PLAY44 エルフの里の魔女 ②

「う、嘘でしょ……っ!」


 シェーラちゃんが焦りの顔を浮かばせて、剣を持ちながら彼女はその周りにいるエルフの人達を見て言う。


 私も四方にいるエルフの人達を見て……、その剣幕の表情を見ながらその人達から出ているもしゃもしゃを感じて疑念を抱いた。


 その人達は怯えているもしゃもしゃを出しておらず、むしろ冷静にというもしゃもしゃを出していた。


 攻撃する気はさらさらないようだ。


 赤と黒のもしゃもしゃはまだ微かに出しているけど、それは私達に向けられているものではないようだ。


 それを感じた私は首を傾げながらその人達を見て、声を出そうと口を開けた瞬間……。


「お前達に問ウ」


 一人のエルフが、どことなく訛りなのかな……、なんだか聞き取りにくいようなそれを感じるような声を上げた。


 その声を聞いて、私は一旦口を閉じてその人の言葉を聞く。


 すると、初めに声を上げたエルフよりも若いエルフが声を上げて――


「お前達――冒険者だナ?」と聞いた。


 その言葉を聞いて、驚いた顔をしてガルーラさんは「なんであたし等が冒険者だってわかったんだっ!?」と聞くと、それを聞いて呆れた溜息を零したメウラヴダーさんは、ガルーラさんの肩を叩きながら、手に持っている冒険者免許を見せる。


 それを見たガルーラさんは「あ、あぁ……」と、上がっていた感情が一気に沈下するような表情をして、頷いていた。


 するとそれを見て――もう一人のエルフが「うむ」と言って――


「お前達のことは――あのお方が予言しタ。つまりお前達……、客人」

「とか言いながら弓を構えているじゃねえか」


 キョウヤさんの言葉に、私は内心頷いてしまう。


 確かに、エルフの人達が本当いというか、唐突に私達のことを客人として認識していることがすごく気になるところだけど、客人と言いながらの武器の構えはないだろう……。そう思ってしまった。


 するとそれを聞いていたヘルナイトさんは、そんなエルフの人達を見て――


「…………予言ということは、お前達は誰かに使われたのか?」


 と聞いた。


 それを聞いてエルフの人達の代表の人は、その言葉に対して頷きながら「そうだ」と答える。


 それを聞いたアキにぃは、ちゃきりと……、エルフの人達に銃口を突き付けながら……。


「その言葉――信じてもいいのかな……?」


 と、慎重な音色で聞いた。


 でも私は、その行動を見てはっと息を呑みながら……。


「あ、アキにぃ……っ!?」


 私は驚いてそれを見て、私はアキにぃを見て聞く。


「な、なにしているの……?」


 と聞くと、アキにぃは銃口から目を離さないで、真剣な音色でこう言う。


「大丈夫。そんなホイホイ撃たないよ」


 優しい音色で言うけど、それを聞いて見ていたスナッティさんとギンロさんは、苛立った音色で怒りを露にしながら――


「いいや絶対に嘘っすっ! それで自分騙されてしまったんすよっ!」

「そうだそうだ! お嬢ちゃん! その男の言うことを信じてはいけねえぞっ!」


 私を見て大きな声を上げながら叫んでいた。


 それを見た私は、首を傾げながらその言葉を聞いていたけど、それを聞いていたメウラヴダーさんは、呆れた目をして「本当に何があったんだ……?」と言っていた。


 しかしそれを無視するかのように、アキにぃはエルフの人達に銃口を向けている。


 それを見ていたリーダー格のエルフの人は、アキにぃをじっと見て、そして……。弓矢をそっと下してから、その人はアキにぃを見てこう言った。


「…………闇森人ダークエルフカ」

「!」


 その言葉を聞いて、アキにぃはぎょっとしながら銃を下ろし、慌てた表情を出しながらアキにぃはリーダー格に向かってこう聞いた。


「な、なんでそれを……っ!?」


 その言葉を聞いていた私達は、目を見開いてそのリーダー格を見て、クルーザァーさん達やボルドさん達はその言葉を聞いて驚いてはいたが、私達よりは驚いていない顔でその光景を見ていた。


