PLAY47 ティズとクルーザァー ②
「え? 何あれ……」
「っていうか……。あれ……、何が起きているんすか……?」
「どうなってんすか……?」
その異常にして常軌を逸したその光景を見た紅、リンドー、スナッティ。三人はそれを見て茫然としながらそれを見て言葉を失いかけていた。
しかしそうなっているのは三人だけではない。ギンロやダディエル。キョウヤやシェーラ。そしてクルーザァーがそれを見て、言葉を失いながらその光景を陰から見ることしかできなかった。
ゴトに至っては子供達の姿を見て、震える瞳孔と口でわなわなと震えながら彼は……。
「な、な、なんで……、あいつらがこんなところに……っ!? なんであんなことになっているんだ……っ? 何が一体どうなっていやがる……っ!」
なんで、なんで……。
そんな言葉を繰り返し、繰り返し呟きながらゴトはグラングランと左右に揺れる視界でその光景を見ていた……。
そんな姿を見て、キョウヤは何も言えないような複雑な心境と表情で、ゴトの肩を叩きながら「大丈夫かよ……?」と、そんな言葉しかかけれなかった。
影からだったのが不幸中の幸いだったのか……、まだブラウーンド達には気付かれていない。
クルーザァーはそれを見て、今まで思案していたそれを一気に叩き壊すと、その光景を凝視する。
この際――裏切者は後回しだ。今は黒い箱に入ってしまった子供達を見て、どうにかして助け出さないとと思いながら、打開策を思案しながら話を聞いていた。
「子供は親の遺伝子を受けやすい。ゆえに他種族と人間族の混血が多い。人間だとすぐに使い物にならなくなってしまうことでも、混血ならばそのような問題すぐに解決します」
「っほっほっほっほっほっほっほ。それは帝王もお喜びになる。子供は従順、すぐに兵士不足解消の火種になるだろう。っほっほっほっほっほ」
「お褒めにあつかり光栄です。そして背後にいる者達ですが……」
「その辺は仕方がない。だがそれでも使い物になるだろう。アクアロイアの一件があってからは、アクアロイアから仕入れる人数が極度に下がった。ゆえにお前達のような他国から連れてきたそいつ等は大いに役に立つ。奴隷や下民として対応しておこう」
「それはよかった。こちらも居住区の許容量が一気に下がって、許容限界になったのですよ。よかったよかった」
「こちらも感謝しているが……、っとぉ。これはこれは上物ぞろいで、おぉ? 魔力が溜まった鬼の角。保存状態もいい、即席の戦力としてでも使え、おぉ、おぉ? そしてこの朽ち果ててしまった魔女の媒体! しかも大量とは。角も媒体も帝国にとってすれば必要不可欠な戦力にして繁栄の鍵。そして儂の知識欲が更に増大して、おぉ。おぉ。脳味噌のしわが深く掘られて、儂の知識として、栄養として刻まれていますなぁ……っ! はてさて……、こうなれば角だけでも……。うんうんっ!」
っほっほっほっほっほ。と、くつくつと笑いながら言う老人。
それを聞いてブラウーンド達もくつくつ笑いながら、安堵の息を吐いていた。
安堵の息を吐いて、そしてブラウーンドと一人の老兵士は互いの顔を近付け合い、そしてこそこそと小さな声で耳打ちをしだす。
こそこそ、こそこそと何かを話し、そして終えた直後ブラウーンドは老兵士のことを見てにっこりと微笑みながら――
こくりと頷いた。
冒険者視点で見れば、異常な光景、悍ましい光景である。
そしてそれを見ていたギンロは、気が動転しているのか、紅を見ながらパクパクと口を動かして、その光景を指さしながら何かを言おうとしていたが、それでさえもできない状況だ。
紅もそれを見て、茫然として無言になりながら――ぴくぴくと顔を引きつらせていた。
ゴトはその言葉と光景を見て、今までグラグラしていた感情が一気に覚醒するかのように、とある一点を睨みつけながら、獣特有の歯ぎしりと唸りを見せ、彼はその光景をまるで魔獣のような目つきで睨みながら――こう小さく呟く。
怒りを抑えているような、そんな音色で……。
「なんだよ……。なんだよこりゃぁ……っ! どいつもこいつも頭がイカレていやがる……っ! あいつら……、何を考えているんだよ……っ!? ふざけやがって……っ!」
