PLAY38 国境の村の激闘Ⅰ(受け入れる暴走と初陣) ④

「おつかれさま」


 ふわりとゆっくりと降下してきたキクリ。


 それを見上げ、ほっと安堵の息を吐くロフィーゼは普段通りのおっとりとした妖艶な音色で「心配したわぁ」とキクリに向かって言い――ブラドをちらりと一瞥してから、くすりと微笑んでウィンクをした。


 それを見たブラドはぎょっとしてジルバの背後に隠れながら――


「んなことしても、何もおごらねえぞっ!」


 と、少々格好悪いながらもブラドは怒鳴る。


 それを見ていたロフィーゼはくすくす笑いながらブラドを見ていた。


 ジルバはそんな風景を見て、まんざらでもない笑みを浮かべて腕を組み、そしてキクリを見ながら――


「まぁ、サポートサンキュ」と片手を上げて礼を述べた。


 それを見たキクリははたっとジルバを見て――


「ううん。今回のMVPはジルバとシイナ君、あとはセイントでしょ?」


 と言いながら彼女はジルバ、背後にいるセイントと、セイントに近付いて背中をさすっているシイナ。


 時折二つの体となってしまったランディを……、いいや、この場合はこう言うべきであろう。己の詠唱で二つになってしまったランディのことを見ながら、シイナはセイントの背中をさすっていた。


 それを聞いたブラドは真顔になりながら「俺は?」と、驚きと突っ込みが混じった音色で聞くが、キクリはそれを無視して、ジルバに向かって普段通りの顔で言う。


「それにしても……、『封魔石』を壊すだけの詠唱か……。なんだかもう何でもありって感じがしてきたわ」

「そうよねぇ……、第一シイナ君のあれだってぇ、完全に攻撃系じゃない気がするものぉ」


 ロフィーゼも会話に加わりながら顎に指を添えて、そう言えばと言う雰囲気で言うと、ブラドはシイナを見ながらキクリに聞く。


「なんだったんだ……? あの白い殺人光線は……」

「殺してないヨ」


 その言葉に対してキクリは言う。


「あれは亜人の、祭祀の力を持つ狼の亜人にしか使えない。満月の時発動する邪気を払うだけの詠唱。暴走やそう言った強化を鎮静化する詠唱なの。詳しくはわからないけど……、見ての通りの結果になるってことはわかったでしょ?」


 くすりと微笑みながら言うキクリは、ふと、シイナ達がいる方向を見ると――


 シイナはセイントの背中をさすりながら「だ、大丈夫ですか……?」と聞くと、ぜぇ。ぜぇ。ふぅ。と……、今まで高ぶっていた感情を鎮静化する様に、落ち着きを取り戻すためにセイントはゆっくりと深呼吸をする。


 そして、流れる川の地面に手をつきながらシイナに向かって――


「……なぜ、私にもあの詠唱を放った?」と聞いた。


 それを聞いたシイナは「?」と、頭に疑問符を浮かべながら聞いて、そしてセイントに「ど、どういうことですか……?」と聞くと、セイントは答えた。


 ゆっくりと、息を整えながら……。


「私は……、あの暴走を受け入れようと、制御しようとしていた……。だができなかった、始終その力に振り回されるだけの……、悪魔、だった……」


 正義などのかけらもない。


 そうセイントは言って……、ぐっと、川の中に入れていた両手をぐっと握り拳にし、そして肩を落とすように、がくんっと肘を曲げて言った……。


 憎々しげに――こう言ったのだ。


「結局……何も変わらないままだ……っ!」


 それを聞いていたシイナは、セイントの心境を悟ってなのか、それとも知らないままなのかはわからない。


 しかしシイナはセイントを見ながら――彼は言った。



「そ、そんなに焦らなくても、いいと思います」



「?」


 その言葉を聞いたセイントはシイナを見上げる。シイナはそんなセイントを見ながら、自分を指さして――こう言った。


 へらりと、照れ笑いをしながら……。


「お、おれも……、吃音症のケア……、って、い、いうか……、訓練をしていますんで……」

「…………吃音症、だと……?」


 それを聞いて、セイントは呆けた声を出してしまった。


 シルバは目を点にして驚きのあまりに固まってしまった。


 キクリはロフィーゼから聞いていたので、「あらま」と言いながら、口元に手を当てて驚いていた。


 それとは正反対に、ロフィーゼとブラドはうんうん頷きながらそうだったなー。という反応をして思い出にふけっていた。


 シイナは言う。


「お、おれも最初はつっかえつっかえの人でした……。何とかして流暢に喋らないとって思いながら過ごしていました。け、けど……、ロフィさんとかブラドさん、キクリさんのおかげで、ここまで話せるように、な、なったんです」

