PLAY42 カルバノグとワーベンド ④

「人間が至高な種族……?」


 その言葉を聞いた私は首を傾げた。


 ボルドさん達の話を聞いて真っ先に思い出されたのは、アルテットミア王のことだ。


 アルテットミア王は自分の国を他種族が手を取り合って仲良く暮らせる国にしたいと言っていた。


 それは私も大いに賛成できることでその夢を実現してほしいと思ったくらい、応援したくなるような夢であり、目標であり、誰もが納得できる思考でもあった。


 しかし……。


 バトラヴィア帝国はその反対で――人間が至高の種族。他の種族は奴隷。そして……。


 帝王は――神。


 その言葉を聞いて、私は目を点にして驚きながらボルドさんに向かってこう聞いた。


「それは一体……」


 その言葉を聞いたボルドさんはさっきまでいなかったダディエルさん、紅さん、そしてギンロさんを見てこう聞く。


「三人共、この近隣の村はどうなっていたの?」


 その言葉を聞いた三人は、浮かない顔をして顔を俯かせていた。


 でもダディエルさんはそのまま顔を上げて……、肩を竦めて手を上げながらお手上げの様にしてこう言った。


「すでに廃れていた」

「やっぱ帝国のやり方に反すると――そうなっちまうんだな」

「? ??」


 ギンロさんも言う中、私やアキにぃ達は首を傾げながらその話を聞いていた。


 するとヘルナイトさんは未だに疑問を抱いて首を傾げている私達にわかりやすく、こんな話をしてくれた。


「ハンナ、みんな。さっき私はこう言っていたな? 帝王こそが神だと」

「そんなの――ついさっきボルドから聞いたわ。そんなに記憶の収納は衰えてないわよ。馬鹿にしないで」


 それを聞いたシェーラちゃんは、むすっとしながらそう答えると、ヘルナイトさんはそれを聞いて、更にこう続けた。


「そうだ。この国において――帝王は王にして神。絶対的存在なんだ」

「………王様で、神様?」


 私はそれを聞いて、更に首を傾げてと言うか、ややこしいと思いながらヘルナイトさんの話を聞いていた。


 なにせ――王様は人間で、神様は神様。


 絶対に交わってはいけないものが交わっているようなそれなのだ。


 正直――矛盾と言うか、その思考は理解できない。


 そう私は思ってしまう。


 でも――ヘルナイトさんは「ああ」と頷いて……。


「ハンナ。君から見て――王とはどんな存在だ?」


 その言葉を聞いて、私はえっとっと考えるしぐさをしてから――


「王様は国のトップで、逆らえない存在です」と答えた。


 それを聞いたヘルナイトさんは頷いて――更にこう質問してきた。


「そうだな。なら神様はどんな存在だ?」

「えっと……。崇める存在、ですかね……?」

「そうだ」


 と頷くヘルナイトさん。


 それを聞いたヘルナイトさんは、すっと両手を上げて、私やアキにぃ達にその両手の――片手を器のように丸めながらヘルナイトさんはそれを見せて――こう言う。


「王は逆らえない存在。そして神は崇める存在。これを合わせると……、どうなる?」


 その言葉を聞いて、まるで授業でもしているそれを見て、私は考える。


 王は――逆らえない。逆らえば何をされるかわからない。


 神は――崇める存在。天罰を下すもの……。


 それを合わせると……。


「………逆らってはいけない。崇めなければいけない。至高にして最高位の存在?」


 アキにぃは考えた末にその答えを出した。


 それを聞いた私達は、「「「あ!」」」と、声を上げてそれだという顔をして手を叩く。


 でも、ギンロさんとスナッティさんは、それを聞いて顰めた顔をして大きく舌打ちをしたのは……、言わないでおこう。


 それを聞いたヘルナイトさんは頷いた。


 その光景を見て聞いていたボルドさんは、話を戻すように、そして私達の話を汲み取るようにして――こう言った。


「そうだね。アキ君の言う通り……、この国において、王様は神様の生まれ変わりと言い伝えられているんだ。女神サリアフィア様じゃないよ。神様っていうのは八百万やおよろず……。八百万いるからね。その内の一人だと言ったのが原点で、今のその妄信は語り継がれているんだ」


