PLAY33 蜥蜴人の集落の魔女 ②
すると……、私達の存在に気付いた一人の子供の蜥蜴人が……。
「あ! 人間だ!」
と言って、一緒に遊んでいた子達にそのことを伝えて私達の方を指さすと……。
「本当だ人間だ! 人間族の人だ!」
「かーちゃーん! 人間が来たよぉ!」
子供達は近くにいたお母さんらしい人に私達を指をさして言うと、そのお母さんは私達を見て……。
「あらまほんとだわっ!」
「ここに人間が来るってことは……、冒険者様っ!?」
「あらまぁ小さい魔人の子もいるわぁ。可愛らしいわねぇ」
「犬人の亜人さんもいるわぁ。しかも司祭の狼だわっ!」
「あんたー! 冒険者様が村に来たよぉ!」
今度はお母さんらしき集団が近くで力仕事をしていた旦那様らしき人に話しかけて、その人は……、あ、いや……、蜥蜴人さんかな? 蜥蜴人さんは私達を見てからぎょっとしたように驚きながら――
「おぉっ!? これまた珍しいっ!」
「こんなちんけなところに、おぉっ!? 伝説の武神卿と巫女卿までもおられるぞっ! 同胞の血が混ざっている亜人と魔人の青年まで!」
「大所帯だなっ! ん? んん?」
一人の老人が私を見て、じーっと私を見つめながら、その人は顎に手を当てていた。
それを見ていた私は首を傾げていると……。
「も、もしやあのお方は……っ!」
と言いながら一人の老人が私を指さして、震えながら近付いて来た。
みんながそれを見て何だと言わんばかりに見ていると……、老人は私の近くまで来ていて、そのまま方に触れるか触れないかと言うところで、手をわなわな震わせながら驚愕の顔で私を見た後……。
「あ、ああ……っ! 何ということだ……っ!」
「? ? ??」
老人は私の顔を見た後、ぐわっとその大きな口を開けて、私の顔を食べるのではないか? それくらい大きな口を開けて、老人は叫んだ。
「あなた様はサリアフィアさまですかぁあああああああああああああああっっっ!?」
「ひぃえぇっ!?」
その叫びと、食べられてしまうのではないかと言う驚きもあり、私は素っ頓狂な声を上げて驚いてしまった。
するとその声を聞いてか、近くにいた蜥蜴人の人や遠くにいた蜥蜴人達にも響き渡ってしまい……。
あっという間に私の周りには――
「おおおおお! 何ということだ!」
「サリアフィア様の生まれ変わりだわっ!」
「さりあさまー!」
「さりあさまだ!」
「サリアフィア様!」
「サリアフィア様!」
まるで某アイドルの周りに集まるファンの人みたいに、私は蜥蜴人の人達に囲まれながらおしくらまんじゅうされていた……。それはもうぎゅうぎゅうと……。
うぅ……。くるひぃ……。
「ああぁっ! ハンナが圧迫死されてしまうっ!」
「なんだか独占された気分だわぁ。ずるぅいぃ~」
「……だからって私を独占しないでほしいわ。子ども扱いはすごく嫌いなの……」
「十分子供だぞ! 子ども扱いするなと言う子ほど子供なのだからなっ!」
「あの……、すごいことになっているんですけど……、助けないんですか……?」
「ん~。実は助けたいんだけど……。あっちもなんだかどっかに行っちゃってネぇー」
アキにぃ、ロフィーゼさん、シェーラちゃん、セイントさん、シイナさん、ジルバさんの声が聞こえてるけど……、入れないと思っているから助けに行けないのは……、私自身がよく知っている。
だってこんなぎゅうぎゅうにされたら、誰だってその中を掻い潜っていけないと思うから……。うぎゅぅ。苦しい……。
すると……。
「どぅおわああっっっ! なんだこれえええっ!」
「ヘルプ! ミーヘールプーッッッ!」
あ、キョウヤさんとブラドさんの声が……。
あっちもあっちで凄い事になっているんだ……。でもどうしよう……。どんどん私達の存在に気付いて集まってきている蜥蜴人の人達。もう出られないのでは? そんな言葉が頭の片隅を行きかった瞬間……。
「何をしているっ! 早く離れんかっ!」
一際大きな老人のような声色だったけど、震えていない。
