PLAY48 THIRD WAR! ③
……とてもいいところではあるが……、この戦いを繰り広げているのはアキ達だけではない。みんながみんな、それぞれの敵と相対している。
いうなれば小規模戦闘が複数行われているのだ。
アキ達だけではない。カルバノグやワーベンドの一行が戦っているのだ。
今回は少し話を遡って――最初にダディエル達の戦いを見ていこうと思う。
◆ ◆
「っ!」
アキ達が吹き飛ばされた光景を見ながら、ダディエルは内心苛立ちを覚えながら目の前にいる四人のプレイヤーを見てこう思った。
――こいつら……、『ブラパニ』 (BLACK COMPANYの略称)に入っている奴らだ。
――しかもかなりレベルを上げていやがる。俺とリンドー、ガザドラとあのゴトが何とかしているが、それでも一対一はかなり厳しい。
そう思いながら真正面から来た黒い刃物の攻撃を見て、ダディエルはすぐに左に傾きながら鼻の先すれすれの回避をする。
ちっと、鼻の先に小さな痛みと擦れを感じ、そのままどろりと微量の血が零れた。
ダディエルは舌打ちをしながら口と鼻を押さえつけるようにしてゴロンっと転がって前にいる人物を見る。
その前にいる人物は――
「けらけらけら」と笑いながらダディエルを見て、かちんかちんっと、蟷螂の様に作り替えた腕をかち合わせながら――白衣の女はこう言った。
「おじさんウィザードでしょぉ? しかもエルフのぉ。ちょっとだけ魔力が高くても、結局実力に差があったら何もできないよねぇ?」
「………実力云々って、お前――魔獣族だろう……? しかもMCOでもかなりえぐい図体の『殺戮蟷螂』。黒いその手が何よりの証拠だ。あと一応言っておくが、魔獣とウィザードの差なんて、大したもんじゃねえだろうが……。何より俺は属性攻撃のスキルなんて溜めてねえ。もっぱら――サポート系のそれだな」
「ふーぅん。そうなんだー。おじさんってへんてこな思考回路視点だねー」
「へんてこなのはお前だ。いきなり刃物を振り回してけらけら笑いながら、楽しいのかそれってよぉ……。お前の親の顔が見たいぜ」
「………はぁ」
白衣の女は『かちんかちんっ』と黒い刃物の両手をこすり合わせ、研磨の如く研ぎ澄ませるようにして合わせた後、白衣の女はダディエルをちらりと見て、溜息交じりにふとした疑問を口にする。
「……おじさん歳いくつなの? なんだか説教されているみたいでむかつくなー。あたちそんなことされるとすんごく気分悪くなるのにぃ……、けらけらじゃないなぁ」
少しむすくれた顔をして言う白衣の女。
それを聞いたダディエルは苛立ったように眉を顰め、少し声を荒げるようにしてこう言った。
「……さっきからオジサンおじさんうるせえぞ趣味悪女。俺はこう見えても三十路だ。ってか、俺は説教なんてしてねえぞ。ただ危ないって言っているだけで」
「あたちはね……」
するとダディエルの言葉を遮るように白衣の女はくるり、くるりとその場で回りながら、まるで踊っているかのように微笑みを浮かべながら彼女はダディエルに向かってこう言った。
「あたちは――とことん注意されるのが大嫌い。あと相手に指図されるのも嫌いだし、あとは命令されるのも大嫌い。だって命令するやつって大体威張っててむかつく奴だらけだもん。特に親は嫌だ。だって親は子供を世間体の道具の様にしか使わない。あたちのことを、道具に用にしつけることしかできない屑の親なんて大嫌い。だから――あたちに命令するやつが、大嫌い。なの。けらけら」
「嫌いだらけじゃねえか」
その言葉を聞きながら、ダディエルはそっと口に針を含んで、そのまま気づかれないように、白衣の女の話を聞いては言葉を返す。
それを聞いていた白衣の女は、ダディエルの行動に気付いていないかのように、くるくると回りながら――彼女はこう言った。
「嫌いよりもあたちは好きで埋め尽くされればいいと思っているの。でもあたちの周りにいる奴らは全員嫌いな奴ら。うるさいし、あたちのことを考えてもいないくせに――ウザい」
と言った瞬間、くるくる回っていたそれをやめて――
びたり。と――その場で気を付けをするように、足をかつんっと揃える。
それを見たダディエルは、疑念の眼でそれを見た瞬間、ぶわりと――突如来た殺気を感じて、すぐさま自分に向けて指をさしながら後ろに跳び退いて――
「っ! 『
すると――ぶわりと白い靄が彼の体を包み込んで、すぐに空気に溶けて消える。
