PLAY43 とある男の災難な一日 ①
ハンナ達が一時的な徒党を組んでいる時。とあるところでも動きがあった。
それは――砂の国の首都……。
バトラヴィア帝国。
砂の国の最果てにある大きく、そして厚い壁に守られている要塞。
アムスノームとは違い、すべてが鉄製の壁によって包まれている――ドーム状の壁が砂の国にとって不釣り合いなその姿で佇んでいた。
その鉄の壁は魔王族でも壊せない封魔石が練りこまれており、簡単には壊せない。
そんな鉄壁の守りの中は――あまりに豊かな生活とは程遠い世界だった。<PBR>
その世界はドームの中で生活をし、日も、夜空も当たらない世界で人工的な光と闇の中で生活をしていた。
何の疑いもなく、籠の中で生活をしている国民は王に心酔していた。
否――洗脳されていた。の方がいいだろう。
その街の構造は――三角形の形の地形で、一番上から帝宮。貴族層。平民層。下民層に最下層――下水道に住んでいる奴隷層と言う形で形成されている。
奴隷層には重労働の工場がたくさんある。
それはすべて、武器。防具。
そして
奴隷層から伸びている煙突のようなところから白い煙が立ち込め、そのドームの中を煙で埋め尽くそうとしているが、換気口を起動すればその煙問題は解決する。
そしてそれらの仕事に於いて、区分が決まっている。
下民は武器、防具、
その最終検査――つまりはちゃんと使えるかという実験台。大量の武器や防具の運搬、その他重労働を奴隷層の者達がこなす。
平民貴族は、それを見ながら優雅に時を過ごす。
これがこの帝国の在り方だ。
食料は帝宮を優勢にして、奴隷層には与えずに行う。これが世界の摂理なのだ。
神である王に、悠々自適な生活を送ってもらえるように――彼らは尽くすのだ。
王のために、生きて死ぬことこそが、幸せなのだから。
その意に反する者達は、奴隷に降格されて、奴隷層で死ぬまで働かされる日々を送る。一歩間違えれば処刑される層に降格されてしまうのだ。だから逆らえない。
王に――逆らえないのだ。
だがそれも王の気まぐれでどうなるかわからない。それも王の、神の言葉なら、逆らうことができないのだ。
結局この帝国は、王にとって自由な世界なのだ。
そして――この帝国の人口を比で表すと……。貴族:平民:下民:奴隷=3:4:6;25となる。
圧倒的に奴隷が多い。何故多いのかはこの国の在り方が理由の一つだ。
バトラヴィア帝国の貴族層と平民層の者達は、楽をして人生を謳歌したい。その欲望を強く抱いているがため、奴隷を多くして悠々自適な生活をしているのだ。
奴隷は道具。
その言葉を体に、心に染み込ませながら……。
万が一奴隷がいなくなれば、外に出て帝国に仇名す者達を奴隷として連れてくればいい。
そうすれば問題は解決する。国の問題はすべて解決するのだ。
すべて解決する――
はずだった。
そんな完璧な国の在り方に反するものが現れた。それは冒険者だ。
異国において、バトラヴィアの在り方はあまりに外道で社会的にも受け入れられないものだった。ゆえに冒険者はバトラヴィアに対して異を唱えた。
間違っていると。
しかしバトラヴィア帝国は、その言葉を受け入れることなく、その言葉を無視していた。だが最近になって――浄化の力を持っている冒険者が現れた。そしてそれと同時に……、とある冒険者が来たのだ。二人の冒険者で、親子と名乗っていた。
その親子の――父親は王に対してこう言った。
「お前さん達に協力を申し出たい。代償として、お前さん達に技術を儂らに提供してくれ。さすれば」
と言って、父親はふっと手を動かしたと同時に、ふっと、彼らの背後に何者かが飛んで前に躍り出たのだ。
それを見て、帝王は目をひん剥くかのように驚いて、それを凝視した。
その仮面をつけた人物は、まるで歌舞伎を彷彿とさせる、赤を基準とした服装に、赤い長髪。そして白い肌に歌舞伎の模様が入った仮面をつけた、筋肉質の男が前に立っていた。
父親は言った。目の前にいる――仮面をつけた人物に向かって、彼は言った。