「………………」

「えっと、お、おれが言うことじゃないんですけど……、その……、セイントさんのそれと、おれが思っているそれとは次元もわけも違う。で、でもそういうのは……、焦ってもダメなんじゃなって、おれはお。思ったんです。ゆっくり、落ち着いて、時間をかけていこうって……思いまして……」

「………だが」



「うんうん。シイナ君の言う通り――」



 すると――唐突に、ジルバがシイナ達の会話に入り込むように、歩んでいき、そしてジルバは飄々とした笑みを浮かべながら、彼はセイントに向かってこう言った。


「あんた言っていたヨネ? 暴走して仲間を傷つけたって」


 それを聞いたシイナは、「え?」と、ぎょっとした目でセイントを見下ろすが、ジルバはそんなシイナとは正反対の顔をしながら――彼は飄々とした顔をしてこう言った。


「でもさ――俺達はぜーんぜん傷ついていない。そこで寝っ転がっている鳥しか攻撃していない」

「……しかし」

「頭固すぎなんだヨ」


 柔らかく考えろって。


 そうジルバは言い、そして続けてこう言った。


「そういう暴走って、案外なんとなーく制御できるもんなんじゃない? 無意識による野生の本能っていうもので、俺達を傷つけなかった。それだけでその暴走を受け入れたってことでいいんじゃない?」


 まぁ、始まったばかりだけど……。


 そうジルバが言うと、セイントはそんなジルバを見上げながら、彼はこう言った。


「お前……、何かあったのか……?」と聞くと、それに対しジルバは肩を竦めながら「んー?」と言い、そして――へらりと笑いながら、彼はこう言った。


「考えすぎることをやめただけ。俺なりに生きていこうかなーていう、老後に向けての予行練習?」


 冗談交じりに言うジルバ。


 それを聞いて、セイントは、そんなジルバを見上げ、そしてすっと頭を垂らしながら、少しの間考えて「そうか」としか言わなかった。


 シイナはそんなセイントとジルバを見て、年下の自分がすることではないけど、と、頭の片隅でそんなことを思いながら、暖かい目で二人を見て――


 ロフィーゼとブラドがその風景を見ながら――互いが同じことを思った……。


 ――一体何があったんだろう。なんだかあの二人……、急に仲が良くなったような……。


 と思っていると……。



「う、ぐぅ」



「「「「「「っ!?」」」」」」


 シイナ達以外の声が聞こえた。


 その声はシイナ達でもわかる存在で、その場所を見た瞬間――一同は目を疑った。


 視線の先にいたのは――


 ずり、ずりっ。


 と、川に流されそうになりながらも、片手だけで匍匐前進しているランディだった。


 ランディはずりっ、ずりっと、足がなくなり、上半身だけになった体を片手だけで進めて、彼はとあるところに向かって腕を進めていた。


 険しい顔をして彼が向かった先は――下半身。


 その方向に向かいながら、彼はぶつぶつと呪文のような言葉を零しながら、一心不乱にその場所に向かうランディ。


 その様はまるで――ゾンビ映画のあれである……。夢に出てきそうなそれを見て、ロフィーゼは「うわぁ」と、引きつった顔をしてランディを見ていた。


 ランディは言う。


「は、はやく……。取らないと。取らないと……、丸裸だ……っ! いやだ! 僕は……。死にたくない……っ! 死にたくないんだ……っ! まだ復讐が終わっていない……っ! 終わるまで僕は……、死にたくないっ!」


