PLAY46 急転と裏切者 ③

「不合理なテントだ。衛生面でも不安が残る様な泥の付き具合……。こんな所でよく医療研究をしているな……」


 クルーザァーさんは眉の皺を深く刻み、うっと唸るような声を上げる。


 それを聞いていたメウラヴダーさんは溜息を吐きながら呆れた顔をして、クルーザァーさんを見降ろし――


「お前――いい加減にしないとお天道さんの天罰が下るぞ」


 と言ったけど、それを聞いていたクルーザァーさんはその言葉を聞いてか、メウラヴダーさんを見上げながら……。


「お天道さんと言うのは神様と言うことでようやくしていいんだな。生憎俺はそんなカルトじみたことを信じるような頭ではない。運命は己の行動と運で決まるようなものだ。ゆえに神のいたずらなんて言う言葉を信じる輩は馬鹿としか言いようがない」

「全世界の神を信じる人に謝ってくれっっ!」


 流石に言い過ぎだと思ったのか、キョウヤさんは強制的にクルーザァーさんの言葉を遮って訂正を強要する。


 しかしそれを聞いてもクルーザァーさんは頷こうとしない。


 でも……、さすがに神様を信じないって言う言葉はひどいんじゃないかな……?


 きっとどこかで見ていると思うな……。神様……。


「きっと罰が当たるわね」


 シェーラちゃんは冷たい目つきでクルーザァーさんを見ながら言った。


 すると――その言葉を聞きながらボルドさんはおどおどとガザドラさんと先生を交互に見て、ガザドラさんを指さしてこんなことを聞いた。


「そ、そういえばさ……、この人は実は悪い『六芒星』って言う集団の元幹部で、元なんだけど怯えたりしないかな……? 元! なんだけど……」

「元元元元うるせぇよ。リーダー」


 ボルドさんのすごい心配そうな顔を見て、ダディエルさんは呆れながら突っ込みを入れると、ガザドラさんは「ははは!」と笑いながらボルドさんの肩を叩いて陽気な音色で励ますように言った。


「そんなことで狼狽せずともよいっ! 吾輩はこの種族であるが故、孤立などは慣れている! ゆえに吾輩は少し離れたところで待機しようと思っていたところだ!」

「そ、それはそうなんだけど……。でも近くに『六芒星』がいるっていうだけで、結局はここから離れろとか、そんな強迫じみたことにならないか心配で……」

「リーダー。オカンっぷりをここで発揮しないでください。気持ち悪いしB級でとことん気持ち悪いです」

「リンドー君っっ! 君最近僕のことをディスらないと思っていたら、ここで倍返しにするような戦法を取っていたのっ!? 狡賢いよっ!」

「いいえ狡賢いのはぼくの個性です。そして強いて言うのであれば、毎日思っていますよ? ディスりのパターン」

「えーっっっ!?」


 ボルドさんはガザドラさんの言葉を聞いたとしても心配らしく、リンドーさんを見ながら同意の意見を聞こうとしたけど、その言葉に対してリンドーさんは真顔の笑みでボルドさんを見上げて言う。


 それを聞いたボルドさんは泣きながらリンドーさんに詰め寄るけど、リンドーさんは頷きながら同意の抉りを放つと、それを聞いたボルドさんはショックのあまりに泣き出してしまった……。


 なんだか、可哀そうに見えてきた……、そんなに苛めなくてもいいのに……。そう私は思って、弱っているボルドさんにエールを送ることしかできなかった……。


 その話を聞いていた先生は、ははっと笑いながら近くにいる子供達の頭を撫でながら――


「んなこと気にすんな。『六芒星』でも、そのやり方が気に食わなくて組織を抜けてきたやつだってわんさかいるんだ。ここにいる奴らはみんな優しい奴らだらけだ」


 安心しろ――そう先生が言うと、それを聞いていたボルドさんはほっと胸を撫で下ろして……。


「そうか……、よかったぁ……」と、安堵の音色で言葉を零した。


 それを聞いて、アキにぃはじっと先生を見ながら、周りのテントを見て疑問の言葉を吐いた。


「……にしても、ずいぶん多いですね……。荷物」


 その言葉に先生は周りを見て、大きな木箱や、あるいは鉄製の箱を見回しながら、先生は「あぁ」と言葉を零して、頭を掻きながら首を捻って……。


「あー……。その辺に関しては俺もよくは……」


 と言った瞬間だった。


「その荷物はすべて、食料や医療機器。生活に必要なものばかりが入っているんです。なにせここ一帯にあるテントはすべてで十。居住区三つ。医療区三つ。調理区一つ、備蓄区一つ。共同区一つ、あと子供達のストレスを緩和させるための遊戯区一つに分かれているので、それ相応の生活必需品と言うのは必要なんです」


