PLAY33 蜥蜴人の集落の魔女 ⑥
「ルールは簡単! 誰かが円の外から出るか、倒れて『負け』を認めた瞬間、相手側の勝利となる! 族長、魔女殿は瘴輝石と魔法の使用を許可。冒険者達も魔法の使用を許可します! しかし尻尾による不意打ちの追撃は禁止! それを破った者は即敗退! なお引き分けとなった場合、その時の勝敗は志願側の勝利、どちらかが二勝した者を勝者とみなし、殺しをした者は即敗者と見なすと同時に、反逆者として重罪に処す!」
それを聞いていたみんなの表情が曇った。
要約すると……、真剣勝負だということはわかった。でもその勝敗に不利があった。
族長側は引き分けになっても勝ちを勝ち取ることができる。つまり……。
私達は引き分けになった時……、負けとみなされてしまうのだ。
勝ちだけが私達に残された道。
引き分けも負け。負けも負け。負けることができない戦いと言うのが、今まさに起きているということになる。
一瞬の気も抜けない……。
この戦いには、勝つことしか選択肢がないのだから。
「この状況……、不利があるな……」
アキにぃはうーんっと腕を組みながらキョウヤさんを見て、大丈夫かと思って見ていた。
私もキョウヤさんを見る。
するとキョウヤさんは――
にっと、普段と変わらない様子で、槍を肩に乗せていた。
それを見ていたシャズラーンダさんは大きな刃をつけている槍を構えながら、「ほほぅ」と言いながらキョウヤさんを見て聞いた。
「なにやら……、余裕だな。小僧」
「余裕っていうか……、要は殺さないで、『参った』って言わせるか、その円の外に追い出せば勝ちなんだろ? まぁ、ルールは厳しいけど、何とかなる」
と言って、キョウヤさんはすっと槍を構えながら、刃を自分の背に向けた。
それを見たシャズラーンダさんは――じっとその光景を見て……。
「それは……?」と聞く。
それを聞いたキョウヤさんは――笑みを崩さないでこう言った。
「オレのジンクス」
その言葉と共に……、お日様が真上を向いた。
刹那だった。
だっと己の足で駆け出したシャズラーンダさんとキョウヤさん。
そのまま剣と剣が交わるような鉄と鉄同士がかち合う音が響き渡った。
それはもう……、ぐわぁんっ! と、トーンチャイムのように……。
ふわりと来た風圧に私は目を閉じてしまい、帽子の中に入っていたナヴィちゃんが「きゃきゃきゃっ?!」と驚きながら、私の髪を掴んで飛ばされないようにしていた。
でも髪を噛まないでナヴィちゃん……っ! 抜けそうで、と言うか頭皮がいたたたたっ。
その風圧を受けて、更に熱気を上げる観客の皆さん。
ヘルナイトさん達はその光景を、ただ見守っていた。応援もしないで、そして相手に対しての言葉をかけないで……。
きっと、それが礼儀だと思って言わないんだろ。
でも、私は応援したい気持ちがあるけどな……、ナヴィちゃんもう風止んだからっ。いたたたた。
キョウヤさんはキョウヤさんで、シャズラーンダさんの槍の攻撃を受けている。それぞれが拮抗を保っていた……けど……。
「ぎゃあああああっっ!」
「?」
遠くから声がした。その声を聞いてみてみると……、私は、私達は……、ロフィーゼさん達は困ったような顔をした。
叫んでいたのはブラドさんだったんだけど……、ブラドさんは地面から這い出てきた何かから逃げるように全速力で走って逃げていた。
それを見ていた観客は「「「「「あはははははは!」」」」」と大笑いをしている。お腹を抱えている人までもいる状況だ。でもあの地面から生えているあれは……、一体……。そう思って見ていると……、私は目を疑った。
それは――木で作られた人の手。
にょきにょきと生えては手の形を形成し、そのまま走っているブラドさんの足を掴もうとしている。
しかしブラドさんはその手から逃げるように……、命からがらと言わんばかりにすり抜けて逃げている。
それを見た私は、ザンバードさんを見る。
やっと理解した。
ザンバードさんは剣を地面に突き刺して、手を伸ばしたままブラドさんを手で追っていた。
それを見るからに、手が向かった先に連動して、地面から出てきた木の手がブラドさんを拘束しようとしているんだ。
それを見て、私は再度キョウヤさんを見る。キョウヤさんは落ち着きながら、そのシャズラーンダさんの押しに負けている……。