 川の水によって濡れてしまったのだろうか。彼の顔はもうびちゃびちゃになってしまっている。


 これでは泣いているのか。汗を流しているのかがわからない。血走った眼だけが、その必死さを物語っている。


 その光景を見ていたキクリは、すぐに下半身があるところを見ると……、目を見開いた。


 彼の下半身から――引きちぎられたところから零れている石の数々。


 それはすべて瘴輝石で――いくつか破壊されてしまっているが……、


 それを見てキクリは確信した。


 ――あの鳥、胃の中に石を詰め込んでいた! あの首飾りは全部収納の瘴輝石だった。あの時口に咥えていたものは――胃袋から吐き出したってことになるけど……。


 少し関係のないことを思考の中に入れたが、すぐにかぶりを振ると同時にキクリは、それから出てきた赤黒い石を見て、すぐに動こうと足に力を入れて……。



 ――つまりあれは……、あの鳥死霊族の心臓!



 キクリは確信を得て、その場からランディが向かっている方向に向けて、飛んでいこうとした時――


「っ!?」

「「「「「あ」」」」」

「っ!」


 予想外なことが起こった。


 キクリが飛ぼうとした時、ランディがその場所に向かおうとした時……。


 ふっと現れたフワフワした生命体。


 それは赤黒い瘴輝石を奪い取るかのように、とんっとランディ達から離れる。


 そのふわふわした生命体はすとんっと川から離れた川沿いに立ち、そしてシイナ達を見て、ふりふりと尻尾を揺らして、見ていた。


 口に大きな赤黒い瘴輝石を咥えて……。


「さ……」



っ!」



 セイントが叫ぶと、その石を奪ったさくら丸は、加えながら「わんっ!」と鳴いて、そのまま素早い動きで草むらに入ってしまった。


 それを見て、シイナは「あぁ! 行っちゃったっ!」と、驚きの声を上げたと同時に、ランディは上半身しかない体を起こして、「逃がすかぁっ!」と声を荒げながら、片手だけの翼を広げて飛ぼうとした時――


「とりゃぁ!」

「せいっ!」


 ロフィーゼとブラドがランディに圧し掛かる。


 全体重をかけるように、ブラドが下、ロフィーゼが上になるようにのしかかる。その重みでランディはばじゃんっ! と川に顔と体を突っ伏させ、「ごぼぉっ!」と、声を上げながら、二人によって拘束されてしまう。


「三人ともさくら丸君を追ってくださいっ!」

「「「っ!?」」」


 シイナの言葉を聞いたジルバとセイント、そしてキクリは驚きながらシイナを見ると、シイナは杖を持ったまま三人に言った。


「こ、この男はおれ達が何とかしますからっ!」


 その言葉を聞いていたランディはばじゃばじゃと川の中でもがきながら「なにがぼごぉ! なんとかぼごだぁっ!」と、水に溺れながらもがいていると、ブラドがその腕を掴みながらその暴れを止める。


 ロフィーゼもそれを聞いて、彼に向かって――


「行ってぇ――こいつ暴れるし……、さくら丸くん小さいからぁ、見失っちゃうわよぉ」


 と言った。


 それを聞いたジルバとキクリは頷き合うが、セイントは納得がいっていないかのように立ち上がり、彼らに向かって――


「何を言って」


 と言いかけたが、すぐにジルバによってそれは紡がれることはなかった。


「行くヨ。飼い主」


 そう言いながら、セイントのマントを掴んで走っていくジルバと引っ張られるセイント。


 セイントは引っ張られながらも「おいっ! ちょっと!」と言いながら止まるように促しているが……、事理場は聞く耳を持たずに草むらの向こうに向かって走って行ってしまった。


 それを見て、キクリは三人に向かって、心配の声を上げる。


「すぐ戻るから……、無理しないでね!」


 そう言って、彼女はふわりと飛んでさくら丸が言った方向に向かって行ってしまった。


 それを見て、ブラドは「おう! 任せろっ! ここで名誉挽回してやる!」と、ふんっと鼻息をふかしながら意気込むと、それを聞いてロフィーゼはクスッと微笑む。そしてシイナに向かって――


