PLAY48 THIRD WAR! ①

 クルーザァーがスナッティの監視役を召喚している時――すでに戦闘は始まっていた。


 それにいち早く気付いたのは――Zだった。


「っち」


 Zはがりがりと頭を掻き、迫って来るであろう大男――メウラヴダーと、筋肉女――ガルーラを見て、苛立った音色で舌打ちをした。


 そしてそのままばさりと白衣をはためかせながら、彼は前にいるプレイヤー四人に命令した。


「あの二人とゴーグルは俺がやるから、お前等はあの蜥蜴かドラゴンなのか見分けがつかないやつらをやれ」


 それを聞いて、迷彩服の女達はZの方を見てすぐに――


「「「「っは!」」」」と、軽く会釈をして駆け出す。


 迷彩服の女は背中に背負っていたであろう大きな銃――冷戦の時に作られた狙撃銃『PK機関銃』……、このゲームの世界の名前は『シャーベラー』と言う銃をその場で地面に這い蹲るようにして構え。


 フルフェイスマスクの男は仁王立ちになりながら、ごきりと指を鳴らして威嚇する様に立ち。


 白衣の女はにやにやと笑みを崩さずに、長い袖の中からずるりと黒い何かを出して、その黒い何かを鋭利な刃物に変える。


 さながら蟷螂かまきりの様な構え。


 最後の包帯男は刀を抜刀し、怨恨の眼差しを迫りくるカルバノグに向ける。


 カルバノグのダディエル、ガザドラ、リンドー、そして後ろで待機しているボルドは、そのままその四人に向けて武器を構える。


 ダディエルは口に含んだ針を――


 ガザドラは背に背負っていた武器を――


 リンドーは手に持っていた安物のナイフと己の手を――


 ボルドは己のスキルを使うように、ハンナ同様手をかざして――相対する。


 彼は気怠そうに欠伸を掻きながら……すぐさまベルトと一緒に錬成していた己の武器を起動させる。


 かちりというボタンの音と共に、『ガコッ』と言う音が聞こえ、すぐにそのベルトのところから細い灰色の棒が節足のように出てきたかと思えば、すぐさま機械音と共に――剛腕の機械の拳が形成され、その掌の丸い空洞からから蒸気を噴出させる。


 ぶしゅうっと言う音と共に、がききっと言う機械音が聞こえ、Zはその武器を出しながら、欠伸を欠いてその二人を見た。


「……まぁ。ってことで」


 相手になるよ。


 そう言った瞬間――メウラヴダーとガルーラは、自分が持っていた武器をZに向けて……、メウラヴダーは二本の剣による突きを。ガルーラは大きく振り被った大槌のスイングを繰り出す!


「『ツインスマッシュ』ッ!」

「『タイタンクリフ』ッ!」


 互いのその武器のスキルを叫びながら、二人はそのままZに向けて各々の攻撃を繰り出す。


 その攻撃を見たZは――


「くぁ」と大きな口を開けて欠伸をした。


 刹那――



 ――ガァァンッッ!