これではだめだと思ってしまい。手を伸ばそうとした瞬間……。
「外部の人間の手助けは、冒険者側の反則とみなし、負けとします!」
その言葉を聞いて、私はぎゅっと口を噤み、震える手を、そっと下す。自分の愚かさを嘆きながら……。
すると――
「信じろ。ハンナ」
「!」
ヘルナイトさんが私を見下ろしながら、肩に手を置いて言った。凛とした音色で彼は言う。
「キョウヤは勝つ。そうだろう?」
その言葉を聞いて、私はきゅっと先ほどとは違うような口を噤み、そして肩に手を置いたヘルナイトさんの手に、自分の手を乗せて――頷く。それを見たヘルナイトさんは、頷いて前を見て、私も前を見る。
キョウヤさんが勝つことを、信じて……。
「ぐぎぎぎぎぎっ!」
「静かにしてよ――シスコン」
なんか、アキにぃとシェーラちゃんの声が聞こえた気がするけど……、気のせいだよね? うん。
そんな話をしている間に――
キョウヤさんはどんどん押されていき、背中と地面がつきそうなくらいまで押されていた。その腹筋の凄さには驚いたけど、他の蜥蜴人の人たちのテンションがヒートアップしていき、族長に対して応援をするようになった。
がんばれ! もう少し! そんな声が聞こえてきた。
でも……、シャズラーンダさんの表情に笑みはない。むしろキョウヤさんの方に笑みが浮かび、そのままキョウヤさんは――槍を傾けた。
盾のように押さえていたそれを、ぐいんっと右に傾けて。
すると――シャズラーンダさんはぎょっと驚きながら、右に傾いた拍子にずりっと落ちていく自分の槍を見ながら舌打ちをした。一気に重みをかけた上での不意打ち。
尻尾での不意打ちはなしでも、この不意打ちならいいということになる。
ちなみに、キョウヤさんは押されている時尻尾は使ってない。
自分の足で、腹筋でそれを受けて留めていた。耐えていた。
正直すごいことだと思うけど……、キョウヤさんはそんなことを威張り散らさなかったな……。普通だと、思っているとか……?
……ない……。よね。うん。
そう思っていると、めしゃりと、地面が割れるほどの威力でめり込んでしまったシャズラーンダさんの槍。
それを見てキョウヤさんは左に回りながら、シャズラーンダさんの後頭部めがけて、槍で殴ろうとした――その時だった。
私には見えていた。
シャズラーンダさんが、にっと笑みを浮かべていたことに……。
心理戦は裏の裏をかいて、敵を欺いて……、味方を欺く。きっと、シャズラーンダさんはわかっていたんだ。予測していたんだ。キョウヤさんがそうすることを――予測していた。
「マナ・イグニッション――『
と言った瞬間だった。
シャズラーンダさんの槍の刃から、白い光が溢れだし、シャズラーンダさんを覆うように、半透明の半球体――私が使う『
「なっ!?」
「何よあれぇ。ずるぅい」
とアキにぃと、こっちを見ていたロフィーゼさんが声を上げる。ブラドさんは今も追われながら走っている……。
それを見たキョウヤさんははっとしてざっと足でその勢いを殺して、そのままたんっと後ろに跳びながら空中で回る。
まるでそれはどこかの劇団で使われているような曲芸で、それを見たシェーラちゃんが「すごっ!」と感動の声を上げていた。
でも……。
「マナ・エンチャント――『ランダム・マナエンチャー』ッ!」
と叫んだ瞬間、シャズラーンダさんの槍の刃が白く光りだし……、冷たい空気が私の頬に当たった。
「つめたっ」と、私が言った瞬間、ナヴィちゃんは「きゅっ!」と鳴いて、私の肩の跳びついて、私の頬にすりすりと頬すりをする。きっと寒かったのだろ。仄かに体毛がひんやりする。
それを見た私は、そっとナヴィちゃんを手にすっぽりと収めて、その戦況を見る。
シャズラーンダさんはそのままめり込ませた槍を持ち上げて、そのまま上に持ち上げた後――ぐるんぐるんっと大きく槍を振り回す。
「んぬおおおおおあああああーっっっっ!」
シャズラーンダさんは大きく声を上げて、その冷気を纏った槍を振り回すと、段々と……、どんどんと……、周りが寒くなってくる。
それを感じたのは、ここにいる人達と、キョウヤさんとブラドさん。誰もが腕をさすりながら己を抱きしめている中……、キョウヤさんはそれを見ながらどんどん地面に向かって落ちていく。シャズラーンダさんはそのままぐるんぐるんっと回しながら、仁王立ちのまま動かない。
