PLAY43 とある男の災難な一日 ④
「おいおいおい……」
(どうなっちゃってんの? コレ……)
ティックディックが今まさに起こっているこの状況を見て、首を傾げながら仮面越しで引き攣った笑みを浮かべることしかできなかった。
簡単な話。
自分はガルディガルに殺されそうになった。そこまではわかっている。
しかしここからが問題だ。
突然、本当に突然。名も知らない三人がガルディガルの前に現れて戦おうとしているのだ。
頭の整理がつかなくてパンクしそうになっているティックディック。
まぁ……、そのおかげで助かったのも事実だ。
ティックディックは立ち上がりながら右手首を見る。
三人ともバングルをつけていた。白い、ティックディックと同じバングルを――
それを見たティックディックは、立ち上がりながらその三人に向かって……。
「まぁ、助けてくれてサンキューな」
と、力なく言うと、その言葉を聞いた盗賊風の男はティックディックの方を向き、彼を一瞥してからこう言った。
「あなた……、なんであのアフロに追われていたんですか?」
「あ? あぁ……、まぁ、ちょっとしたことがあってな」
「ふぅん………」
ティックディックの言葉を聞いて、ガルディガルを見る盗賊風の男。
そしてそのあとの言葉は何も紡がなかったが、ティックディックはそれを聞いて、首を傾げながら「あ、ちょっと……、おい」と言いながら、彼等のうち誰かの肩を叩こうとした瞬間……。
どんっ!
「は?」
盗賊風の男はガルディガルの方を向いたまま、後ろ向きにティックディックを突き飛ばす。
腕を後ろに向けて、そのまま押しただけのことだ。
しかしティックディックはそれを受けて、驚きながら後ろによろめき、そしてそのままどさりと尻餅をついてしまう。
ティックディックはそれを受けて、一瞬頭の中が真っ白になって仮面越しに目を点にしたが、すぐにはっと意識を覚醒させて――
起き上がりながら彼は叫ぶ。
「て。てめっ! 何し」
が。
それ以上の言葉が紡がれることはなかった。
ティックディックが叫んだ瞬間、ガルディガルは下半身のキャタビラのギアをガゴガゴと動かした途端、下半身のキャタビラから『ギャギャギャッ!』と砂煙を巻き上げるような加速を、その場でした。
それを見て、盗賊風の男は手に持っていた小さな弾がついた鎖を手に持って、目の前に立って構える。
すると――ガルディガルは彼に狙いを定めて……、そして……。
ぼっと急加速した。
砂煙が爆発のように吹き上げる。それを見たティックディックは (まずっ!)と思い、そのまま後ろに逃げ出そうとした瞬間。
ギャルンッ! ギャルゥンッ!
「いぃっ!?」
「あ!」
「お?」
「っ!?」
ガルディガルは急加速しながら、よく見るドリフトとしながら、ティックディックの正面に回り込んできた。
それを見たティックディックはぎょっとしながら声を上げて、そのまま急停止して体制を整える。
その光景を見ていたゴスロリの少女と赤い着物を着た男、そして盗賊風の男は背後を見て驚きの表情を浮かべた。ガルディガルはティックディックを見下ろしながら、ぐにっと笑みを浮かべて彼はこう言う。
「ぐあはははっ! 今日の吾輩は忙しいのだっ! 貴様等の処刑も決まっているが、まずはここにいる帝国陥落を謀ろうとしているこやつを先に処刑する! そのあとで貴様らの処刑をじっくりと執り行おうっ!」
言い終わると同時に、ギャギャギャギャッ! と、キャラビラのアクセルをふかしながら、ティックディックに向かって急発進するガルディガル。
それを見たティックディックは……、そっと立ち上がりながら己を指さす。指輪がついている指を自分に向けて、そして――
「
ふわりと――薄ミント色の靄を自分に纏わせて、スキルを発動した。
それを見たガルディガルだったが、そのまま急加速しながらティックディックを轢き殺そうとする。
急加速しながら轢き殺そうとしたが……、ティックディックはそれを見て、素早く横に避ける。
それを見ていた盗賊風の男は、鎖を持って背後を見ながら思った。
――間に合わない! と……。
ガルディガルもそれを察してなのか、にっと笑みを作りながら急加速しながら直進して、ティックディックを轢き殺そうとした。
そして、キャタビラがテックディックの服に触れ――
――ることなく、ティックディックはそのまま横に飛んで、ガルディガルは、ティックディックがいた場所を直進する姿を見るティックディック。
避けたティックディックを見て、盗賊風の男は目を見開いて驚きの表情を浮かべ、ゴスロリの少女はそれを見て「わぉ!」と、少々古臭く、オーバーと言っても過言ではないような驚きの声を上げて、一番驚いていたガルディガルは、ぎょっとしながらティックディックを見て……。
「貴様……っ! 今何を……っ!?」
「驚くことはねえだろうが。俺はただ、冒険者特権のスキルを使ったんだよ」
血走った目で己を見ているガルディガルに向かって、余裕の音色で煽るティックディック。
しかし仮面の中の表情はたらりと汗を流し……、そして――
(――アブねぇ。回避力を上げなかったら。というか、あれ避けていないと完全に俺はハンバーグだったっ!)