「よせっておっさんっ!」
「先生落ち着いてほしいわ。今無策に突っ込むことは褒められるべきことではない。今出てしまえば、帝国と戦う羽目になるわ」
怒りで我を忘れかけているゴトを押さえながら掴むキョウヤとシェーラ。それを受けながらゴトは『グルルルルルルルッッ!』と唸りながら――
「今まさに手が出せない状況に陥りそうなのに、指を咥えて見ていろってか……っ!? んなことできるわけねえだろうが……っ!」
「だったら尚更落ち着きなさいよ――あんた教師でしょ? 少しは冷静になって頭を使いなさい」
シェーラは鶴の一声をゴトにぶつける。
それを聞いたゴトは、うっと唸ってからシェーラを見つめる。シェーラはじっと、むすくれた顔でゴトを見上げながら睨んでいる。見上げているのに、見下ろされてるような感覚に陥る。
ゴトはそのままシェーラの言葉を汲み取るように、ふぅっと息を吐いてから彼は――
「……わかった。すまねえと思ったが、俺も急かしているんだ。急いであの人達を救おうぜ」と頭を垂らす。それを聞いていたシェーラは、ふんっと鼻を鳴らし、腰に手を当てながら当たり前の様に――
「――当然よ」と言葉でもそう返した。
それを見て、キョウヤはほっとしながらシェーラとゴトを見てから、すぐにボルド達に目を移して……、急がないとと思いながら、自分もこの状況の打破を思案した。聞きながら思案した。
ダディエルは口に針を放り込んで、すぐにでも射的する準備を整えている。
暗殺者らしい行動であるが、それを見たボルドは、慌てて彼を止めながらクルーザァーを見て……。
「ね、ねぇ……、これって、夢だよね……?」
と……、信じられない光景を見て、彼が下した結論は――現実逃避。
夢であってほしいという願いを込めて、ボルドはクルーザァーに向かって聞く。
しかしクルーザァーはその光景を……、その一点をただ見つめるだけで、何も言わない。
否――
無言の怒りを顔に出しながら――黙ってしまっているのだ。怒りながら思案しているのだ。
それを見たボルドは、うっと委縮するような声を上げて、彼はその取引が行われている光景を見ながら――
「……やっぱり……、受け入れないと、いけないのかな……? あの光景を」
「……だ?」
「え?」
と、ボルドやほかのみんなが、あまりに異常な光景を見て、思考がおかしくなりそうになったところで、クルーザァーの声が鮮明に響いたのだ。それを聞いた誰もが、クルーザァーを見て……、代表としてその言葉に対して聞き返したのは……。
「……どうしたのよ」シェーラだった。
シェーラの疑問に答えるように、クルーザァーは『ぎ、ぎ、ぎ、ぎ』と、錆付いてしまった人形の様に、ゆっくりと首を動かしながら、彼は周りにいる残りの人物達に向かって、こう言った。
否――聞いた。
「どうすれば……、あの子達を、助けられるんだ……っ!?」
誰もがそれを聞いて、クルーザァーのその慌てている不合理な表情を初めて見た誰もが、言葉を失った。そう言った経緯なのかはわからないが、クルーザァーは子供達をどうすれば助けられるのかを思案していたらしい、しかし先ほどの会話にできないという絶望が重なり……、彼は自暴自棄になりかけて、ボルド達に聞いてしまったのだ。
――ああ、無理だ。無理だ。という悲観的な己の思考回路と、できると囁いている己の虚勢。それが重なってしまい、ぐちゃぐちゃになって――
正常な思考が見出せなくなっていた。
――あいつ、どうしたんだ……? と、初めて見る光景に驚きを隠せないキョウヤ。
――あんなクルーザァーさん。初めてですね……。と、彼もクルーザァーのその光景を見て驚きを隠せないまま、笑みで顔を誤魔化そうとしているリンドー。
――あいつ突然こうなったけど……、マジで大丈夫かよ……。目ぇ、イッていやがる。と、ギンロはそれを見ながら心配そうにクルーザァーを見ていた。
そしてギンロは「あ」と、何かを思い出したかのような声を上げて、みんなに向かって……。
「そういや……、ガザっちの奴ど」
「皆の者っ!」
『っ!』