「ここにいる『12鬼士』が一人――紅き猛獣ボルケニオンの様に、ガーディアンを制しましょうぞ」
その言葉を聞いて、帝王はすぐに縦に首を動かした。
その人物こそ――
『バロックワーズ』と『BLACK COMPANY』のリーダーであるが、彼らの詳細は後日話すことになる。
◆ ◆
帝宮――謁見の間。
その場所は煌びやかな金色の壁と床、そして装飾品と置物で満たされている。
一言でいえば悪趣味の部屋であるが、これが帝宮一面に広がっているのだから、悪趣味にもほどがあるという言葉はこの時に使うべきであろう。
そんな謁見の間には――一人の王と、その前に膝をついて頭を垂らしている六人の鎧の騎士がいた。
半裸で、ふくよかにしてはふくよかすぎる……、肥満体質の頭に髪の毛がない脂汗がひどい男。十指にはいくつもの指輪がはめられており……、両隣に露出が高い美しい女性を侍らせている。しかしその手首と首には――鉄でできた鎖が付けられている……。その首はまるで首輪の様に、王が握っているその鎖に伸びている。奴隷の女性達を手元に置いて、「ぐひひ」と下劣に笑いながら女性の体を撫でている……。
何度も見ても趣味が悪い。
そんな趣味が悪い砂の国の『略奪の欲王』こと――ガルゼディルグト・イディレルハイム・ラキューシダー王十四世は、黄金でできた椅子に座りながら、手に持っていた生肉を頬張り、くっちゃくっちゃと咀嚼音を立てながら、口から零れた肉の破片を床に落とす。
それを見て、手に持っていた鎖を引っ張る帝王。
その鎖に繋がれた一人の奴隷の女性は、ぐんっと引っ張られながら――「うっ!」と声を上げて前のめりに倒れて、床に落ちたそれを手で拾い上げる。
バトラヴィア王はそれを見て、ニタニタしながらその女性のラインを見ていたが、目の前から――
「バトラヴィア王よ」と声が聞こえた。
その声を聞いて、帝王は内心舌打ちをしながらむすくれた顔をして、目の前にいる六人の騎士を見た。
声を上げた一人の騎士は――皮と骨だけしかない顔立ちで、縦長に長い。いうなれば顔はひょろながと言った方がいいだろう。そんな顔立ちの壮年の男は、黒くて
「ご報告いたします……」
「なんだ?」
王は言う。それを聞いた若芽の髪の男は言った。
「辺境の地にある村の殲滅が整いました……。これでまた帝国の領土が増えます……」
「おぉ」
バトラヴィア王はその言葉を聞いて歓喜の声を上げて、その男を見て――彼は言った。
肉を片手に他立ち上がって、興奮した顔立ちで、ぱたりと落ちる汗を無視して、彼は言う。
「でかしたぞ! これで我が国の領土問題が解決されるっ! でかした! でかしたぞ! 暗殺軍団団長――ピステリウズ・ペトライアよっ!」
「ありがたきお言葉……。これも神であるあなた様の加護があってこそです……」
深々と頭を下げて感謝を胸に留める若芽男――ピステリウズ。
それを聞いていた隣の大男は「ぶあっはは!」と大きな声を上げて笑った。それを聞いていたピステリウズはすっと頭を上げてその大男を見て、低く、そして冷たい笑みを浮かべながら彼は聞いた。
「何がおかしいのかな……?」
すると――彼の隣にいた男は笑いながら顔を上げた。
バトラヴィア王よりは痩せているが、それでもふくよかな胴体に腰回り。手足の贅肉も異常で、一目で太り過ぎと言われてもおかしくない体つきだが、体にちりばめられているような機械の鎧を身に纏っている。その体とは裏腹の少ない髪の毛を三つ編みにした黒髪に、つぶらな瞳に小さなおちょぼ唇が印象的な二メートル級の大男が、手に持っていたスナック菓子を頬張りながらピステリウズに向かって言った。
「おまえいつもそうやって、かぶあげているよな? おまえこそこそとかくれないとこうげきすることができねぇやつなのに、ずりぃよなぁ! ずっちぃよなぁ! でもしかたねえよなぁ! おまえこそこそしねえとできねえしょうしんものなんだからなぁ!」
「………………言語能力最下位に言われたくないね……。お前もあの落第団長と同じ運命を辿りたいのかい……? 処刑軍団団長ドゥビリティラクレイム・パーム団長さん……?」