?」と聞いた。


 それを聞いて、シイナは首を傾げるが、ロフィーゼはくすっと……、なぜだろうか、黒く見える笑みをシイナ達に見せて、彼女はランディを見下ろしながらこう言った。


 おっとりとしたそれではない……、真剣なそれで、彼女は言った。


「なんでこの村を襲撃したのか……とか。いろいろとね……?」


 それを聞いたシイナ達は、ロフィーゼを見てこう思った。


 ――女は怖い……。と。



 ◆     ◆



 それから時間を遡っていき――


 国境の村では……。


「初陣? つまりは初めて……、ということか?」


 村を炎の壁と言うそれで閉じ込めているグリーフォは、ケビンズを見て聞いた。


 それを聞いてケビンズは爽やかに微笑みながら――


「イエス」と言って……。


「だってぼくは戦闘向きではないし、殆どがあなたのような強敵とは戦ったことがないんですよ」と言うと、それを聞いたグリーフォは……。


「ふ」と、鼻で笑い――そして……。




「っはっはっはっはっはっはっはっはっはっっっっ!!」




 がはははははと、わははははと――大声で黒く染まってしまった空を見上げながら、彼は大きく高笑いをした。


 それを聞いていたみゅんみゅんは内心――うるさい声。と思っていたが、グリーフォは笑いながら彼らを見て、こう言い放つ。


「初めての戦闘が俺ということかっ!? 初めての初陣が俺ということか!? はははは! なめられたもんだ! 俺は死霊族にして魔物の力を手に入れた特殊な死霊族だぞっ! そんな経験も未熟な冒険者が俺に立ち向かう?」


 がはははと笑いつつ彼は腕を組んで、そしてめらりと、髪の炎を燃やしながらこう言う。


「やれやれ、俺も舐められたものだ。火を使うとみて、水系統の攻撃で攻めれば何とかなると思っていたのだろうが……、それでは命取りになる! それではいい死に方をしないぞっ!」

「……さっきから」


 みゅんみゅんはグリーフォの言葉を聞きながら、彼女はグリーフォを睨みつけながら、彼女はとある疑問を口にした。


「いい死に方とか、情けない死に方とかいうけど……、死に方で人は変わるもんじゃないでしょうが。何言っているのか全く理解できないし、したくないけど……、なんでそこまで死に方にこだわるの?」


 自殺の参考?


 最後の言葉はみゅんみゅんなりの冗談交じりの言葉だが、それを聞いていたグリーフォはこう言った。


 胸を張りながら――彼は自慢げに……。


「当り前だ。戦場では死に方次第で、どれだけ偉大なのかが証明される」


 知らないのか? 


 グリーフォは続けてこう言う。


「背中に切り傷があるものは、戦場から逃げた愚か者。胴体に切り傷があるものは勇敢にたたかった戦士の証」

「よく聞く言葉……、漫画で聞いたことがある……」


 みゅんみゅんの言葉にグリーフォは首を傾げながら「まんが……? なんだそれは」と言っていたが、すぐに話を戻して彼は言う。


「そしてその死に方でも、物語がある。そう俺は思っている。ゆえに俺は見たいんだよ」

「…………死に顔をですかー?」


 そうミリィが空気を読んでいないかのような、おっとりとしたことを言うと、グリーフォはそれを聞いてすぐに「半分あってて違うな」と言い――ばっと手を広げながら、彼は黒く染まってしまった空を見上げ、そして髪の炎をぼわぁっと、火柱の様に燃え上がらせると、彼は大きく張り上げた声で――こう言った。



「俺はその死にざまを見てみたいと思った! 死に方次第でその者の勇敢さを知ることができる。そして俺と言う強敵に立ち向かった奴を称えるために――焦がした後で十字架に張り付けて見せつける! 『この者は俺に戦いを挑んで負け、そして情けなく死んでしまった憐れなものだ』と! その偉業が俺を更に高みへと進める! 挑んできたやつの死にざまを見、そして俺の強さと恐怖が上がる! だからこそ燃やしたい! 戦いたい! 勝ちたい! だから俺は――ここにいる『浄化』の魔女を殺して、この村を滅ぼし、俺の名を世界に轟かせるんだっっっ!」