ダディエルはその靄を感じながら苛立ちの念を顔に出して、大きく舌打ちをしながら――
――上がったのはスピードじゃなくて……、防御かよっ! と、己の運のなさを嘆きながら苛立ちを吐き捨てる。ちなみにダディエルの運は……4である。
そんな苛立ちを募らせている間に、白衣の女は蟷螂の様に鋭く尖ったそれを点に向けて掲げながら、一歩、また一歩と……、ホラーの様に後ろに後退しているダディエルに近づいてくる。
だんだんっと、素早く後退しているにも関わらず、白衣の女はどんどんダディエルに近づいて来て、けらけら笑いながら走ってくる。それはまさにホラーである。
「っ!」
ダディエルは後ろに下がりながら、ぷくりと頬を膨らませて、白衣の女に狙いを定める。
「っ! ダディエル君っ!?」
ボルドはそれを見た瞬間、アキ達から視線を逸らして、ダディエルの行動を見ながら踊りて声を上げる。
ボルドの声を聞いたダディエルだったが、頬を膨らませているせいでまともに喋ることなどできない。ゆえに彼は頬を膨らませながらボルドの方を目で見ながら心の中で――
――うるせぇ! 黙って見ていろっ! と怒鳴った。
……聞こえてない声で言っても、通じるわけがない。
ボルドの驚いた言葉を聞きながら、ダディエルはどんどん近づいて、狂喜の笑みを浮かべながら近付いて来る白衣の女の腕に狙いを定めて――口に含んでいたその針を……。
――っぷ! と、吹き矢の要領で、口の中にあったそれを吐いて攻撃を繰り出そうとした。
大きな攻撃ではない。ただ怯ませるだけのそれでいいのだ。そう思ったダディエルは、その針を白衣の女の腕に向けて、その攻撃を繰り出したのだ。
――たった一瞬でもいい! 今はこの状況を敵のそれに変えないことが先決だっ!
そう思いながらダディエルはもう一度針を口に含んで思って、火力のあるガザドラとリンドーのところに向かおうとした瞬間……。
ふっと――自分がいる場所が暗くなった。のではない……。
自分を覆い隠すような大きな何かが、自分の上に振り上げられて、それが影となってダディエルの場所に影を作ったのだ。横長のそれを作って。
「?」
それを見たダディエルは、一体何があったんだと思いながら、上を見上げようとした瞬間……。
「ダディエル君っ!
「っ!?」
ボルドの焦りの声、と同時に、自分を囲む半透明の半球体。
それに気付いたダディエルは、背後でサポートをしていたボルドに向かって――
「リーダーッ! 一体何を」と言った瞬間だった。
「すぐに壊れるから逃げてっ!」と、ボルドは声を荒げながら、彼の言葉を遮って言い放った。それを聞いたダディエルは、首を傾げながら素っ頓狂な声を上げる。
一体何を言っているんだ? そう思いながら言葉でも言おうとした時……。
ボルドを見たおかげで、視界の端に入った黒い何かを見たダディエルは、その黒い何がかある場所を目で追いながら――そのままその全身図をしっかりと目で通して、記憶に収めた。
ダディエルは、自分の頭上で、自分を真っ二つにしようとしている黒い体と黒い手の刃をうごうごと動かしている巨大な蟷螂を目にして……、ひゅっと……、息が止まりそうになった。
彼自身――暗殺者としての血がそう囁いているのかはわからない。しかし彼はこの時……直感した。そして納得した。
――やはり自分の勘に狂いはなかった。と……。そして……。
――この女は、あの三人よりもやばいっ! と……。
それもそうだろう。
ダディエルが言っていた『殺戮蟷螂』は、確かに黒い姿が印象的な魔物で、姿もかなり気持ち悪いそれである。黒い体にギザギザの両手の刃物。背中にはぼこぼこと背負っている己の卵に蠅のような目、そして何よりぐぱぁ……、と、液体がこびりついているそれを見せながら、全長五メートルはあるであろうその巨体で、白衣の女はダディエルを見降ろしながら、片手を振り上げた状態で彼女はこう言った。
「だから――あたちはあたちの思うが儘に嫌な奴は殺すのっ! 殺してしまえばいやな奴も消えるし、それにあたちのことを馬鹿にしないもんっ! おじさんのことも嫌になったから、ここであたちが……、『BLACK COMPANY』のメメトリが、おじさんをここで殺す! みんなここで殺してやるぅ!」
虫の声と白衣の女――メメトリの声が重なっているかのような声を上げて、振り上げていたその手を、ダディエルに向けて一気に振り降ろす!