遠くからガザドラの大きな声が聞こえた。そしてそれを聞いていたシェーラとメウラヴダーは、口元に人差し指を添えて、しぃーっと声を出しながら、飾どらがいる背後を見た。
『シズカニシロ』と言う合図を出そうとしたのだが……、背後を見た瞬間、再度驚きで顔を顰める。
「ぜぇ! ぜぇ! はぁ! ふぅ!」
「ティティ……ッ! ティティッ!」
遠くから来たガザドラと、泣きそうな顔をしてガザドラに背負われているボロボロで、血まみれのティティ。ぶらんぶらんっとガザドラの背からずり落ちているティティの腕から滴り落ちる血液の量を見て、誰もが察するだろう。
ティティはまずい状況だと。
それを見たボルドは、一目散にガザドラに駆け寄って――慌てながらも冷静にこう言う。
「ガザドラ君っ! そのまま抱えてて、僕が『
「うむっ!」
「ねぇ……、ティティ……、っ! 大丈夫だよね……っ?」
「うん! 大丈夫だから心配しないで! さ」
と言いながら、ボルドはそっとティティの背中をさすって――
「よぉし……。『
唱えたと同時に、ふわりと、ティティの体を黄色い靄が包み込む。それを見て、ティズは泣きそうな顔をしながらティティの名を呼んでいる。その光景を見ながら、ボルドが茫然と立ち尽くしているみんなの心境を察して、ガザドラの名を呼んでこう聞いた。
「いったい何があったの?」
「それが――吾輩にもわからんのだ。実はティズ殿やティティ殿にもこのことを話そうと思って、彼らが向かって言ったところに足を急かしていたのだが、遊戯区のテントが半壊していてな……」
「は、半壊だぁっ!?」
それを聞いていたゴトは、ぎょっとした顔でガザドラを見ながらだっと駆け寄り、慌てた様子でこう聞く。
「テントが半壊ってどういうことだっ! 敵襲かっ!? 子供たちはどうなったんだ! 近くにもいたはずだ。そいつらは」
「待て待て待てっ! そんなに急かさないでくれっ。順を追って話すが故」
「お……、おう……」
ゴトはそれを聞いて、少しだけ申し訳なさそうにして顔を歪ませながらガザドラを見て「すまねぇ」と頭を下げる。それを見ていたガザドラは「いやいいさ。こんな時こそ焦る気持ちはよくわかる」と、あまり怒っている素振りなどないように言ってから、彼は続けてこう言う。
「――テントが半壊しているところを見た吾輩は、すぐに中に入って状況を確認した。が……」
「が? なんだ?」
メウラヴダーが首を傾げながら聞くと、ガザドラはちらりと――泣きそうな顔になっているティズを見ながら、再度みんなのほうを向いて――彼は、思い口を開いた。
「……、テントの中は戦闘があった形跡があり、その中央にティティ殿と、そのティティ殿を抱えていこうとしているティズ殿がいた」
それだけだ。と、ガザドラは言う。
ゴトはそれを聞いて、大きくちっと舌打ちをしながら、己の膝に向けて拳を叩きつけながら、自分の甘さに怒りを覚えるように、こう吐き捨てた。
「っそ! ってことは……、その戦闘に乗じて、あの野郎は子供たちを攫って、あんな惨いことを……っ!」
「? 攫う? 惨い? それは一体……」
ゴトの言葉を聞いて、ガザドラは頭に疑問符を浮かべながら、彼らの体で隠れてしまっているその光景を見ようとした時――
「う」
『!』
ガザドラの背中にいたティティが、もそりと動きながらそっと目を開ける。
それを見た誰もが、わっと安堵の息を吐くように声を上げる。ティズはほっと胸を撫で下ろしながらそんなティティを見て……。すぐに――
キッ! と、キョウヤ達――否、その場にいる全員に敵意を向けるような目つきで睨みつけたのだ。
『っ!?』
それを見た誰もがぎょっとしながら驚いてしまう。そして前にいたボルドとガザドラはそんな豹変したティズを見て、驚いた顔のまま――
「え? ちょ……、どうしたのティズ君……」ボルドはおどおどとしながら周りを見て、汗を飛ばしながら一体何がどうなっているのかと思いながらティズに向かって言う。
「? ??」
ガザドラは状況が呑み込めないまま、辺りを見回しながら首を傾げている。
しかしティズは、ざっとよろめきながら立ち上がって、そして手に持っていたダガーをしっかりと握りしめて、彼はだっと駆け出した!
