PLAY38 国境の村の激闘Ⅰ(受け入れる暴走と初陣) ①

 ジルバサイド……。


 互いが互いに川の水に足をつけながら、その川を戦場の地として戦おうとしているカオスティカとセイント。


 幸い足場がぬかるんだ地面ではない。岩で埋め尽くされている浅瀬だ。


 しかしそれでも岩の隙間のせいで足場を取られてしまうが故、デメリットなどないというわけではない。


 むしろヒールを履いている女にとってすれば、否――靴を履いている人達にとってすれば不利かもしれない。


 裸足……、もとい鉤爪のランディには無関係なことだ。


 ジルバは首を傾げながら、飄々とした顔と音色で内面を隠しながらシイナ達に聞いた。


 心の中で状況の変化に困惑しつつ、そして目の前にいる喋る鳥……、いいや、ランディのことを見てシイナ達とどこかであったのか? と思いながら彼は聞いたのだ。


「というか……、何あの鳥……? 喋ってない? 重ねてと言うか……、お知り合いなの? お三方?」


 三人は言葉を紡がない。というか口を横一文字にして閉じている。


 そんな背中を見ていたジルバは内心――あー。これは黒だネ。と思いながら三人に向かって手をくいくいと手招きする様に――


「何か言わないとわからんヨー」と、困った音色で言う。


 それを聞いていたキクリは扇子を構えながらこう言う。


「死霊族よ」

「ネクロ……マンサー?」


 その言葉を聞いたジルバは、ふと思い出す。


 それは『ネルセス・シュローサ』で行動していたあの時、フランドがこんなことを言っていた。


 ――アクアロイアで死体もどきがとあるところを根城に潜伏している。


 ――マドゥードナからは遠いからいいんだが……、あの場所は瘴輝石っていう魔法の石がたんまり溜まっている場所だったんだが、そいつらが潜伏してしまったせいで換金できなくなっちまった。


 ――さっさとあの場所から離れて、死体なら死体らしく死んでくれれば助かるんだがな……。


 ――一体どんな未練があるんだか……。


 フランドが言っていた死体もどき。


 きっとそれが死霊族――ネクロマンサーだろう。


 そうジルバは思い、そして目の前の鳥人間を見た。


 黒い瞳孔。そして生きているかのように自我を持っている。そして一際目立つのは……。


 鳥人間の羽とは思えない無骨で、鱗を持った双方の羽。


 羽……、否。これは翼。固い固い翼だ。


 そうジルバは思った。


 竜の翼のような山吹色の鱗を持った鳥の姿の死霊族。


 あまりに不釣り合いなそれを見てジルバは思った。


 なんであんなバランスが悪い翼を? それについてシイナ君達は知っているのかな?