 ばさりと――先生の背後にある大きなテントから出てきた、白衣を着た白髪のオールバックで、しわの彫が深くて、頬に大きな切り傷の跡を残している壮年の男性が、私達の前に出てきたのだ。


「……あなたは?」


 アキにぃが疑念の表情をしながらその人に向かって聞くと、壮年の男性はアキにぃ達をじっと、足の爪先から頭のてっぺんまで機械のスキャンをするように見ながら、私達をじっと見つめる。


 一人一人、念入りに……。


 その目はまるで、機械のようなそれに見えて……、私は思わずびくっと震え上がってしまった。


 ぞくりと背中を這う寒気を感じてしまった。


 そしてその人は私達を見た後で、すぐににこっと、口元を緩く弧を描いて、微笑みながらその人は私達に軽く会釈をして――


「初めまして――あなた方のことはよく知っております。私はここのキャラバン隊の副リーダーを務めさせております。ブラウーンドとお申します。皆様このような辺鄙な土地まで……、お疲れでしょう」


 白衣の人――ブラウーンドさんはにこりと微笑みながら私達に言うと、それを聞いてシェーラちゃんは首を傾げながら、少し半信半疑な顔の歪め方をしてブラウーンドさんに質問をした。


「…………噂? 何よそれ……」


 その言葉を聞いて、ブラウーンドはそっと顔を上げて、すっと懐から一枚の紙を取り出して、その紙を私達に見せる。


 その紙にはとある絵が描かれてて、黄色い体毛で覆われた、くりっとした目が特徴的な小さな生物が、濃い青色の、人間サイズのバックを背負いながら青い小さな帽子を被っている、なんとも可愛らしい絵が描かれていた。


「やだ可愛いっ!」


 紅さんは顔を赤くしながら可愛いと連呼してその絵を凝視している。


 それを見ていたスナッティさんは首を傾げながら「え? そうっすか? てかこれ――魔物っすよね……?」と、ブラウーンドさんを見上げながら聞くと、ブラウーンドさん頷いて――<


「ええ。これは人懐っこい魔物……いいえ、ここでは生物でして――名はカーバングル。異国から渡ってきた希少な魔物で、害をなす技を持っていません。ゆえに魔物認定されずにいた稀に見ない魔物でもあるんです。今現在、アズールの郵便配達の要となっている重要な生物で、あなた方のことも、この生物が持ってきた号外で知ったんですよ」と言った。


「カーバングル……」


 私は黄色い体毛で覆われたその子を見て、なんだかナヴィちゃんと同じ顔をしているなと思いながら、その魔物の絵を見て、言葉を零す。


 それを聞いていたアキにぃは首を傾げながら――


「……吟遊詩人が来たから知ったとかじゃなくて、ですか?」と聞くと、それを聞いてブラウーンドさん首を横に振りながら――


「ここは砂の国です。そう言った情報を提供するものに関してはひどく敏感なんです。彼らは、見つけ次第即刻処刑でしょうね」と言って、それを聞いていたキョウヤさんは、ぎょっと驚きながら「処刑っ!?」と、大きな声を上げた。


「なんでだよっ! つか入っただけで処刑って、何を考えているんだこの国はっ!」


 そんなキョウヤさんの言葉を聞いて、クルーザァーさんは呆れた顔をして大きく、大きく溜息を吐きながらキョウヤさんをジトッと見ながら、彼は口を開いた。


「いいか……? ここではバトラヴィア帝国こそが最強と妄想している。王が神。人間族は至高なる種族。それ以外は屑。それがもし――ボロボ空中都市やいろんな国に知れ渡った時、アズールはきっと帝国を滅ぼす選択をするだろう。何よりほかの情報が入らないようにする。そうすれば帝国のやり方に疑念を持つものが出ないという二次災害防止につながる。それを踏まえると、カーバングルは有力な情報源だろうな。それくらいちょろっと考えればわかる様な回答だ。不合理なことばかりしているから頭が正常に機能しないんだ。少しは脳活をしろ」