それを見たボルドはぎょっとしながらティズに向かってこう叫んで制止をかける。
「ティズ君っ!? ちょっと! どうしたのっ!? 待って!」
しかし――ボルドの声は届いていないのか、ティズはそのまま駆け出して、ジャキリとダガーを握りしめながら、彼は憎々し気な音色で……。
「なんであんなことをしたんだ……っ!」と言って、彼はそのまま地面を強く蹴り、そのまま低く跳躍する様にキョウヤ達に向かって突っ込む。
それを見ていたボルドはぎょっとしながらその光景を見て、慌てて止めようとした。しかし……。
――きゅ。
「っ!?」
何かに捕まれたような感覚。
それを確認しようとしたボルドは、その掴んだ人物を見て――
――え? と思ってしまった。
その掴む行為は、静止。その静止をしたのは――ティティだったのだ。
ティティは震える手でボルドの手を掴み、その進行と言葉を止めていたのだ。
ガザドラはその光景を見ながらさらに首をひねりながら、その光景を見ていた。
ティティは未だにダメージが残っている体で (ボルドの『
「と、めな……、い、で……」
「え?」
「『止めないで』……。とは?」
そんな二人の疑念をしり目に、ティズは怒りの矛先であるとある人物に向かって、押し倒すような勢いで掴みかかろうとしている。
それを見ていた誰もが、驚きの顔をしてその光景を見ている。
ティティはそんな二人に向かって――ある情報を口にする。
「……裏切り……者が……、いました」
「っ!」
どきり。ボルドはクルーザァーに言われていたことを再度思い出すように、ティティの言葉を聞いて、動悸が加速するような感覚を感じた。
ガザドラはその言葉を聞いて、「裏切りとなっ!?」と、ぎょっと驚いた顔をしてティティの方を目で見る。それを聞いて、その周囲にいた人達は、ティティの方を見るが、すぐにその背後から――
どさりと――倒れるような、押し倒すような音が聞こえた。
ティティは言う……。
「そいつは……」という声を聞きながら、誰もがティズが押し倒した人物を見て、まさかと思いながら――その押し倒された人物を見る。
ボルドも、ガザドラも――そして……。
裏切者がいると疑っていたクルーザァーでさえ、その真実を知った瞬間、目を点にして、ひゅっと息ができなくなってしまうような顔をして、その人物を、ティズが押し倒して、首元にダガーを突き付けられている状態になっている人物を見て……。
誰もがこう思った。
――ありえない。と……。
しかしティティは小さい声だが、はっきりとした音色でこう言った。
「そいつは――」
「なんであんなことをしたんだよ……っ。なんであんなひどいことをして、平然とこんなところにいるんだよ……っ」
悲痛に、声を殺すように言うティズも、押し倒している人物を見下ろしながら、彼も言う。
その人物の名を――ティティとティズが同時に言う。
裏切者の名前を――言う。
「「――スナッティ」」
◆ ◆
「えぇ?」
呆けた声を出したのは紅だ。
紅は首を傾げながら、ティズとティティの言っていることをよく理解していないのか、はたまたは現実逃避なのかはわからない。
しかし彼女はそんな二人の言葉と、仲のいいスナッティの顔を交互に見ながら、彼女はははっと、乾いた笑みを浮かべながら肩を竦めてこう言う。
「いやいや……、ありえないじゃん。だってスナッティが裏切りって、どうなったら」
「こいつ――遊戯区に来て、俺やティティを罵って……、あいつ……。Zと仲良く話して……、怖がっている子供たちに眠るガスが出る秘器を突き付けて……、みんなを連れて行ってしまった……っ! みんなを騙していたんだ……っ! こいつは……っ!」
紅の言葉を遮って、ティズは憤怒の音色を、押し倒しているスナッティに向かって吐き捨てながら言う。それを聞いていたスナッティは、「えぇー?」と言いながら、彼女は困ったように笑いながらこう言う。
「いやいや。それ人違いっすよティズ君。自分が裏切りとか、そんなのありえないっすよ。だって自分はクルーザァーさんやボルドさんと同じ職場の人間っす。つまるところの完全完璧な味方っすよ」
「………そんな口車には乗らない」
しかし、ティズはそのまま警戒を解くどころか、むしろ警戒のレベルを上げて、ダガーを突き付けながらティズはスナッティの首元にそれを突き付ける。