焦りながら彼は急加速の直進をしてしまい、思うように曲がることができないガルディガルを見る。
ガルディガルはそんな彼を見て、「ヌウウウウウウウウウウッッッ!」と唸り声を上げながらキャラビラの向きを変えようと体を動かそうとした。
しかし――
「ほぉおお」
と、赤い着物を着た男が前に立ち、そして大きな刀を振るい上げて、そのまま――
「――とぉいっ!」
と、ぶんっと空を切る音を出しながら、振り下ろす!
それを見たガルディガルははっとして、その大きな刀から逃げるように、ギアを動かして、後方に向かって急加速する。
刹那――
ばふぅんっ! と、大きな刀が砂地に向かって叩きつけられたと同時に、ぶわりと大きな砂煙が辺りを包み込む
それを受けて、ティックディックは目を瞑って腕で目を守る
ガルディガルもティックディックと同じように目を隠して「うぐぅ!」と唸り声を上げる。
すると……。
――ぱしり。
「!」
突然だった。
突然手首を掴まれる。そしてそのまま――手を掴んだ人物に引っ張られてしまうティックディック。
「え? お?」
「――しっ」
声を上げようとした瞬間、静かにという合図と声が聞こえて、砂煙越しに黒く見えた。それを聞いたティックディックは最初、首を傾げたが、すぐにそれが分かった。
「どこだぁ! あの四人……、どこにいるのだぁ!」
「!」
ガルディガルの声。
その声を聞いて振り向くと、ガルディガルはうごうごとキャラビラを左右、前後に動かしながら、ぶんぶんっと手を振って――いない存在に向けて攻撃を繰り出していた。
誰もいない――徒労の攻撃を繰り出している。
それを見て、ティックディックは――
(砂の煙を使って煙幕の代わりってか)
少し脱帽しながら思っていると、彼の手を取った盗賊風の男は小さな声で「こっちです」と言い、彼の手を引いて駆け出した。
それを聞いたティックディックは「おぉ……」と、驚きながらも頷いて、今だけはその盗賊風の男の言葉に従うようにその場を後にした。
そして――
「うううぬうううあああああああっっっ!」
と、最後の徒労の攻撃を繰り出したガルディガルは、はっとしてその目の前を見る。
砂の煙が引いてきて、景色が明るくなってきたのだ。
ガルディガルはその景色が完全に鮮明になる瞬間を、ただじっと待った。
じっと待ったところで、奴らを轢き殺そう。この砂煙だ。誰も歩けるような視界ではなかった。つまるところ――
誰もがその場で直立だった。止まっていなかったに違いないと思っていた。
だからガルディガルは、その砂の煙が晴れるのを待った。
が…………。
ざぁっと――砂の国には珍しい風が舞う。と同時に、砂の煙も晴れて……。
ガルディガルしかいないその場所に、鮮明な世界を与えた。
彼しかいない空間を。
ティックディックもあの三人もいない世界を見て――ガルディガルはぎりっと歯を食いしばり、ぎりぎりと握り拳を作って……。
晴天の空に向かって――怒りの咆哮を上げた。
◆ ◆
「――ふぅ」
ガルディガルの咆哮が上がったその場所から、遠く離れたところ、徒歩では到底たどり着けないところに、ティックディックと彼を助けた三人は息を整えながらその場所にいた。
その場所とは――砂の国にいくつもある、岩に囲まれた岩石地帯。
せり立った岩の壁は赤く、そして年月が相当立っているのか、明るい色の地層がその壁を彩る。
更に言うと岩を登ろうとしても、滑らかな岩肌で掴まるところがない。
云うなればロッククライミングには到底向いていない岩壁だ。
そんな岩石地帯の横穴ができているところに、四人はいた。
「危なかったなー」と大きな刀を背に背負った鞘に納めながら、赤い着物の男は盗賊風に男に向かって言った。
その言葉を聞いて盗賊風の男は「ええ」と言いながら……。
「『
と、ほっと胸を撫で下ろすように盗賊風の男は言う。それを聞いていたティックディックは、小さい声で「あのー……」と声を上げる。
しかし彼の声が聞こえていないのか、無視しているのかはわからない。盗賊風の男の言葉を聞いて、ゴスロリの少女は頬を膨らませながらぷんぷんっ。と怒りを露にして――
「っていうかあの人も卑怯だよ」
「おーい」