「「っ!?」」


 その大きな機械の手が、彼を二人の攻撃から守った。


 メウラヴダーの二本の剣を、機械の指と指の間に挟めて止め、ガルーラの大槌をその掌で受け止め……、互いの攻撃をいとも簡単に受け止めてしまったのだ。


 相殺ならいい話だが、これではただの防御である。


 簡単に止められてしまったことにより、二人は顔を苦痛に歪ませながら内心舌打ちをする。そんな二人を見たZは、溜息を吐きながら二人を見てこう言う。


 わかるだろう? と、呆れたような顔をして――


「大体さぁ――始めたばかりのレベル50が、レベル85に勝てるとか思ってんの? RPGとかレベル上げの世界でそう言う強い奴に挑む輩を――」


 ――大馬鹿って言うんだけど。と言ったZは、機械の手で押さえていたその武器をぐっと掴んで、ぐぁっと持ち上げる。


 その武器の持ち主でもあるガルーラ、メウラヴダーともども持ち上げて――


「っ!」

「うぉ……っ!」


 驚きの顔をして、宙に浮かんでいるような感覚を感じる二人。バタバタと足をせかしなく動かして、何とかその機械に向けて蹴りを入れようとする。


 武器を手放す。その選択もあったが、ここで武器を手放すことは――命取りに等しい行為でもあった。


 その命取りをするほど二人は愚かではない。ダンならば速攻する行為でもあったが……。そんな無謀な行為を、――


 そんな無様に動く二人を見て、Zは呆れながら頭を掻き――


「呆れるなぁ」と、言葉でも行動でもその呆れの表現を見せながら、彼はすっと目を細めて言った。


「そこまで自棄になるほど俺のこと嫌いかよ。それってウザい。ウザすぎてむかつくくらいのウザさ。ウザいがありすぎて頭がこんがらがりそう。不純物排出したい気分だ」


 がりがり、がりがりと――頭を掻きながら苛立つような音色でZは言う。


 Zはそんな二人を見上げたまま、苛立つ顔で彼らを睨み上げ、舌打ちを一回吐き捨てる。


 吐き捨てたと同時に――そんな彼の感情と連動されているのか……、機械の腕から電子音が聞こえ、『ガガガッ』と言う音を立てながら、二人の武器を持ったまま……、二人を地面に叩きつけるように振り上げる。


「「っ!」」


 それを見た二人は、即座に来た風圧を感じて、その背中と後頭部に感じる風の冷たさを感じながら――その地面の衝撃に耐えようとぐっと目を閉じる。


 手放しても無駄なくらい、手を離す隙などないような勢いのある振り下ろしに堪えるように――二人は目を閉じる。


 Zはそんな二人を見て、にっと――初めての笑みを浮かべた。


 狂気の笑みを――


 しかし……。


術式召喚魔法サモナーバインド・スペル――『召喚:ゴーレム』ッ!」


 背後から声が聞こえた。その声は三人がよく知っている声で、その声と共に、ガルーラ、メウラヴダーの背後から眩い光が地面から吹き上がる。それと同時に、その光の中からずずずっと出てくる大きな巨体の――岩のモンスター。


 がたいこそ堅そうではあるが、ところどころに出ている緑色の苔。その姿は従来のゲームに出てくるゴーレムと類似している。いいや、類似と言うよりも本物なのだが。


 それを見たZは、おっと驚きながらそれを見て、すぐに攻撃に転換しようと――


 機械の手に持っていた二人の武器を――そのまま振り上げて、投擲した。


 ダーツを投擲する様に、彼は二人をダーツに見立てて、投擲したのだ。


「っ! どおおおっっ!」

「どわああああっっ!」


 二人はそのまま投げ飛ばされて、空中でぐるんぐるんっと回ってしまう。


 それを見ていたクルーザァーは、ゴーレムに向けて手をかざしたまま……。


「受け止めろ!」と命令する。それに呼応する様に、ゴーレムは「ごぉ」と声を出しながら頷いて、どすんっと一歩前に出てから、ゴーレムはばっと両手を広げて、受け止める態勢になる。クルーザァーの命令通り、ゴーレムは吹き飛んでくる二人をその大きく、固い手でがしりと受け止めた。


 人間の体ではないので、多少の衝撃はあった。ゆえにガルーラは「ぐえっ!」と言う声を出してしまった。


 メウラヴダーはそのまま受け止められた体制で、ゴーレムの背後にいるクルーザァーを見ながら「すまないな!」と、礼を述べる。


 それを聞いたクルーザァーは呆れながら二人に向かって――


「武器を手放せばいい話だったろ。固執するな。不合理だ」と、冷たく言い放った。


 それを聞いたメウラヴダーは、うっと唸って、冷静に考えればそうだったと思いながら、小さい声で「すまない」と、申し訳なさそうにして頭を垂らす。


 そんな話を聞いていたガルーラは、ゴーレムから降りてクルーザァーを見ながら慌てた様子でクルーザァーに向かってこう言う。


「んな言葉を仲間にするのかっ!? 少しは労っても」

「お前の先走りの行動のせいでこうなったんだ。反省しろ」

「………おう」


 しかし呆気なく論破されてしまい、項垂れながら謝ったガルーラ。それを見たクルーザァーは呆れながら再度ため息を吐いて、そのままじろりとZを睨む。


 Zはそんなクルーザァーを見て、首を傾げながら凝視する。内心――どこかで見たことがある様な……、そんな目でZはクルーザァーを見ると、クルーザァーはZを見たまま――


」と、いかにも挑発的なその言葉を吐く。


 それを聞いたZは、ぴくりと眉を顰めてからクルーザァーを見ると、彼は何かを思い出したかのよう見、指をさしながら「あ」と呆けた声を出す。


 クルーザァーはそんな彼の顔を見て、さらなる苛立ちを覚えた。


 その顔は――まさしく今思い出したかのような顔。そしてその顔と思考を察するに、今まで忘れていたということになる。そう……。


 