 まるでキョウヤさんを馬鹿にするような顔をして見ていると、共産はクルーザァーさんに顔を向けたまま、低い音色で……。


「お前本当にどこかで罰当たるぜ……?」と、まるで念を押すようにして静かな怒りを乗せた音色で言った。


 それを聞いていた私は、おろおろと互いの顔と後姿を見ながらなんか嫌な雰囲気を思って、どう止めようか模索するけど……、結局何もできずに終わってしまった……。


「それもあってですね……。カーバングルが届けてくれた情報の中にあなた方のこと……、特にリヴァイヴのことについて大きく書かれていましたから、いやぁ……、さすがです。まさか『八神』を三体も浄化するとは……」


 ブラウーンドさんはアキにぃとキョウヤさんの肩を叩きながら「ははは」と笑いを上げて言うと、それを聞いていたアキにぃは乾いた笑みを浮かべながら私の方を指さして――ぎこちない顔をしながらこう言った。


「い、いや……、実は浄化はハンナと、あそこにいる『12鬼士』でして……」

「? おぉっ! そうでしたか! いやはやすみません」


 ブラウーンドさんはアキにぃの言葉を聞いて首を傾げながらアキにぃの指の先をじっと見て、私を認識した瞬間すっと目を細めて、そしてヘルナイトさんのことをじっと見た後……、ぱっと明るい笑顔を見せて、アキにぃ達から手を離した後私達に近づいて――


 ぽんっと、私の肩に手を置いて、そして近くにいたシェーラちゃんの肩にも手を置いて、ぽんぽんっと、まるで会社で言い功績をもらった時、その喜びを分かち合うかのような動作をしながら、ブラウーンドさんは笑みを浮かべながらこう言った。


「まさかあなたのような子供がですか……っ! お友達もすごいなぁ! いやはや……、とある方が言っていた『現実とは常に稀有なものである』とは、まさにこのことだなぁ。そして『12鬼士』様や、おぉ! 邪の王を倒して英雄のお方! こんな辺鄙な土地に赴きまして……、いやはや生きているといつどんなことが起こるかわかりませんな! 様こそ――私達の家へ! ははは」

「………肩外れするから、そんなに叩かないで」

「う」

「お………。む。あぁ……」

「フレンドリーですが、あまり気安く話しかけないでください。私に気安く話しかけていいのはティズだけなのです」

「その贔屓は、さすがにダメだと私は思うが……」


 その方の重みを感じながら、シェーラちゃんは顔を苦痛に歪ませて、私も乾いた笑みを零すことしかできなかった……。


 ぽんぽん叩いているのになんだか重い何かを乗せられているようなそれを感じてしまう……。


 ヘルナイトさんもそのフレンドリーさに驚きながら (砂の国の人達はヘルナイトさん達に対して毛嫌いをしているから、きっと驚いてしまったのだろう……) その話を聞いて頷いていると、ティティさんは見下すような目つきでブラウーンドさんを睨んでいた。


 それを見て、ヘルナイトさんはやんわりと制止をかける……。


 でもティティさんはぷいっとそっぽを向いてしまった。


 その光景を見て、肩を叩かれる衝撃を感じていると……。ブラウーンドさんはその場から立ち上がって――アキにぃ達を見ながら、ブラウーンドさんは「しかし……」と言って、こんなことを言いだした。


「皆さま長旅でお疲れでしょう。それに食料もそこを尽きたはずかと思います。わずかですが……、ここにある食糧を分け、そしてここでつかの間の英気を養ってはいかがでしょうか?」


 それを聞いたガルーラさんとギンロさんは、わっと歓喜の声を上げながら――


「いよっしっ! なら休もうかっ!」

「もう足がくたくただしなぁ! 少しは砂地のベッドじゃなくてふかふかベッドに寝てぇし! お言葉に甘えさせてもらうぜ!」


 と、大喜びでブラウーンドさんの言葉に同意を示した。


 それを聞いてクルーザァーさんはむっとした顔をして「不合理だ」と、すっぱりと二人の言葉を切り捨てるような言葉を吐いて――


「何かを企んでいるのか? 非常に信じられないような話の進め方だ」と、疑心の言葉を吐き捨てて、クルーザァーさんはじろっとブラウーンドさんを睨む。


 みんながそれを聞いて呆れながら、シェーラちゃんが呆れた顔をして「そこまで疑うことなのかしら……?」と首を捻りながら言うと、それに対してメウラヴダーさんもうんうん頷きながら首を縦に振って――


「お前――最近疑心になりすぎているんじゃないか? いくらなんでも考えすぎだろ……。それとも何か? まさか近くに帝国の兵士がいるとか、……、そんなことを思っているんじゃないだろうな?」