 リーダー格の人は言った。


「エルフは一目見ただけでわかル。そこのひ、ヒゲ男は森人だろウ。そして――」


 リーダー格のエルフの人は私と、そしてヘルナイトさんを見た。


――『


 私はそれを見て、思わずその鋭い目つきを見て萎縮してしまい、びくっと肩を震わせる。それを見てか、ヘルナイトさんはそっと私に視線にしゃがんで、そのまま私の頭に手を乗せながら――


「大丈夫だ」と言った。


 そんな凛とした声を聞いて、私は不思議と、さっきまで委縮していたそれが嘘のようになくなっていく……。


 それを感じながら、私はヘルナイトさんを見上げながら、ヘルナイトさんはエルフの人を見て――「そうだと言ったら――どうなんだ?」と、はっきりと言ったのだ。


 するとリーダー格のエルフの人と、傍らにいたエルフの人は――こしょこしょと何かを話していた。


 小さいからなんて言っているのかわからなかったけど……、とぎれとぎれの単語を聞いていると、何やら聞いたことがないような言葉が聞こえてくる。


 それは日本語ではない言葉で、それを聞きながら私は……、何を話しているのだろうと思いながらエルフの人達の会話を待っていた。


 アキにぃは少し不機嫌疎な顔をして銃を下ろした。


 そしてアキにぃは「……何を話しているんだ……?」と、独り言のように言うと、それを聞いていたクルーザァーさんは、ふむっと顎を指で撫でながら――


「――聞いたことがない言葉なのはわかるだろう」


 真剣に、真顔でそう言った。


 それを聞いていたアキにぃはむっとしながら苛立った音色で「そんなに聞けばわかりますって……」と言った。


 それを聞いて、私は首を傾げながらヘルナイトさんを見て――


「一体何の話をしているんでしょうかね……?」


 と聞くと、それを聞いていたヘルナイトさんはその光景を見ながら、私を見ないで凛とした音色でこう言った。


「エルフは独特の言語を使う種族だ。ゆえに私達では理解できないような言葉で話しているのだろう……。こんな時、キメラプラントがいればいいんだが……」

「? どうしてですか?」

「あぁ……、言ってなかったか。あいつは元々はエルフの血を引いている魔王族。つまるところ――キメラプラントはエルフの王と言った方がいいだろうな……」


 魔王族だが……。と、ヘルナイトさんは言う。


 それを聞いていた私は、驚きながら「すごいですね……」と言葉を零してしまう。でも、確かに魔王族なのにエルフの王様っていうのは、少し変な感じもするけど……。


 そう思っていると――ざっと音がした。


 私達はその音を聞いてエルフの人たちを見回すと……、エルフの人達は手に持っていた武器を下ろして、リーダー格の人はそっと私達に歩み寄りながら険しい顔をして私を見下ろし、そっと立ち上がったヘルナイトさんを見上げながら――


 背後を指さして――リーダー格の人はこう言った。


「こっちダ。ついてこイ。私達はあのお方の命により、ここでお前達が来るのを待っていタ。安心しロ。危害を加えることはなイ」


 リーダー格のエルフの人は、私達の方を見ながら歩みを進めようとする。その前に他のエルフの人達がリーダー格の人が指をさした方角に向かって歩みを進めている。


 私はそれを見て、近くに来たシェーラちゃんがその言葉を聞いて、少し疑っている顔をしながら腕を組んでこう聞いた。


「その言葉――信じていいのかしら?」







「にゃ? 猫?」


 聞いたことがないというか、猫の言葉を聞いて、シェーラちゃんはおろか、私達も首を傾げながらリーダー格を見る。


 するとリーダー格のエルフの人は、はっと気付いて、そしておほんっと拳を口の前に持って行き、えずきながら慌てて「あ、ああ、信じてくレ」と言って……。


 ふっと私達の方を見て、真剣な音色と眼差しでこう言った。


「あの人はお前達が来るのを待って、そして来ると確信していタ。ついてこイ。お前達の探している人も、そこにいル。そして、会いたがっていル」


 その言葉を聞いて、私やみんなは、その言葉に従うように、そのリーダー格のエルフの人の後をついて行った。


 砂の国だからすごく日差しも熱い。さっきまで話してて、あまり感じなかったけど、何かに集中していないと紛らわせないような暑さだと私は思った。


 みんな一生懸命そのエルフの人達の後を追う。


 砂の地面に足をしっかりと踏みつけながら進んでいくと……。


「あ。皆さんアレ」と、リンドーさんは声を上げて、その方向に向けて指をさした。


 その方向を見て、私達はその光景を見て、驚きに言葉を失っていた。


「そうだ……。確かエルフの里は……」と、ヘルナイトさんが頭を抱えて、今まさに思い出したかのように言うと、それを聞いていたガザドラさんは「おぉっ!」と歓喜の声を上げながらその光景を見て、遠くを見るような動作をしながら――