「………馬鹿じゃないの」


 その話を聞いて、シェーラちゃんは腕を組みながら、苛立ったような顔をして、はんっと鼻で笑うような黒い怒りの顔を浮かべてこう言った。


「人間は人間よ。そんなの――自分は偉大な人の生まれ変わりとか言って自惚れている中二病と同じようなものじゃない。なんでこの国の人達はそんなことを信じてしまうの? バカなの?」

「………一言一言毒があるぞシェーラ」


 キョウヤさんはそんなシェーラちゃんを見て、呆れながら笑みを浮かべて突っ込みを入れたけど……、それを聞いていたメウラヴダーさんは腕を組みながらシェーラちゃんを見て――口を開く。


「……聞いた話だが、こうなったのは二百年前の話。つまりは『終焉の瘴気』が出たとき、当時の王様は瘴気で蔓延していたこの砂の国を、異国の地から取り寄せたを使って物理的に浄化させた。それ以来……、国民は王を救世主と崇め、そして歪んでいき……、王様は神様の生まれ変わりと言う逸話が伝播してしまった」


「……あるもの?」


 その言葉を聞いて、アキにぃは「なんなんですか?」と聞くと、メウラヴダーさんは目をつぶってはぁっと溜息を吐くと、「聞いたことがあり、身近にあるものだ」と言って――そのあるものの名前を口にした。




「簡単な話――それはだ」




「……く?」

「「「空気清浄機ぃっ!?」」」


 その言葉に、私は神妙だった空気をぶち壊すようなコミカルな点目をして、アキにぃ、キョウヤさん、シェーラちゃんがそれを聞いて、素っ頓狂な声を上げながら叫んだ。


 それを聞いていたスナッティさんは「そういう反応になるっすよねー……」と、納得するような頷きを見せる。紅さんも頷いて同意を示した。


 そんな中――ボルドさんは少しおどおどとしながらてをわさわさと動かして言った。


「で、でもね……。ただの空気清浄機じゃないんだ。この先にある『デノス』っていうところに、というか、その町全体を空気を浄化する装置に作り替えた。巨大空気清浄機が――この砂の国の瘴気を浄化を担っているんだって」

「強大な空気清浄機って……。ファンタジーぶっ壊すような展開だな……っ! それでよく瘴気浄化されたなぁっ!」


 キョウヤさんは項垂れながら思ったことを吐き出すように言った。


 相当苛立っている音色だった……。


 でも――それを聞いていたリンドーさんは首を傾げながら、笑みではない、真剣で、すっと目を開けた顔で私達を見て、とあることを告げた。


 今思ったけど、常ににこにこしていたリンドーさんは、目を閉じていたので狐のような顔をしていたけど、今見ると、元から細い目だったということが分かった。


 それを見て、私はリンドーさんの話を聞く。



「そんなんで浄化なんてされませんよ。



 その話を聞いて、私達ははっとして。それもそうだと思いながら、私達は再度話を聞く体制になる。


 それを見たボルドさんは、話を続けた。


「確かに、『終焉の瘴気』は一時的に浄化された。悪い空気を吸って、いい空気を吐き出しているんだから、それはあたりまえ。でも……、根本から浄化しないといけないんだ。でも国民はそうしない。だって、王様は一時的だけど、この国を救った英雄だから、救ってないけど……。一時的な英雄となって、そして崇め、たたえられて……、世代を超えて今に至っているんだ」


「……、英雄じゃなくて、屑のハゲ王です」


 ティティさんの言葉を聞いて、近くにいたガルーラさんは呆れながら腕を組んでその光景を見ていた、ティズ君はそれを聞いてティティさんを見上げながら、無表情で――


「そんなこと言わない方がいいよ。あとでクルーザァーに怒られる」


 と言うと、ティティさんは満面の笑みを浮かべて――


「はいっ。そうですねっ!」


 と、言った。


 それを聞いていたクルーザァーさんは呆れながらティズ君たちを見て……。


「私は一体どんな目で見られているんだ……」と、唸るような声を上げた。


 そしてボルドさんは、話を進める。


「……えっと、それで――この国を救った王様だけど……。まだ問題が山積みだったんだ。国の均衡問題。そして経済的な問題や、特に根本から絶たないといけないと言ってくる反乱分子も後を絶たなかったらしいんだ」

