PLAY41 ロスト・ペイン ①

「あ、あっつーっっっい……」

「あっちぃー……」

「あっついあっついあっついあっついあっついあっついあっついあっついあ」

「「それ以上言うなシスコン……」」

「……………………」

「ぎゅぎゃ~……」

「ナヴィ、大丈夫か……? すごい声だったぞ……?」


 じりじりと照らす太陽。


 そして平行線の向こうまでゆらゆら蠢く視界。


 周りは砂と言うか、砂漠地帯。草木など生えていない。そして所どころに転がっている骸骨。


 その骸骨を見て、いずれはこうなってしまうのか……。そんなネガティブな思考が頭を襲う。


 普通ならそんなこと考えないだろうと思うだろう。正常の思考ならばそんなこと思わないだろう。


 でも――そう思ってしまうのが人間のさが……。


 どんどん追い詰められてしまうと人間ネガティブになるっていうけど、本当なんだなぁ。と頭の片隅で思ってしまったほど、今の私は、ううん……。ヘルナイトさん以外の私達は追い詰められていた。


 国境の村を出て、私達はすぐに砂の国に足を踏み入れて……、たった十分後――




         後悔しました。




 というのも、私達は侮っていたというか、この世界がVRの世界と言う都合認識をしていたせいで、あまり準備をせずにここまで来てしまったのだ。


 都合認識。


 アキにぃ曰く。


「ここはゲームの世界なんだから、熱さとか寒さとかあんまりないだろう? アルテットミアでもアクアロイアでも防寒とかなかったし。体温感知なんてないだろう? 水なんて荷物になるから急ごう!」


 それが完全に裏目に出て、私達は今……。


 水分を取るものを持たないで、灼熱の砂漠を歩いていた。


 誰もがきっとこう言うであろう。特にコウガさんあたりにこう言われそうだ……。


 大馬鹿な判断だと。大馬鹿でそんな都合のいい展開があるか。


 罵倒されたとしても、文句も言えない。


 キョウヤさんやシェーラちゃん、私も、アキにぃの言葉を聞いてここまで来て、折り返しができないところまで来てしまったのだから……、仕方がない。


 ざり。ざり――


 ゆっくりと、重い足を上げては前に下ろし、それを繰り返しながら、ぜーっぜーっ。と、乾いてしまった喉を、更に乾かしてしまうような口の開け方をして歩いているアキにぃ。


 頬を伝い、顎に留まった汗を腕で拭うキョウヤさん。


 ふらふらとしながら歩みを進めて、苦しそうにしているシェーラちゃん。


 ナヴィちゃんも私の腕でもなければ帽子の中でもない……、肩に乗りながら高い声とは違った野太い声を出して、体を楕円形に伸ばして伸びていて。


 私は何とか足を止めないように、気力だけで歩みを進めていた。


 ヘルナイトさんは――平然としているけど……、鎧を着ているのに、なんで普通に話しているのかが不思議だ。熱くないのかな? と思っていると……。


「なんでオレはアキのあんな馬鹿な提案に乗ってしまったんだ……っ! ばか、オレの……馬鹿っ!」

「後悔するならそれでいいけど、最初に俺に対して馬鹿な提案って聞こえたんだけど……。仕方ないだろうがっ! ここはVRの世界なんだから体温とかないと思っていたしっ!」


 キョウヤさんが項垂れながら歩いていると、それを聞いてアキにぃはぎっと睨みながらキョウヤさんに向かって指をさしながら怒りを露にした。


 それに対してキョウヤさんはぎっと、アキにぃを睨んで、怒りを露にしたその顔でこう怒鳴る。


「馬鹿かお前はっ! 傷とかもちゃんとつくし痛いのはわかっているだろうが! 痛覚だってある中で体温の感覚がないっていう都合の展開なんてあるわけねえだろうがばかぁ! てかサラマンダーの時、あのダンジョン入ったよな? 暑かったよな? なんでそんなことを忘れるんだっ!」

