84.配信休止=彼女は進み始めた過去を振り返る。
お母さんに背中を押された私はまずVtuberになるためにはどうするか、調べるところから始めた。
まあ、調べるといっても、ただVtuberについて検索しただけだったけど、それでも大まかになるための方法を知る事はできた。
「――――うーん……想像していたよりも凄く難しそう……でも、どちらかといえば問題は…………」
Vtuberになるための方法を調べた私は専門用語や難しそうな文字の羅列に頭を悩ませたが、それよりも一番の問題はデビューに至るまでに掛かる費用だ。
その当時、母児家庭だった私の家はとてもではないが裕福とは呼べず、配信に必要な機材類はおろか、PCすらなく、一から買い揃えないといけない状態…………この有様ではVtuberデビューなんて夢のまた夢だった。
「……いくら何でもPCなんて高価な物は買えないし、とてもじゃないけど、お母さんには頼めないよね」
貧乏とまでは言わないものの、決して余裕があるわけじゃない家の事情で、何十万も掛かるPC関連の機材類なんて用意できるわけがない。
「私がアルバイトをして安いのでもいいから用意を……ってそんな事ができるならそもそもこんな事にはなってないし…………」
どんな職種であろうと、働く以上は誰かと接する必要がある。
まして高校生のできるアルバイトなんて飲食店や簡単な接客業が多いのは目に見えており、対人恐怖症の私にそれらが務まるとは思えない。
まあ、言ってしまえばVtuberのような配信業も人との関わりが必須なのだけど、それでも普通にアルバイトをしている自分の姿が想像できなかった。
「…………やっぱり個人で目指すのは無理……ならやっぱり事務所企業からのデビューを目指すしかない」
スカウト、あるいはオーディションを経てその企業に所属するVtuberとしてデビューするのなら、ある程度、費用の負担をしてくれると調べた中に書いてあった。
スカウトはまず無理だし、対人恐怖症の私にとってオーディションは絶望的……だけど、金銭面をクリアするには現状、その方法以外の選択肢はない。
「………………別にどうしてもなりたい訳じゃないし、ここまで無理な事ばっかりなら諦めた方が良いに決まってる……そうだよ……私はただ少し羨ましいなって思っただけで――――」
自分に言い聞かせるように諦めの言葉を並べ立てたけれど、不意に背中を押してくれたお母さんの言葉が浮かび、心の奥底で諦めたくないという想いが強くなる。
「……諦めるのはやれるだけやってからでも遅くないよね……うん、私にどこまでやれるか分からないけど、本気で目指してみよう」
目標を見据えた私はこれから待ち受けるであろう苦難を想像しながらも、覚悟を決めて抱いた夢と向き合い始めた。
☆ ☆ ☆
84.配信休止をご覧くださり、誠にありがとうございます。
いつかの礼嬢オリィと同じく、かつての彼女もまたVtuberへと一歩踏み出します。果たしてその行方は……?
今後が気になる、彼女達を推せるという方はチャンネル登録とグッドボタン……もとい、フォローと評価の方をよろしくお願いいたします……それでは彼女達から一言!
「なんというか、ゆうぐれ様も私と同じく何も分からない状態からスタートしたのは意外でしたわね」
「そうかな?オリィちゃんやゆうぐれちゃんみたいな人だって少なくないと思うよ。今やそれくらいVtuberってコンテンツは大きくなってるからね」
「確かに……少し前まではあまり知られていなかったのに、今はテレビ出演や町中の広告でも見かけるくらいですわ……まあ、それは流石に売れている一部の方々に限られますけど」
「オリィちゃんだってそれくらい夢じゃないよ。なんたって私の娘なんだからね」
「…………そうですわね。そうなるといいですわね」
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