少女は続けてこう言う。ティックディックを無視して――
「あんな機械を使って、こっちが不利なの知っているくせに卑怯だよ」
そんな少女の怒りを見ていた盗賊風の男は、ちらりとティックディックを見て、そしてそっと手を離してから――彼はこう言った。
「すみませんね。こんなことに巻き込んでしまって」
頭を下げて言う盗賊風の人。その人を見下ろしながら、ティックディックは驚きながらも「いや、いやな……、いいんだけど」と、頭を掻きながらそう言い、頭を上げてもらうように頼んだ。
内心……、(正直このままとぼけるフリされても嫌だったからな、助かったぜ。こんなところでそのボケを区切ってくれて) と思っていたが……。
「あれ? おじさんなんでこんなところに?」
「オメーなんでこんなところにいやがんだ? 迷子か?」
(こっちは気付いていなかった的なアレかよ)
真顔でティックディックを見ている少女と赤い着物の男を見て、ティックディックは汗を流しながら呆れた。
そんな彼を見て――盗賊風の男は肩を竦めながらほっと胸を撫で下ろしていると……。
「おかえりなさい」
と、かつんっ。と横穴から声が聞こえた。
その声を聞いた盗賊風に男は、その声がした方向を振り向きながら「あ、うん。ただいま」と声をかけた。
声を聞いたティックディックは首を傾げながらその横穴から出てくる人物を見ると、ゴスロリの少女はわっと明るい笑みを顔に出して、その横穴から出てきた人物に向かって手を振って――
「ただいまー!」
と言い、赤い着物の男も同じようい満面の笑みを浮かべながら「ただいまーだ!」と、手を振っていた。
そんな光景を見て、ティックディックは再度、横穴から出てきた――鎌を手に持った、黒のローブで深くかぶって、黒い脚からはこつこつと音を鳴らして歩んできた……。黒い目で、片目を白髪の前髪で隠している少年を見て、ティックディックはふぅんっと声を零し……。
「魔獣族か……」と、声を零した。
するとその少年はティックディックを見。そして盗賊風の男を見て――ティックディックを指さしながら彼は淡々とした口調で……。
「あの……、トリッキードールって、しゃべれましたっけ?」と聞いた。
それを聞いた盗賊風の男は目を点にして驚き、それを聞いていた本人は――
「――俺は魔人だっ!」と、仮面越しに怒りを露にしながら突っ込みを入れた。
それから……。
「先程は飛んだ失礼をしました。僕は元ネルセス・シュローサのズーです。よろしくお願いします」
「いや、よろしくよりもこれは一体どうなってんだ? 俺にはさっぱりなんだが……?」
鎌を持った少年――ズーの言葉を聞いて、とうとう理解力がいかれそうになってきたティックディック。
頭を掻きながら彼はずーを見て言うと、それを聞いていた盗賊風の男はティックディックを見て声をかける。
ちゃんとさん付けをして――
「確かに、このことについて巻き込んでしまったことはお詫びをします。ですけど……、もう狙われてしまったんです」と言いながら、彼はとんっとティックディックの肩に手を置いて、そして真剣な目をしてティックディックを見上げながらこう言った。
「――こうなってしまえばもう赤の他人ではなくなってしまいます。僕らも追われているので同じ境遇者として、仲良くしましょう」と言い、盗賊風の男はティックディックを見て、笑みを浮かべながら自分を指さして――
「僕はカグヤです。シーフゥーの猫人。カグヤです」と言った。
それを聞いたティックディックは、溜息交じりに首を横に振って……。
「いやな……、俺はただ」
「はいはーいっ! 俺っちも自己紹介するぜー!」
と、ティックディックの言葉を遮るように、彼の前に出た赤い着物の男は、盗賊風の男――カグヤに向かって笑顔で言い、そしてティックディックの方を振り向いて、彼はこう言った。整った顔立ちとは裏腹の笑顔で……。
「俺っちは武士の航一だ。よろしくな――おっさん!」
「俺はおっさんじゃねえぞクソガキ」
と、赤い着物の男――航一の言葉を聞いたティックディックは、その満面の笑みを見てさらに苛立ったような雰囲気を出しながら、彼は悪態をつきながら言った。