「……よくある国民の不満ね」


 シェーラちゃんはうんうんと頷きながら言うと、それに対してクルーザァーさんは腕を組みながら――冷静に……。


「だが、それを丸く無理やり収めた。帝王特権を使って――彼はを立てた」


 と言った。


「発足? 法律のことか?」


 それを聞いてキョウヤさんは首を傾げていると、それを聞いてガルーラさんはお? 驚きの声を上げて「なんだそれ――あたしは聞いたことがねぇけどな」と言った。


 それを聞いて、隣にいたメウラヴダーさんは少し呆れた目でガルーラさんを見てから……。


「情報を入手した時に話したよな……?」


 と、少し疑念の声を上げた。それを聞いてガルーラさんははっきりと「知らん」と言った。


 なんだろうか……。ガルーラさんを見ていると、ダンさんの面影が見える気がする……。


 そう思っていると――


「その法律のせいで、


 ギンロさんは呆れた口調で溜息交じりにそう言った。それを聞いた私は……。


 一体何が……? と思いながら、ボルドさんを見て何があったのかと聞くと、それを聞いたボルドさんはうーんっと唸るように考えながら、言葉を選んで、そしてボルドさんは考えがまとまったかのように顔を上げて、私達を見てこう言った。


「その当時の王は発足した法律――それは……」


 ボルドさんは一旦口を閉じて、そして私を見て、ヘルナイトさんを見て、アキにぃ、キョウヤさん、シェーラちゃんを流れるように見てから――ふぅっと落ち着かせるように深呼吸をしてから……口を開いて言う。


「それは――」





 ――王に逆らうもの、他国の異分子とみなし、牢獄にて三十五年の投獄兼奴隷罪に処し、刑期を全うした後で即座に極刑に処す――





 一瞬。頭をよぎった。


 何それ。と――そして、次に浮かんだ言葉は……。


 そんな理不尽なルールがあるのか。だった。


「なんだそりゃ……」


 そう言葉を零したのはキョウヤさん。


 キョウヤさんは唖然とした顔のまま引きつった笑みを浮かべて、彼はボルドさんとクルーザァーさんを見て、震える口でこう聞いた。


「なんでそんな理不尽めいた法律ができるんだよ……。んなの神様とか王様じゃなくて、ただのわがままな野郎じゃねえか……」

「それで国が成り立っているの……?」


 シェーラちゃんも青ざめながらその言葉を聞いて聞くと、ボルドさんは頷いて――


「成り立っているというか、その法律を盾に国の人達を服従させていたって言った方が正しいかな……?」と言った。


 それを聞いて、ダディエルさんは頬杖を突いてそのあとの話を繋げるようにしてこう続ける。呆れたような、それでいて気味悪そうな顔をして――


「その法律のせいで、歴代の帝王は国民が不利に、自分達が有利になるような法律をどんどん発足したんだよ」


 と言いながら、ダディエルさんは頬杖を突いていない手を上げて――ピッと人差し指を立てて……。


「『国民は王の貢献に比例して、貴族、平民、下民、奴隷という身分をつける。奴隷となったものは全国民の奴隷である。感謝して奴隷としての任を全うする様に』とか……」


 ピッ、と――中指を立てて……、数字の二と表して。


「『死は絶対なる慈悲にして救済。王の命令である『死』を告げられし者は笑顔で死ぬこと』とか……」


 ピッ、と――薬指を立てて……。数字の三と表して……。


「『人間こそ至高なる存在。ゆえに他種族を見つけ次第、逆らうものにはきゅうさいを、服従するものには奴隷かぐの烙印を打つべし』とか……、いろいろある」


 だんだん……。私は胸が苦しくなって、胸を抑えながら俯いてしまう。


 ヘルナイトさんから聞いて、覚悟は意気込んでいたけど……、その覚悟はただの弱いそれ


 弱々しい覚悟。


 アクアロイアのようなことではないと思っていたからこそ、弱々しかったのかもしれない。


 でも、現実はこれ。


 あまりに身勝手な法律云々は――もう決まっていることと見過ごしことなんでできない。


 私はそれと同時に、全てに於いて法律が、王が――自分本位で決められている……。国民のためを思った法律ではないことを知り、あまりに苦しい法律を、国民は守っているのか? 苦しんで、生きているのではないのか……? 