それを見て、今度はブラドさん達の方を見ると……、ブラドさんは未だに逃げて、ぜぇぜぇと息を切らしながら走っていた。すでに体力の限界なのだろうけど……、そんなブラドさんを見て、ザンバードさんは言った。
「とんだ拍子抜けだな。これでも俺が使う魔法の中ではちょっとした拘束しかできない『
と言いながら、ザンバードさんは伸ばしている手の反対の手を上げて、そのままパチンッと指を鳴らすと……。
「――『
バキバキと、地面から出てくる人間の形をした……、違う。蜥蜴人の形をした樹の人形。ザンバードさんはその樹の人形に大剣を手渡して、もう一度手を伸ばしながらこうはっきりと言う。
「新しい王は――人を見る目がなかったということだな」
そうザンバードさんが言った瞬間、がざがざっと、樹と草木が軋め合う音が聞こえるような音を立てて走り出した樹の人形。それを見て、逃げて驚きの顔をするブラドさん。
そしてキョウヤさんが落ちていく中――シャズラーンダさんはそのままぐるんっと振り回していた槍を、しっかり持って、上から下に――下から上へと向けて、救い上げるような薙ぎを――キョウヤさんに向けて繰り出そうとした!
「っ!」
私は思わずきゅっとナヴィちゃん抱きしめてしまった。ナヴィちゃんはその腕の中で「きゅぅ!?」と声を上げていたけど……、誰もがそれを見て、きっとシャズラーンダさんが勝つと思うだろう。でも……。
ヘルナイトさんもシェーラちゃんも、アキにぃも……絶望の顔などしなかった。私は最初こそしていたけど……、すぐにそれが消えた。なぜって?
キョウヤさんは落ちていきながら襲い掛かる槍の攻撃を見て――
にっと――笑っていたから。
ずっと――余裕の笑みで、彼は笑っていたから。
キョウヤさんはそれを見て、とんっと振り上げてきた槍の上に立って、しゃがんだ。
そこを足場として見て……受け取ってるかのような動作だ。
尻尾は使ってない。
足と槍を持っていない手で掴んでからキョウヤさんは言った。驚いて目を見開いているシャズラーンダさんに向かって――
「あんがとよ」
と言った。
そしてそのままぐっと足を上げて、そのままシャズラーンダさんの顔めがけて……。
めごりっと足蹴りをくらわして、そのままぐっと、シャズラーンダさんの顔を踏んだまましゃがんで、とんっと跳んで着地する。
それを受けたシャズラーンダさんは「んがぁ!」と唸りながら、顔を抑えてよろめく。キョウヤさんはそのままとんっと着地した後――ぐるんっと振り向くと同時に、めりっと言う音が聞こえそうな雰囲気を出して、キョウヤさんはそのまま振り向きざまに槍を振り回して――そのままシャズラーンダさんの首元に……、多分頸動脈があるところに向けて――
どがぁっと地面に向けて、シャズラーンダさんを叩きつけた。首元を狙って――シャズラーンダさんが潰れたところの地面が凹むくらい、キョウヤさんは槍を叩きつけて、そしてそのままぐっとシャズラーンダさんが動かないように押し付ける。
その状態で、キョウヤさんはぐっと、槍を押す力を加えて――こう言った。
「これ、刃がないほうでよかっただろ? 刃があったら、あんたの首を斬るところだった」
それを聞いたシャズラーンダさんは、目を疑うように、地べたに這い蹲ったままキョウヤさんを見上げていた。
それを見ていた蜥蜴人の人達は……、ぽかんっと口を開けて驚いていた。きっと、シャズラーンダさんが勝つと確信してみていたのだろう……。でも……。
石の力を使ったとしても……、キョウヤさんの方が一枚上手だったようだ。
それを見て、ヘルナイトさんは頷いて――「こっちの勝負はあったな」と言った。
そしてそのままブラドさんの方を見ると、ブラドさんは今まさに絶体絶命で、「嘘だろおおっ!?」と、絶叫を上げながら目の前にいる樹の人形を見て、背後から来る地面から這い出てくる樹の手を見たブラドさんだったけど……。
「ブラドォ」
と、ロフィーゼさんは妖艶に微笑みながらブラドさんに向かって何かを言っていた。それを見たブラドさんは、半分泣きながら「何しとんじゃてめぇ! 俺は今絶体絶命の真っ最中」と言った瞬間、ロフィーゼさんはこう言った。
にっと妖艶に……、黒い笑みで彼女はこう言った。
「――負けたらわたしぃ……、抱きしめてあげるぅ」
それってマドゥードナの時もそう言っていましたよね……?