むしろ威厳があるようなその声が聞こえたと思った時、集まっていた蜥蜴人の人達ははっとして私から少し離れて背後を見たり横を見たり、そして前を見たりして茫然としてその光景を見ていた。その極端な光景を見て驚いていた私だったけど……。
「ハンナ」
「!」
ヘルナイトさんが私の背後からきて、私を支えるように立ってくれた。ヘルナイトさんは私を見下ろして――心配そうだけど凛とした音色でこう聞いてきた。
「大丈夫か? すまない……、あまりに人が多かったのでな……」
その言葉を聞いた私は、なんだろう……。胸の奥がこそばゆく感じた。私はそれを聞いて、少し茫然としながらも、何とか言葉を紡ごうと――
「だ、大丈夫……です」と、片言に聞こえるようなその音色で言った。
それを聞いて、ヘルナイトさんはほっと胸を撫で下ろして、そのまま私の頭を撫でてから――「そうか」と凛とした音色で、安心したかのように言った。
すると――
「ほう……。武神卿ではありませんか」と、さっき大声を張っていた人の声が聞こえた。それも私の目の前で……。
その声を聞いて私とヘルナイトさんを前を向くと、そこにいたのは――一人の蜥蜴人だった。
背中には大きな槍を背負い、鱗と強靭な肉体も目立つけど、特に目立っていたのは腹部の爆発の痕……? それとも、そこだけ火傷したような痕……? なのかな。そんな感じの傷が付いている。腰には獣の皮で作った腰巻、でいいのかな? 腕にもその獣の皮で作った腕貫をつけている濃い緑色の体をした蜥蜴人がいた。
その人を見て、ヘルナイトさんは頭を抱えてうなった後……。思い出したかのようにこう言った。
「族長殿ですか……? 息災ないようですね。安心しました」
「え? 族長様……?」
そう私が聞くと、ヘルナイトさんは「ああ」と言って――その族長さんを見てこう言った。
「このお方はシャズラーンダ族長。この集落の長、そして
そうヘルナイトさんはすごい言葉をバンバン言っていたので、私は驚きながら頭を下げて――
「あ、あの……、冒険者で、天族でメディックのハンナです……。よろしくお願いします」と言った。
それを聞いてか、族長のシャズラーンダさんは「かかかっ!」と笑いながら――
「そう畏まるのではない。と言いたいところだが、村の者達の無礼に対し、先に謝っておこう。すまなかった。何分ここには人間族や冒険者が五百年もの間来なかったが故、皆初めて見るものに興奮していたのだよ。許してほしい」
「えっと、大丈夫です……」
さっきのこともあってか、シャズラーンダさんは私に頭を下げてきた。それを見た私は慌てながら大丈夫と言って、頭を上げてくださいと続けて言うと、シャズラーンダさんはすっと頭を上げて「誠に申し訳ない」と、本当に申し訳なさそうに言った。
するとアキにぃ達が来て……。
「は、ハンナ……っ! 大丈夫だった……?」
アキにぃは私に駆け寄りながら聞いてきた。心配そうな音色で、表情で。私はそれを見て頷きながら「大丈夫だったよ」と、控えめに微笑むと、アキにぃはほっと胸を撫で下ろして息を吐いた。
それを見てか、シャズラーンダさんはアキにぃ達を見て――
「ほう……、こんなにも冒険者が……、何年ぶりかのぉ」と、顎を撫でながらアキにぃ達を見ていたけど、そのあとふらふらと覚束ない足取りで来たキョウヤさんとブラドさん。
私はその二人を見て驚いてぎょっとしてしまったけど、それを見て驚いたシェーラちゃんとシイナさんはそんな二人を見て驚きながらこう言った。
「ちょっ! どうしたのよあんた達!」
「ブラドさん……っ! 一気に老けましたけど……っ!?」
そう言った二人だけど……、キョウヤさんは一気に疲れた顔で、小さい声ながら怒りがこもった音色で――
「お前等助けろよ……っ!」
唸るように言ってから、ブラドさんもその言葉に同意して畳みかけるように、お爺ちゃんの様に老けてしまった顔でブラドさんは……。
「お前等俺達のこと……、無視したよな……っ?」と言う。
