PLAY42 カルバノグとワーベンド ①

 ぐわっと来た包帯が巻かれた左右の手。


「二人共――降ろすから私の後ろに!」


 それを見たヘルナイトさんは私達を見て――凛とした声で叫ぶと、シェーラちゃんはそれを聞いてするりとヘルナイトさんの腕から降りて、すたんっと着地した後、剣を抜刀して――


「冗談言わないで! このまま私も戦うわっ!」


 と、意気込むように言ったシェーラちゃん。


 ヘルナイトさんはそれを見て、私をそっと下してから大剣を掴もうとした時……。


 すでにその包帯の人は、私とシェーラちゃんにそれを向けていた。


 素早い動きで、ヘルナイトさんの死角を狙って私とシェーラちゃんに迫ってきたのだ。


「っ!」


 ヘルナイトさんははっと息を呑んで、鎧の甲冑越しで驚きの顔をした後すぐに私を隠そうと手を伸ばそうとした時――


 アキにぃはアサルトライフルを構えて――


 キョウヤさんはだっと駆け出して、その包帯の人を掴もうとした。


 私はそれを見て驚いたまま固まってしまい、シェーラちゃんは後ろに少し傾きながら剣を振るおうとした時――その包帯が巻かれた手は……。



 ――がしりっ。



 と――私とシェーラちゃんの肩に手を置いて、じっと私達を見るその包帯の人。


 その顔はまるでホラー映画に出そうなマスクを被ったシェーンソーを持った人と類似してて、なんだかその顔を見た途端、体が固まってしまうのを感じた。


 シェーラちゃんはぐっと身構えながらその雰囲気に呑まれないようにしている。


 アキにぃとキョウヤさん、そしてヘルナイトさんはそんな私達を見て、攻撃したいけどできない状況に陥っていた。


 なにせ攻撃したら私達を盾にして防ぐかもしれないからだ。


 それを踏まえて、三人は攻撃をしないようにしていた。


 あくまでその場で止まりながら、敵の動きを見ながら私達をどう助けようかと迷っているのだろう……。


 それを見て私は不用意に動くことをやめ、シェーラちゃんはそれを見て――震える口で、怖がってはいないけど、警戒をしながら――


「何をする気?」


 と聞いた。警戒心剥き出しの音色で……だ。


 すると……。




「君達――大丈夫かい? なんだか疲れているようだけど……?」




「「?」」

「「はぁ?」」

「む?」


 包帯の大柄の男は、私達の肩をとんとんっと、優しく叩きながら言った。


 優しく、小さい子供を怖がらせなうようにしている音色で、それを聞いた私は、拍子抜けをしたかのようにぽかんっとして見て、シェーラちゃんもそれを見て目を点にしている。


 キョウヤさんとアキにぃもそれを見て目を点にしていると、包帯の人はキョウヤさん達の方を見て、その姿からは想像ができないような、ぷりぷりとした動作で腕をぶんぶん振るいながら――


「君達! だめじゃないかっ! こんな未成年の女の子達をこんな風に疲れさせたりしたら! 女の子には優しくしないといけないって、お父さんやお母さんに言われなかったのかいっ!? まったくもぅ……」

「見た目にそぐわねぇオカンかよっ!」


 包帯の人が怒りながら言うと、それを聞いていたキョウヤさんは、拍子抜けかというような怒りを乗せて突っ込みを入れる。


 アキにぃも頭を垂らしながらはぁっと溜息を吐く。


 すると――包帯の人は腰に手を当てて……「僕はオカンじゃないよっ!」と言って――


「僕は――みんなのお母さん的な存在なんだよっ! みんなだらしなくて、僕がしっかりしていないと困るし……、というかオカンっていうセリフはやめなさいっ! せめてお母さんと言いなさいっ!」


「性格もオカンでオカンのような口調っ! やめろその格好でそのセリフと動作! 一ミリも噛み合わねえんだよ! やめてくれっ!」


 キョウヤさんは指をさしながら包帯の人のプンスコと怒る顔と、両腕を前に出して、可愛らしくガッツポーズをするその動作を見て、キョウヤさんは冷や汗を流しながらその光景を見ていた。