「やっと着いたかっ!」

「だいぶ歩きましたね」


 と、ティティさんもその言葉を聞きながら頷く。


 その言葉を聞きながら、知らない私達はそのエルフの里がある方向を見て、わっと驚きの声を上げた。


「なんだありゃ……」

「すげぇ!」

「里っていうから、山里とか、森の中かと思った……」

「ファンタジーだけど、この砂の国だからな。これもありだろうな」

「綺麗っすねあの場所っ!」

「あそこが……?」

「エルフの里……」


 上からダディエルさん、ギンロさん、ティズ君、メウラヴダーさん、スナッティさん、キョウヤさんにシェーラちゃんが言い、そして私もその里の光景を見て、言葉を失っていたけど、すぐに言葉を口にした。


「あれが……エルフの里」


 エルフの里。


 多分誰もが想像しているのは――森の中にある大きな木々を家にしている風景だと思う。私は生憎、そう言ったファンタジーのことについては疎いほうで、この情報もメグちゃんから聞いたことである。


 そして――そのファンタジーの基盤を大きく覆すような光景が、私達の目の前に広がっていた。


 砂の国――そして砂漠にある緑と言えば……。


 オアシス。


 そんな大きく青々としているオアシスを中心にした。木で作られた家屋にヤシの木が生えているその場所で、いろんな耳が長いエルフの人達が楽しく暮らしている風景が見えた。


 そして一際大きな建物が建っており、あそこだけが特別な家だということは一目でわかった。きっと上からならよくわかると思うけど、見た限りそのオアシスの広さはきっと、国境の村より三倍は広いだろう。


 それを見て、リーダー格のエルフの人は、その風景を見ながらこう言った。


「あそこが私達エルフの里ダ」


 その言葉を聞いて、私は……「なんだか……、思っていた風景とは違う」と正直な言葉がこぼれてしまった。


 それくらい……、驚いてしまったと言っておこう……。



 □     □



「アルゥティラ ムシギフィリウ ホクユパ (アルゥティラが帰ってきたよ)」

「ヴィヴィア! アルゥティラホクユパ! (本当だ! お帰りアルゥティラ!)」

「ホクユパ! (おかえり!)」

「ホクユパティスム! (おかえりなさい!)」


 私達はリーダー格のエルフの人の後を付いて行きながら、エルフの里に入った。


 すると突然、外で水遊びをしていた子供達がリーダー格の人を見て、わっと大喜びをして、聞き覚えがない言葉を言いながらリーダー格の人に抱き着く。


 それを受けて見ていたリーダー格の人は「ははは」と笑みを浮かべ――


「ユディス。ムラム。ギロヂゥトゥラ ウォウ? (ただいま。みんな。いい子にしていたか?)」と言いながら、駆け寄ってきた子供達の頭を撫でながら言った。笑顔で。


 でも私達にとってすれば……、聞き覚えのない言葉。というか聞いたことがない言葉に、首を傾げるばかりだ。


 すると一人の男の子が、ギンロさんをじーっと、好奇心旺盛の眼で見ている。


 それを見たギンロさんは「お?」と言いながら、にっと笑って――


「よぉ。こんにちわ」と、手を振りながら笑みを浮かべていると、その子はすっと指をさしながら、驚いた顔をしているけど、好奇心の方が勝っているその顔で……、笑顔でこう言った。




「メディスティ ピピティッ!」




「へあ?」


 またもや異国の言葉。それを聞いたギンロさんは、素っ頓狂な声を上げて、ぽかんっとしながら首を傾げた。そして私達にも首を傾げる。


 なにせ――聞いたことがない言葉ゆえ、何を言っているんのかさっぱりのそれだったからだ。


 聞くからに英語ではない。イギリス語とか、ロシア語、中国はもってのほか。


 それを聞きながら、私は何を言っているのだろうと思い、考える仕草をしてその子の言葉を理解しようとしていると……、その子はみんなに向かって指をさしながら、こんな言葉を口にする。