 そう思えば思うほど、胸は苦しくなって――今に至っている私だ……。


 それを見てなのか、ヘルナイトさんはそっと私の背中をさすって――ダディエルさんに向かって言う。


「……そうなっていたとはな。私がいない間……、この国は変わりすぎている。見たことがない兵器。技術に法律……、すべてがサリアフィア様の意に反している」


 それを聞いて、ガザドラさんは頷きながら――


「この国ではサリア教は異教徒と見なされ、その宗教を崇めるものも見せしめとして」




「――もういやっ」




『!』


 思わず……、私は耳を塞いで声を上げてしまった。初めての……、弱音。いやという言葉だ。


 みんなきっと驚いているか、怒っているに違いない。でも私はつい耳を塞いで俯いてしまい、そして首をフルフルと振りながら私は弱々しくこう言ってしまう。


「もう……、死とか、そんなこと……、言わないで」


 苦しくなるだけ、だよ……っ。


 そう言ってしまう私。それを聞いて、みんなが言葉を発しなくなった。きっと、怒っていると私は思っていた。だって――ちゃんと説明しているのに、たった一人のわがままで話を止められてしまうのだ。失礼極まりないだろう。


 でも、私はそれでも、いやだった。


 死や、人が傷つくようなことは聞きたくなかったから……。


 目の前で傷つく光景を見るのは嫌なのと同じくらい、言葉で表されるそれも、嫌いだった。


 要するに――傷つくようなこと全般嫌いなのだ。


 私は耳を塞ぎながら俯いたまま、みんなの声を待った。


 こんな時に、自分から謝ればいい話なのだけど、それが出来ないのも事実なのだ。


 謝りたくないのではなく……、ただ、みんなの言葉が怖いのだ。


 何を言われるのかわからない状況で言うのは、とてつもなく勇気がいる。


 特に初対面の人に対してなら、怖いのは当たり前だ。


 罵倒されるかもしれないし、怒鳴られるかもしれない (事実、見た目が怖い人だらけだから……) 。


 そう思ってしまった瞬間、謝ることができなかった私。


 だから私はみんなの言葉を待っていた。何を言われても耐える覚悟をして――


 すると……。


「そのお気持ち――すごくわかります」

「!」


 突然だった。


 本当に突然私の背後から抱きしめてくれる人が来た。


 それはロフィーゼさんとは違う。


 ふんわりとしたそれではなく、しっかりと私の背後から抱きしめたティティさんはじろりとダディエルさんとガザドラさんを睨みながら、低い音色でこう言った。


「女の子の気持ちをわかってやれていないとは……、やはり男は屑です。なぜこんなに怖がっている子の気持ちになって、と言う言葉を使わないのが、腹立たしく思えます。少しは子供でも聞けるような内容にしてください」

「ティティは女の味方ってことで見解してもいいのね? そして一つ訂正があるわ。おぶたーとじゃなくてオブラートよ」


 シェーラちゃんは冷静に突っ込みを入れて、キョウヤさんはそれを見ながら青ざめた顔をして……。


「男には厳しすぎじゃね……?」と言った。


「お、おう……、済まねぇな。嬢ちゃん」

「吾輩も考えもしないで物事を言い過ぎた……っ! すまん天族の少女よっ!」


 ダディエルさんとガザドラさんは、青ざめながらおずおずと私苦を見て謝った。


 それを見ていたギンロさんはおっかなびっくりに後ずさりがらこっちを見ていたけど、言葉は発しなかった。


 私はティティさんを見上げて――お礼を述べると、ティティさんは私を見下ろしながらにっこりと微笑んで……。あ、ツンとした顔じゃないんだ。と、私はティティさんの顔を見てほっと胸を撫で下ろしていると……。