その言葉を聞いた航一は首を傾げながら――「おぉ! そうなのか! 悪ぃなおっさん」と、申し訳なさそうにして言ったが、結局変わらずの言葉。ティックディックはもう苛立つことですら疲れているらしく、はぁっと溜息を吐きながら「いや……いい」と諦めの言葉を吐いた。
するとそれを聞いていたズーは航一を見ながら「なんでだめだと思っていることを言ってしまうでしょうね……」と、小さくカグヤに向かって聞くと、カグヤは小さい声で――「しょうがないよ。体で覚える人と頭で覚える人って、脳の作りが違うんだよ。覚えることがすごく苦手な航一にとってすれば、悪いと思っただけでも上出来だよ」と、半ば諦めたような目で彼を見て言うカグヤ。
それを聞いたズーは納得したかのように「そうですか」と言った。
すると――
「ねぇねぇ! おじさん」
「っ! だぁかぁらぁ! 俺はおじさんじゃ」
と言って、声がした下の方を見ると、そこにいたのはゴスロリの服を着た少女。
少女はティックディックを見上げて、にこっと微笑みながらこう言った。
「コノハはね……。コノハ! エクリスターのコノハなの! よろしくね! マジシャンのおじさんっ!」
ゴスロリの少女――コノハはすっと手を伸ばして握手を促す。
ティックディックはその言葉……、特に『おじさん』発言に苛立ちながらも、ここは大人の対応として怒りを顔に隠して作り笑みを浮かべた彼は――
「そうかいそうかい。よしよし――俺はティックディック。エンチャンターだ」と言って、くるりと踵を返しながらすたすたと四人から離れるように、早足でその場を離れていく。
それを見ていた四人は――首を傾げていたが、カグヤだけはすぐにティックディックの行動を察知したのか――目をすっと座らせて、彼は思った。
――あ、こりゃだめだな。と……。
それを見ていた三人は目を点にして見ていると、ティックディックは彼らから離れるようにすたすたと歩みを進めながら、手を上げてこう言う。
「助けてくれたことはサンキュって言っておく。でも俺はこれ以上最悪な一日を過ごしたくないんで。このままお暇させてもらうわ」
その言葉を聞いたカグヤは『はぁっ』と思いながら首を垂らし、それを聞いていたズーは目を見開いて驚きの顔を見せた。
だが――
――がしぃ!
「っ!?」
ティックディックは驚きながらが君っと体を前のめりにした。胴体に感じる圧迫感と、重みを感じて、ティックディックはそっと己の胴体を見た瞬間、目を見開いた。
そこにいたのは――
「待って待って! お願いまだ行かないでー! まだお話したいー!」
コノハがぎゅううっとティックディックの胴体にしがみつきながら、彼の進行を阻害していた。妨害と言っても過言ではない行動だった。
それを見たティックディックは木の葉を見下ろしながら、苛立った音色を出して――
「っ! おいガキっ! 離れろって!」と、コノハの手を掴んで、引きはがそうとしたが、これまた案外取れなかったのだ。コノハはぎゅううっと彼の胴体に腕を巻き付けて、そのままへそのところで己の手と手を掴んで、離さないようにぎゅうっと己の手同士とを掴んでいたのだ。
それを見たティックディックは苛立ちを更に募らせて、その手を掴んで――
「いいから離せええええええ~っ!」と、力一杯コノハの手をひっぺがえそうとしたが、コノハも負けじと「い~や~だ~!」と言いながら、離れようとしない。
それを見ていたカグヤは、はぁっと溜息を吐きながら、ティックディックに向かって――
「コノハ――わがままはだめだよ。すみません。この子こう見えても十四歳で、多分思春期とかそういった感じの心境で、新しい人と話がしたいんでしょう?」と言った。
それを聞いたティックディックは、コノハを見下ろしながら苛立った顔を仮面越しで見せる。それを見たコノハはむっとしながらもティックディックを見上げる。
むっとして、頬を膨らませながら顔を赤くしてコノハはティックディックを見上げている。そんな離さない熱意を見たティックディックだったが……。
「だからと言って、俺はここで長居はしたくないね。あのアフロ男に殺されたくねえんだよ」
「でしたら尚更ここで休みましょう。疲れているんでしょう?」
