PLAY48 THIRD WAR! ②
必ず――誰もがこう思うだろう。
人の血を使って武器の動力源にする。
そのために魔女狩りをして、同じ命を何度も奪った。
奪って、奪って、奪って……。
奪って奪って奪って奪って奪って奪って奪って奪って奪って奪って奪って奪って奪って奪って奪って奪って奪って奪って奪って奪って奪って奪って奪って奪って奪って奪って奪って奪って奪って奪って奪って奪って奪って奪って奪って奪って奪って奪って奪って奪って奪って奪って奪って奪って奪って奪って奪って奪って――
――奪って、その残ったものを再利用した。
再利用。
リサイクル。
そんな地球に優しいものではない。
これは――人間に対しての冒涜行為だ。
寿命と言う電気を失う前に他の者がその命を奪って消す。それはとてつもない最低な行為だ。
それを帝国は――躊躇いも無くした。何度もした。何度も――命を奪った。
外道。異常。非道。
そんな言葉で罵られても仕方がないことである。
ゆえに必ず――誰もがもう思うだろう。
――なんでお前達はそんな躊躇いもなく人の命を奪えるんだ? なんの躊躇いもなく、己の利益しか考えずに人を殺すのだ?――
と……。
◆ ◆
「「キョウヤッッ!」」
珍しい光景だと誰もが思うであろう。
普段なら暴走するアキを止めるキョウヤが、ひどい言葉を浴びせるシェーラを宥めるキョウヤが、チームの中では普通の思考回路でいる彼が、激昂のその顔で目の前にいるグゥドゥレィを睨みつけながら駆け出し、そのまま槍をぐっと後ろに引きながら攻撃を繰り出そうとしているのだ。
それを見た二人は驚いてキョウヤの名を叫ぶ。止めようと叫ぶ。
しかしキョウヤはそんな二人の声など聞こえていないかのように、そのままグゥドゥレィを殺す勢いで槍を握る力を込めて――彼は……。
「……『アン・ザ・ランス』ッ!」
ダンッと急加速で駆け出しながらぼっと空気を裂くような音を出して、キョウヤは槍の突きのスキルを発動させ攻撃を繰り出す。
しかし――
「おおっとぉ」
グゥドゥレィはそれを見て、右手の機械の掌でそれを受け止めながら、左に傾いて逃げるようにとんとんっと、横跳びになって跳んで回る。
キョウヤを見ながら――否。監視するかのようにキョウヤの周りをとんとんっと跳びながらグゥドゥレィはこう言う。
「っほっほっほっほ! 何をそんなに怒っておるっ? まさかと思うが、異国ではこのようなことはしなかった。そんな天下泰平の世界が広がっていた。ゆえにこの事実を聞いて愕然として、儂に向かって八つ当たり交じりのことをしておる? というのかのぉ?」
「~~~っっっ!」
そうではない。と、反論したい。しかしできない。
厳密に言うのであれば――図星だったからだ。
グゥドゥレィの相手の顔を嘲笑うような下劣な笑みが更にキョウヤの怒りを加速させるが、反論さえできない。事実を突かれているので反論なんてできないだろう。
つまりは上げ足を取られている。
完全に相手のペース。ということだ。
その光景を見ていたシェーラは、焦る表情を見せないが、内心焦りながら彼女はまずいと思い、そしてキョウヤに向かって――
「キョウヤッ! 今は落ち着いてっ! そのままだと完全に相手のペースよっ! いつものあんたはどこにい行ってしまったのよっ!」
宥めるように叫ぶが、キョウヤはその声を聞いていないかのように、目の前をぐるぐると回って跳んでいるグゥドゥレィを目で捉えながら、そのままぐっと槍を剣を横に薙ぐように構えて――すぅっと息を吸ってから……。
「『ローテ・ランス』!」
スキルを叫ぶと同時に、キョウヤはそのまま槍をグルゥンッッッ! と、振り回すようにして攻撃を繰り出す。
自分も回転――と言うよりも、その場所を軸にしてぐるんっと回っただけなのだが……、それをしながらキョウヤはグゥドゥレィに攻撃を仕掛けようとした。
それを見ていたアキはすぐさま連続狙撃ができる『ホークス』を出しながら――シェーラに向かって……。
「仕方がないっ! 援護しようっ!」と、内心呆れながら言う。
それを聞いていたシェーラは頷きながら二本の剣を構えて、駆け出すと――
「おやおやぁ」
グゥドゥレィは老人特権の余裕のそれでキョウヤの槍を右横から見る。そしてそれを見て――ぐんっと上に跳躍した。
「っ!?」
「えぇっ!?」
「うそぉっ!」
キョウヤ、シェーラ、アキが驚きの声を上げる。それもそうであろう。グゥドゥレィは確かに、キョウヤの攻撃を避けた。