それを聞いて、私はアキにぃ達を見ると……、アキにぃ達は明後日の方向を向いていたけど……、ジルバさんはその言葉に対してへらっとして、飄々とした表情でこう答えた。
「いやネー。お二人の人気っぷりには感服したヨー。ハンナちゃんもそうだけど……、俺達入る隙なかったヨ」
「「あとでぶん殴ってやるから待っていろよ……っ!」」
「おーコワイコワイ……」
……ジルバさんのその言葉に対して、怒りが頂点に達してしまったのか、キョウヤさんとブラドさんは怒りの眼でジルバさんを睨みつけた。ジルバさんはそれを聞いてくるりと踵を返しながらそそくさと逃げていく。
それを見ていたのか……シャズラーンダさんはじっとキョウヤさんとブラドさん――特にキョウヤさんを一瞥していた。それを見て、キクリさんはふわりと私に近づいてきて、小さい声で「大変だったわね」と優しく語りかけてきてくれた。
私はキクリさんを見て「大丈夫ですよ」と控えめに微笑むと、キクリさんは私の頭に手を置いて――優しくなでながら「そう? それならいいんだけど……」と言って、少し心配そうだったけど、キクリさんはそれ以上は聞かなかった。
すると――
「兄者」
突然誰かがこっちに来た。ずんずんっと蜥蜴特有の足で近付いて来て、私達を見た後でその人……、じゃない。その蜥蜴人はシャズラーンダさんに向かってこう聞いた。
頭をすっぽりと覆えるような少し汚い布を纏って、と言うか……羽織っている蜥蜴人だった。足元の鱗が黒に近い紺色のそれで、その人は声色こそ若いけど、それでもジルバさんよりは年上のような音色でこう聞いたのだ。
「この者達は……?」
「あぁ、弟よ。この者達は――冒険者だ。そして、武神卿と巫女卿までもおる……」
これは、もしかしたら彼奴の占いが当たったのやもしれんな。と、シャズラーンダさんは言った。するとそれを聞いてか、その人はすっと頭に被っていたその布を、ばさりと取り去った。
その人の顔はシャズラーンダさんと同じ顔だけど、顔には大きな罰点傷がある蜥蜴人だった。痛々しくて皮膚だけではなく……、肉まで深くえぐれているそれだった。
「驚かせてしまったな」と、シャズラーンダさんはその罰点傷がある蜥蜴人の肩を手を置いて、怖がらせなうようにこう言った。
「こいつは昔、帝国との戦いで顔に大きな傷をつけられたんだ。儂もその時にこの無数の傷をつけたがな」
「兄者……。先ほどの騒ぎは、まさか……」
弟さんは私を見る。じっと、品定めをするように……。
それを見た私は、少し怖くなって、ヘルナイトさんの後ろに隠れてしまった。それを見たアキにぃ達は、ぎょっとした目で私を見て、ジルバさんたちはそれを見て首を傾げていた。
なんで隠れたのかはわからない。自分でも理解できないけど……、その品定めをする目を見た瞬間……。無意識に怖いと感じた。怖いと思って、何かに隠れないと平常心を保てないような……。
前にもこんなことがあったような、何回もあったような……、そんなデジャヴを感じながら、私はヘルナイトさんの背中越しに弟さんを見た。
それを見て、シェーラちゃんはじっと困惑してしまった弟さんを見て、溜息交じりにこう言った。
「確かに、こんなジロッとした目で見られたら、誰だって隠れちゃいそうね」
「っ!?」
その言葉を聞いた弟さんはぎょっとしてシェーラちゃんを見た。
あまりの発言に驚いてしまったのだろう……。それを聞いていたロフィーゼさんは私に駆け寄って心配そうに……。
「そうなのぉ? 可哀そぉ。シイナくんも一緒にいてあげてぇ」と、シイナさんに向かって手招きしながらロフィーゼさんが私に抱き着いて言う。それを聞いてシイナさんは驚きながらもその言葉に従って私に駆け寄ってくれた。
なんだろう……。
すごく心配してくれるのはありがたいのだけど……。そんな背後からギュっとされると……、くるしいです……。ロフィーゼさん……。