 そう思ったジルバはシイナ達に聞く。


「あの翼……、大きいネ。いったいどんな用途で」

「知らねえって……っ!」

「?」


 ジルバの言葉に対しブラドは恐怖していないが、それでも震える唇を動かして、こう言葉を零す。


「あの鳥……、……っ!」

「?」

「そうねぇ」


 頭に疑問符を浮かべるジルバを尻目に、ロフィーゼはこう答える。


 殴鐘を両手に構えながら彼女は普段と変わりない妖艶なそれで、ジルバを見ずにセイントとジルバに対して――こう説明をした。


「わたし達ぃ……、アルテットミアで初めて会ったのぉ。でもあの時はちゃんと、鳥のような翼を持っていたのにぃ……」


 ロフィーゼはすっと目を細めながら……、ランディの両腕を見て、彼女は理解ができないかのような表情と音色で――小さく呟く。


「何なのかしら……? そのイメチェン……」


 その言葉はランディに対しての言葉だろう。


 それを聞いたランディは、ふらりと立ち上がりながら――


「はぁ?」


 と、まるで……。お前ら何言ってんの? バカなの? と――


 そんな小馬鹿にした、素っ頓狂に近い音色でロフィーゼ、ブラド、シイナ……、特にシイナを睨みつけながら、彼は己の新しい腕を振り上げながら、彼は言った。


 八つ当たりに近い言葉を吐き捨てまくった。


「お前らニンゲンは……、ニンゲンのオスとメスは、自分達が犯した罪を理解していないのか……っ!? この翼になったのは……お前達のせいだろうがっ!」

「……俺達の?」

「せい……?」


 そうブラドとロフィーゼが首を傾げると、それを聞いていたシイナははっとして、ランディを見ながら彼は口を開く。


 まさかと思いながらの表情と音色で……。


「お、おれがあの時……、詠唱を使ってしまったから……?」


 と言った瞬間――それを聞いていたランディはぶぅんっとその鱗がある翼をシイナに向けながら――指をさすように。


「正解だよっ!」と言った。


 それを聞いたシイナは、やっぱりか……。と思い、あの時少ししかなかった罪悪感が大きく膨張する。


 だが、シイナが罪悪感を抱く必要はない。あれは正当な判断だ。誰もがそう答えるだろうが、シイナはそうはいかない。


 初めて使った詠唱ではあるが、まさかああなるとは思わなかった。


 そんな言い訳がましい言葉を吐くことなどできない。そう思ったシイナは、ぐっと唇を噤みながら、俯いてランディの言葉を受ける。


 それを見ていたセイントは、鎧越しに目を細める。


 ランディは先ほどの狂気の怒りとは打って変わって、狂喜の笑みで彼は笑いながら、胸を張るようにしてこう言い放った。


「そこにいる犬のオス! お前が放った詠唱のせいで、僕の両手は――翼は使えなくなった! 腐っていたんだよっ! あの詠唱は石化するものではない! ランダムで状態異常を付加する詠唱! 僕は両方の翼が腐りかけ、飛べなくなった! 両手を裂かれて命は取り留めたけどね……。鳥人族にとってこれは……っ! 屈辱以上の何でもないんだよっ!」


 狂喜からだんだん怒りの眼に変わり、ランディはシイナを翼で指さしながら、彼はその怒りをぶつけるように、シイナにその感情を――己の感情を余すことなくぶつけていく。


 弾丸……、否――それは鋭い刃のように。


 ランディは黒い瞳孔に血走ったそれを浮き上がらせて、狂気に溺れながらこう言った。いいや――怒鳴ったの方が正当な表現であろう。ランディはこう怒鳴ったのだ。



「お前にはわからないだろうねぇ……。僕がどれだけ苦労したのかっ! お前の行動を村の上空から見ていた……っ! なんだよその笑顔はっ! 僕の両手をこうしたくせに! なんでお前はそんな風にへらへらと笑っていられるっ!? 僕の両手を壊したくせにっっ! なんでお前が幸せなんだっ!? 僕の両手を壊して、僕の余生を滅茶苦茶にしたくせにっっ!!」



 セイントはそれを聞いて思った。


 ふつふつ湧き上がる怒りを抑えながら――彼は思った。


 ――八つ当たり。ただの逆恨みだ。


 そうセイントは思った。


 さくら丸も「ぐるるるっ」と唸りながら、毛を逆立たせて、今まさに吠えようとしている。それを見たセイントは、肩に乗っているさくら丸の頭を、人差し指でそっと撫でながら宥める。


 それを受けても、さくら丸は唸りながら怒りを鎮めようとしない。


 セイントはそんなさくら丸を見――そして怒り狂いそうなランディを見てから、シイナを見た。


 シイナはそのランディの言葉を聞いて、堪えている。それを見たセイントは――


 ――責任を感じているのか……? と、疑念をシイナに向けるようにして見て思った。


「何を言っているの」


 その言葉を聞いてか、鋭く、まるで子を叱る母のように言ったのは――キクリだった。


 それを聞いていたブラドはぎょっと驚きながらロフィーゼの後ろにすっと隠れる。ロフィーゼはそれを驚きながら感じて、背後にいるブラドを見た。


 キクリはランディを見て、『12鬼士』の風格を持った言動で、扇子をパンッと閉じてから、その扇子を指に見立てて指をさして――彼女はランディに向かって告げる。


「生きている体を使って、弄んで冒涜している『終焉の瘴気』の僕に言われたくない言葉ね」


 反吐が出るわ。


 その言葉を聞いたジルバ、セイント、シイナとロフィーゼ、そしてその眼を見てがくがくと震えているブラドは、キクリの意外な一面……、否、この場合は騎士としての彼女といべきだろうか。それを見て驚きと少なからずの恐怖を隠せずにいた。