 アキにぃはそのまま頭を抱えてまた溜息を吐く。


 私とシェーラちゃんはその光景を見ながら、唖然として見ているだけ……。ううん。驚きのあまりに言葉を失ってしまったのだ。


 ヘルナイトさんはその包帯の人を見ながら……、背中に差していた大剣を掴んで――私とシェーラちゃんの前に立ち身構えながらこう聞いた。


「お前は――何者だ?」

「ん? わぁ! 君ってもしかして、あの『12鬼士』さんだよねっ!? 驚いたよ。もぉぅ」

「そ、そうか……」


 包帯の人はヘルナイトさんを認識したとたん、というか私達を抱えていたのはヘルナイトさんなんだけど……、気づかなかったのかな? 包帯の人はほっと胸に手を当ててほっと安堵の息を吐いた。


 それを見たヘルナイトさんは、一瞬体を震わせながら固まってしまった。


 すると――


「あ! 何してるんですかぁ!」


 少し遠くにいたリンドーさんがたたっと私達のいるところに駆け出してきて、包帯の人を見上げながら (包帯の人は本当に二メートル以上の身長があるので、リンドーさんはそんな人を見上げる態勢になってしまう) 、指をさしながら珍しく目を閉じた怒りの顔をして――


「そんな顔でいきなり人の前に出ないでくださいよ。ただでさえ現実でもそんな顔で子供達がから怖がられてたらいまわしにされた挙句に、変人扱いされてしまっているリーダーさんなんですから」

「それ以上は言わないでよっ! 僕そんなに怖い顔しているっ!?」

「もうB級ホラーですよ。その格好でチェーンソーや鉈を持って、更に返り血を浴びたら更にホラー感倍増です」

「そんなあああああ~っ!」


 包帯の人は頭を抱えてぶわりと泣き出して……。


 って、ん? リーダー?


 その言葉に私たちは目を点にして、ヘルナイトさんは大剣から手を離して――敵ではないことを認知したのか、リンドーさんに近付きながらヘルナイトさんは聞く。


「リンドー……。でいいか?」

「ええ。ぼくはそれでいいですよ」

「そうか、ではリンドー。そこにいる包帯の男は……」


 と言って、ヘルナイトさんはその目の前にいる包帯の大男を見上げながら聞くと、リンドーさんは「えっとですね」と、にっと笑みを浮かべながらこう言った。その人を指さして……。