 という事実を知ってしまったクルーザァーは頭の中で何かが切れるのを感じたと同時に、その感情に流れるように――彼はゴーレムに向かって命令した。


「ゴーレムッ! やれぇっ!」


 その言葉に呼応するように――ゴーレムは大きな雄叫びを上げながらZに向かって突っ込んでいく。それを見たZはにっと、口元にゆるく――弧を描いた。


 その笑みは――余裕のそれと、面白い。という感情が混ざったそれでもあった。



 ◆     ◆



 どぉんっ! と、Zとワーベンドの三人の戦いを見ていた帝国の幹部――『アイアン・ミート』の最古参でもあるグゥドゥレィは、その光景を見ながら、そして前で行われているカルバノグと協定関係である『BLACK COMPANY』の四人を見ながら、彼は思った。


 ――ほっほっほ。


 ――どうやら乱戦乱戦。しかも魔力を有するものと魔力を有するものの戦い。


 ――儂らの国では極端に、有るのか。ないのかと言う存在で決まってしまっている。しかし、いやしかしだ。儂の体にあるあるものと、相手方にあるあるもの……。


 ――どちらが有効かな……?


 そう思いながらちらりと真正面を見たグゥドゥレィは、即座にそのまま、後ろに向かって飛び退く。


 刹那――


「――っふ!」


 キョウヤの横に薙ぐような槍の攻撃が繰り出される。


 薙いだ場所はグゥドゥレィの胴体があった場所。


 つまりはそのまま胴体ごと真っ二つにするような攻撃だったが、グゥドゥレィはそのままひょいっと躱すように飛んで「っほっほっほっほっほっほ」とからからと笑いながら跳び退く。


 ウサギの様に飛び退いて、そのまま自分の目の前にいるキョウヤとシェーラ、そしてアキを見据える。


 彼ら三人は武器を持ったまま初めて出会うが、それでもバトラヴィア帝国の兵士である自分を見つめながら、警戒している様子で見ていた。


 ……周りにいたであろう兵士達の戦意を完全に削いで。生かしたまま削いで――だ。


 ざしゃっと、グゥドゥレィは地面に降り立った後、その光景を見回しながら彼は思う。


 ――まさか……、兵士たちが着ている鎧の核を壊した……?


 ――しかも的確にその場所を……。


 グゥドゥレィは辺りを見回しながら、知り合いであろうその人物たちを一瞥して見る。


 そしてとある人物が目に入った瞬間、ああ、そうか。と、グゥドゥレィは納得してにっと頬の筋肉を吊り上げる。


 彼が視た場所にいたのは――蛇に怯えているスナッティだった。


 彼女も一応バロックワーズの一員。つまりは協定関係の一人で、帝国の秘器アーツのことについてかじりついた程度の知識を備えている。そして彼女はその素性を隠しながらクルーザァー達と一緒にいたのだ。


 自分が知っている情報を教えないわけにはいかない。


 それを考えながらグゥドゥレィは、キョウヤたちを見た。


 そんなグゥドゥレィを見ていたアキは、ライフル銃を構えながらこんなことを思っていた。


 ――あの男は一体どんな身体能力をしてんだ? 老人とは思えない素早さだった。


 ――と言うかあんなに跳ぶって、キョウヤとシェーラくらいの身体能力だ。


 ――……一体、どんな武器を持っているんだ……?