「なんだよ! 全部全部俺のせいみたいに」


 とうとうアキにぃも切れてしまい、キョウヤさんをじろりと睨みながら怒鳴ると、それを見てぴくぴく肩を震わせていたシェーラちゃんが――


「ぬあああああああああああっっっ! 暑苦しすぎてもう頭がダメになりそうっ! やめてったらこんなところで喧嘩するのっ!」


 まるでデスメタのような魂の叫びを上げた途端、珍しく切れたシェーラちゃんはキョウヤさんとアキにぃに向かって怒鳴りつけた。


 簡単に言うと、八つ当たりである。


 それを聞いて、アキにぃはシェーラちゃんに向かって怒りの矛先を変えてきた。


「なんだよシェーラッ! お前だって俺の提案呑んだだろうがっ! それでここまで来て俺のせいにされても困るんですけどぉ!」

「そうとは言ってないでしょうが! ただこんな熱いところで喧嘩しないでって言っているのっ! 暑くてもう頭が変になりそうなのっ! なんだかなんかえーっと、なんだか変なのよっ!」

「あっそーかいっ! 俺はすでにハンナが周りを飛んでお迎えに来ているよっ!」


 ん? それって結構やばいのではないのだろうか……? 私はふと思った。


 シェーラちゃんもなんだか目がぐるぐると回って、言葉も曖昧でぐわんぐわんと頭を振って、焦点が合ってないような顔をしている。


 アキにぃも頭上を指さしながら叫んでいたけど、もしかして……。


 そ思った瞬間、キョウヤさんはそんな二人の頭をべしんっと叩きながら――


「自慢げに言うな! お前ら完全に熱さにやられてんじゃねえかっ! 百パー熱中症じゃねえかっ! もうこの辺にしておこう! 休もうぜ! なっ!?」

「はっ。はい……」

「そうだな、ここまで来て一回も休んでいない。今日はここで野営を取ろう」


 キョウヤさんの怒号とすごい覇気を見て、私は驚きながら返事をうっかりしてしまった。


 それを聞いたヘルナイトさんは頷きながら辺りを見回し、とあるところを見て指を指してこう言った。


「あそこの……岩陰がいい。きっと涼める」


 その指が差された方向を見ると、その場所にあったのは……、砂漠の地面に深く突き刺さっている、傾いた縦長の細長い岩だ。


 そんな細長い岩を支えるように、少し小さめの岩がその傾いた岩に向かって傾いていて、まるで人の文字のそれであるかのように支えているような姿になっていた。


 その場所を見たキョウヤさんは、気絶した二人を抱えながら「いよぉーっし! 今すぐ向かうぞぉ!」と、二人に声をかけながら走って向かった。


 それを見て、私もナヴィちゃんを抱えながら走り、ヘルナイトさんもその後を追った。


 そして……。


 涼めるその岩の間に、二人を寝かせながらキョウヤさんはふぅっと息を吐いて尻餅をつくように、どすんっと座る。


 そして深呼吸をしながら私を見て言う。


「てか、なんだよここの熱さ、異常だろうが……」

「そうですね……」


私はその言葉に頷きながら、空を見る。


空は雲すらない晴天で、ぎらぎらとその砂漠の地面を照らし続けている。ナヴィちゃんを膝に乗せて寝かせながら頭を撫でて、晴天のぎらぎらした空を見ながら私は言った。


「沖縄以上の熱さですね……」

「それ言うな……。オレは北海道に行って雪に戯れたいと思ったよ……。この年で雪遊びするもの変だけど……」

「ふふ、そうですね……」

「ハンナ――今お前想像したな? アキに言うなよ絶対に」

「わかっていますよ」


 そんな話をしてその日陰に座りながら、つかの間の休息をとっている私達。アキにぃとシェーラちゃんは、その砂の地面に横にして寝かせて、ヘルナイトさんはその日陰から出て、周りを見て見張りをしている。


 それを見ていた私は、ヘルナイトさんを見て、自分の胸に手を当てる。


 そして目を閉じて――思い出す。


 国境の村で起こった些細な出来事。ヘルナイトさんに抱き着いたリデルさんのことについて。というか――その行為そのものについて、私は考える。


 ロフィーゼさんも最初出会った時、ヘルナイトさんに近付きながら何かを話して、それを見てなんだかむしゃくしゃしていた。


 なんでなのかはわからないけど、それでも思ったことがある。


 いやだ。


 その三文字。


 そしてリデルさんの光景を見た時――


 いやだ。やめて。と思ってしまった。


 なんでそう思ったのかはわからない。わからないけど……、それでも思って、そしてむしゃくしゃして、ずくずくと痛くなって、頭の中がむしゃくしゃしてしまっていた。


 これは……、蜥蜴人の集落でもあったこと。


 それは――嫉妬で……。




 もしかして、私はリデルさんやロフィーゼさんに……、嫉妬していた?