「そうですよ。この大柄でどことなくB級感を漂わせているけど、女子力は高いこの人こそ……、ぼくらのリーダーです」

「ひどいよぉっ! リンドー君っ! 君そんなに悪い子だったのかいっ?」


 リンドーさんの言葉を聞いたヘルナイトさんは、その言葉を聞いてじっとその光景を見ているだけだった。何も言わず、ただじっとその人とリンドーさんを見て……。


 私はそれを聞いて、そしてリンドーさんお言葉を聞いて、シェーラちゃんを見比べながら、こう思った。


 ……リンドーさん。シェーラちゃんと同じような雰囲気が……。表情だけ違うけど……。


 そう思いながら見ていると――シェーラちゃんは私の視線に気づいたのか、むっとした顔つきで「何よその顔。私の顔に何かついている?」と、私を見て聞いた。


 そんなシェーラちゃんを見て、キョウヤさんとアキにぃはうんうんと頷きながら、なぜか納得したような面持ちでいた……。


 すると――


「なんだ? あいつらは?」

「さっきスナッティが言っていたパーティーじゃないのか?」

「合理的とは思えないな。この国の兵士に手も足も出なかったらしいしな。正直なところ――足手まといは欲しくない」

「そんなこと言わないでほしいっすよ。一人は嫌ですけど、後の四人は凄いと思うっす! 見たらすぐに考えを変えてくれるっすよっ!」


 聞いたことがない三人の声に交じって……、スナッティさんの声が聞こえた。


 それを聞いてその方向を見るために振り替えると――


 私達に気付いて、そして包帯のリーダーの人を見て、スナッティさんははっと驚いた顔をして口元に手を添えながら――


「あーっ! リーダーさんっ! なんで呼ばれてもいないのに出てくるんすかっ!? そんな風に出たら、誰だってモンスターって間違えられてしまいますってっ!」


 と、驚いた声で張り上げながら言った。


「スナッティちゃんっ! 君もひどいよぉっ!」と、それを聞いたリーダーさんはぷんぷんっと腕を振りながら怒っていた。


 それを見てシェーラちゃんは「気持ち悪い」と、はっきり言って、アキにぃはそれを見て「筋骨乙女か」と、冷淡に突っ込みを入れていた。


 そんな話を聞きながら、私はスナッティさんと、その後ろにいる三人を見て、聞いた。


「あの、スナッティさん。そちらの方は?」

「あぁ! この人達っすか?」


 スナッティさんは親指でその人達を指さしながら私を見て言った。


 その言葉を聞いて、そっとその人達を見る私。


 一人は大柄で、リーダーさんより筋肉がついてて、ダンさんを彷彿とさせる筋肉質。そして赤黒い胸しか隠していないビキニの下は獣の布を巻いただけ。そしてその獣の皮で作った靴を履いている赤い腰まである長髪を一つに縛っている――ボディービルダーのような女性が大きな大槌を持って。


 その人の隣にいるその女性よりも少し背は小さいけど長身で、オールバックの黒と茶色の髪を腰まで伸ばして、服装は紺色を基準とした、少し黒が勝っている羽織を着た武将の服装だ。その姿で腰には二本の長剣を携えている――厳格そうな男性。


 そして最後は――目に青いゴーグルをかけて目元が見えない。そして集めの腰まで隠れる濃い緑色のジャンバーを着て、クローム色の手袋、黒いズボンに編み上げの黒いブーツを履いた黒い髪を一つに縛っている百七十センチくらいの男の人が立っていた。


 その人達は私やみんなを見て――「「「ん?」」」と首を傾げていたけど、スナッティさんはその三人の方を振り返りながら――


「さっき話していた子供っすよ。噂の――」と言って、スナッティさんは私達を……、特に、ヘルナイトさんと私を見て、にっと笑いながらこう言った。



「ゲームクリアの鍵を握っている二人っす」



「? げ……? 栗?」


 ヘルナイトさんは聞いたことがない言葉を聞いたかのように、首を傾げて、顎に手を当てながら思い当たる言葉を口にすると、それを聞いてリーダーさんは「ええっ!?」と、私の後ろで驚きの言葉を吐いた後、リンドーさんは私に肩をとんとんっと叩く。


 私は再度背後を見た。リンドーさんはそんな私を見ながらにこっと微笑んでこう言った。


「まだ全員じゃないんですけど……、まずは自己紹介からですね。あの後で詳細を話します」



 □     □



「あたしは大槌士のタイタンの亜人――ガルーラってもんだ。よろしくな!」

「その暴走女を止めている俺は、人間族のソードマスター……、メウラヴダーだ」

「サモナーで人間族のクルーザァー。合理的な説明は終わりだ」

「そして、僕は『カルバノグ』のリーダーのボルドです。こう言う姿だけど、僕はチームの天族のメディックとして働いています」


 よろしくね。と、包帯の姿でにこっと微笑みながら頭を下げたリーダーさんもといボルドさん。


 それを聞いて、私は頭を下げながら「よろしくお願いします」と言って、筋骨隆々の女性――ガルーラさん。オールバックの男性――メウラヴダーさん。そしてゴーグルをつけた男性――クルーザァーさんを見る私。