「私はいついかなる時でも、女の人とティズの味方ですから」と言った。


 遠くでギンロさんが腕を振るいながら「男女差別だー!」と声を上げながら抗議の声を上げる。ティティさんは私を見て、そっと離れてから、すぐにティズ君のところに戻って、背後からぎゅっと抱きしめて和んだ顔をした。


 ティティさんには、ティズ君の近くがすごく幸せなのかな……?


 そう思いながら、近くにいたヘルナイトさんに微笑むと、ヘルナイトさんはほっと安心したような、でもその中に含まれる、小さな赤いもしゃもしゃを感じて、私は首を傾げていると……。


「おほんっ!」と、ボルドさんは咳払いをした。


 それを聞いた私達は、はっとしてボルドさんを見ると――ボルドさんは腰に手を当てながら……。


「話を続けますよ」


 と、プンスコと怒りながら口を開く。


 それを聞いた私達は、こくりと頷いて話を聞く体制になる。怒り方とかは可愛いけど……。包帯のせいでホラーさが増していることは、口に出さないでおこう……。


 ボルドさんは言った。


「それで、そのような法律のおかげもあってか、バトラヴィアは今のような国になってしまった。そして今現在……、その国に加担している集団……、聞いたことあるかな? 『バロックワーズ』と、『BLACK COMPANY』のこと」


 それを聞いたシェーラちゃんは、すっと手を上げながら――


「話では聞いたことがあったわ。いやな集団だって。自由を愛する集団とか何とか。私たちは一回だけ、『BLACK COMPANY』に所属している冒険者に出会ったわ。アキが苦戦した」

「あ……。ジンジって人か……」


 アキにぃは思い出したのか、ぎりっと歯軋りをしながら懐にしまっていた拳銃を取り出そうとしていた。めらめらと燃える赤いもしゃもしゃを感じた私は、アキにぃを見て慌てて止める言葉をかけた。


 それを見た紅さんは、おっかなびっくりになりながらも……「何かあったのか……?」と独り言をごちる。


 それを聞いて、ボルドさんはそっと手を広げるような動作をした後――彼は続けてこう言った。


「僕達は四チームの徒党で、二チームずつに分かれてその二つのパーティーを壊滅……、言い方が悪かったね。『ネルセス・シュローサ』のように、永久監獄に閉じ込めようと思うんだ」

「……ネルセス……、シュローサ」


 その言葉を聞いたシェーラちゃんは、顔を顰めて、組んだ腕をぎゅっと握る。それを見た私は、シェーラちゃんを見て「大丈夫……?」と聞くと、シェーラちゃんはふぅっと息を吐いて、「問題ないわ」と言う。いつもの強気な顔で。


 それを聞いていたアキにぃは、ふと何かを思い出したのか、ボルドさんに向かってこんなことを聞いた。


「というか、なんであなた達はその二チームを拘束しようとしているんですか? 浄化はハンナと……、気に食わないけどヘルナイトがいないとできないことだし」

「気に食わねえのかよ。ねちっこいなお前も」

「うるさいキョウヤ。んで。なんでそんなにその二チームに固執しているのかが疑問なんです。ただのパーティーだったら、ほっといてしまえば」


 と言った時――ボルドさんは真剣な音色で、少し怒っているような音色でこう言った。



「――こそ、放っておけないんだ」



 あまりに熱意が含まれているその言葉を聞いたアキにぃは、ぐっと言葉を詰まらせる。私達もそれを聞いて踊りた顔をしていいると、ボルドさんは一言謝りながら――次にこう言った。