それを見ていたダディエルは、ぐっと歯を食いしばりながら上空から迫りくる黒い刃物を見て、何とかしないとと思って、身構えた。
ボルドが発動した『
ダダダダダダダダダダダダダダダッッ! と――遠くで銃声が鳴った。
そして……。
「わああああああああああああああああああああああああああああああっっっ!」
「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっ!」
リンドーとガザドラが、その銃の攻撃から逃れるように、まるでその銃弾の雨に追われているかのように、全力疾走でその場所を駆け回っていた。
息を切らしながら、必死になって、撃たれないようにして、ハチの巣にならないようにして……、二人は全力疾走で叫んで逃げていた。
対照的に……。
「おらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらあああああああああああああああああああああああっっっっ!」
迷彩服の女は機関銃を手に持って、彼らをハチの巣にするように連射を繰り返していた。
さすがは冷戦の時に使われた銃だ。殺傷能力は伊達ではない。
どしゅどしゅと地面に小さな穴が開くような銃の威力。それを見たリンドーは、青ざめながら一生懸命走って、隣を走っているガザドラに向かってこう言った。
「あ、あの……っ! これって完全に僕ら不利な状況じゃないですかぁ!? ぼく正直この状況に不安を抱いていますぅ!」
「ならば黙って走れリンドーよっ! 走ることよりしゃべることを優先して足をおろそかにすると、あの銃の餌食になってしまうぞっ!」
「それは嫌だあああああっっ! っていうか早くしてゴトさあああああんっ!」
張り付けた笑みを浮かべてはいるが、内心大慌てなのが分かる様な顔をしているリンドー。
そんな顔を見ながら、ガザドラは一生懸命に走りながら、ゴトの行動を横目で見ていた。
なぜ彼らがこんなことをしているのかと言うと――簡潔に説明しよう。
ゴトとリンドー、そしてガザドラは四人のうち三人と相対していた。しかし突如問題が発生したのだ。わかっていると思うが、それは子供達と奴隷にされそうになった大人達である。
彼等の背後でぶるぶると震えているその住人を守りながら戦うのは至難の業。
もしここにヘルナイトがいれば、絶対に守って戦えるだろう。最強ゆえの力で一撃であろう。
ガザドラはそんなことを思いながら、背後で震えている子供達と大人達を見て、どうするかと思いながら思案しようとした時――ゴトが声を上げたのだ。
「俺がこいつらを何とかする! それまで何とか持ち堪えてくれっ!」
それを聞いたリンドーは内心、逃げるつもりじゃないだろうな。と、少々疑心を抱いていたが、それを聞いたガザドラが承諾の声を上げて請け負ってしまったせいで、それ以上の会話を紡ぐことができなかった。
ガザドラに対して、何をしているんだ……、と、苛立ちの念を込めながら……。
そんな殺気めいたそれを感じていたガザドラだったが、すぐに襲い掛かってきた包帯の男と女性人格の男が彼らに襲い掛かってきた。
包帯の男は刀を抜刀して、そして女性人格の男は拳を振り上げながら攻撃をしようとしていた。
ガザドラはそれを見て、背に背負っている剣を引き抜いて操ろとした時……。
リンドーはその武器をスキルの発動を小さな声で言った後、すぐさま包帯の男に向かって駆け出す。そして素早い動きを利用して包帯の男の武器に『ひたり』と一瞬触れ、そしてそのまま逃げるように距離を開けたと同時に、彼は両手を広げて――ごとりと包帯の男が持っていた刀を己の手元に収める。
シーフゥーのスキル――『
包帯の男は己の獲物がなくなったことにより、手にあったその喪失感を感じて、驚きながらあたりを見回してからリンドーを見て、盗まれたことに激昂しながら、ビキビキと青筋を立てながら怒りを露にして、そのまま拳で殴りかかろうとした時――