 そう思いながらアキはちらりと――Zを見る。Zの腰回りから出ているその機械の拳を見たアキは、近くにいたキョウヤに向かって、目の前にいるグゥドゥレィから目を離さないでこう聞いた。


「キョウヤ……、あれ」

「ああ、もう走って見た時からわかっていた。あれ――使

「………多分ね」


 ここで捕捉しておこう。



 オーダーウェポンとは。



 その名の通り――その武器はMCOの時、アルケミストにしか使えない特殊な武器として使われていた。魔導士の上級所属でありながら、使う武器は秘器のようなそれではある。トンカチであったり、グローブであったり、挙句の果てにはリュックのようなそれであったりである。しかしその武器はアルケミストになくてはならないものでもあった。


 そのオーダーウェポンはアルケミストが使う『術式錬成魔法アルケミスト・クリエイティスペル』を使うにあたって必要不可欠なそれでもある。


 なお――これはMCOを知っている人なら知っていることで、今まで明かさなかったのは――言い訳がましいが、アルケミストの所属の人物が登場しなかったからである。


 閑話休題。


 それを見ていたシェーラは、二人の会話を聞きながらすっと目を細めてこう言った。


「……あんな形のそれがあるだなんて知らなかったわ。と言うかあれ――完全なる秘器アーツね」

「……だろうね」

「オレも思ったよ」


 と言う会話をしながら、ぐっと己が握っている武器に力を入れながら三人は目の前にいるグゥドゥレィを見据える。


 見据えるなか――シェーラはこう言葉を続けた。


「……今は回復チートのハンナがいない。そしてあの武神がいないけど、こんなこと――前にもあったわよね?」

「ああ」


 シェーラの言葉に、キョウヤは頷いて続けてこう言う。


「聖霊の緒では、PVPだったけど、今回は違う」


 それを聞いて、アキは頷きながら「そうだね」と言って、じゃきりとライフル銃の銃口をグゥドゥレィに向けながら彼はこう言う。狙いを定めながらこう言う。


「今回は――かなり厄介だ」

「………ほほう」


 その言葉を聞いていたグゥドゥレィは、顎を人撫でしてから、にやりと緩く弧を描いてから――彼は三人を見て、唐突にこんなことを聞いてきた。


「それは儂のことをさしているのか? 謙遜は行けんぞ謙遜は。お前さんたち的確に秘器アーツの核を壊しているではないか。並みの兵士ではそんなことはできん。狙撃の森……、いやさ、闇の森人の狙撃力。蜥蜴の血を引いた人間と魔人の小娘の的確にして生存させるようなその攻撃――敵ながらあっぱれじゃな。しかし貴様ら……、


「「「?」」」


 よくもまぁ、躊躇いもなく。


 その言葉を聞いた三人は疑念の表情を浮かべながら首を傾げる。


 いったい何が躊躇いもなくなのだろう。そうアキは思っていると、そんなアキ達の表情を見ながらグゥドゥレィはおや? と、彼も首を傾げてこんな言葉を口にした。


「君達はあの箱の中にあるもの――ちゃんと確認したかな?」

「………見てねえよ。気味悪くて見れねえって」


 キョウヤの『うっ』と唸るような顰めた顔を見て、グゥドゥレィは溜息を吐きながら呆れて――


「やれやれ……。異国の者はきれいなものしか見ておらんのか? たまには汚いものでも見ないと後先大変だぞ?」と、まるで説教の様な言い草で言う。それを聞いていたシェーラは、むっとした顔をしてから――「あんた達の様に、汚いものばかりを見ていてもだめだと思うけど……?」と、小馬鹿にするように言うシェーラ。


 するとそれを聞いて、グゥドゥレィはそっと黒いマントの中から手をのぞかせて、そのまま『キリキリ』と言う音を出し、三人がその手を見て驚きを隠せないで見ているそれを嘲笑い……、彼はその機械の手で自分を指さしながら、グゥドゥレィは言う。


「君達は知っているかい? 儂が作った秘器アーツについて――どこまで知っているかね? どんな工程で、どんな材料で作られたのか、知りたくないかね……?」


 正直知りたくないのが本音だ。


 しかし知りたいという気持ちも相まって、その気持ちが反発しあっているのも事実。


 知りたくないのは言わずもがな。反対に知りたいという気持ちは純粋なそれであった。


 それはバトラヴィア帝国で作られた武器である秘器アーツのルーツを知りたい。戦いの最中だがもしかしたらという可能性を考えて、彼等はその興味に負けかけていた。


 ハンナがいれば――絶対に聞こうとしないだろう。


 ヘルナイトがいれば――それを聞く前にグゥドゥレィを無力化してしまうだろう。


 だが――そんな三人の返答を待たずに、グゥドゥレィは誇らしげに胸を張りながらこう言った。


「儂が作った武器――秘器アーツは、魔法が使えない人間族や他種族が魔力が使えるようにするために作られた……魔導具にあって魔導具にあらず! 魔法など使わずとも、機械の力でこの世を支配する様に作られた、それが秘器アーツッ! 人類にとって唯一の武器とはまさにこのことっ!」


