第12話 OKを出したその後

 次の日の部活。

 約束の時間。


 山田くんに近づいて、こっそり耳元で囁いた。

 他に人が居たからね。


「昨日の手紙の話だけど、OKだから」


 ほとんど事務報告みたいな感じだった。

 昨日の相談で、見極める段階、って感じだったから。

 恋愛はまだ。そうなるかどうかはここから先。

 そういう感覚。


 だけど


 山田くん、真っ赤になって。

 動きがおかしくなった。


 いや、稽古中だったんだけどさ。

 ……ひょっとして、常識無かった?


 ちょっと言っただけなのに。


 そのことを自覚して……

 私はちょっとドキドキした。


 自分の魅力で、山田くんの頭がいっぱいになってる……!


 私の自尊心が満たされる感覚。

 それがなんだか心地よくて……!


 私の心臓も高鳴る。

 

 その後、ふたりきりになったとき、電話番号とメールアドレスの交換をした。




『こんにちは。今日はすごく嬉しかったです。告白をOKしてくれて』


 家に帰ってから、メールを確認したら着信があった。

 そのメールに対し、私は


『私のことを良いって言ってくれたのが嬉しいよ。早速だけど、今週末にどこか行こうよ。どこか行きたいところある?』


 そうメールで打って送信。

 数分後、返信があった。


『ちょっと待ってください。僕は高野先輩の好みは良く分かりませんし……!』


 即返信。


『だーかーら、山田くんの好みで』


 ……ここは山田くんに譲ろうと思った。

 だって私だって分かんないし。


 それに私はさ、今は満たしてもらおうとは思って無いから。

 そこらへん、講習会で散々教えられてるからね。

 大事なのはちゃんと考えてくれたかどうか。


「関係性にあぐらを掻いていたら関係性を維持はできない」


 もし、山田くんが告白が成功したからと、もう私のことは自分のものって思ってるなと思えたら。

 多分、やめた方がいいんだろうね。

 そういうのを私は講習を散々聞かされたので知っている。


 無論、それは私についても一緒なんだけど。

 私も告白して貰えたからと、関係性にあぐらを掻いたらダメだよね。

 その辺は徹子を見てて理解してる。


 彼女、定期的に旦那さんの家に行って相手の家族に馴染もうとしてるし。


 ……つーか、いつ名字変えるんだろう?

 彼女。


 出会ったとき独身で、入籍しても名字変わらなかったから


「婿入り?」


 って聞いたら


「ううん、旧姓使用。学生の内は佛野を名乗ろうかなぁ、って」


 まだ旦那と別居状態だから名字を揃えるのはまだいいか、みたいな感覚なんだって。

 昔の旧姓使用は仕事上不利になる事例が多かったから、みたいなのが多かったみたいだけど。

 私たちの場合の旧姓使用、完全にフィーリングだよなぁ……。


 私は、どうしようかな……?

 まだ早いかもしれないけど、そんなことを考えていたら。


 ブブッ、って着信があり。

 見たら


『水族館行きませんか?』


 返事が来た。

 うん。なんか定番って感じ。


 嬉しかった。

 きっと、考えてくれたんだと思ったから。

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