「
ガザドラが剣をそのまま突き立てて、言葉を発した後――剣の本体がぐにゃりと、溶けるように形を変えた。そしてそのあとすぐに、その二人に向かって糸状の鋼の色の何かが、石を持っているかのようにぎゅんっと飛んでいき、そしてぐるぐると彼らの体に巻き付く。
まるで蛇の雁字搦めのようにまきつく。
それを受けた男二人は、そのまま銀色の糸により拘束されて、どしゃっと地べたに這いつくばってしまう。
それを見た迷彩服の女は……、歯を食いしばり、悔しさと怒りをふつふつと湧き上がらせて、そのまま自分が持っていた『PK機関銃』を手に――銃撃をして、現在に至っている。
つまり――彼らはゴトが完全に子供達と掴まってしまった人達を避難させるための、時間稼ぎ要因でしかない。
最初の二人こそよかったが、迷彩服の女は厄介だ。そうリンドーは思った。
――見た限りスナイパーなのはわかる。でもあの銃って本当にやばいものだ。
――ギンロさんのように肩から下げて打つようなそれだけど、かなりの火力がある……。
――こんな時、ぼくたちのチームの火力でもあるギンロさんや紅さんがいれば……っ!
と思いながら、リンドーはふとギンロがいる方向を見た。
ギンロはミニガンを手に持ったまま、未だに茫然としている紅と、ぶるぶると震えているティズ。そして倒れてしまっているティティを守るように立っている。
ボルドの命令に従っているからこそ、戦いたいがこうして守りの立場にいるのギンロ。
ギンロは確かに大火力の武器を持っているが、それは逆を返すと――防御にも適しているということにもなる。防御こそが最大の攻撃。攻撃こそ最大の防御。
ギンロはその両方を兼ね備えている。
それを踏んで、ギンロを守りに徹したのだろう。
――いや、ただリーダーのぶち切れを体験しているから、怖くて逆らえないだけだけど……。
そうリンドーは首を横に振りながら思っていると……。
『――ヌゥンッッ!』
この場にいる人物の中では、聞き覚えがない声が聞こえた。と同時に――ガギィンッッ! という何かが壊れるような、金属物質の破壊音が聞こえた。
それを聞いたリンドーはガザドラと一緒にその音がした方向を見ると……。
愕然としてそれを見ながら、リンドーは小さく……。
「うそだろ」と、半分笑いながら言葉を零した。
笑う……、それは驚愕のあまりにしてしまう行動でもある。リンドーはそれを見て、まさかと思いながら、彼はこう口を開けて、言葉を発する。
「あの包帯さんは……、武士じゃなくて……、キラー』……、ですかっ?」
そう――リンドーが言った通り、包帯男の背後から出てきているそれは、まさに暗殺者や上級所属――『リッパー』、『スレイヤー』に『キラー』が使えるもう一人の自分。
影が出てきていたのだ。
その影は首はなく、矢が何本も突き刺さっている鎧を着て、錆びていて血がこびりついているそれを持った、怨念そのものの影が出ていたのだ。
まさに日本版デュラハンである。しかも周りに青い人魂ときた。正真正銘の日本版デュラハンだ。
その日本版のデュラハンは包帯男と女性人格の男を拘束しているその鉄の糸を、高度もかなりあるそれを……、手で引き千切ってしまったのだ。
ばらばらと鉄の糸が地面に落ちて、まるで宝石の破片の様に、太陽の販社を受けてキラキラと輝いて落ちていく……。
こんな時に美しいなど、不謹慎でもある。
拘束していたそれが壊されてしまった。つまり――
劣勢が大きくなってしまったのだ。
「よ……っ! よくやった! 『
包帯の男はむくりと起き上がりながら、狂喜の笑みを包帯越しで見せる。それを見た日本版デュラハン――『
『ありがたき言葉』と、幽霊のような音色で言う。
