83.配信休止=彼女はそのきっかけを振り返る。
あの日以降、私は小鳥遊ミリアというイラストレーターのSNSをチェックしつつ、そのVtuberの配信を追う日々を過ごしていた。
「Vtuberってこんなに色んな人達がいるんだ……みんな楽しそうだなぁ……」
熱心……という程ではないけれど、そのVtuber以外にも配信を見るようになり、羨ましい、こんなふうになりたい、そんな想いが日に日に募っていた。
「――――そんなに羨ましいなら朝陽もやってみればいいんじゃない?」
きっかけはお母さんのそんな一言だった。
お休みの日、ソファに寝転がりながら配信を見ていいな、羨ましいなと無意識に呟いていると、お母さんが何気なくそう返してくれた。
「え?い、いや、私は…………」
「お母さんには良く分からないけど、朝陽がそんなに夢中になってるところなんて初めて見た。それだけ気になるならやって見たほうが良いとお母さんは思うわ……まあ、娘が辛い時に何もできなかった駄目駄目な母親が何言ってるんだって話かもしれないけどね」
そう言ってたはは~と自嘲気味に笑ったお母さんの顔を私は一生忘れないと思う。
何もできなかったと言うけれど、そもそも、私はいじめられていた事をお母さんには黙っていた。
理由としては女手一つでここまで私を育ててくれたお母さんに余計な心配を掛けたくなかったから。
仕事から帰ってきて、睡眠時間を削って家事をして、自分のやりたい事を我慢して私を育ててくれたお母さんの負担になるような話をどうしてできるだろうか。
最終的に騒動が大きくなり、知られてしまった時、お母さんは私をぎゅっと抱きしめてごめんねと何度も言いながら泣いていた。
どんなに辛くても、苦しくても、弱音一つ見せなかったお母さんのそんな姿を見て私は黙っていた事を後悔した。
これから先、ずっと消えないであろう負い目をお母さんに負わせてしまった、と。
「……私はお母さんの事を駄目駄目だなんて一度も思った事ないよ。お願いだからそんな事もう言わないで」
「…………ごめ……ううん、ありがとうの方が良いよね…………あーあ、私の娘は本当に可愛くて良い子だな~」
「え、わ、ちょ、や、やめてってばお母さん!」
目尻に溜めた涙を拭って笑ったお母さんは私の髪をわしゃわしゃ撫でてぎゅっと抱きしめてくる。
「…………ね、朝陽さ。本当にやりたいと思うなら一歩踏み出してみようよ。それがどんな結果になるとしてもお母さんは全力で応援するから、ね?」
「……お母さん…………うん、ありがと。まだどうするか分かんないけど、真剣に考えてみる」
誰とも喋れない自分が配信をしている姿なんて想像もできないけど、お母さんが背中を押してくれるなら挑戦してみようと思った私はこの日から少しずつ動き始めた。
☆ ☆ ☆
83.配信休止をご覧くださり、誠にありがとうございます。
背中を押されて動き始めた彼女は今へと繋がる一歩を踏み出します。果たしてその道程とは……?
今後が気になる、彼女達を推せるという方はチャンネル登録とグッドボタン……もとい、フォローと評価の方をよろしくお願いいたします……それでは彼女達から一言!
「ゆうぐれ様の本当のお母様は凄く立派な方ですのね……私、心から尊敬いたしますわ」
「うん、ゆうぐれちゃんのママは私だって言いたいところだけど、流石にこれは敵いそうにないかな」
「ふふっ……そうですわね。でも、ノーみりんお母様にも良いところはいっぱいあると思いますわよ?」
「良いところって……例えば?」
「へ?あ―……えっと、その、あ!ほ、ほら次のお話が始まりますわよ!」
「…………後でオリィちゃんにはお話があるから逃げないでね?」
「…………はい」
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