 すごいインパクトを残している人たちだなぁっと思って見ていると……。<PBR>

「「「百パー天族ありえない」」」


 と、アキにぃ、キョウヤさん、シェーラちゃんが真剣な音色と表情で、ボルドさんを見て言った。


 それを聞いて、ボルドさんはがーんっという効果音が出そうな顔をして「ひどいっ!」と、叫んて涙を流す。


 それを見ていたリンドーさんはうんうんっと笑顔で頷きながら腕を組んで――


「詐欺ですもんねー。ボルドさんが天族って。ハンナちゃんの方が天族らしい姿と顔していますもん」と、言った。


 それを聞いてボルドさんは泣きながら「もうやめてったらーっ!」と、ぷんぷんっと怒りながらリンドーさんに向かって言った。


 それを見て、キョウヤさんは引きつった笑みと青ざめた顔をして……。


「だから、そんな乙女チックなくねくねやめて……。マジでそっち系と思っちまうから……」と、小さい声で突っ込みを入れた。


 現在――私達はその野営場の近く……、リンドーさん曰く、食事をみんなでするところで私達は岩の椅子に座りながら輪になって話をしていた。


 最初に自己紹介をしたのは私達で、私やヘルナイトさんのことを話した時、リンドーさんやスナッティさん以外は驚きの声を上げて私を見て、そして自我を持っているヘルナイトさんを見て驚きを隠せないかった。


 その興奮が収まった後で、ボルドさん達の自己紹介に至ったということである。


 ちなみに――時計回りで順番を言っていくと……。


 ボルドさん、メウラヴダーさん、ガルーラさん、スナッティさん、シェーラちゃん、キョウヤさん、アキにぃ、ヘルナイトさんに私、そしてリンドーさんと言う順番で座っていた。