 と聞いてきた。


 それを聞いた私はどきりと心臓が高鳴った。


 驚きと不安の高鳴りだ。


 クルーザァーさんは、みんなのことを徹底的に疑って、そしてここにいる人達を、会ったばかりの人達を疑っている。後者は確かに、不信を抱けばその条件に乗らないようなことだろうけど……。クルーザァーさんは、もしかしたら、こんなことを思っているんじゃないか……。そう思いながら私はぎゅっと、スカートを握りしめてしまった。


 私が思ったことはこうだ。


 クルーザァーさんは私達というか、カルバノグとワーベンドの中に裏切者がいる。


 その裏切者は帝国、『BLACK COMPANY』、あわよくば『バロックワーズ』と深いつながりがある。


 更に言うとここは砂の国、いつどこで、民間人に扮した兵士たちが自分たちを監視しているかもしれない。もしかしたらエルフの里の中に、もしくは別のどこかにいた兵士が帝国に密告して、帝国は近くにあった駐屯医療所に目をつけて、その中に兵士を紛れ込ませているかもしれない。


 そう思ってクルーザァーさんは警戒しているんだ。


 すべては目的のために、不安な要素は担がないようにしている。


 それは私達のためでもあるけど、同時に信頼と言うそれを失うような危ない橋を渡っているのと同じだ……。


 クルーザァーさんは、それに対して合理的とか、不合理と言う言葉で決めて、即断即決で行動してしまう、なんだか機械のような人……。


 本当はみんなを疑いたくないのに……、クルーザァーさんは、即決してみんなの中に裏切者がいるって決めつけて、私達に感情の探知を命令した……。




 こんなの――犯人探しをして疑っているのと同じだ……。




 なんで……、こんな力を持ってしまったんだろう……。私は。


 そう思っていると――


「ハンナ」

「わ」


 突然横からシェーラちゃんの声が聞こえた。その声を聞いて私は慌ててシェーラちゃんの顔を見るために首をシェーラちゃんがいる方向に向けると、シェーラちゃんは呆れた顔をして腰に手を当てて、ふぅっと息を吐いていると……、シェーラちゃんは……。


「話聞いていた?」と聞いてきた。


 それを聞いた私は、首を傾げながら、頭に疑問符を浮かべてシェーラちゃんの顔を凝視していると……、シェーラちゃんは再度呆れた顔をして、目を細めながら――こう言った。周りにはすでにみんながいない。きっとみんなどこかへ行ってしまったのだろう。近くにはヘルナイトさんと、アキにぃとキョウヤさんが待機しているけど、私の横にいるのはシェーラちゃんしかいなかった。


 シェーラちゃんは言った。


「一時期だけど、ここで何時間か休憩することが決まったわ。クルーザァーはなんだか不満そうな顔をしていたけどね……」

「そ、そうなんだ」


 私はそれを聞いて胸を撫で下ろしながら言うと、それを見ていたシェーラちゃんはじとっと私の顔を見て――私の顔を見たままシェーラちゃんは……。


「あんた……、何かあったの?」と聞いてきた。


 それを聞いた私は、どきりとした。


 不意を突かれたかのような言葉を聞いて、私は驚いた顔をして「なに、が……?」と聞くと、シェーラちゃんは私の顔をじーっと見た後、すっと目を座らせて彼女はこう言う。


「あんたはまず、嘘がへたくそ」

「うっ……っ!」


 シェーラちゃんの剣の言葉に、私はそれを体で受けてしまったことにより、変な声を上げて体を震わせる。


 驚きで体を震わせていると、シェーラちゃんはそのまま――


「正直すぎるから嘘をついていることがまるわかりなのよ。驚いた顔が物語っている」

「あああ……、ああああわ」


 と、まるで弾丸のような攻撃を私に繰り出している。私はそれを聞きながら、わなわなと震えて、目をぐるぐるとさせながら、頭を左右に振ってどう反論しようかと悶々と考えていた。でもシェーラちゃんはそのまま……、私の顔をがしりと掴んで止める。


 私はそれに驚きながら、頬が挟まれるような違和感を覚えながらシェーラちゃんを見ると、シェーラちゃんはむすっとした顔のまま、心配そうな顔をしてこう言った。



「本当に……、何かあったの? 、《《何か言われた》?」



 その言葉を聞いて、私はすっと顔を俯かせて、シェーラちゃんの顔を見ながら控えめに微笑――もうとした時……。


 ――むにゅっ!