その光景を見ていたダディエルは、じっと傍観しているだけだったが、ギンロは慌てて宥めようとティズの肩を叩きながら笑みを浮かべて――
「おいおいおい。そんながめつくなってティズ。スナが裏切りって、そんなことあるわけ」
「こいつは、俺のことを馬鹿にしながらこんなことを話していた」
と、ギンロの言葉でさえティズは遮って、スナッティを見下ろしながら睨みつけるようにして、とあることを話し出す。
「自分はこれまでのいきさつを『BLACK COMPANY』に逐一報告した『バロックワーズ』の一員だ。一情報をやるだけで十万円の報酬が手に入るから、小さいことやなんでも情報を提供した。案外馬鹿だらけだったから簡単だった。特に紅のブスからの情報は引き出しやすかった。おだてりゃなんでも言ってくれるから楽で楽で、もうお腹がよじれそうだった」
「みんな馬鹿でほんとよかった。あのくそウザいアスカを殺せて、もう裏切って正解だったよ。機械人間のお前を影で馬鹿にするのもすげーストレス解消だった。だってお前は何も考えていないような顔しているし、感情とかないんだろうと思っていたけど、なんだ。普通の人間だったんだ。つまんね」
ティズの無感情のその言葉を聞いて、誰もがスナッティを見下ろしながら、その言葉に対して疑念を抱くような、少しばかりの怒りを見せつけるように、押し倒されている彼女を見下ろした。
深い関係ではないキョウヤやシェーラは、その言葉を聞いて苛立ちを覚える。赤の他人でも、今の言葉はあまりにも心がない言葉。
言葉の刃だ。
今まで信じていた人に裏切られる気持ちは――どの痛みよりも辛くて、苦しくて、激痛のそれでもある。
さっきまで味方であったギンロでさえ、その言葉を聞いて、無表情でスナッティをを見下ろしながら――真剣な音色でこう言い放つ。
「……お前、マジかよ。それ」
「………あー」
と、スナッティは明後日の方向を向きながら、誤魔化そうとしていた。それを見ていた一同は、更に疑念を強めてスナッティを見下ろす。
その光景を見て、今まで般若だったアキは、普通の表情に戻って、スナッティを見下ろしながら腕を組んで言う。
「――いい加減その猫被るの止めたら?」
「? アキ?」
「?」
キョウヤとシェーラが、首を傾げながらアキに聞くと、アキは二人を見ながら呆れたようにスナッティを横目で見て――とあることを告げた。
「こいつ――表面上はこんな感じだけど、前に俺が出ていたバトルロワイヤルでは異常な行動ばかりしていたんだ。他のプレイヤーを嬲るように殺していた。不意打ちならともかく、まるで獲物で遊ぶように、四肢を三本の矢で打ち抜いて、そのあと心臓や頭に当てないように、的当てゲームをしていた。くそ最低な行為をしていたから、つい撃ち殺したんだ」
それを聞いた二人は信じられないような目つきでスナッティを見下ろす。
どんどんと――スナッティの味方がいなくなっていく中、紅だけは慌てながらスナッティを見て聞く。
「それこそないじゃんっ! 証拠は? 確証は? あと物的証拠的な? こいつは裏切者っていう確証ないじゃんっ! リーダー! 感情読んでみてよっ! できないでしょ? ハンナちゃんだってここにいないから、それを立証することできないじゃんっ! 結局それはティズとティティの見間違いだって! アスカを殺したのだって、アクロマだったっ! だから……っ。だからぁ!」
どんどんっと……。己の言葉に自信がなくなっていく紅。
そんな紅を憐れと思っていたのか、ダディエルは溜息を吐き、そして紅に向かって――
「紅音」と、現実の名で呼ぶ。それを聞いた紅はそっと顔を上げ、泣きそうな顔でダディエルを見ると、ダディエルはふるふると横に顔を振りながら――彼はこう言った。
「……諦めろ。ティズは嘘をつくような奴じゃねえ。つまり――スナッティは」
黒だ。
その言葉と共に、べたんっと尻餅をついてしまった紅。泣きそうな顔をして茫然と放心状態に陥る。しかしそれを聞いていたスナッティは――
「――ち」と、大きく舌打ちをして――彼女は吐き捨てるように、苛立った音色でこう言った。
「ったく……、もう少しで一千万だったのにな」
どす黒い苛立った顔で彼女は吐き捨てるように、彼らを見上げて言った……。その顔を見た誰もがその豹変した姿を見て、言葉を失いながら見ることしかできなかった。
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