その言葉を聞いてか、弟さんはうっと唸って中途半端に伸ばした手を空中でさまよわせていた。少し申し訳なさそうにして……。それを見ていたシャズラーンダさんは「かかか!」と笑いながら――
「すまなんだ。こいつは何かと用心深くてな。こう言った冒険者に成りすます帝国軍もいて困ったもんでな……。だがこいつはこいつで子供が大好きだ。目つきの悪さのせいであまり寄ってこないが、まぁ根はいいやつだ。安心してくれ」
「……いますよね……。そんな人。目つき悪いけど、本当は子供が大好きっていうおじさんとかお兄さんとか……」
シャズラーンダさんの言葉を聞いて、アキにぃはそういえばと言う感じで頷いていたけど……、それを聞いていたジルバさんは飄々としながらシャズラーンダさんに向かって「そーいえば族チョーさん」と聞いて――
「俺達というか……、そこで隠れてしまった女の子ネ、この村の魔女さんに会いたがっているんだけど、どこにいるか知らない?」
と聞くと――
シャズラーンダさんは「お?」と言って――弟さんを見てから……。
「弟に何か用なのか?」と言った。
ん?
私達は首を傾げて、そしてその言葉に真意を聞こうと、セイントさんは前に出て聞く。
「ということは……、弟殿がまさか……」と、少し驚いた音色で聞くと……、シャズラーンダさんは弟さんを見てから、私達に視線を移して、「かかか!」と言いながら――
「まぁそうだろうな! なにせそう見えないしな。こいつが魔女だなんて。見た目で判断するものが多いからな!」と、弟さんの肩を手でバンバン叩きながら言った。
するとそれを聞いて、弟さんはすっと頭を下げてから……。
「先程は失礼した。俺がこの村の魔女――『樹』を魔女と言われている……、ザンバードだ」
と、弟さん――ザンバードさんは自分の自己紹介をしたのだ。
それを聞いて、みんなは呆気に取られて驚きを隠せずにいた。確かにこんなに早く魔女の人に出会ったのだから、それは驚きも隠せなかっただろう……。
「意外と早く見つかった……」
「もっと探すような手間があったと思ったけどな……」
そう少し遠くのところで、キョウヤさんとブラドさんがひそひそと話していたけど、聞こえていたのか、ザンバードさんはじっと睨みながら「何か言ったか?」と聞くと、二人はその言葉に対して首を横に振りながら「「いいえ、何でもないです」」と言ったけど、ザンバードさんはそんな二人を見て、じっと目を細めながら二人を見ていた。
そんなことに気付かず、キョウヤさんははっと何かを思い出して、私を見てから――
「ハンナ――あれ」と腰を指さした。
それを聞いて、見た私ははっとして、ロフィーゼさんに少し離れてもらおうとロフィーゼさんを見上げると、ロフィーゼさんはそれに気付いてにこっと妖艶に微笑みながらそっと離れる。そして私はザンバードさんに駆け寄りながらウエストポーチに中に入っていた書状を取り出して――
「あの……、これを」
と、私はザンバードさんにそれを渡して見せた。
「……これは?」
ザンバードさんが聞くと、それを見てヘルナイトさんが近付いて来て――
「それは新しくアクアロイアの王となったものからの書状です。中身の詳細は知らされておりません。私達はその書状を届けてほしいと頼まれたのです。他の四人の魔女達にも……、それを届けてほしいと」
と言うと、ザンバードさんはぴくりっ。と、目を微かに動かして……、そしてその書状を手にした後……。それをじっと見て――
「……少々時間をいただこう。その間……、兄者――」
「心得た」
と言って、ザンバードさんは大きな高床式の家に向かって歩みを進めて行ってしまった。
それを見て、ジルバさんはひゅぅっと口笛を吹きながら――
「時間って、すぐにそこで読めばいい話じゃない? なんでまた~?」と、疑問の声を上げて、飄々として言うけど、セイントさんはそれを聞いて、肩に乗ったさくら丸くんの顎を指で撫でながら――
「考える時間が欲しいのかもしれないぞ。ジルバ殿。唐突な申し出だ。誰にだって即答することができないことだってある」
「わん」