 まぁ今までのキクリは、どことなく自分のペースを持っている大人の女性の余裕を出しているので、今のように、厳しい眼を見るのは、誰もは初めてだろう……。


 そんなキクリの言葉を聞いたランディは、苛立った顔をして、びきっと青筋を立てながら、彼は「あ、あぁ……?」と唸ると、キクリはそれを見て――


「あなたの両腕がなくなったのには――理由がある。運命がそうした。自業自得とか、そう思ったことはないのかしら?」

「じ、じごう……っ!」

「私は――ヘルナイトのように、『浄化』をしてあなたたちの魂を救うなんて言う慈悲はないわ。特にあなたのように、シイナ君やロフィ。そしてブラドをあんな風に甚振ったあんたは――特に許せないの」


『特に』と言うところを強調しながら……、静かに怒りを乗せて、すっと――扇子を持った手を上げてから、勢いをつけて、一気に振り下ろす。


 ぶんっという風を切る音、そしてぱぁんっと、扇子特有の音を出した。


 その動作を見ていたジルバは、ふとこう思った。


 まるで巫女だと――。一つ一つの動作が、神様に送る踊りの一シーンのように映り込む。


 それでも、キクリは鋭い目つきを崩さず、そのままの状態で、ふっと、扇子を掌を差し出すように、扇子の面を空に向けて――彼女は言った。


 くすっと、挑発的な笑みを浮かべて……。



「散り際の一言くらいは――聞いてあげてもいいわよ?」



 その言葉を聞いたランディは、きゅうっと、光が当たったかのように目を小さくさせ、がくんっと頭を垂らす。それを見たシイナたちは首を傾げていたが、キクリはふわりと、後ろに向かって飛びながら――


「挑発しましたからねー」

「「「「「え?」」」」」

「わん?」


 普段通りの音色と雰囲気を出して、彼女は後方支援に徹しようとする。


 それを見たジルバ達は、きょとんっとして見上げた後、すぐに前方を見る。


 前方――それはランディがいる方向で。ランディはぶるぶると体を、寒さによる生理現象ではない震え方をして……、彼はばさりと両手の翼を広げ――


 ぐわりと顔を上げて、シイナたちに激昂の、青ずしを浮き上がらせた顔を見せながら――彼は……。



「――っっっっざっけてんじゃねえええええええええええっっっっ!!」



 ――ぶんっと、彼は叫びながらその翼をはたくように振り下ろし、ぶおぉおおっと突風を起こす。


 それを受けた五人は、腕で顔を隠しながら、波が発生する川の冷たさを足で感じながら、彼らは耐える。


「結局煽って、最後は俺達任せかよぉぉぉぉぉぉーっ!」


 ブラドの叫びを聞きながら、キクリはフワフワと飛びながら――


「だって私は回復専門。防御とかそういうことは少しできるけど……、回復がメインなんで。攻撃系ってあまり得意じゃないの」


 と、まるで高みの見物のように見下ろしながら、キクリは言った。


 ――さっき攻撃していましたよね……っ!?