そう思いながら私は首を傾げていると……、セイントさんはそれを聞いて「何を言っている」と疑問の声を上げて――
「そんなことを言ってしまえば、まぁ邪な男ならば喜んで負けを」
「負けてたまるかこのやろぉっっっ!」
「えぇっ!?」
ブラドさんの急上昇したやる気を見て、驚きを隠せずに声を上げてしまうセイントさん。
それを見ていた私達は、マドゥードナでも似たようなことがあったことを思い出し、さらに思い出したことがあった。ブラドさんは……、『女性恐怖症』だった。
つまり……。
普通の人なら――負ける+抱きしめる=喜んで負けてご褒美をもらう。
が……。
ブラドさんの場合――負ける+抱きしめる=死んでも負けてたまるか!+背水の陣。
ということになる……。
……、最後の背水の陣は、合ってるかな? そう思っていると……。
ブラドさんはその目の前に来ている樹の人形を見て、そしてそのままぐっと体制を崩して、背中から倒れようとしていた。それを見ていた蜥蜴人の人達はどよっと騒めき始める。さっき族長でもあるシャズラーンダさんが負けた時は、あまりに突然の光景もあってか、騒ぐことができなかったのだろう……。そう思っていると――
「ふんっ!」
ブラドさんはそのまま倒れた。けどすぐにぐっと足を上げて――そのまま勢いをつけて。
「――おらぁ!」
樹の人形の顎めがけて――下からの蹴りを入れたのだ。ばがぁんっと大きな音が出なるくらい……、それは勢いがあった蹴りだった。
それには私たちも驚きの声が上がる。
ザンバードさんもぎょっとして、動かしていた手を止めてしまった。その隙を狙って、ブラドさんは樹の人形の股の間を通り抜けて、すかさず大剣をしっかり持ったまま、下から上に振り上げて――
「そいやぁ!」
大剣を持っていた樹の人形の手を――ぶちぃっとぶつ切りにしたのだ。
それを見てロフィーゼさんとシイナさんが互いに手を取りながら喜び合う(シイナさんは少し顔を赤くしていたけど……)それを見ていたジルバさんも、ひゅぅっと口笛を吹いて、セイントさんはそれを見て「おぉ!」と声を上げた。さくら丸くんも尻尾を振りながら「わんっ!」と興奮した様子でその光景を見ている。
ザンバードさんはその光景を見ながら「な……っ!」と、驚きの声を上げた。
ブラドさんはそのまま樹の人形の手から落ちた大剣を掴んで、それをザンバードさんに向けて――
ぶん投げた。
ぶんぶんっと回転しながら来るその大剣を見て、ザンバードさんは手をかざしてこう叫ぶ。
「――『
すると、ザンバードさんの地面から出てきた大木。それがザンバードさんの大剣をがごっと絡めて、どんどん絡めていく。目の前に現れた大木を見上げているザンバードさんは、ほっと胸を撫で下ろした。
でも――観客と私達には見えていた。気付いてしまっていた。
その大剣の投擲が――フェイクだったということに。
ふっと、ザンバードさんの背後に回っていたブラドさんは、そのまま大剣を横にして、構える。それに気付いたザンバードさんは、後ろを見ようと振り向こうとした。
しかし――それも遅かった。
「『スイング・スラッシュ』!」
ブラドさんが言った瞬間――そのまま横に切り込むように振り回された大剣。
それを見たザンバードさんは、手を伸ばそうとしたけど……。ブラドさんはそのまま刃を向けていた大剣を、くるりと柄を回して、ザンバードさんに剣の腹を向けたまま……。
ばがぁんっと、バットでかっ飛ばすように――剣の腹で殴ったのだ。