 なんだろう。そう思った瞬間……、なんだか申し訳なく思えてきた。ロフィーゼさんとリデルさんに謝っておこうかな……?


 でも……。


 と思い、そっと目を開けてヘルナイトさんを見る。ヘルナイトさんはそんな私に気付かないで、きょろきょろと辺りを見回している。


 それを見て、私は思った。



 私は――なんで女の人がヘルナイトさんに近付くと……、嫉妬してしまうんだろう……?



 そう思いながらヘルナイトさんを見ていると――


「っはっ! そう言えば!」


 と、突然シェーラちゃんががばりと起き上がって、叫んだ。


 それを聞いた私とキョウヤさんは、肩を震わせながら驚いて、起き上がったシェーラちゃんを見た。


 シェーラちゃんははーっ! はーっ! と息を吐きながら、見開かれた目で私達を見て、何か驚愕の真実を聞かされたかのような目をして、荒い深呼吸をしていた。


 それを見たキョウヤさんは、驚きながらおずおずと――


「ど、どうした……? 何がそう言えばなんだ……?」と、聞くと、シェーラちゃんはキョウヤさんの肩をがしりと掴んで、がくがくと前後に揺すりながら――


! 水! 氷っ!」と、大きな声で叫んだシェーラちゃん。それを聞いた私達は、首を傾げながら「「へ?」」と、素っ頓狂な声を上げて言う。


 ヘルナイトさんはその会話を聞いて、私達の方を振り向きながら「どうしたんだ?」と聞くと……。


 シェーラちゃんはぎらりと目を光らせて、ヘルナイトさんを見た。睨むように見た。


 そんな目を見たヘルナイトさんは、ぎょっとしながら驚いて「シェーラ?」と聞くと……、シェーラちゃんはヘルナイトさんを見て、期待の眼差しをヘルナイトさんに向けながら、聞いた。


「ねぇヘルナイト! 使!」


「…………なに?」


 唐突な要望だった。


 それを聞いたヘルナイトさんは、ピクリと指を動かして、期待の眼差しを向けているシェーラちゃんに向かって、申し訳なさそうにしながらこう答えを返す。<PBR>

「……すまない。『居合・氷室』は、あまり使いたくないんだ。あれを使うといろんなものを凍らせて」

「違うわよ」


 シェーラちゃんは呆れながら首を横に振って、もう一度ヘルナイトさんを見ながらこう言った。人差し指を立てて、彼女は強気な笑みと共にこう言う。


「『雷槍ライトニング・ランス』のような、使。あるでしょ?」

「む……? あ、あぁ……」


 と、ヘルナイトさんはその言葉を聞いて頷きながら言うと、くっと右手を上げて丸めるように軽く握り拳を作ると――


 日陰となっているその場所の上に、私達の頭上に――パキパキと氷柱のような尖った氷がいくつも生成されて出てきた。


 それを見上げて、キョウヤさんは驚きながらすぐに立ち上がって「おいシェーラ……、熱すぎて頭いわしたか……っ?」と、少し青ざめながら槍を持とうとした時――シェーラちゃんは……。


「思った通りっ!」と言いながら立ち上がって、その上空に出ている氷柱を見ながら……。


「ヘルナイト、そのまま出したまま。キープしてね」

「?」

「「?」」


 と言って、シェーラちゃんはその空中に浮いている小さめの氷柱を手に取って、それを見ながらフフッと微笑んで、「これでいいかな?」と言いながら口を開けて……。


 ん?