「ぶっ!」


 思いっきり頬を挟まれてしまった。なぜか……、力強く……。うぅ……。頬が痛い。


 そう思ってわたわたと手を空中に彷徨わせていると……、シェーラちゃんはむすっとした顔をしてこう言った。


「『何でもない』は禁止! すべて正直に話すの! いいわねっ?」

「ふぁ……、ふぁい……っ」


 その怒ったような音色と表情を見た私は、隠すことはできないと悟って、私はシェーラちゃんにぽつりぽつりと、クルーザァーさんと話したことを話した。幸い――アキにぃ達には聞こえていないらしく、シェーラちゃんにしか聞こえないようなそれで話した。


 するとシェーラちゃんは『ふぅんっ』と言って、そのまま私の頬を挟んでいたそれをそっと離してから、シェーラちゃんは腰に手を当てて私をじっと睨むように見つめてから――こう言った。


「それで?」

「?」

「それで……、あんたは、ハンナはどう思うの? その中に裏切者がいると思っているの?」


 唐突な質問。


 それを聞いた私は首を横に振りながら――いないとはっきりと言った。それを聞いたシェーラちゃんは、肩を竦めながらアメリカンな手の広げ方をして溜息を吐いてこう言う。


「即答するところじゃないでしょうが。そこは少し考えてからいないか、いるかもしれないって思うのが普通なの。――利用する輩がいるかもしれないのよ」

「で、でもあれは……」


 私はシェーラちゃんの言葉を聞いて、それはないという否定的な感情を出しながら私は、慌てながらシェーラちゃんに言うと、シェーラちゃんははっきりとした音色でこう言った。


「そう思うのは自由だけど、そう言った可能性も頭の片隅に入れろって言いたいのよ。その可能性があるかないかでこの先どうなるのかわからないんだから」

「うぅ」


 そう言われて、私は唸りながらしょぼんっと頭を垂らす。


 言われてみれば当たり前だけど……。でも……。


「私は……、みんなを疑いたくない」


 と、わがままのような言葉口走ってしまい、私ははっと気付いて手で口元を隠してシェーラちゃんの顔を恐る恐る見ると……、シェーラちゃんは私を見ながら、にっと凛々しい笑みを浮かべて――彼女はこう言った。


「そう思いながら詮索するんだったら、やめたらいいじゃない。いなかったならそれでいいんだし、それで何かが起こったらその時注意深く感じ取ればいいのよ。常日頃監視する様に疑心暗鬼になっても、結局疲れるだけよ」


「簡単な話――疑いたくないなら、信じていればいいのよ。もし信じていたことが嘘で、本当に裏切者が出たら――グーパンチしてやる。それでいいでしょうが。あと、疑うなんてあんたには全然似合わない。むしろしない方が似合う」


 そう言いながらシェーラちゃんは本当に人を殴りそうな握り拳を作って、くくっと喉を鳴らして笑みを浮かべていた。


 それを見た私は最初こそ怖いと思っていたけど、次第に私の奥底で渦巻いていたぐちゃぐちゃしていたものが和らいだ気がした。


 それを感じて、私はシェーラちゃんの顔を見てから――くすっとその顔を見て微笑みながら……。


「――相談に乗ってくれて、ありがとう……。シェーラちゃん」


 と、お礼を述べた。


 シェーラちゃんはきっと、私のことを心配して話しかけて相談 (と言う名の強制) に乗ってくれたのだろう……。不器用だけど、その心強い言葉に私はさっきまで感じていた不快感が消えていくのを感じながらシェーラちゃんにお礼を述べる。


 するとシェーラちゃんはそれを聞いてふんっと鼻で笑いながら、当然の様に言葉でも――


「当然でしょ? 仲間で友達なんだから」


 と、凛々しい音色で言った。そしてシェーラちゃんはちらりとアキにぃ達の方を見て――ふむっと顎を撫でながらシェーラちゃんはこう言った。


「…………、一応あいつらにも話してきましょう」

「え? で、でもこれは……」

「大丈夫よ。私達は除外された。つまるところこれは協力していると思ってもらえればそれでいいの。あの堅物は私達のことも少し疑っていたみたいだけど……」


 シェーラちゃんは私の手をきゅっと掴んで、そのまま引っ張って走る。


 ヘルナイトさん達がいるところに向かって――


「一人では何もできないんだから、こういう時こそ――」


 と言って、シェーラちゃんは言った。はっきりとした音色でこう言った。



「みんなで今後のことについて――話し合いよっ!」



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