そう言うと、アキにぃとロフィーゼさんはうんうんと頷きながら「「そうだよなー/そうよねぇ~」」と、なんだか神妙そうに納得していた。
「大人の光景だな……、あれ」
「しゃ、社会人って、そんな究極の選択を強いられる時があるんですね……」
「なんかシビアな世界を見た気がするわ……」
キョウヤさんとシイナさん、そしてシェーラちゃんがその光景を見ながら大人の世界を垣間見たようなその目で見ていた……。
私もその一人で、なんだか大人って大変なんだなーっと、改めてそう感じた瞬間だった。
「ねぇ」
そんな空気と雰囲気を吹き飛ばすかのように、キクリさんが私達に声をかけてこう聞いてきた。
「長旅ってわけじゃないけど――待っている間話でもして待たない? ここで立ってても足がつりそうだし」
「時折飛んでいる奴に言われたくねぇな」
キクリさんの言葉に、ブラドさんは冷たい音色で突っ込んでいたけど、キクリさんはそれを無視するかのように、シャズラーンダさんに聞いていた。それを見たブラドさんは小さく「聞かねぇふりか……」と、突っ込んでいたけど……、多分幻聴だと、私は思う……。多分。
「ね? いいでしょ? 村長さん」
「おぉ。確かにこちらも聞きたいことが山ほどある」
と、キクリさんの言葉に同意したかのように、シャズラーンダさんに明るい声色でとある高床式の家を指さして――
「あそこは家内の家だ。そこでゆっくり茶を飲みながら話でもしよう。きっと弟もすぐにここに来るだろうしな」
そう言って、シャズラーンダさんは私たちを家へと招き入れた。
それを聞いた私は、どうしようかなっと思っていたけど、その言葉に甘えてロフィーゼさんとブラドさん、そしてジルバさんが私達に手を振って「はやくはやく」と手招きしていた。
アキにぃは呆れながら溜息を吐いていたけど、その言葉に甘えるように渋々付いて行き、キョウヤさんとシイナさん、セイントさんも後から付いて行き、シェーラちゃんが私の方を見て……。
「お言葉に甘えましょう。ハンナとヘルナイトも早くしなさい」と、まるでみゅんみゅんちゃんのように言うシェーラちゃん。
それを聞いて、なんだか悪いけど……、みゅんみゅんちゃんを重ね合わせて思い出した私。その顔を見てシェーラちゃんは首を傾げていたけど、私は首を横に振って――
「今行く……」と言って、シェーラちゃんに近付こうとした時……。
――ぱしり。
「?」
突然だった。
ヘルナイトさんは私の手首を優しく掴んで、振り向いた私を見てからヘルナイトさんはこう言った。私を見て――
「っ。………すまない」
なぜだろうか……。顔を見た後で、ヘルナイトさんはそっと私の手を離した。
私はそれを見て首を傾げていると……。
「はいはいはーい。お二人さん。みんなを待たせてはいけないでしょ。ほらほら行きましょうっ!」
キクリさんが私とヘルナイトさんの背中を押して、ぐいぐいと無理矢理進ませようとした。私はキクリさんを見上げて、ヘルナイトさんを見てからわたわたと慌てながら――
「あの? え? へ? えっと……ヘルナイトさん?」と聞くけど……、ヘルナイトさんはただ――
私から顔を逸らして、何か考え事をしながらキクリさんに押されているだけだった。
それを見て、私は更に疑問の首を傾げてしまう……。
ヘルナイトさんは今……、何を考えているのだろうと……。
蜥蜴人の人達も私のことをサリアフィア様って呼んでいたし……、ライジンさんも私のことをそんな風に呼んでいた。もしかして……、それと何か関係があるのかな……?
まだどうかはわからないけど……。でも、何だろう……。
すごく、もやもやする……。そう思いながらヘルナイトさんを見上げても、ヘルナイトさんはまだ何かを考えているようで私のことを見ないで考えていた……。
その横顔が、その考える仕草が逆に……、私の不安を仰いだ瞬間だった。
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