 そうシイナは心の中で、キクリに対して突っ込んだが、それは心にしまっておく。


 今は、今なお――ばさばさと風を起こしているランディをどうにかすることが先決だ。


 そうシイナは思い――そして……。キクリを見ながら……。



 心の中で、お礼を述べた。



 そしてシイナは、その激しく吹き荒れる風を受けながら、杖を構える。


「……すぅーっ」と、シイナは息を吸って、そして吐く。


 ジルバはそれを見ながら、はっとして仕込みの剣をしゅっと出すと、そのままクラウチングスタートのように屈んで、走る体制になる。


 ロフィーゼとブラドはそれを見ながら一体どうしたんだと思い、閉じていた目を少し開けて、セイントも鎧越しにそれを見た。なお、さくら丸はセイントの鎧のマントに噛みつきながら耐えている。


 シイナはキッと――今なお翼を急かしなく動かしているランディを見る。


 突き刺すような目で、睨まないで見る。


 そして――


状態異常魔法ドラックマジック・スペル――『手止めアーム・スタン』」


 スキルを言った瞬間――


 ばちぃんっ! と、ランディの腕が止まった。否――攣ったかのように、ぶるぶると手を震わせているランディ。


 その最中――「クギィッ!」と唸ったランディは、その震える手をどうにかしようと足を使って蹴り上げようとした時――


 だっと駆け出したジルバ。


 ばしゃばしゃと水飛沫が飛ぶそれを見ながら、ジルバはロフィーゼ達に向けて叫んだ。


「ロフィーゼ! 支援! ブラドとセイントは攻撃を! 俺とは違う方向で!」

「っ? え、ええっ!」

「なんか知らねーけど! わかった!」

「っ! 心得た!」


 言われたとおりに、三人は行動に移した。


 ブラドとセイントは先に駆け出し、武器を構えながらランディの背後に回る。


 しかしそんな丸見えの戦略を見て、ランディが黙っているわけではない。


 ランディは苛立った表情のまま「くそったれぇ!」と叫び、前までは使わなかった右足を軸にした翼の重みを利用した遠心力で繰り出される――回転蹴り。


 ぐりぃんっと最初にふさがってしまった腕だが、腰を使えば何とか回すことはできる。


 腰を使い、ぶちぶちと体の一部の肉が切れるような音が聞こえたが――そんなもの考えている暇などない。時計回りにそれを振り回し、そして足の蹴りを加えての、二重の攻撃を仕掛けるランディ。


 前まではなかった戦法だ。


 それを見て――右側にいたセイントははっとして、その翼を避けようと、屈みながら走りこもうと知る。しかし――彼の背後から来た蹴りまでは……、見えなかった。


 ランディはにっと微笑みながら――狂気に飲まれたその笑みで――


 ――まずは一人!


 そう思った時だった。


「『防鐘ディフェンサー・ベルゥ』ッ! そして『俊鐘スピーディー・ベルゥ』ッ!」


 ゴォーン! ゴォーン! と、ロフィーゼは踊りながら殴鐘を鳴らし、スキルを発動させる。


 よく見ると、ロフィーゼの足は裸足だ。ヒールがついた足だと踊れないと踏んで、彼女は予めヒールを脱いでいた。用意周到である。


 ロフィーゼがスキルを発動したと同時に――ジルバ、ブラド、そしてセイントの体に緑色の靄と、青い靄が纏われる。それを見たランディは内心舌打ちをして、セイントの首を狩ろうと目いっぱい腰を酷使して、ぶん回そうとした。が――


状態異常魔法ドラックマジック・スペル――『胴体止めボディ・スタン』、『足止めレッグ・スタン』」


 刹那――


 ばちぃん! ばちぃん! と、体と足に来る攣ったような痛み。


 それを感じたランディは「ぐぅ! がぁ……っ!」と声を上げながら、その回っている態勢でよろけて、そのままばじゃぁんっと川に向かって倒れてしまう。


 ランディはそれを受けながら、水の世界と地上の世界が見える視界で、その術をかけたシイナを睨みつける。シイナはランディを見下ろしたまま、見下すような目をしない。ただランディを見下ろして、杖を構えていた。


「ぐぅううううううううっっ! ぶはああああああああああああああっっっ!」


 その顔が気に食わない!