「ケロッティクレ ピピティ!」

「え? 私?」


 指をさされたシェーラちゃんは驚きながら自分を指さしてもう一度……。


「わ、私なの……?」


 と聞くと、その子は「ニャ!」と猫の鳴き声を放つような声で言った。


 そして――


「セェィディレックト ピピティ!」

「オレの場合は長いんだな……。でも何を言っているのかさっぱりだな……」


 指をさされたキョウヤさんは、引きつった笑みを浮かべていたけど、それでもはいはいと言いながらそっと頭を撫でる。指をさした子供は「きゃはははっ!」と笑いながら喜んでいた。


 すると――それを見ていたリーダー格の男はその子を見下ろして、少しきつい言葉を吐く……。


「ヤッタッ! クワァィデスレス。ムーオ ダァ (こら! 迷惑をかけるな。客人に失礼だぞ)」

「うぅ……」


 と、子供はびくりと体を震わせながら、そのリーダー格の人を怖がりながら見上げて、小さく「ニャ……」と、こくりと頷いて、そして私達を見上げた後、その小さい子は小さい頭を下げながら……。


「ドゥペイドォスゥ……」と言った。


 でも……、正直なところ、さっきから何を言っているのか理解できない私達にとって、一体何を言っているのかがよく理解できなかった。


 それを聞いて――クルーザァーさん苛立った音色で……。


「……エルフ言葉の通訳はいないのか……っ!」と、吐き捨てるように怒りの言葉を吐いた。それを聞いていたガルーラさんは腕を組みながら納得するようにこう言う。


「でも、今あたし達に謝っていたから、今の言葉は『ごめんなさい』って理解した方がいいんじゃねえか?」

「でも他の言葉全然理解できないっす」


 スナッティさんがお手上げと言わんばかりに手を上げて、疲れたような顔をして言う。


 確かに、今の私たちでは理解ができないような言葉をいくつも並べられているから、一体全体何を言っているのかわからないものだらけだった。


 リーダー格の人は私達を見ながら、半分呆れながら――


「お前達の中にエルフがいるだろウ。そいつに通訳してもらエ」と、アキにぃとダディエルさんを指さしながら言った。


 それを聞いたアキにぃとダディエルさんは、まさかここで話を振られるとは思っておらず、アキにぃは慌てながら首を横に振って――


「いやいやっ! 俺は異国の人だからそんなの理解できませんってっ!」と、リーダー格の人に向かって慌てながら弁解するアキにぃ。


 それを聞いていたメウラヴダーさんは、呆れながら「出た。異国逃げ」と言っていたけど、それを近くで聞いていたティズ君は、首を傾げながら頭に疑問符を浮かべていた。


 ダディエルさんも腕を組んで、困った顔をしながら――腕を組んでいた手をほどいてがりがりと頭を掻きながら……。


「あー、うんまぁ……。異国とアズールでは暮らし方も違うんだ。言語も共通語。つまりは一語しかない。お前たちのエルフの言葉はなかったんだ。すまん……」


 と、申し訳なさそうに謝るダディエルさん。


 それを遠くから見ていたボルドさんは、ぎゅっと握りこぶしをかわいらしく作りながら、小さい声で「ナイスッ!」と言っていたけど……、リーダー格の人に抱き着いていた子供達が、ボルドさんに気付いてじっと見た後……。


「ヒィイィッッッ!」


 と、子供達はぶわりと可愛らしい目から大粒の涙を零して怯えだした。


 それを見たボルドさんは「え? ええ?」と驚きながら、わたわたと覚束ない手取りで空中をさまよわせて、その子達を見ながらボルドさんは……。


「ね、ねぇ……? なんで泣いて」と、すたっと一歩足を踏み入れた瞬間……。




「「「「「ぴぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっっっ!!」」」」」




 ――子供達はボルドさんから逃げるように、泣き出して走って行ってしまった。


「「「「「ゴランゴォダ ピピディエル クォッタアアアアアアアアアッッッッ!」」」」」と叫んで……。


 それを見た私達は、「あ」と声を漏らして、茫然とした顔をして見て。


 リーダー格の人はそれを見て、子供達に向かって「ヤッタッ!」と怒鳴り (ここでこの言葉が『こら』と言う意味なのだと、思わずそう思ってしまった)。


 そしてその光景を見て、包帯顔で泣き出しながら「えええええっっ!?」と、驚きの声を上げていたボルドさん。


 ボルドさんはそんな光景を見ながら、くるっと私達の方を見て泣き出しながら――


「な、なんで僕を見た瞬間あんな風に逃げてしまったんだろう……っ? 僕、何かしたかな?」と、聞くけど、それを聞いて見ていたリンドーさんは、すっと目を細めて、そして真剣で、笑みなんてない顔でこう言った。