上に向かって――伸びながら。
跳んではいない。むしろ彼は跳ぶ動作さえしていないのだ。直立のまま――地面に脚がついていないにも関わらず、まるでスーパーヒーローのような飛行能力のごとく上に向かったのだ。
が――タネは単純だった。
ざしゃっと、地面に深く突き刺さる何か。
突き刺さる何かを見た三人はそれを見て、驚きを隠すことができずそれを見た。
それは――大きな刃がついたうねうねしている機械のそれ。
その機械の持ち主を探るように、そっと上を見上げていくと――すぐにその持ち主を見つけることができた。
と言っても――三人にとってすればもうわかりきっていることだが……。
「っほっほっほっほっほ!」
腰の辺りから銀色のフォルムで彩られている
「おーおーおー! まさかお前達、儂等が使っている
グゥドゥレィは自分の身を包んでいる黒いそれを剥ぎ取るように、掴んで脱ぎ去る。
ばさりと黒い布が宙を舞い、ふぁさぁっと……。地面にゆっくりと落ちていく。
そんな光景を見ないで、アキ達はそのグゥドゥレィの体を見て、言葉を失いながら、あまりに非現実的な (このようなゲームの世界でも非現実的だが、それはもう慣れてしまっているのであまり言わないでおく) その姿を見て……、ファンタジーなのにそうではないそれを見て、誰もが言葉を失ってグゥドゥレィを見上げていた。
グゥドゥレィはそんな三人を見て、周りで繰り広げられているそれを見ながら、にっと余裕の笑みを浮かべて、ばっと両手を広げながら――彼は高らかにこう言った。
「儂はな――
そう――
グゥドゥレィの体は、人間のそれではなかった。
彼の顔と胴体の部分以外――銀色のフォルムで塗り固められたそれで、両手両足、あろうことか腰の部位と背中の部位が秘器で埋め尽くされていたのだ。
ある意味――リアルサイボーグ。と言っても過言ではない。
もうSFと言われてもおかしくないようなそれであった。
『カキキ』と言う機械音を出しながら、背中がどんどん盛り上がっていくのが見えたシェーラ。
シェーラはそれを見ながら首を傾げて顔を顰めたが――その表情はすぐに驚愕に変わる。
驚愕のシェーラの顔を見たグゥドゥレィは、にやりと老人の狂気の笑みを浮かべ、盛り上げた背中を『ガギョッ!』と開いた。
開いた拍子に、背中から出てきたいくつもの節足の足の機械を見て、シェーラ達は目を見開いて驚きの表情を見せ、色素を青く染めていた。
まぁ見た限り――蜘蛛に見えてしまうこともあるので、ビジュアル的には好まなしくない。生理的に受け付けられない。
グゥドゥレィはそんな三人を見ながら、その節足の足をうごうごと動かして――彼は「っほっほっほっほ!」と笑いながらこう言った。
「驚いて声が出ないか? それもそうだろうなぁ。儂はこう見えて人体の七十五パーセントの
と言いながら、尻尾を支点にしてふらふらしている体で、空中で膝を折って、正座をするような体制になった。膝をキョウヤに向けながら。
「?」
それを見ていたキョウヤは、何をするんだと思いながら槍を構えていたが、グゥドゥレィはそんなキョウヤを見降ろしながら――追い打ちをかけるようにして……。
「ところで蜥蜴の青年。貴様は兵士の秘器を壊したのじゃろ?」
「………あぁ?」
グゥドゥレィはキョウヤに向かって聞いた。それを聞いたキョウヤは、首を傾げながら眉間にしわを寄せてそれがどうしたのかと言う顔をする。内心そうだと肯定しながら……。
その言葉を聞いたグゥドゥレィは、にっとさらに笑みを濃く刻みながらこう言った。
「そうかそうか。それはなんとも惨いことをしたのぉ。人にはあんなことを言っておいて、自分でもあんな外道のようなことをした。結局どっちもどっちじゃろ? のぉ――人殺し」
「? ――っ!」
その意味深の言葉を聞いて、キョウヤは一瞬何を言っているんだという顔をしたが、すぐに顔を驚愕に染めて、その倒れている兵士達の――鎧を凝視して……、愕然として呆けてしまった。
それを見ていたグゥドゥレィは、「っほほ」と笑いながら、その機械の足の膝皿をカパリと開ける。すると、開いたそこからジャキリと出る太くて鋭い槍。それが両足の膝から出て、そのまま呆けているキョウヤに狙いを定めて、地面に突き刺していたその尻尾を、素早く引き抜いて――落ちていく。
膝から出てきたその槍を――キョウヤを串刺しにするように向けて!