 ――返答待たずに話しだしやがったっ! 言いたかったのかよ……。


 キョウヤはそんな興奮気味に鼻をふかしながら説明を勝手に始めたグゥドゥレィに向かって、内心驚きながら突っ込みを入れたが、生き生きとしながらしゃべっている彼を見て、キョウヤは内心納得して頷いてしまう。


 それを見ていたシェーラは、腕を組みながら話を真剣に聞いている。アキも同様だ。聞きたい半分、聞きたくない半分の彼らだったが、勝手に話してくれたのでそれは好都合だ。


 そう思って聞いていると――グゥドゥレィは「さて――」と言葉を繋げながら、続けてこう言った。


「まず最初にその秘器アーツ誕生のことについて語ろう。大抵の武器強化では強化こそできるが武器の耐久度がそれに追いつけず、壊れてしまうのがセオリーでもあった時代じゃ。帝国は困窮状態が続いていた時があり、戦力こそ乏しいようなものじゃった。そこで帝王は無理難題なことを言いだしたんじゃ。『どの軍でも勝てるような武器を作れ』とな。これが秘器アーツ誕生の原点。オリジンじゃった。最初こそだめと判断した儂じゃったが、簡単に考えればただの武器ではだめだからこそ、魔導具などと言うハイカラなものを使っていること自体がおかしいんじゃ。魔女だけが力を有していること自体がおかしいのじゃ。人間でも力くらいは欲しい。魔法くらいは欲しい。それは人間欲深いもの。儂も昔はそうじゃったからのぉ……。そこで儂は、力を簡単に入手する最短の方法を思いついた。それこそが――秘器アーツじゃ。武器と機械を融合させる。簡単かつシンプルな発明っ! 儂の知識欲と達成感が疼いた。びくびくと体が痙攣したわい……っ!」


 ――……なんか、ドキュメンタリーのような語りをしだした。そしてキモイ。


 腕を組みながら、その時の苦悩や苦労を思い出しながら頷き、最後の語りのところでは、体をびくつかせながら高揚とした笑みで点を見上げて言うグゥドゥレィ。


 それを見ていたシェーラは内心場違いながらそう思ってしまった。


 しかしグゥドゥレィは、自分の世界に入ってしまったのか彼らの返答や表情を見ないで、聞かないで話を続ける。


 もうすでに弁論のような、演説のようなそんな雰囲気である。三人はそれを聞いている観客である……。戦闘中だが、相手に戦う意思がないような雰囲気だ。仕方がない。


 ハンナがいれば――その感情がどうなっているのかがわかるのだが……、ここにはハンナもヘルナイトもいないのだ。三人は相手の言葉に耳を傾けながら、警戒を解くことをしないで、武器を構えたまま話を聞く。


 グゥドゥレィは言った。


「――じゃが、その痙攣もすぐに沈下してしまった。儂は確かに秘器アーツを作った。製造まではよかった。そこまではよかったのじゃが、ここで最大の難所が儂の目の前に立ち塞がった……。それは――じゃ」

「……動力源……? ガソリンとか、電気とか……?」


 アキの言葉を聞いたグゥドゥレィは、『キリリリ』と言う機械の手をそっと上げながら、気難しい顔をして「そうじゃ」と答える。そして続けてこう言った。アキ達を見ながらこう言った。


「動力とはすなわち人間でいうところの血じゃ。出血多量になれば人間は死ぬ。血がなければ生きれないように、機械は血となる動力源――エネルギーが必要じゃった。だが生憎……、帝国にある電力は、帝国のためにあるが故、そうそう使えない。と言うか使うことを禁止にしておる。ガソリンと言うものは知らんが……、それも無駄じゃろうな。帝王は武器に火や水を付加させたいと言っておったからのぉ……。秘器アーツに属性の付加させることも要点において開発を進めていた。そこで出てきたのが瘴輝石と言う手。しかし無駄じゃった。瘴輝石と秘器アーツの相性は最悪。それを使った秘器アーツは突然変異を起こして自爆した。否――