「B級だから」

「そんなぁ~っっ!」


 ボルドさんはそれを聞いて、さらに泣き出してしまう。


 それを見ていた私は、内心リンドーさんの言葉を聞いて、納得してしまった。それはきっと――みんなもそうだと思う。


 するとそれを見て、リーダー格の人は私達に頭を下げながら……。


「すまなイ。本当はいい子達なんだガ」


 と言うと、それを聞いていたクルーザァーさんは、すっと手を上げながら「いや」と言って……。


「あのくらいの子供達はそのくらいがいいだろう。元気に育っている証拠だ」と、冷静な音色で言うと、それを聞いていたメウラヴダーさんはそんなクルーザァーさんを見て、目を細めながら「お前子供に対しては優しいな」と、驚きの音色を添えて言った。


 するとそれを聞いていたガザドラさんが、ボルドさんの肩を叩きながら、慰めるようにしてこう言葉を吐いた。


「しかし子供は残酷だな。まさかお化けと言われてしまうとは」

「僕おばけって認識されてしまったのっ!? 僕正真正銘の人間なのにっ!」

「その姿でよく人間って言えるな。はたから見ればホラー映画のバケモンだぞ……?」


 ボルドさんの泣いた声に、キョウヤさんは呆れた顔をして言った。


 するとそれをみていたヘルナイトさんは、リーダー格の人に向かって「ところで、お前達を差し向けた人が待っていると言っていたな……。っと……、名は……?」と聞くと――リーダー格の人は溜息を吐いてくるっと私達の方を向きながら、自分の胸に手を置いてきっと少し怒っている顔をして――


「さっき言っていただろウ? 私はアルゥティラ。アルゥと呼ばれていル。しかしよそ者に来やすく話しかけられたくなイ。よって私のことはアルゥティラと呼ベ」と言った。


 それを聞いたヘルナイトさんは、頷きながら凛とした音色で――


「わかった。アルゥティラ殿」と、軽く頭を下げながら言った。でもそれを聞いていたティティさんは、むっとした顔をして、ティズ君を背後から抱きしめながら彼女は、苛立った音色でリーダー格のエルフ――アルゥティラを見て、隣にいたシェーラちゃんと一緒にこんな言葉を吐いていた。


「なんて偉そうな男でしょうね……」

「同文ね。ああ言った男は絶対にもてないし、絶対に独り身で生涯を終えるわね」


 シェーラちゃんはふっと微笑みながら言うけど、その笑顔の裏に感じる黒い雰囲気と、赤のもしゃもしゃを感じるのは……、気のせいなのだろうか……。


 そう思って私は少しおっかなびっくりにしていると……。


「アルゥティラ殿。私達に会いたい人とは?」と、ヘルナイトさんが聞くと、それを聞いていたアルゥティラさんは、むっとした顔をして、そして私を見下ろしながら背後の方を振り向いて、とあるところ――そこは一際大きな建物で、さっきこの里を見た時から目立っていた建物でもあった。


