第4話 私の灰色の決意

「山田、受けが甘い! 防御技術は攻撃の技術より大事なんだから適当に練習するな!」


「ハイ! 主将!」


 ……空手部の主将してる人。

 凛々しいってどういうのを言うのか。

 それの実例を見た気がした。


 背は高い。

 体つきは典型的な格闘家って感じ。

 モリモリじゃないけど、決してガリガリじゃないって。

 ……ああ、所謂細マッチョ?


 顔はクールな感じ。

 だけど冷たい感じはしない。

 冷静そうな人。そういう印象。


 髪型は空手をやってるからなのか。

 丸坊主では無いんだけど、髪の毛を掴まれにくい程度には切ってる。

 そういう髪型だった。


 ステキだ……


 それに、周りの男子が彼のことを信頼しているのが見てて分かったというか。

 面倒見も良いみたいだし。

 他の部員の指導をしているあたり。


 で、高圧的と言うか、頭ごなしみたいなものが見えなかった。

 そこが最高に惹かれた。


 この部活の空気、全体的に良い感じに感じたけど。

 その空気を作っているのはこの人なんだ……。


 それに気づいて、さらに惹かれた。


「……ねえ、徹子」


 思わず、訊いてしまう。

 徹子は私に顔を向けてきた。


「ん、何か行動を起こしたくなった?」


「うん」


 そう、答えると


「それは良かったわ。まずは行動だよ」


 そう言って、私の返答を心から喜んでくれた。




 私はあの人のことを調べた。

 名前は佐上月心さがみげっしん


 ……年齢は……私と同い年。

 意外だった。主将なのに。

 それぐらいすごいってことなのか。

 3年生を差し置いて主将を任されるくらいに。


 当然だけど、私とは別のクラスの人だった。


 でも知らなかった。

 あんな素敵な人がこの学校に居たなんて。


 調べる中で、あの人が学年1番の成績なのも知ってしまった。

 すごい……!


 調べるほど調べるほど魅了された。

 この人だ……


 この人なら、私は自分から行動を起こせる!


 そう、心から思えた。


 ……そして


 これが一番重要なことなんだけど。

 今現在、佐上くんにお付き合いしている人はいるのか?


 このこと。


 そしたら……


 この学校で何人か告白した女子がいたそうなんだけど。

 OKを取れた女子はいないそうな。


 皆、断られたらしい。

 理由は……


「俺、好きな人居るから」


 そう答えられたらしい。

 好きな人……


 つまり……今、付き合ってる人はいない。

 そういうことだ。


 付き合ってる人が居るなら、そう言うはずだし。

 じゃあ、チャンスがあるかもしれない。


 ……私には後が無い。

 こんなこと、やっていいのかとちょっとだけ思ったけど。


 だって、なんか構造的に寝取りを狙ってるみたいな……

 好きな人がいるんだからね。その想いを捨ててもらうんだ。

 構造的にはかなーり、近い。


 ……だけどさ、決まってないんだし。

 まだ「好きな人」なんだよ?


 昔の法律でも、今の法律でも、これは罪に問えないでしょ。

 だったら……


 私は決断をした。


 佐上くんに私の気持ちを伝えることを。

 そして叶うことならば、結婚してもらうことを。


 ……私には後が無いんだッ!


 多少グレーでもやっていかないと!

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