第3話 運命の見学

 放課後になった。

 いつもは帰宅して宿題するか、遊ぶかするんだけど。


 今日は徹子に誘われたので、待っていた。

 徹子はどこかに行っている。


 放課後の教室で。

 ちょっと待っててと言われたので待っている私。

 しばらくしたら、徹子が戻って来た。


「お待たせ。行こっか」


 笑顔で戻って来た。

 ホント、何だろう?


 徹子の案内に従って、ついていく。

 連れていかれたのは……武道場。


 武道場……空手部と柔道部が混在している設備。

 男子のみの授業「武道」で使用される教室だけど。

 クラブ活動でも当然使われるわけで。


「ここ」


「ここ?」


 ……ここに何の用事があるんだろう?

 私、徹子と違って武術に興味無いもんなぁ……


 前にお昼の時間にちょろっと「アタシの旦那、剣道部の主将なんだよね」って言ってて。

 ああそうか、徹子は剣道男子と結婚したんだ、とお弁当食べながら聞いてた思い出。


「ウチの学校の空手部、わりといい感じの男の子がいると思うから、ここを見学してみようよ。行動を起こしたくなるかもしれないよ?」


 ……う~ん、

 そういうもんなのかなぁ?


 実績ある人に言われると、説得力が違うよな。

 腕を組んでしばらく考えて


 ……確かに、行動を起こさないのはいい加減マズイよ。

 お父さんとお母さんを悲しませるわけにもいかないし。


 若さは有限。早く動くことが勝利の鍵。


 講習会でも散々講師に言われたしな……


「うん。ありがとう。見学の許可取りしてくれて」


 お礼を言った。

 私のためにしてくれたことだし。


「いいよお礼なんて。友達でしょ?」


 ……巨乳認定受けて、良いことがあったとしたら、徹子と友達になれたことだよなぁ。

 つくづく私はそう思った。




 ヤーッ!

 トーッ!


 白い道着を着た男子たちが、突きや蹴りの練習をしている。

 とても一生懸命。

 空手部の練習だ。


「おー、やってるやってる」


 徹子が楽しそうにその光景を眺めている。

 何が楽しいのかちょっと分からないんだけど……


 この光景……


 ん、まあ。

 しんどそうだな、とは思うけど。


 技の優劣なんて、ちょっと分かんないよ。


「のぞみ」


 すると徹子が


「……張り切り方が明らかに違うと思うよ? これは脈あるよ」


 ……詳しく話を聞くと。

 巨乳認定証持ちの未婚女子が、練習の見学に行きたいと言ってる。

 そう言って、見学許可をとったらしいんだ。


 すると


「……ここの男の子、巨乳認定証を持ってる女子と遊ぶ目的で付き合うような腐った心持ってないよ。アタシには分かる」


 そう言った。

 ……ん~。

 確かに、私の事情知ってるなら、遊びで付き合うなんて残酷なことできないと思うし。

 そういうもんなのかもしれないけど。


「分かった。よくよく見てみる」


 ……ここにいるかもしれないんだよね。

 私の将来の結婚相手。


 本気でそういう選定眼で男子を見たこと無かったなぁ。


 そう、思い返しながら彼らの練習風景を観察した。


 しんどそう。

 さっきも言ったけど。


 特に無理のある構えをし続ける練習。

 何だろう? 後ろ足に体重を掛ける、みたいな。

 相当辛いみたい。

 

「あと30秒!」


 頑張れ! 頑張れ!

 私は応援する。


 そして。


 ついに私は見つけてしまったのだ。

 気になる男性を……

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