「自ら………」


 シェーラはそれを聞きながら、ベガが言っていたことを思い出して内心……。


 ――きっと、石の魂が拒絶したんだ……。


 ――人間のための命を賭して力になりたい気持ちはあっても、殺人には手を貸したくない。誰もがそう思うわよね……。


 と、自分だったらと思いながら、内心納得してそっと目を閉じる。


 それを見ていたキョウヤもシェーラと同じことを考えて、グゥドゥレィの話を聞く。


「そこで――儂は使のじゃ。もしかしたらと思っての。そしたらどんぴしゃ。秘器アーツが動いたのじゃ! こうして帝国最大の武器にして人間族、魔力がない者達にとっての唯一の希望――秘密起動兵器ひみつきどうへいき……秘器アーツが誕生したのじゃっ!」


「………?」


 使った。


 長々とした説明を聞いていた三人だったが、突然ひゅっと――血の気が引いた。


 


 というよりも――デジャヴを感じたのだ。


 その言葉を聞いたアキは、ぴくりと眉を吊り上げて、彼はグゥドゥレィに向けてこう言葉を投げた。


「……使ったって……、意味が分からないんだけど……? どういうこと? それは」


 と聞くと、それを聞いていたグゥドゥレィは、首を傾げながらきょとんっとした顔をして、さも平然とした顔をして――とんでもない言葉を口にした。



「――言った通りじゃて。儂は秘器アーツの動力源を魔女の媒体――すなわち使。といったのじゃが? あ、あとは魔女の原点とも云われておる魔祖の扱いに長けた使



 唐突にして衝撃的な……、何かと懐かしいような感覚に陥った三人。


 魔女の体の一部。


 血を動力源にした秘器アーツのルーツを知った三人だったが、その話の中で、その動力源となったそのことについてがあった。


 ――あれ……? アキは思い出そうとする。


 ――なんだか同じようなことを聞いたような……。シェーラも思い出そうとする。


 そしてキョウヤは……、ぎりっと歯を食いしばりながら――彼はグゥドゥレィに向かって、低い音色で……。


「お前……、まさか。それって」と言い、グゥドゥレィはそれを聞いて再度首を傾げながらキョウヤを見た。


 キョウヤは、ぎゅりっと槍を握る力を強めて――彼は激昂の表情になりながら、吹き上がる怒りを爆発させるようにして彼に向かってこう怒鳴る。


 アクアロイアの――を思い浮かべながら……。




「その動力源の作り方って……、まさか……っ! あの使じゃねえだろうなぁっっっ!?」




 その声の荒げを聞いた二人は息を呑み、思い出し、そしてグゥドゥレィを睨みつけながら臨戦体制に入る。


 それを聞いていたグゥドゥレィは――一瞬口を開けたまま固まったが……、すぐにそれも解除され、彼は……。



「おお。あの王め……。儂の最高傑作の工程を盗みおったか」



 と、平然とした顔で、驚きながら……、三人にとって最悪の事実を平然と話し、更に――


「まぁしかし――その王も捕まった。そして王都の連中もそれを破棄したからそれでいいじゃろう。それに御魂など言うと物を作っても、秘器アーツの様に最大の力を発揮させるのにはとど遠いじゃろうて。秘器アーツの力を最大まで上げるうってつけの動力源は鬼の角か魔女の血。肉では駄目じゃった。をして血を採取しながら、それを秘器アーツの動力源として使う。忌々しい魔女を抹殺でき、そして国の兵力を増大させる。一石二鳥とはこのことじゃ。このままデータを取っていけば……。最終フェーズに入ることも」


 狂喜に笑みを浮かべながら言うグゥドゥレィを見て……、煮えくり返る怒りをドロドロと感じながらキョウヤはぶちりと下唇を噛みしめ、たらりと口から出血を零す。


 頬と顎を伝うそれを感じながらキョウヤは槍を構え、突く体制になりながら『けらり、けらり』と笑うグゥドゥレィに向けて……、二人の静止を聞かずにキョウヤは。



 ――ダッッッ!!



 と、駆け出した!

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