それを聞いていた大男は、ほっとしながら痛かったのだろうか、腕を撫でながら彼は『
「ありがとうねぇ! おかげで助かっちゃったわっ!」と、うふっと言いながらお礼を述べる男。それを聞いても、『
……リンドーとガザドラは、内心そんな筋骨隆々の体でそんな女じみた言葉を話すんじゃないと思ったが、今はそんな場合じゃない。
「
迷彩服の女が叫ぶ。
それを聞いた包帯男――鐵は「あぁ?」と、気に食わないような音色で返事をして、それを聞いていた女人格の男――ろざんぬに向かって声を上げた。迷彩服の女はろざんぬに向かってこう声を上げる。
「――あれをやるよ!」
「っ! オーケーよっ! マリアンッ!」
その言葉を聞いて、ろざんぬは迷彩服の女――マリアンの元に向かって駆け出して、そして彼女の前で立ち膝をする。
武器を持たないで、そのまま彼女の真正面で、邪魔になるような立ち膝をし――
それを見ていた二人は、首を傾げながらそれを見ていたが、マリアンが懐から出していた灰色の瘴輝石を取り出して――そしてぐっと握ってから、彼女はこう言う。
「マナ・ポケット――『レォット』ッッ!」
その声に呼応する様に、眩い光を発光しだした瘴輝石。
それを見たリンドーはうっと唸りながら目を閉じるように顔を顰める。ガザドラはそれを細めで見ながら警戒を解かないでいると……。
その石から――マリアンが持っているその機関銃と同じものが、『がしゃんっ』と音を立てて地面に落ちる。
「っ!?」
ガザドラはそれを見て、なぜと思いながらそれを見た。そして――
――同じ銃っ!? 大きさも同じだが……、あれでは片手で持つことは不可能だ。
――相手に武器を持たせる? 否、そんな無策なことはしない。いったい何を……。
と思いながら見ていると……、マリアンはその出した銃を片手に持って、元々持っていた銃を片手にもって、脇でしっかりと抱えながら、その片手では持てないような重い拳銃をぐっと振り上げて――そのまま勢いをつけるように、ぐぅんっと一気に下に下ろした。
ろざんぬの肩めがけて――!
ろざんぬはそれを顔を上げながら確かめるようにして見て、肩にその拳銃がのっかったことを確認した後……、両の手で、両肩に乗っかっているその機関銃の背に手をがっしりと乗せ――支えるようにして掴む。
人間の力で戦車を模すようにして、マリアンは構える。ろざんぬを使って――!
「っ!?」
「そんなのありぃっ!?」
ガザドラはそれを見て驚きの声を上げ、リンドーはそれを見て驚きながら叫ぶと、リンドーの言葉を聞いた前方にいるマリアンははっと鼻で笑いながら――
「――こんなの、戦場では当たり前の共同作業だ」と言って、じゃきりとその二丁の銃を構える。
ろざんぬは土台と言う役割をしっかりと担いながら――がっしりとぶれないように、落とさないように肩と手でしっかりと支える。
背後からは鐵は武器もないまま、武器を持っている『
前後から敵が襲い掛かってくる!
「っ!」
リンドーはそれを見て、青ざめながらどうするかと朦朧とする思考の中で思案をして……、ガザドラはそれを見ながらじっとしている。慌ててはいない。
ダディエルはダディエルで、すでに黒い蟷螂のような魔物に襲われている最中――
カルバノグは――絶体絶命の状況下に陥っていた。
そんな姿を見て、勝ちを確信したマリアンはにっと口元を緩く釣り上げ、弧を描きながら彼女は大きく口を開けて叫ぶ。
「――いけえええええええええええええええええっっっ! 『ストロング・ショットォォォォ』ッッッ!」
何の恨みもないが、ただその言葉を口にしながら口癖のように彼女は二丁の拳銃の引き金を引いた。
刹那――
二重の銃声が――辺りに響き渡った。
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