と、カグヤは言った。冷静に、慌ててもいないような言い方で。
それを聞いたティックディックは、首を傾げながら、怪訝そうな顔を仮面越しで出すと、航一は頭を抱えながら、にっと笑ってこう言った。
「俺っち達――ここに何週間もいるんだけど、誰にも見つかったことがねえんだよ」
「つまりは絶好の隠れ家です。僕も最近ここに来たんですけど、一回も見つかったことがないです」
ズーも後押しする様に、冷静に言う。
それを聞いて、ティックディックは「む……」と、困ったように唸り、そして考える……。
(今の状態で警戒もせずに休むことはだめだ)
(だが今の現状――俺一人であの大男を相手にするのは無理)
(消去法として、ここでしばしの休息をとって、そんである程度の情報を入手して……)
(いやこんな奴らから得る情報って何なんだ? きっとしょうもねぇ情報だらけだろうな。そこは当てにしないようにしよう)
(第一俺やこいつらだってあのアフロに………。ん?)
ティックディックはとあることを思い出して、コノハの引きはがしをやめてから、彼はカグヤを見てこう聞いた。
「そういえば――お前達も処刑対象だって聞いたけど……、お前等ももしかして……、転覆とかそういったやばい系の妄想をする奴らなの……?」
「やばい系なんて、世界征服を目論んでいる大バカ者しかしませんよ。第一そんなこと――僕らの所属上できません」
(ですよね)
きっぱり言うカグヤの言葉に、ティックディックは安堵の息を吐き、カグヤの言葉を聞いてカイルのことを思い出しながらほくそ笑む。
カグヤの言葉を聞いた航一も、それを聞いてはっとしてから思い出したかのように手を叩いて、彼はティックディックを見てこう言った。
「俺っちならできそうだけど……、俺っち達はそんなこと考えたこともねえよ」
「? じゃぁ、何かこの国の人達……、ってか。NPCか? 癇に障るようなことを言ったのか?」
ティックディックはようよう理解に苦しみだし、一体何をしたのかと再度聞くと、それを聞いていたコノハはティックディックに抱き着きながら彼を見上げて……。
「コノハ達はね。わざとやったんだよ」と言った。平然とした明るい声で。
「………はぁ?」
その言葉に、ティックディックはもう理解の限界に到達して、その一言を言ってしまう。それを聞いて、カグヤは頭をポリッと掻きながら、彼は言う。
「えっとですね。僕等はとある理由で狙われて、勝ってから行く方法を突き止めようとしているんです」
「行く方法……? 行くってどこによ?」
「バトラヴィア帝国です」
その言葉を聞いた瞬間、仮面越しに目をひん剥かせたティックディック。しかしカグヤは話を続けた。関係のないティックディックを、関係のある人物に仕立て上げるかのように、後戻りできない様な言葉を――ティックディックに向けた。
「コノハと航一はバトラヴィアにいるとあるパーティーに会うため。僕はきっとその場所に来る人達に会うために、ズーは僕達の目的に協力するためにここにいます」
つまるところというか、アバウトに言いますと――と、カグヤは言葉を一旦区切り、そしてコホンッと咳込みながら真剣な目つきでこう言う。
「あのアフロ男に勝負を挑んで、勝って――そしてバトラヴィア帝国に乗り込もうと思っている。それぞれの目的のために――ね。それが僕達がここにいる目的です」
そのアバウトな目的を聞いたティックディックがあまりにもアバウトな目的を聞いて、「はぁ?」や「マジで?」 などと言った言葉が出ないまま。直立でいた。
カグヤはそれを見てはっとしながらも「えっとですね」と、訂正を加えるようにして言った後――
「今はアバウトに言いましたけど、これから詳しく話します」と言った。
そんな光景を、ズーはただじっと見ているだけだった。じっと……、ティックディックを見ているだけだった。
そんな彼らの背後に迫る黒い影の存在に気付かず、カグヤはティックディックの自分達の目的を話し出した。
ティックディックの最悪の一日は、少しずつ佳境に向かっていた……。
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