そう言うピステリウズ。黒い笑みを浮かべながらも苛立った音色で言う彼を見て、ドゥビリティラクレイムはむっとした顔をして「なんだとぉ?」と言いながら立ち上がろうとした時――
『カカッ』
突然――機械音が聞こえた。
その声を聞いてその方向を見たピステリウズとドゥビリティラクレイム。その方向にいたのは、前髪で片目が隠せるくらいの長さの、腰まである白髪に青い瞳。一見してみれば美形と言われてもおかしくない。あのイェーガー王子と比べたらきっと負けず劣らずの先天の美貌を持っている男性だったが……、残念なところがある。それは彼の口元があまりにも機械の口で、がちがちと音を立てながら機械のマスクをつけている男。そしてその腕も機械の腕で、細身の体ではあるが剛腕の腕のせいでアンバランスである。
そんなアンバランスな体を持った男は――『カカカッ』と機械音の声を上げながら、彼らを見てこう言う。
『お前達。王の前だぞ――静かにしてくれ』
……機械音の、作られた声。言語能力が低いドゥビリティラクレイムよりかはましだが……聞き取りにくい声だ。
それを聞いたピステリウズは、引きつった笑みを浮かべながら「ふひひ」と笑い声を上げて彼は言う。
「お前もここにいるおデブと同格の残念さだな……、なんで本当の声で言わないんだか……。ふひひ」
その言葉を聞いた白髪の男は、じろりとピステリウズを睨みながらこう言う。低い、機械の声で彼は言った。
『本当の声で話すだなんて烏滸がましい行為だ。ゆえに俺はこの声で一生を生きていく。煩わしい声など王の耳の届けてはいけない』
「それはとうといこういだなっ!」
げらげらとドゥビリティラクレイムは声を上げて大笑いをした。それを聞いていたバトラヴィア王は、じろりと彼らを一瞥した。
刹那――
ぶわりと来た殺気。
それを感じた六人の軍団団長は、気を引き締めながら再度頭を垂らして、彼等は言葉を噤んだ。
バトラヴィア王はそんな彼立を見下ろしながら、椅子に座って頬杖をついている。先ほどとは真逆の表情だ。雰囲気からにして、完全なる不機嫌だ。
そんな不機嫌を感じ取った六人。
どくどくと心音の速度が速くなる。
ドロドロと汗が流れ出す。
雰囲気に、殺されてしまいそうな感覚に陥りながら……、彼らはバトラヴィア王の言葉を待った。
バトラヴィア王は、白髪の男を見ながら――じっと彼の後頭部と体を一瞥して……、口を開く。
「……養成軍団団長ブルフェイス・イラーガルよ」
『ハッ』
白髪の男――ブルフェイスは頭を垂らしながら返事をする。
返事をした瞬間、彼の心はすでに乱心状態だ。
平静を装っているが――先ほどの無礼もあり、彼は内心がくがくと震えて、王の言葉を待っていたのだ。
処刑される? もしかしたらこの場で死刑になってしまうのか? しかし最も嫌なのは――王のにも会えずに監獄の中で一生を終えることが、とても心苦しい。
なにせ――死はこの国にとってすれば……、救済なのだ。
そして慈悲なのだ。
それをせずに監獄で一生過ごすことは、精神的にも苦痛に等しい。
それだけは避けたい。そう思ったブルフェイス。
するとバトラヴィア王は――
「貴様――西方の土地の殲滅はどうだ?」
一瞬の沈黙。しかしすぐにブルフェイスは答える。
『ハッ。もうすぐに鎮圧、そして殲滅にかかれます』
「ふん。遅すぎるぞブルフェイス団長よ。それでは遅すぎる。ピステリウズ団長を見習い、すぐにでも殲滅に行け」
『は……っ。ハハッ!』
と、彼は立ち上がり、すぐに謁見の間を早足で後にした。
それを見ていたピステリウズは、頭を垂らしたまま「ふひ」とほくそ笑む。するとそれを聞いていたバトラヴィア王は――
「ピステリウズ団長にドゥビリティラクレイム団長。お前達も次の持ち場に行け。こんなところで時間を空費魔があるのなら、ちゃっちゃと体を動かせ」
愚か者が。
そうバトラヴィア王は言う。
それを聞いて、びくりと体を震わせたピステリウズとドゥビリティラクレイムは、ぼたりと汗を落としながらすっと立ち上がり――敬礼をしながら彼らは言う。