「っ! キョウヤ避けろってっ!」
アキがすぐさまその異変に気付いて、持っていた『ホークス』を構えながら連射を繰り出す。
ダダダダダダダダダダダダダダダッッ!
と、銃弾が駐屯医療所に響き渡る。
そしていくつもの銃弾は、キョウヤを串刺しにしようとしたグゥドゥレィの槍に向けられて、銃弾は直線状に飛んでいく。
アキ自身、その話を聞きながら、キョウヤアなぜ動きを止めてしまったのかが、なんとなく理解していた。
グゥドゥレィは、
つまりその
可能性の話だが、それならば彼らが今まで行ってきたことは――帝国と同じようなことをしているということを指している。つまり――
アキ達は――魂が入っているそれを壊した。殺したということを、グゥドゥレィは言ったのだ。
開発者が言うのだ。それは真実だろう。
が――アキはその過程を切り捨てた。そして即座に撃った。グゥドゥレィの膝から出ている槍に向かって――銃弾が槍の刃に当たった瞬間、グゥドゥレィ「んん?」と首を傾げながら、衝撃を感じた槍に目を向ける。
それは横から来たので、ほんの僅かだが横にずれて落ちていく感覚を感じた。
キョウヤから逸れて、そのまま地面に突き刺さろうとしている。
それを見たアキは内心よしっ。と思いながらシェーラに向かって――
「シェーラ! 後は頼む!」と叫ぶ。それを聞いたシェーラは呆れながら溜息を吐いて、そのままキョウヤに向かって駆け出しながら「わかった」と、投げやり交じりに言う。
シェーラは茫然としてその兵士達を見ながら後悔の表情を浮かべている。何を考えているのかはわからないが、それでもシェーラはすぐに手を伸ばして――
「キョウヤ! 早くしな」と言いかけた瞬間だった。
グゥドゥレィは攻撃が外れたにも関わらず、そのまま落ちていこうとしているにも関わらず、口元は前と変わらずの笑みだったのだ。
余裕のそれであったのだ。
アキはそれを見て、何がおかしいのかと思いながら見た瞬間――視界の端に入った銀色の長い何か捉えた瞬間、すぐに自分も駆け出して――
「二人と」と言ったが、もう遅かった。
アキの声を聞いた二人だったが、グゥドゥレィはその銀色のフォルムの尻尾を使って、蛇の様に地面すれすれにしなっていきながら、三人に向かってその鉄でできたそれを向ける。
鞭の様に――蛇のスイングの様に、自分が回りながらその尻尾の攻撃を繰り出す!
「『
ぐわりと来たその鉄のスィング。それを見た三人ははっと息を呑んで、避けようとしたが、時すでに遅し。
その鉄の尻尾は三人の胴体に向けて、ばぎゃりと三人に向かって来て、彼らの肋骨を何本が折った。
ぽきぽきと言う音が、体の内部から聞こえ――アキに至っては口から吐血してしまう。
そのまま三人は、あまりの衝撃に耐えきれず、鉄の尻尾のスィングを受けて、流れるようにその尻尾にぶつかった状態で回ってしまう。
ぐるんぐるんっと二回転した後で、グゥドゥレィはその尻尾の横の薙ぎをやめて、三人をひとまとめにしながらぐりんっと締め付けるようにして拘束すると、その三人を――
「――ほぉおおいっっ!」
ボールでも投げるかのように、投擲した。
投擲と同時に、近くにあった駐屯医療所のテントに向かって飛んでいき、そして……。
――バガァアアアアンッッ!