 私はそれを見て首を傾げながら見ていると……。




 ――ぱくん。




「「あ」」

「シェーラ……ッ!?」


 シェーラちゃんはその氷を頬張った。


 アイスの様に、口に入れて、その冷たさを堪能する様に……、もごもごと唇を動かしている。


 それを見て、私とキョウヤさんは恐る恐るシェーラちゃんを見る。ヘルナイトさんは私達以上に驚きながらそれを見て……、シェーラちゃんを見ながら――


「お、おい待て、それは食べるものでは……」と、小さい子供に言い聞かせるような言葉を言うヘルナイトさん。あまりに予想外のことだったのだろう。珍しく慌てている。


 それを見て、私は驚きながらそれを見ていると――シェーラちゃんはその頬ばりをやめて、すぐに……。


「んんんん~っっっ! 冷たぁいっ! 思った通り!」


 天国の味を手にしたかのような満面の笑みでシェーラちゃんは、その氷を手に持ったまま幸せそうな笑みを浮かべて言った。それを見て、私とキョウヤさん、そして一番驚いていたヘルナイトさんはその光景を見て、そして聞く。


「思った通りって……、なんだよ」

「言った通りよ。スキルで出した氷は食用でもイケたってこと。暑くてすっかり忘れていたわ」

「あ、あ? あー……、なるほど。思い出した。そうだったな」

「?」


 キョウヤさんの何かを思い出したかのような言葉を聞きながら私はキョウヤさんを見て首を傾げると、キョウヤさんはシェーラちゃんを見て、腕を組みながら自分に呆れているかのように自嘲気味に笑みを浮かべながらこう言った。


「シェーラの奴、スキル使ってお茶淹れていたの、覚えているか?」

「…………あ」


 そう言えばそうだった。


 シェーラちゃん、私達と初めて出会った時、スキルを使ってお茶を淹れていた……。


 それを思い出してシェーラちゃんを見ると、驚いてシェーラちゃんを見ているヘルナイトさんをしり目に、氷柱を頬張りながら時折氷柱をかじってその口の中に氷を入れて、冷たさと潤いを堪能していた。


 ころころと、口の中で氷を動かしながら――


「やっぱり砂地での氷は格別ね」と、うんうんっと頷きながら氷を食べているシェーラちゃん。それを見て、キョウヤさんは「食べながらしゃべるな。汚ねぇ」と、突っ込みを呆れながら入れた。


 ヘルナイトさんはそんなシェーラちゃんを見て――驚きながらこう聞いた。


「それにしても、なぜ私が氷系の魔祖術まそじゅつが使えるとわかったんだ?」

「マソジュツ? えっと、それは私達で言うところのスキルで、魔法って言うことでいいの?」

「ああ」


 シェーラちゃんの疑問に、ヘルナイトさんは頷く。


 それを聞いて、シェーラちゃんはえっと、っと言いながら答える。


「なんとなくね……。だってヘルナイト、大剣のスキルと属性系のスキルを使うから、もしかしたらって思っていたの。氷系の大剣スキルを使っていたから、属性系はよく聞く『アイシクル』何とかって感じで」

「あー。確かに……、てか二本目いくか」

「おいしいわよ?」


 そうシェーラちゃんが説明をしながら、二本目を手に取ろうとした。それを見てキョウヤさんは納得して、そして呆れながら再度突っ込みを入れる。


 シェーラちゃんはなんだかむすっとしながら「っち」と、舌打ちをしたような気がしたけど……、気のせいだよね?


 そう思っていると、ヘルナイトさんはまた驚きながら――


「よく見ていたな……」と言った。


 それを聞いて、シェーラちゃんは「まぐれだけど」と肩を竦めながら言う。


 私はヘルナイトさんを見て、驚きながらも私は……「そうだったんですか……?」と聞くと、ヘルナイトさんは「ああ」と頷きながら右手を見て、ヘルナイトさんはこう言った。


「私や他の『12鬼士』は、いくつかの詠唱とたった一つの特殊詠唱。そして八大魔祖の力を宿した『魔祖術』。武器の魔祖の力を宿す『宿魔祖やどしまそ』を使うことができる。私は八大魔祖の『魔祖術』と『宿魔祖』。あとはいくつかの詠唱が使える。各々得意不得意があり、例えば、キクリは風と光、火と氷、水が使えるが、土系の魔祖は全く使えない。そして『宿魔祖』は全く使えない。しかし光系の力は得意だ」