「は、ははっ……!」
「すいませんおうさま~っ! いますぐざいにんしょけいにいきますぅー!」
その言葉を言いながら、彼らもその場から離れて言ってしまった。
そして――この場に残ったのは……、三人。
そのうちに一人はくすくすと笑いながら、その光景を見て小声でこう言った。
「滑稽」と。
小声で言った人物は――女性だった。
女性は紫のショートヘアーに鎧性の首輪。そして……、服など着ていない。鎧しか着ていないその服装で、露出も高い。下半身の――両足の太ももから下の足が足ではない。いつぞや書見たネルセスのような、足の先が尖っている節足の足の
女性はその光景を見ながら――くすくすと微笑みながら「滑稽ね」と言い、彼女はそっとバトラヴィア王を見ながら、すっと、胸に手を当てて、そして赤く染まった頬をバトラヴィアの王に向けて、彼女は言った。
「王よ――ワタクシ拷問軍団団長セシリティウム・アラ・ペティシーヌは、今日で奴隷層の住人を十万人調教致しました。ワタクシはいつでもあなた様のために、いつも忠義を尽くしています。あのような下賤のものとは違い、王のために、愛する王のために、愛する我が君のために、ワタクシはいつもあなた様のために」
「己の自己主張はいい。吾輩が聞きたいのはそのあとだ」
「っ」
睨みながら凄んだ目を見て、表情と体を強張らせてしまう女性――セシリティウム。しかしなぜだろうか……、上気した頬が更に赤みを増した。
心なしか息が荒い。
バトラヴィア王はセシリティウムに聞いた。
「拷問して、この国に仇名す不届き者はいたか?」
その言葉にセシリティウムは『はぁっ』と……紅葉のような赤い頬で、己の興奮を落ち着かせながら、彼女は首を振りながら「いいえ……」と言った。
それを聞いたバトラヴィア王は――そうかと言い……。
「わかった。下がれ」と言った。
それを聞いて、セシリティウムは「んっ」と言いながらも、そっと立ち上がる。かつんっと、
はぁ……。はぁ……。と……、荒い息を整えながら。
それを見ながら、この中で唯一エルフであるレズバルダは、それを見てふぅっと溜息を零した。
――なぜここの者達は、こんなに狂っているのか? と、彼は内心思った。
そして――内心首を横に振って……。
――否違う。この者達が、ではない。この国そのものが狂っているから、その狂いが伝播してしまっただけなんだ。きっと、誰もが良心を持っている。そうに違いないんだ。
そう思いながら、レズバルダは頭を垂らしたまま考える。
この国の在り方を、この国のあるべき姿を想像して……。
すると――
「っほっほっほっほ」
「!」
独特な笑い声を聞いて、声がしたその方向を見たレズバルダ。
彼の隣にいたのは、つるりとした丸坊主の頭に白い顎髭を生やし、両目には機械で作られた眼鏡をかけている。ピステリウズと同じようにマントで体を覆い隠した腰を曲げた小柄な老人が立っていた。
老人はくつくつと笑いながら――バトラヴィア王を見てこう言う。
「王よ。お前さんは本当にせっかちじゃて」と、王の前で敬語ではないため口で話しながら、老人はくつくつ笑いながら話を続ける。
「何をそんなに焦っておるんじゃ? 焦るような要因なんぞ、この国にはないはずじゃ」
と言いながら、マントから手を出した老人。
しかし、その手は手ではない。
きりきりと……、機械で作られた武骨な手で、それを見ていたレズバルダは、顔を歪ませながらそれを見る。そして内心――
――この機械人間めが。と、老人に対して毒を吐く。
しかしそれを聞いたバトラヴィア王は「ち」と舌打ちをし、煩わしいと言わんばかりに顔を顰めて、握っていた肉をその辺の投げ捨てながら、彼はこう言った。
「いつぞやか……、浄化の力を持っている天族の小娘がいるという話を聞いたな?」
「えぇ。えぇ。聞きましたとも」
「……言葉だけですが」
と言いながらもレズバルダはふと思い出す。その浄化の力を持った小娘……。該当する人物がいたことを思い出したのだ。