 クルーザァーさんはボルドさんとメウラヴダーさんの間の背後に立って、ティズ君がいないことを聞くと、スナッティさん曰く――どうやら戦った後はいつも一人になるらしい。


 思春期相応の年頃なので、出て来るまでは一人にさせるようにしているらしい。


 それを聞いて、私は大丈夫かなぁっと思いながら話を聞いていた。


 そしてそんな話をしているボルドさんを見て、私はおずおずと手を上げてこう聞いた。


「あの……、なんで私達のことを……?」

「あぁ。それはな」


 メウラヴダーさんはその言葉を聞いて、顎に手を当てながら思い出すような仕草をしてこう言った。


「実はな……、ところどころの街に仮面をかぶった吟遊詩人が来る時がある。その吟遊詩人はこの世界で起こったことを唄にして語ることがあるんだ」

「あー。そう言えばマティリーナさんもそんなこと言っていたような気がする」


 キョウヤさんははっと思い出すように言葉を放った後、それを聞いてメウラヴダーさんは言った。


「その吟遊詩人は最近、『八神』を浄化した人達のことを唄って回っていてな。それを偶然聞いて知ったってことだ」

「でもあそこで会ったのは偶然ですよ」


 メウラヴダーさんの言葉を聞いて、リンドーさんが私の顔を覗き込むようにして見て微笑むと、それを聞いてアキにぃは少し興味を示したような顔をして……。


「そ、その吟遊詩人は一体、何を唄っていたんですか?」


 と、少しワクワクしたような顔をしていた。


 シェーラちゃんはその言葉を聞いて、うえっと舌を突き出しながら気持ち悪そうに「キモイ」と小さく言う。


 それを聞いてキョウヤさんはシェーラちゃんの頭を軽く叩きながら「やめんさい」と言った。


 リンドーさんは「えっとですね」と、頭を掻きながら思い出すように呟いた後、はっと思い出したような顔をして「あぁ」と言った後――笑顔でアキにぃを見てからこう言った。



「女神の生まれ変わりと最強の騎士の降臨。そして麗しの人魚剣士と舞踏の蜥蜴槍使いと……、耳長スナイパーとしか言っていませんでした」



「俺だけエルフの特徴しかとらえないっ!」


 アキにぃはがくりと頭を垂らしながらショックを受けていた。


 でも、私はそれを聞いて少し嫌な気持ちになった。


 またサリアフィア様の生まれ変わりと言われても……、私は違うのに……。


「はぁ……」


 私は小さく溜息を零すと――それを見ていたシェーラちゃんはリンドーさんを見てこう言った。


「あの子、サリアフィア様の生まれ変わりって言ったらむすくれるから。あまり言わない方がいいわよ」


 それを聞いたリンドーさんは「えー?」と驚きながら、わざとらしく口に手を添えて――


「でも聞いたのはそこにいるエルフさんでしょう? エルフさんが発端なんですからそっちに対して怒ってくださいよー」

「お前馬鹿にしているだろうがっ! 名前聞いていたよねっ!? 俺の名前知っているよねっ!?」


 アキにぃはそれを聞いて、青筋を立てながら怒りを露にした。


 その光景を見て、はぁっと溜息を吐いて呆れていたキョウヤさんはボルドさんを見ながら「それで……」と聞いて――続けてこう聞いた。


「話って?」


 その言葉を聞いて、ボルドさんはあぁっと言いながら思い出したかの様に手を叩いてこう言ったのだ。


「そうだったね。その話をしないといけないよね。と、その前に聞きたいことがあるんだけど……君達がこの地に来た理由って……、浄化だよね?」


 ボルドさんは私を見て聞く。


 それを聞いた私は正直に頷いて、そして続けてこう言う。


「それもあります。でもアクアロイア王からクエストを頼まれているんです。砂の国にいる魔女達に書状を渡してほしいと」

「魔女って……、ギルド長のことか?」


 メウラヴダーさんの言葉に、私は頷く。それを聞いてクルーザァーさんは腕を組みながらむっとした顔でこう聞く。


「なぜそのような合理的ではないことを? クリア――もとい、浄化を優先にするのであれば、そんなクエスト受けなくてもいいはずだ。そのまま直行していけばいい話だろう」

「……そうかもしれません。でも……」


 と言って、私はクルーザァーさんを見て、こう言った。真剣な目で、言った。


「アクアロイアは狂っていると、この旅で何人かの人から聞きました。そしてそれは本当です。アクアロイアも、バトラヴィアも……、狂って、腐っているって。そう直感してしまいました。リヴァイアサンを浄化して、王が新しい王になって、その新しい王はこう言ったんです。『国を変えたい』と、その意思の強さを聞いて、そのクエストを受けたんです」


「不合理の極みだ」


 クルーザァーさんは肩を竦めながら、呆れて私を見てこう言う。


「合理的な方法を見出してこそ、確実な成果が見出せるというものなんだ。そんな感情論で動いても、後々痛い目に合う。よく考えてから物を言え」


 うぅ……、なんだろう。


 すごい正論を言われて、ぐさりと心に突き刺さる……。


 それを聞いていたガルーラさんは、あはは! と笑いながらクルーザァーさんを見て……。


「お前なぁ! 素直に『心配だから無理すんな』っていえばいいじゃねえか! 合理とか不合理とか、意味の分かんねぇことを言っていないで!」と言って……。


 ん?


 今、ガルーラさん、なんて言ったの? そう思いながら私はクルーザァーさんを見ると、クルーザァーさんはぎょっと驚きながら「おいガルーラ……」と、頭を抱えながら唸っている。


 それを見て、キョウヤさんはなんとなくだけど理解したような顔をして……、クルーザァーさんを見ながらこう聞く。


「あんた……、心配してあんなことを言っていたの? よくある悪そうなキャラは意外といいキャラでした敵なキャラなのかよ……」


 と、呆れながらクルーザァーさんを見ていたキョウヤさん。


 それを聞いてボルドさんは首を振りながら「あはは」と穏やかに笑って――


「違うよ。彼は子供が大好きなんだよ。ティズくんや君達のことを心配して、でも優しい言葉をかけることがとことん苦手だから、あんなきつい言葉になってしまうんだ」


 だから怒んないで上げて? と、ボルドさんは手を合わせながら申し訳なさそうに言った。


 それを聞いて私は「そうなんですね」と、控えめに微笑みながら納得してクルーザァーさんを見る。


 シェーラちゃんもそれを聞いて横目でクルーザァーさんを見ながら……。


「素直じゃないわね」と、強気な笑みを浮かべる。


 キョウヤさんはそれを聞いてシェーラちゃんを見ながら「お前もだぞ」と、強めに念を押す。


「ボルド……、それは言うな」

「いいじゃないかクルーザァーくん。君本当に子供好きなんだから、好きを隠してはいけないよ?」

「可愛らしい動作をするな。気持ち悪い目が腐る。リーダーらしい振る舞いをしろ」

「えぇっ!? 礼儀悪いっ!」


 クルーザァーさんとボルドさんの話を聞いて、私はヘルナイトさんを見上げながら、控えめに微笑んで「なんだか楽しい人達ですね」と言うと、ヘルナイトさんは私の頭に手を置きながらゆるりと撫でて、そしてその手をすぐに降ろしてから――ヘルナイトさんはボルドさんを見て、凛とした音色でこう聞いた。