 それを聞いていたケビンズは、ふぅっと溜息を吐いて――帽子のつばを指で挟みながら彼は……。


「――くだらない」と言った。


 呆れながら言ったその言葉を聞いて、グリーフォはぴくりと眉を顰めて、「なんだと……?」と、苛立った音色で、低く言うと、ケビンズは肩を竦めながら――


「それって、結局自分が目立ちたいっていう己の欲求を満たしたいからそう言っているだけで、死にざまも、燃やすことも――ぜえええええええええんぶ。君のわがままの犠牲じゃないか。それで被せてきれいな風にまとめているだけじゃないか」


 それを聞いたグリーフォはびきりと顔を歪ませ……、ケビンズを睨みつけながら、彼は言う。震えながら、怒りを抑えたような音色で――


「……。俺の、わがまま……、だとぉ?」

「私もケビンズの言うことに同意だよ」


 みゅんみゅんははっきりとした音色で、ケビンズの言葉に同意しながらこう言った。


「あんたはただ、己のわがままを隠すために、勇敢に戦った人の死に様を見てみたいってごまかしているだけの屑野郎だ。結局燃やしたい。勝ちたい。戦いたい。そして自分が目立ちたいっていうことしか考えていない大馬鹿野郎だ。人の死を厭わないやつよりも――愚かで傲慢で、そして幼稚思考の屑だ。ゴミ屑と言っても過言じゃない」


 それを聞いたグリーフォはびきびきと顔の青筋を大きくしていき、歯を食いしばり、怒りを抑えていく。しかしそれも限界に近いのか、血走った目でケビンズとみゅんみゅんを睨んでいた。


 ケビンズはふるふると己を抱きしめながら震えて……、みゅんみゅんから目を逸らしながら――


「ぼ、ぼくにもその言葉を……」

「うるせぇドM。サポートしろ」

「うきゅぅ……っ!」


 みゅんみゅんの汚く、そして突き刺さる言葉を聞いたケビンズは、びくぅっと体を震わせながら悶えてしまう。みゅんみゅんは聞き耳を立てて、ケビンズから聞こえる気持ち悪い吐息を聞きながら――


 ――よし。通常運転。と、安心していた。


 みゅんみゅんは鞭に括り付けた青い鉄筒を構えて――ザンシューントの背中を叩きながらこう言った。


「なるべく走り回って――攻撃は私がするから」と言うと、それを聞いていたザンシューントは『了解しましたっ!』と言う言葉と共に、わんっと吠える。


 ミリィもくるんっと回りながら――


「やっとですねー」と言い、背後に構えていた『鮮血の花嫁エルティリーゼ』を見ながら――


「『鮮血の花嫁エルティリーゼ』――戦闘準備」


 と言うと、『鮮血の花嫁エルティリーゼ』はすっと立ち上がってスカートをくいっと少しだけ持ち上げながら『了解』と頭を垂らす。


 ケビンズは震えながらも高揚とした笑みを浮かべて――グリーフォを見下すように見ながらこう言った。


「それでは――君のそのわがままとプライド……。ズタボロにしちゃいますか」

「………ぐううううううううううううううっ!」


 ケビンズの言葉を聞いたグリーフォはぎりぎりと歯を削るように食いしばると両手を広げ、その両の掌から――




 ぼわぁっっっ!




 と、高温の炎を出す。火柱が出るほどの威力を持つ炎を出しながら――グリーフォはコークフォルスを見てこう言った。


 怒りが頂点に達し、己を侮辱したコークフォルスを見て――



「お前達の死に方を決めた……。丸焦げにして潰してやるっっっ!!」



 それを聞いたケビンズはにっと微笑みながら、嗜虐ドMのそれとはかけ離れた加虐ドSの笑みを浮かべてこう言った。


 汚い言葉を吐かず、礼儀正しく――敵を煽るような言葉を吐いたのだ。


「――やってみてくださいな。火芸しかできない一発屋さん」


 と言った瞬間――グリーフォはかっと怒りを露にして、コークフォルスに攻撃を仕掛けた。


 両手に出した炎を、ケビンズ達に向けて――火炎放射のように放ったのだ!

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