 そうランディは己の気力を鼓舞し、高鳴らせるように雄たけびを上げながら、ばしゃぁんっ! と――すでに自由となった手で、川に向けてそのままたたきつけるように手を……、翼をつけた。


 水の柱が出た瞬間、ざぁああっと短い雨が降り注ぐ。


 すると――ランディははっと何かに気付いた。


 ――っ!? っ!


 そう。ランディの視界にはシイナとロフィーゼ。そして飛んでいるキクリしかいなかったのだ。


 


 それを見たランディは辺りを見回しながら思った。


 どこにいる? どこに隠れた。


 と思いながら――ランディは辺りを見回すと……。


 彼の背後から現れるブラドとセイント。


 ランディが振り向こうとした時にはすでに――二人はスキルを発動している時だった。


「行くぞ――蜥蜴の青年よっ!」

「ブ・ラ・ド! あいつと被るから覚えてくれよっ!」


 そんなひと悶着をして、剣を突く体制になりながら、セイントは構え――その真正面で剣を振り回そうとしているブラド。その大剣には風が纏っている。先ほど、風のクッションを作っていた、あの時と同じ光景が、ランディの目の前で繰り広げられていた。


 セイントはぐっと、剣に力を込めながら――


聖騎士属性魔法ブレイブ・エレメントスペル――『エレメントザン』ッ!」


 と、剣に集まっていた風を、一気にランディに向かて突いた瞬間――ビュオオオオオオオッッッ! とランディに向かって竜巻が襲い掛かってくる!


 それを見たランディは、慌てながら逃げようと手を振ろうとした時……。


 ブラドはその剣を振りかぶり――そのセイントの攻撃をトンッと小さく跳びながら避けて……。


「チェインスラッシュ:『ザン』ッ!」


 スキルを発動させて叫ぶ。


 それと同時に、ランディの背中を襲う風。


 ばずぅん! と――空気法のような衝撃を受けたランディは、がはっと咳込みながらそれを受け、更に――ブラドの追撃攻撃を、背中から受けてしまう。


「いっでぇ!」と、声を上げて唸ってしまったランディは、シイナ達を見て、こう思った。


 ――足と胴体の自由が利かないっ!


 ――手は動けるが、重すぎて飛ぶにしても、少し肩慣らしすることが必要だっ!


 ランディは苦虫を噛みしめながら思う。悔しく思う……。


 ――こいつら……、即席なくせに息が合っていやがる……っ!


 ――シイナドランク野郎ロフィーゼ支援女セイント特攻騎士ブラド蜥蜴剣士キクリ『12鬼士』は様子を見てやる。そして最後に来るのは……っ!


 と思いながら、彼は目だけで周りを見回して――視界の端に映った黒い影を認識した。


 彼の右斜め下から――ジルバが拘束とまでは言えないが、人間族の中ではかなりのスピードで、ランディの背後を狙う!



 ――ジルバ真打



 ランディは思い――


 ――君が回し蹴りを繰り出している間、その軌道に沿うように走って、遠回りしてここまで来ました。


 ジルバは思い――仕込みの剣を使ってランディの足と腕の付け根を狙い、だっと一気に加速して背後から四肢を奪う!


暗鬼剣キラー・スキル――『四肢切断ゴアズ・スラ



 ――



 ランディはぐりんっとジルバの方を見て、まるで道化の笑みを浮かべながら、……。


 勝ち誇った笑みと共に――こう言った。




ありがとよふぁりがふぉよマナふぁなイグニッションいぐにっふぉん――『影蜘蛛の糸ふぁどー・ふふぁいだーふぇっふぉ』」




 嘴にあったその石が光ったと同時に――


 ――





 キクリに向かって!





「っ!」


 それを見たキクリは気付くと同時に逃げようとしたが、ロフィーゼの影から出てきた影の糸が彼女の足に絡まり、どんどん彼女の体に纏わりついて拘束していく。


 それを見たジルバ達は、言葉を失ったかのように飛びながら拘束されてしまったキクリを見た。見ることしかできなかった。


 そんな光景を見ながらランディは自由になった胴体と足ですくっと立ち上がり――高らかに言った。


「――計画通り」

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