大きな音と破壊音を立てて、三人はそのテントに突っ込んでしまった。
「っ!? アキくんっ! キョウヤくんっ! シェーラちゃんっ!」
ボルドはそんな三人の姿を見て、その破壊音の惨状を見た後、彼は驚いて声を上げてしまう。しかし返事はない。
聞こえてきた音は――ガラガラと落ちる何かの音と、テントを支えていた鉄の棒が倒れる音だけ。
それを聞いたボルドは、最悪のことを想像してしまい、すぐに首を横に振る。
きっと大丈夫。大丈夫。
そう自分に言い聞かせながら、すぐに自分の敵でもあるプレイヤーの四人を見据えて手をかざす。
今はこの四人を倒すまでは――どこにも行けない、助けに行けない。そう思いながら自分の戦いに集中するボルドだった。
誰もが相手の戦いに参戦するほど――余裕なものなどいなかった。
それは相手も同じで、参戦などは頭の片隅にもおいていない。ゆえにここで犠牲者が出たとしても、その人の責任なのだ。誰かが助けに来なかったなんて、そんなの言い訳でもある。
ボルドはそんなことを思いながら、目の前の敵に再度集中する。
――三人とも、どうか無事でいてね……っ! そう心で願いながら……。
グゥドゥレィはうねりと鉄の尻尾をゆらゆらと動かし、その尻尾の性能を見て『うんうんっ』と頷きながら、
◆ ◆
そんなグゥドゥレィの余裕をよそに、半壊してばらばらと崩れ落ちてしまったテント内では――
「いって……っ!」
「………………っそ」
「しっかりしなさいよあんた達。ほら――マナ・エリクシル――『
三人は――無事だった。
かすり傷ではないが、かなりのHPが削がれてしまった。
今まではハンナの回復のスキルがあったが故、バングルについてあるHPの残量など気にはしなかった。
しかし三人はここに来て始めてしっかりと自分のHPを見て、そのHPが半分を切っていることに気付いて、鈍痛が響く体を起こしながら最初の言葉を言い放った。
シェーラはそんなアキとキョウヤの情けない顔を見ながら、ヘルナイトから受け取っていた二つの瘴輝石のうち一つを使い、自分と二人の傷とHPを回復させる。
テント内に出てきた透けて見える光った音符。そして琴の音色。何かを演奏しているかのような音。
べん、べべん。と聞こえるその音は彼らの傷に呼応するように、どんどん傷が癒えてなくなっていく。そしてバングルの赤い帯がどんどん上がっていく。
それを見ていたアキは、ほっと胸を撫で下ろしながら、ハンナと言う存在。そしてメディックの存在にありがたさを感じながらキョウヤを見て――
「キョウヤ……。どうしたんだ?」と聞いたが……。
キョウヤは無言のまま自分の足元を見て地面に腰を下ろしているだけだった。アキは立ち上がって、シェーラは腕を組みながら溜息を吐きながら……、キョウヤを見降ろしてこう言う。
「いつものあなたなら――アキの暴走を止めるという重大な役割を担っているのに、どうしたのよ……。さっきのあんたは、あんたらしくなかったわ」
「おいシェーラ。それは一体どういうことだ?」
「マドゥードナの時は慣れ親しんでいなかったからわからなかったけど、あの時のあなたと同じだったわよ。『八神の御魂』の件でもあなたは――なんだか感情に身を任せていたし……」
「聞いている? 今この状況だけど聞いている?」
アキの言葉を無視しながら (意図的に) 話をしているシェーラ。
それを聞いていたキョウヤは思いつめているような目つきで項垂れ、溜息を長く吐きながら――覇気のない音色で彼はこう言った。
「…………、あのじじぃの言葉に、罪悪感を抱いた。オレが、人殺しって」
「はぁ?」
その言葉にシェーラは首を傾げながら何を言っているんだという顔をして、彼女は続けてキョウヤに向かって――
「初対面で何を言っているのかさっぱりだわ。キョウヤの過去を知っているのなら」
「
「だから……」
と言った瞬間、シェーラははっと息を呑んで、グゥドゥレィが言いたかったこと、そしてキョウヤが固まってしまったことが合点して、そして納得して、言葉をせき止める。申し訳なさそうな顔をして、彼女は言葉を止めた。
アキはその会話を聞いてて、腰に手を当てながらアキはキョウヤに聞いた。
「だからと言って、あのじじぃが本当のことを言っているのか定かじゃない。むしろ嘘って可能性もある。あれだけの兵士に発注している。それはもしかしたら、量産型のそれで、あの時の御魂の様に、魂が宿っているわけでは」
