第49話「魔術結社の福利厚生を受ける」
──
マンションに帰ったあとで、会議が行われた。
議題は、チャンネル名『「正義の魔術姫」
アルティノは止めようとしてたけど。
ちなみに『魔界ショッピングモールにおける救出作戦』のリアルタイム視聴者数は2万人を超えていたらしい。
最終的な視聴者数は、40万人を超える見込みだ。
この状態でチェンネル名を変えるのはリスクが大きいと言ったんだけど、蛍火は主張を変えず、アルティノは「いっそふたりの名前を合体させるのは……」とか、とんでもないことを言い出した。
議論を終えるきっかけになったのは、俺の「
正式な契約はしたけれど、とりあえずは1年間。
その後、更新するかどうかは決めていない。
でも、蛍火はこれからも魔術師として生きていくことになる。
彼女の居場所を、俺が奪うわけにはいかない。
それが、俺の主張だった。
「わかりました。桐瀬さんが、そこまでおっしゃるなら」
話を聞いた蛍火はやっと、うなずいてくれた。
「チャンネル名『ブラッド=トキシンは正義の使い魔』は、わたしの心の中に宿すだけにしておきます」
──って。
蛍火の名前が消えてるんだけど。いいのかそれで。
「そうでしたね……桐瀬さまとは、1年契約なのでした」
アルティノは、うなずいた。
「では、今後もお仕事を続けていただけるように、
「桐瀬さまのお部屋に運んであります」
「ぬかりはありませんね?」
「ありません!」
「遅くなってしまいましたし、桐瀬さまはマンションの部屋に泊まっていただきましょう。買い物したものを見ていただいて、どう配置すればいいのか、決めていただくべきかと」
「『配信者ギルド』から『魔界ショッピングモール』事件についての連絡も来るかもしれません。転移事件の黒幕が誰だったのか、気になりませんか?」
「ここにいれば、すぐに情報を知ることができますよ?」
「レーナ」
「はい。お嬢さま」
「レーナは最高のサポート役です」
「おほめにあずかり光栄です」
「それで……桐瀬さん」「桐瀬さま」
じーっと、訴えかけるように俺を見つめる、蛍火とアルティノ。
「幸いにも明日は日曜日です。今日は、泊まっていきませんか?」
「『ポラリス』の福利厚生がどのようなものか、試していただくためにも」
「「お願いします!!」」
……えーっと。
すでに日は暮れて、時刻は7時過ぎ。
今から家に帰って夕食を作るのはめんどくさい。
すぐに休めるのは、助かる。
このマンションには俺の部屋が用意されていて、寝間着も下着も買ってある。食器もある。あ、だめだこれ。退路を
「…………わかりました。今日は、お世話になります」
「はい。桐瀬さん!」
「それでは、食事の用意をいたしますね」
こうして、俺は一晩、『ポラリス』が用意してくれた部屋に泊まることになり──
その後『配信者ギルド』から、今回の事件の詳細を聞くことになるのだった。
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次回、第50話は明日のお昼くらいに更新します。
次のお話で、とりあえずの一区切りとなります。
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