「ごめんね。怖がらせるつもりはなかったんだ。でもね……、この二チームはきっと、理事長の何かを知っている人物でもあるんだ」

「それは聞いたけどよ……。いったい何なんだよそれは」


 それを聞いたキョウヤさんは、ボルドさんを見ながら聞く。それを聞いて、ボルドさんはすっと、私達を真剣な目で見ながら――告げる。


 衝撃的な事実を。



「何かを知っている……。では済まされない。そのチームのリーダーは、。そして――でもある存在だから」



「「「「っ!」」」」


 それを聞いた私達は、言葉を失いながら、目を点にしてその言葉の続きを聞く。


 その最初の言葉だけでも、衝撃なのに対して――だ。


 ボルドさんは続けてこう言う。


「彼らを捕まえて、なんで理事長がこんなことをしたのかがわかると思うんだ。それに……、それぞれのリーダーには、僕達それぞれの因縁の相手でもある。だから……、ここで逃がしたくないのが、本音なんだけどね」

「……因縁?」


 その言葉に、私は首を傾げながら聞くと、クルーザァーさんはその話に割り込みながら、少し怒りを福田音色で、冷静な声でこう言う。


「俺達が狙うのは『BLACK COMPANY』。そのリーダー格アクロマ。そのリーダー格に会って、決着をつけたいんだ。カルバノグも、俺達ワーベンドも……、奴に因縁がある輩だらけだ。特に――」と言って、クルーザァーさんはティズ君を見てこう言った。


「ティズの病気『ロスト・ペイン』の様に、様々な奇病ができたのは……、そのアクロマと、その父親のせいでもある。特効薬を貰いたいなんて言う甘い希望は捨てる。だが――俺達は、俺は許せない。だからこそ――その男を倒したいと思い、この作戦に名乗り出たんだ」


 そうだろう? と、クルーザァーさんはスナッティさん、ガルーラさんに、メウラヴダーさんを見ると、三人は決意を固めた顔をして頷く。


 ティティさんは首を傾げているだけだったけど、ティズ君は無表情の中からこぼれ出た苦しい顔をして俯いていた。それを見た私は、どうしたのかと思って首を傾げていると――


 ボルドさんもそれを聞いて頷いてから――ダディエルさん達を見て言う。


「僕達も、やられたらやり返したい気持ちでいっぱいなんだ。特に――ダディエルくんはね」と言うと、ダディエルさん、紅さん、ギンロさん、リンドーさんは頷き。ガザドラさんはそれを聞いて腕を組みながらこう言った。神妙に、そして真剣な目でボルドさん達を見ながら……。


「吾輩はそのことについては首を突っ込まない約束だ。その件に関しては、お前達の意思で動いてくれ。吾輩は手助けはしない」と言った。


 それを聞いて、ギンロさんは手を振りながら「わーってるよ」と言う。


 それを聞いていた私達は、完全に蚊帳の外のような空気だった。でも……、蚊帳の外になって、そして理解できた。


 この二つのチームは――そのアクロマに対して尋常ではないもしゃもしゃを抱えている。


 それは――シェーラちゃんのような純粋な怒りではない。


 それは――ティックディックさんのようなもしゃもしゃと同じ……。




           深い深い憎しみのもしゃもしゃ。




 特にクルーザァーさん、ガルーラさんとメウラヴダーさん。そしてカルバノグの五人も、スナッティさんはその手助けをしようと意気込んで、ティズ君だけは青くて震えているもしゃもしゃを出していた。


 ボルドさんとクルーザァーさん。


 私はカルバノグとワーベンドのリーダーの二人を見て――聞いた。


「それで、私達を誘った理由は……?」


 それを聞いて、ボルドさんとクルーザァーさんは、声を揃えて私を見てこう言った。


 協力なんでできない。


 そんな選択肢なんてさせない。用意なんてさせないような事実を私達に突きつけて――


「「『八神』が一体のガーディアンは……、バトラヴィアにあるが、そのガーディアンはすでに、『バロックワーズ』と『BLACK COMPANY』の


 ボルドさんは言った。


「浄化したいのならば――」


 そしてクルーザァーさんも言う。


「まずはその二つのパーティーをどうにかしないといけない」


 …………、結局。選択は一択しかなかった。それを聞いた私達は互いの顔を見て頷き合い、そしてヘルナイトさんを見て、ヘルナイトさんも頷いて私は言った。


「ならば――協力の一択だけです」

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