 その大きな建物の……、小さな蔵のようなところを指さしたアルゥティラさんは、その指をさした方向を見てこう言った。


にいル」と――


 その場所に向かった私達は、その蔵のドアを見る。


 一見普通の蔵なんだけど……、なんだかよくお化けが出そうな雰囲気を出しているような蔵だった。その蔵を見ながらアキにぃは、腕を組みながら首を捻ってこう言った。


「ここにその人がいるのかな……?」


 それを聞いてスナッティさんはにっと、意地悪そうな笑みを浮かべて――アキにぃを見ながら「にひひ」と言う顔をして……。


「なんすか? ビビってんすか……? 意外っすねぇ。あなたのような人がこんなちんけなところを嫌うなんて」

「……そういうあんただって暗いところ苦手そうですけどぉ……?」


 と、なんだか二人共黒い笑みを浮かべながら話しているけど、何だろうか……。すごく怖い雰囲気だ。


 それを見た私は、わたわたとしながら「あ、あの……、二人共……」と言って止めようと間に入ろうとしたけど、それをやんわりと制止するキョウヤさんとシェーラちゃん。


 それに驚きながら私は二人の名前を呼ぶと、シェーラちゃんはそれを見てこう言った。


「あれかなり深いものだから、生半可な弁解だと逆撫でよ」と、ふんっと凛々しい声で言ったシェーラちゃん。そしてそれを見ていたダディエルさんは、呆れながら溜息を吐いていると……。




『そうだよー。あんたが入ると喧嘩がヒートアップするからやめておくことが吉よ』




 と、蔵の奥から声が聞こえた。女の人の声だった。


 その声を聞いて、私達は驚いてその蔵を見て、アキにぃとスナッティさんはびくぅっと肩を震わせながら「「ひぃっ!?」」と、上ずった声を上げて驚いた。


 それを見てメウラヴダーさんは呆れながら二人を見て、私はアキにぃを見て思い出す。


 そう言えばアキにぃは……、ホラー系がめっぽう苦手だと……。


 そんなことを思い出していると……、蔵の向こうから聞こえる声は私達に向かって言っているのだろう。冷静な声でその声はこう言った。


『あんた達――武神卿と一緒に行動している人達……。っと……。なんだ。・『六芒星』の竜蜥蜴の男と、の女と一緒に行動している人達も来たんだ。まぁ。そこも予言通りっと』


 それを聞いていたボルドさん達とクルーザァーさん達は、ぎょっとした目をして驚いている。ティズ君は無表情で首を傾げていたけど……。


 その中でも一番驚いた顔をしているガザドラさんとティティさんは、その蔵の向こうに向かって――


「わ、吾輩達のことも予言していたとっ!?」

「どういうことですか? あなたは何者ですか?」


 と聞くと、突然――



 ――がたり。



 と、蔵の戸が、横開きのドアがひとりでに動いた。


 それを見たアキにぃとスナッティさんは、互いを抱きしめながら「「ひいいええええっっ!」」と、恐怖に染まった顔をして、声を上げてその戸を見た。


 それを見ていたキョウヤさんは呆れながら「結局怖がりはどっちもかよ」と突っ込んでいたけど、そんな声すら聞こえていないのか、二人はガタガタと震えてその戸を見る。


 私達もそれを見て、ぐっと身構えていると――


 戸の向こうから、女の人の声が聞こえた。


「そんな身構えないでって――別に食うわけじゃないし。っていうかこんなところにアンデット系いないから」と言いながら、がらりとそのドアを開けた蔵の住人。


 その人を見たみんなは、ぎょっとした顔をのまま固まった。


 そして私も驚いて一番驚いていたのは――ヘルナイトさんとガザドラさん。そしてティティさん。


 ティズ君はそれを見て、驚いた目をしていたけど、一瞬にしてその表情も無表情に溶けて消えていく。


 でも、みんなその人の姿を見て驚きを隠せなかった。


 それもそうだろう……。


 その蔵の中にいたのは――黒いミディアムヘアーで、耳が長い褐色の肌が印象的な、ところどころにある黒い刺青に、そんな刺青を曝け出すようにした、露出が多い白い布の服とスカート。手足には黄色い刺青があり、仄かに光っている。そして私達が驚いたのは、顔。


 その人の顔を覆う黒い包帯に赤い文字で何かが書かれていて、顔が見えない状態だ。その顔を見た私達は思わず何があったのだろうと思った。私だけかもしれないけど、固まっているみんながきっと、その顔を見て言葉を失ってそう思っていただろう。


 それを見ていた女性は、私達を見てその蔵の出入り口に座り込みながら足を組んで――さばさばしたような音色と口調でこう言った。


「私の名前はオヴィリィ。一応『星』の魔女として生まれたものだけど、あんた達のことはすでに視ていたから、知ってるよ。だから手短に――新しくなったアクアロイア王からの書状見せて」


 それを聞いた私はそのエルフの女の人――オヴィリィさんを見て、こくりと頷いてからそっとその人に向かって歩みを進めた。

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