「聞いている限りチートっていう言葉しか思い浮かばねぇな……」


 そうキョウヤさんはヘルナイトさんを見ながら、すごい人を見ているかのような顔をして言うと、ヘルナイトさんは上空にあるその氷を見てこう言う。


「この術は『氷河雨アブソルート・レイン』。大群が押し寄せてきた時に使うものだが、まさか食用にされるとは思ってもみなかった」


 発想がすごいな。


 そうシェーラちゃんを見て言うヘルナイトさん。


 私達も驚いたけど、シェーラちゃんはそれを聞いて、ふんっと強気な笑みを浮かべながら――


「サバイバルをする時は頭を使わないとね」と、自分の頭を小突きながら言った。


 すると突然――


「いやー……。それは凄い発想と言うか、ぶっ飛んでいるよね。スキルを食べる女とか、ワイルドにもほどがあるって」


 私達の背後から聞こえてきた声を聞いて、私は「え?」と言った後、背後を振り向いて「わっ!」と、驚きの声を上げた。キョウヤさんは私を見て首を傾げて、私と同じように背後を見て――


「おっ! アキ起きていたっ!」と、同じように驚きながら声を上げた。


 そう。そこにいたのは――胡坐をかきながら私達を見ていたアキにぃ。


「お前――もう大丈夫なのか?」と、キョウヤさんは起き上がったアキにぃを見て、腰に手を当てながら聞くと、アキにぃは頷きながら「休んだらだいぶ楽になった」と言って、すっと立ち上がるアキにぃ。


「アキにぃ……、いつから起きていたの?」


 そ私が首を傾げながら聞くと、アキにぃはちらりと、シェーラちゃんを見ながら一言。




「シェーラと同時に」




 結構前に起きていたんだ……。気が付かなかった。


 最初から起きていた私達は、内心アキにぃを見て心の中でアキにぃに謝っていたことは、アキにぃに内緒にしておこう……。ごめんね。アキにぃ。


 アキにぃはそんな私達を見ながら首を傾げていたけど、私達を見てこう言った。さっきまでの熱中症が嘘のような顔をして、アキにぃは言った。


「ところで、次に向かう魔女の場所って――どこなの?」


 その言葉を聞いて、私ははっとベルゼブブさんに言われたことを思い出して、アキにぃを見て私は「エルフの里って言っていたよ。『未来が視える』って言っていた」と言った。


 それを聞いて、ヘルナイトさんは氷柱を消しながら私を見て――


「エルフか……。確かに、そんなことを聞いたような」と、頭を抱えながら言うヘルナイトさん。


「エルフね……亜人の郷の件もあるから、あまり行きたくないわね……」 


 シェーラちゃんは亜人の郷のことを思い出しながら眉を顰めながら言うと、キョウヤさんはむっとしながら「んなわがまま言っている暇はねえだろ。クエストはクエストで行かなきゃいけねえし、それの情報も必要だ」と、言った。


 それを聞いて、アキにぃも頷きながら――


「そうだ。俺達はガーディアンのことを全く知らない。集落でも、村でも、襲撃とかがあって聞き出せなかった。ここで本格的に情報を集めないといけない。バトラヴィア帝国にいるのかすらも疑問だし……、確実な情報を得ておきたい」


 真剣な音色で言った。


 それを聞いた私達は、こくりとアキにぃの言葉に頷いた。


 アキにぃは私を見て――


「ハンナ。ナビレットを開いて、エルフの里がどこなのか調べてほしいんだけど」


 と聞いてきた。それを聞いて私は「うん」と言いながら、ポーチの中からナビレットを取り出して電源を入れようとした瞬間……。




「そこで何をしているっ!」




「「「「「っ!」」」」」

「きゃきゃっ!?」


 突然――日陰になっているところの前に現れた重厚そうな黄色と銀色の鎧を着た集団。


 その集団……、バトラヴィア兵とその隊の隊長は厳しい目つきで私達を見ながらこう声を張り上げた。


「貴様ら――武神御一行だなっ!?」


 ……『六芒星』と同じような現れ方をしたバトラヴィアの兵士達を見て、私は驚きながらその人達を見ていた……。何度も何度も、同じ体験をして懲りない自分に叱咤しながら……。

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