「………でもよ。やっぱり、オレはどうしても許せねぇ……っ!」
キョウヤはアキの言葉を遮って、彼は顔に手を当てながら、顔を隠すようにして、気怠く、そして後悔しているような音色で、彼は小さい声でぶつぶつと呟きながらこう言った。
「自分のために、利益のために、兵力を上げるためだけに、もっと生きれた奴を片っ端から殺して、その一部を使って戦っている帝国は、許せねぇ……。でも、それ以上に、もしかしたら……、浄化すれば救えた魂を、なのも考えずにオレや、オレ達は壊してしまった。それってオレ達も同じようなことをしているってことじゃねえか……。オレは――無下にその人達の魂を、壊したってことになる。殺したって」
「それは違う」
はっきりとそう言ったのは――シェーラだった。
シェーラの言葉を聞いたキョウヤはそっと顔を上げながらシェーラを見上げて、驚いた顔をしていたが言葉は発しようとしない。そんな彼を見降ろしながら、シェーラは凛々しくこう言った。
「あのじじぃはああ見えて食えない。そしてその言葉が正しいなら、
考えればわかることでしょ? シェーラは言う。そして更にこう言った。
「魔女の数を考えても、きっとそんなに魔女狩りなんてできない。更に言うと――壊されたのに動揺すらしなかった。怒りなんて見えなかった。それにはきっと――タネがある。動揺、怒りなんて覚えないような理由が」
シェーラの言葉にキョウヤははっとしながら立ち上がって、驚きながら「本当かっ!?」と聞くと、それを聞いていたアキとシェーラは頷く。そして……。
「「考えればわかることだ/でしょ?」」と、はっきりと小馬鹿にするように言った。それを聞いていたキョウヤは、内心苛立ちながら「お前等は人の上げ足ばっか取るなぁっっ!」と、突っ込み交じりの怒りを吐き捨てた。
しかしキョウヤは内心二人に感謝しながら、頭をがりっと掻いて――
「けど……、その通りだな」
と言い、手にしていた槍をぶんっと振るいながら、彼は顔を上げて、すっきりとは程遠いが、それでも吹っ切れたような顔をして、キョウヤは言う。そして思う。
「わりぃ。少しナーバスだった」
――確かに、よく考えればそうだな。周りをよく見ればわかる様なそれだった。まんまと騙されたオレもオレだ……。今はくよくよと考えてる暇はねぇ。今は――どうにかしてあのじじぃを何とかしねーと。
と言って、内心思いながら二人を見たキョウヤ。完全に吹っ切れたわけではない。過去にあったことを引きずっていることは自分でもよくわかっていた。
命の冒涜――それは殺されてしまった祖父と関係している。
悔しい反面、まだ生きれたはずの祖父が、何らかの理由で殺されてしまった。それが許せない反面、冒涜するようなその行為をキョウヤは許せなかった。
まだ生きれたはずなのに。そう思いながら彼は生きてきた。今まで――心に刻みながら生きてきたからこそ……、今回のことに関して相当こたえたのだ。
こたえたが、戦いにそんな感情などは命とりになってしまう。ゆえに今は心にしまう。グゥドゥレィに事の真実を聞くまでは――心を冷静にしよう。そうキョウヤは思った。
そんなキョウヤの言葉と表情を見て聞いた二人は頷いて、アキはさっそく行動に移した。後ろを向きながら彼は、崩れてしまったその道具に手を伸ばして、彼はこう言う。
「よし――さっそく」
「「?」」
アキの行動を見ていた二人は首を傾げ、アキがずいっと二人に差し出したものを見て、キョウヤとシェーラはぎょっとしながらそれを見ていた。
◆ ◆
「っほっほっほ……。最近付けたこの尻尾の攻撃名……、少々捻りがなかったかのぉ……」
と、未だに己の
半壊していたテントから――大きな音が鳴り響いたのだ。
それを聞いたグゥドゥレィは、首を傾げながらなんだと言わんばかりの顔をして、アキたちを吹き飛ばしたその方向を見た。するとそこから出てきたのは――
ばさりと――テントの布を纏った三人組。同身長の三人組が、体をすっぽりと覆うように、誰が誰なのかがわからないかのような姿でグゥドゥレィの前に姿を現したのだ。槍と、二本の剣と、ライフル銃と言う武器を持って姿を現した。
それを見ていた誰もが、「だれ?」と首を傾げるだろう。
