネットで検索しようかとしたんだけど。

 画像検索で出てくるコーデ、それはその人だから似あうわけで。


 ……私用じゃ無いじゃん。


 私に似合う服って何?

 そしてそれは、どうやって判断するの?


 私個人で選んでも、それは私の自己満足であって、本当に私に似合ってる服じゃないかもしれない。

 だったら、誰かの意見って絶対要るし。

 だから


「……徹子ゴメン。ホント急で悪いんだけど、今日は部活が無いんだよね。だから今日の放課後、服選びをしたいから、それに付き合って貰えないかな?」


 ……この場合、徹子の意見を聞かないなんて、あり得ないんじゃないかな?


 でも最近、彼女の助けばかり借りてる気がするなぁ。

 ……どうしようかと思うよ。何をすればお返しできるのか……この恩を。


 頼みごとをするたび、友情を失うんじゃないかと不安になる。


 でも、彼女は


「ん? 良いけど? アタシも週末に旦那の家を手伝いに行くし」


 なんでもないように快諾してくれた。


 ようはそのときに着て行く服を選びたいという事なんだろうか?

 それ、本当なのかな……?


 私の心を楽にさせようと思って、合わせてくれてない?




 ……放課後。

 来た。

 服屋さん。


 店の名前はキリシマ。

 老舗ではないんだけど。

 まあ、大概はそうだ。


「まあ、ここなら大体揃うよね。時間も無いし早く選ぼう」


 つかつかつかと、店内に入る徹子。

 私も後に続く。


 170センチはある彼女と、160センチくらいしかない私。

 並んで歩くと……メッチャ劣等感を刺激される。


 モデルだもんね。完全に。


 店内は沢山の服が合った。

 どれがいいんだろうか……


「アンタも知っての通り、お洒落の基本は、色を大体3色に抑えることなんだけどね」


 言いながら、選んでくれてる。

 どういうのが来るのかな……


 自分でも選びたいけど、私にはロクなセンスが無いから……

 色のあたりは勉強させられたから知ってたけどさ。


 まあ、次からは自分で出来るように、ここでしっかり覚えておかないと。

 そう思ったので、食い入るように見ている。


「これなんかどうかな?」


 言って、持ってきてくれたのは、白いレディースシャツに、灰色のフレアスカート。


「でね、これはアタシの予想なんだけど……」


 年下の男子の山田くんが、アンタに告白して来たわけでしょ?

 だったら、年上好きの子かもしれないから、その髪型をやめたらもっといいかもね。


 ……このツーサイドアップをやめろと?

 セミロングにしろと?


 ……うーん。


 私は腕を組んで思案する。


 お医者さんにも言われて、それでも変えなかったけど。

 そんな意地の張り方が今日の事態を招いたのかもしれないしなぁ……


 ……よし、やめよう!

 即決した。


 実績のある人の言う事だから、聞く価値はある!




 そして。


 更衣室に入って、試着。

 着ている制服の、セーラー服を脱ぐ。

 京都第一高校の制服の。漆黒のセーラー服。

 何もかも黒い。ラインとスカーフだけ白。


 で、下着姿になった。

 そして姿見に映った自分を見る。


 ……当たり前だけど、私は胸が大きい。

 結局今はEカップにまで成長した。

 巨乳判定は正しかったわけだ。


 うーん。

 やっぱ、この胸でツーサイドアップは変に見えるのかなぁ?


 髪を下ろしてセミロングの方が似合うんだろうか?

 ちょっと栗毛入ったこの髪……。


 髪を触りながらちょっと悩む。

 さっき決断したんだけど、鏡で見るとまたちょっと悩んでしまう。


 うん……でも……決めたしな。

 よし


 私は髪を左右で留めているピンクのヘアゴムを外した。




 シャッと試着室のカーテンを開けた。


 すると、前で待っていてくれた徹子が


「おお、似合ってるしだいぶお姉さんっぽいよ」


 そう、言ってくれる。

 うん……私も気に入ってたから、そういうコメントは嬉しいかも。


「念のため、他のも見ておく? 一応選んでおいたんだけど」


 徹子はそう訊いてくれた。

 だから私は


「うん。ありがとう……でも、これが気に入ったからこれにする。それよりも、今度は徹子の服を選ぼうよ。……徹子もそのために来たんだよね?」


 そう、言った。

 ……お礼はしないとね。

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