それは――アクアロイアで出会った、青い髪に、金色の瞳が印象的な……、天族の少女。
――いや、まさかな。
レズバルダはその少女を思い出して、まさかと思い、頭を上げようとしたが、その可能性を消去した。理由は簡単だ。偶然にしても、その少女がその浄化の力を持っているとは限らない。それに――『終焉の瘴気』の浄化は、あの最強の剣士でもできなかったのだ。
ありえない。
浄化の力を持っている――つまりは『八神』の浄化ができる存在ということになる。
そんな浄化の力を持っている人物なら……、もっと大人数で来てもおかしくないだろう。
そう考えながらレズバルダは話を聞く。
「しかし浄化とは、あの偉大なる……おっと、失言失言。あのサリアフィアと同じ浄化の力を有しているということでしょうかな? バトラヴィアの王よ」
「そう考えた方がいい。あのアルテットミアのサラマンダーにライジン、そしてアクアロイアのリヴァイアサンを浄化した人物だ。ここももうじき危うくなる」
「……『略奪の欲王』が、ここまで危惧する少女と言うべきでしょうかな……?」
「その通りだ。
「っほっほっほっほ。そこまで危惧する存在ですか」
老人――グゥドゥレィは顎に生えた髭を撫でながら言う。くつくつと笑いながら言うそれを見て、バトラヴィア王はぎりっと歯ぎしりをして、近くにあった金のコップを片手にもって、それをグゥドゥレィに向けて――腕を大きく振るい……。
「貴様――吾輩を馬鹿にするのかぁっ!」と、ぶんっと音が出るような投擲をした王。
それを見て、レズバルダはすっと腰に差していた刀を手に持ったが――
そのコップがグゥドゥレィに当たる瞬間……。
ガァンッ!
バギィッッ!
と……、金のコップはグゥドゥレィに当たる前に、何かの攻撃を受けてしまい――そのままばらばらと金色の床に崩れて落ちていく。
レズバルダはそっと刀から手を離す。
そしてグゥドゥレィはくつくつ笑い――きりきりと背中から出ているそれを動かしながら、彼は言う。バトラヴィア王を見て、背中から出ているいくつもの拙速の機械の足を見せながら……、彼は言った。
「確かに――その浄化を危惧することは、こちらも大変ご理解しておりますじゃ。しかし、されどしかし。焦ってはいけないのです。ここは儂等にお任せください。すでに手は打っております」
「手だと……?」
「はい。はい……。先日失態をした者に名誉挽回と言う名のもと、その浄化の力を持っている女を排除しろと命令しておきましたぞ。なにせ――彼奴は顔を知っておるが故、また国が平和になるのも時間の問題です」
グゥドゥレィは言った。にっと、歯が一本しかないその笑みを見せながら。
それを見て聞いたバトラヴィア王は少し考えた後、ふぅっと安堵の息を吐き、そのままじとっとレズバルダを見た。
レズバルダはすっと頭を下げながら王の言葉を待つ。
バトラヴィア王はその頭上を見ながら彼はレズバルダを指さして――こう命令した。
「今すぐ偵察に向かえ。偵察軍団団長――レズバルダよ」
「――はっ」
と返事をして、彼はすっと立ち上がったと同時にその場から早足で去る。
それを見ているバトラヴィア王、そしてグゥドゥレィを見ずに彼は歩みを進める。
王の命令に従い、彼は歩みを進める。救われた命の恩義のために彼は言われた命令を遂行する。
すべては――王のために。
◆ ◆
そんな話が行われていた丁度その頃。
とある半壊した村を見ている一人の男。
その男はその村の光景を見て「うわ」と、これはひどい有様だなという音色を出し、シルクハットのつばを掴み、その光景を見ながら彼は言った。
「ここもこれかよ……。てか、このままじゃ俺の食糧がそこを尽きる」
どうっすっかなー。と、長身の男――ティックディックは参ったと言わんばかりに頭を掻きながら言葉を零した。
今回は――彼が主役の物語となるだろう。
なぜ彼がここにいるのか、そこから説明しないといけない。
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