しかしグゥドゥレィはそんな三人を見て、「っほっほっほっほっほ!」と、けらけらと笑いながら機械の右手でそんな彼らを指さしながら――グゥドゥレィは呆れながらけらけらと笑いだしてこう言った。
「そのテントの布を纏って『だぁれだ』とでも言いたいのか!? 甘いぞ小僧と小娘! そんなわかりやすい間違い探しはナンセンスだぞっっ!」
しかし――三人は答えない。
各々テントの布を使って、手でさえも覆うようにして武器を掴んでから……、ダッと駆け出した。
剣を持った人物はグゥドゥレィに向かって、ライフル銃を持った人物は後方に回りながら、槍を持った人物はそのまま離れていく。それを見ていたグゥドゥレィは、内心甘いと思いながら、目の前から来る剣を持った人物を見て――グゥドゥレィはこう思った。
――テントの布で体を覆い隠したのは……、誰が誰なのかということを予測させないため。つまるところの攪乱。心理の乱れを誘った行動。
剣の突きを繰り出そうとしたその人物を見て、グゥドゥレィは右手の機械の手でそれを防ぎながら、右に傾くように背中から倒れていく。その間もグゥドゥレィは思った。
――儂の動揺を曝け出そうとしての行動であろうが、そうはいかん。儂にはな……、年の功と言うものがあるんじゃ。そして何より――儂にはお前さん方が考えていることが手に取るようにわかる。
傾いたと同時に、防いでいたその右手の五指を、剣を持った人物に向けて、その機械の指を――ぎゅんっと鋭い刃物に変えて伸ばす。さながら細い針だ。
それを見た剣を持った人物は、驚きながら避けようとしたが、その避けは完璧ではなかった。体にこそダメージはないが、グゥドゥレィが攻撃したのは――布。
テントの布を巻き込むように、グゥドゥレィは剣を持った人物にそれを繰り出し、頭を覆っていた布にしっかりとひっかけた。そして布を裂く音が聞こえたと同時に現れたのは――
剣を持った――アキだった。
アキは顰めた顔をしたまま、そのまま避けたと同時にバランスを崩して、よろけて転んでしまう。
それを見たグゥドゥレィは、「っほっほっほっほっほ!」と笑いながら、勝ち誇ったような笑みをうかべてこう言った。高らかにこう言った。
「やはりな! お前達は布で顔を覆い隠し、本命攻撃でもある蜥蜴の青年から儂を遠ざけた! 身のこなしからして槍を持った奴はあの蜥蜴の青年であろう! そして銃を持っている輩はつたない! ゆえにあっちがあの小娘と言うことになる!」
浅はかな知恵だな。と言いながら、ふと視界に入った太陽の照りの遮りを見て、グゥドゥレィはバッと上を見上げる。
そこにいたのは――槍を持って突き刺そうとしている人物。少し遠くの崖から飛び出して落ちていくその人物。
グゥドゥレィはその人物をキョウヤと見て、にぃっと口元のしわを濃く刻みながら上を見上げてげらげらと笑いながら、背中から出ている節足の足をその槍を持った人物に向けてから、彼はこう言った。
「安直にしてわかりやすい行動と戦略だっ! それでは儂どころか、最弱のガルディガルにも勝てんっ! 帝国を敵に回したことを後悔し、あの世で懺悔をして眠れっ! そして……、儂の知識欲の糧となれぇえええええっっっ!」
ばしゅぅっとその節足の足を槍を持った人物に向けながらグゥドゥレィは叫ぶ。
その節足の足を見た槍を持った人物は驚いて体を揺すった。その隙を突いて――節足の尖った足が、槍を持った人物に向かって、テントの布と体を切り裂くように繰り出された!
ビリビリビリビリッッ! と、裂ける音が響いた。
裂ける音と共に、槍を持った人物の全身図が露になっていく。グゥドゥレィはそれを見上げながらにっと笑みを浮かべて、勝ったと思った。
と同時に――目を疑うように驚愕のそれに切り替える。
アキはそれを見て、『っは』っと小馬鹿にするように鼻で笑いながら……。
「いやいや、俺とシェーラだけが入れ替わったって》、《《誰が言ったのさ」と言い、上を見上げながら、アキは言った。当たり前の様に彼はこう言った。
「全員に決まってんだろ」
そう言って、槍を持って、体のいたるところに傷をつけながら落ちていくシェーラを見て、アキはグゥドゥレィに向かって言った。
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