「がはぁ!」
それを受けてしまったザンバードさんは、そのままかふっと息と共に唾液を吐いて――そのままずだんっと背中から地面に倒れた。
ブラドさんは大剣を肩に乗せて――そして……。
「……これで抱きしめられないっ! 俺は……、勝ったぞっ!」と、涙ぐみながら言った。
それを聞いていたアキにぃは、呆れながら「よほど嫌だったんだ……」と、がくりと肩を落としていた。
でも……、私は目の前の光景を見て、再度認識をする。二人は勝ったのだ。無傷で、そしてシャズラーンダさんとザンバードさんを軽傷でひれ伏せた。
ある意味力の差を見せつけられたようなものだけど……。誰もケガしなくて、本当に良かった。
そう思いながら、私はほっと胸を撫で下ろした。
下ろした……、瞬間だった。
どろり――と、黒と赤のもしゃもしゃが、私に襲い掛かってきた。
それを感じて、私ははっとそのもしゃもしゃが襲い掛かってきた場所を見る。セイントさんも私と同じ方向を見て……。蜥蜴人の二人が言葉を揃えて何かを言おうとした時、その声と重なるように、私達は叫んでしまった。
「「……、ま」」
「「逃げろっ!/逃げてっ!」」
その声に驚いた蜥蜴人の人達とアキにぃ達。その驚いた隙を突いてなのか……。
それは――突然来た。
それは森の奥から来た。それも――銀色の投擲物をいくつも飛ばしてきたのだ。
ある意味銀色の雨。
それを見ていた蜥蜴人の人達は、悲鳴を上げながら逃げようとした。それを見た私は、手をかざして――
「『
と言い、みんなを、この場所にいる全員を覆うように――スキルを発動させる。
集まっていた一帯に、半透明の半球体が出てくる。
それを見ていた蜥蜴人の人達、シャズラーンダさん、ザンバードさんが、驚いた眼をしてそれを見上げていた。でも、その驚きでさえもさせないかのように……。
ガガガガガガガガガガガガガガッ!
と、銀色の投擲物は――横殴りの風のように襲い掛かってきた。
それを聞いた蜥蜴人の人達は再度悲鳴を上げて頭を抱えて蹲る。それを見て、私以外のみんなが武器を構える。
そして、突然その横殴りの攻撃がやんだと同時に……。
「お初に目にかかり申すぅ! 蜥蜴の者達よ!」と、森から出てくる集団……。
その人達を見た瞬間、私は目を疑った。なぜって? それはアクアロイア王が言っていたから。もう、この土地にはいないだろう。そう言っていたのに……、なんでここにいるのだろうと、誰もが思っていただろう。みんなが目を疑っている。
それを見た私は、再度目の前から出てきた……、黒い装束に身を包んだ――六芒星の仮面をつけている集団を見て、間違いないと認識した。そして中央にいるその一人は――大きい動作でぺこりと、頭を下げた。
キョウヤさんと同じような、でも人間よりではない蜥蜴の顔に尻尾、でも背中には大きな鱗の翼を生やしている鎧を着た……、逆立っている赤い髪も相まってドラゴン感がすごい幹部の一人。
「吾輩は『六芒星』が一角! 『六芒星』の攻撃の要にして
『六芒星』の幹部――ガザドラはぐわっと顔を上げて、高らかにそう名乗った。
一回会ったことがある私達に向かって――再度同じ自己紹介をしながら……、背後にいる荷物を背負った配下を連れて襲撃しに来たのだ。
今まさに……、私達は何度目かになる最悪の展開を味わっていた……。
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