「その吟遊詩人の話を聞いて、?」




 途端――


 楽しい空気が、一気に張り詰めるのを感じた。


 ピリピリ来る空気の音と感触。


 それを感じながら私は、みんなの顔を見る。


 キョウヤさんとアキにぃ、シェーラちゃんははっと気付いて、ボルドさんを見ると、ボルドさんはその話を振られて、うーんっと、唸りながら困った顔をして、頬を掻きながら――


「やっぱり――そういう見解で見るよね……?」と言った。


「当然だろう」


 クルーザァーさんはそれを聞いてボルドさんを見ながら……。


「人間誰しも、誰来れ構わず手を差し伸べる人間なんていない」


 クルーザァーさんの言葉を聞いて、私は頭を垂らしながら、こう思った。


 私は、そっちの分類だ。と……。クルーザァーさんは続けてこう言う。


「知らない人を助けること。赤の他人を助けることは、善意によるものもある。しかし大半はだ。『出会ったのは何かの縁』だとか、『この出会いは運命だ』とか言って、協力を煽る。何か目的があって助け、貸しを作って協力させる。簡単で合理的な方法だ。俺たちは今それをした。彼らに対して――


 それを聞いた私は、驚きはしたけどそれを顔に出さないように平静を装って話を聞く。


 そう――クルーザァーさんの言う通り、確かに私達はティズ君に助けられた。


 これは借りを作ったといっても過言ではない。その借りを作って、簡単に逃げれないようにした。


 曖昧だけど簡単に人を縛ることができる……等価交換。


 簡単に言うと、こうだ。


 助けたのだから、次はこっちの要件を聞け。ということを、ヘルナイトさんは言いたいのだろう。


 ……かなり悪い口調になってしまったけど……。


 それを聞いたボルドさんは、はぁっと溜息を吐きながら――両手を上げて「わかった。こっちの要件を言うよ」と、観念したかのような音色で言うと、ボルドさんは私達を見てこう言った。


「実はね。僕等はとある組織を壊滅させようと、四つのパーティーで手を組んで戦っているんだ」

「四つ……? でも」


 アキにぃはそれを聞いて、首を傾げながらボルドさん達を指さすけど、それを聞いていたスナッティさんはむすっとした顔をしてこう言った。


「その組織は二つで、一つのチームを二チームで叩こうとしているんすよ。自分たちはこの先にあるっす」

「……秘器アーツ生成工場……」


 シェーラちゃんはそれを聞いて少し考えた後はっとした後……「まさか……っ!」と声を荒げると、それを察したのかメウラヴダーさんは頷いて――


「その生成工場を壊せばバトラヴィアは殆どの機能を失う。そして帝国に乗り込んで、その場所にいるガーディアンの元に辿り着ける」


 と言う。


 それを聞いた私は、私達は――混乱と興奮、そして驚きが混ざった顔をして話を聞く。


 どんどんと、どくどくと脈を打つ心臓を抑えて、その言葉を聞きながら私は、落ち着け、落ち着け……。と心で念じながら話を聞いて平静を装った。


 ボルドさんはそれを見て、くっと前屈みになりながら私達にこう告げた。


 彼らの目的。そして――この先私達が深く関わるであろうそのことを……。



「僕等の目的は、秘器アーツの生産をしている砂の国の中央にある都市……『デノズ』の工場を廃滅させ、そこを根城にし、生成の要となっている『BLACK COMPANY』を壊滅させる。そして……、が……、僕達『カルバノグ』とティズくんチームの『ワーベンド』の目的だよ」



 それを聞いて、誰もが言葉を発することをしなかった。


 頭を抱えてうなるヘルナイトさん以外、誰も――言葉を発しなかった。


 なにせ……、色んな情報が頭に入って、そして衝撃的なことを聞かされて正直ついてけなかったから……、言葉を発することも忘れ、茫然とその話を聞くことしかできなかった……。


 すると――ざりっと誰かがこっちに近付いてきた……。

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