サラマンダー編

PLAY01 サヨナラリアル ①

 MCOの主なジャンルはファンタジーだ。


 主にできることは、運営側――つまりはRCからクエストというチャレンジミッションが来る。


 それを受けて、討伐や採取などのRPGさながらの行動ができる。いうなれば体験できるのだ。


 対戦形式も出来て、交流もリアルに体験できる。


 今ではサークルの交流もここで行われているらしいけど……、私はそれはどうなんだろうと疑問に思う。でも大学生でもない私が言うことではないので、ここら辺は問い詰めないことにしよう。


 そして裏ではカウンセリングできる完全個室の空間がある。


 会員制で、その人にしか知らないアカウントが必要となるところで、誰も入ることができない。知られることがない。だから心置きなくカウンセリングができる。


 別々の空間でユーザーを喜ばせ、患者を救う。


 一石二鳥。これが相応しい言葉だ……。


 でも今となってはゲームの方が人気の方で、カウンセリングなんて二の次三の次になっているのも現実。


 ほとんどの人がゲームを楽しんでいて、多分カウンセリングができるなんて、私のようなカウンセリングを受けている人しか知らないかもしれない。


 そう。私のような人。


 私もカウンセリングをたまに受けているので、あのヘビーゲーマーのメグちゃんよりも先輩だ。一応……。


 そんなゲームだけど、私は遊びもしている。遊びを始めたのは確か――中学校二年生の時だったはず。


 理由と言えば簡単なことで、メグちゃんに誘われて、カウンセリングでアカウントをとっていたので……、私は承諾した。


 その日のうちに『それじゃあログインして!』とメールが来て、私はカウンセリング専用のボタンをタップせず、MCOのゲームボタンを押した。


 その時は知らなかったけど……、ゲームをプレイする時は自分の分身となる『アバター』が必要なのだという……。


 当り前な話だけど、その時の私は初めて知って、驚きを隠せなかった。


 カウンセリングの時は、自分の精神データを電脳空間に送っているので、きっとそんな簡単な感じなのかなと思っていたら、大間違いだった。


 私はアバター設定画面を見て、RCイメージキャラクターのアナウンスの下……、アバターの作成に挑んだ。すごく大変だった記憶が、今でも鮮明に覚えている。


 主なやり方はこうだ。


 まずはじめに、顔写真を撮るのだけど、これは個人のお好みで、しなくてもいいし、してもいいそうなので(尚、顔写真を撮っても、登録が終わったら運営側ですぐに削除するそうだ)、私は顔写真を撮った。


 トップページのカメラ機能で簡単に映せるので、簡単に自分そっくりの顔が出来上がる。


 それが嫌な人は、聞いた話だと――数百種類の顔パーツから選んで、自分好みの顔を作ることができるらしい。


 体のつくりも、ヘアースタイルも――アバターの外見ができたら、今度は〇☓クイズ。


 問題は百問あり、それをすべて行わないとアバターの登録ができないらしい。


 それをすべて答え終えたら、少し時間がかかる。診断するには時間がかかるそうだ。


 その診断とは……、その人に最も適している『種族』が決まるのだ。


 その種族はすごく大事で、診断が終わったら変えることができないもの。


 主に七種類の種族がある。


 最初に、プレイしている七割がその種族で、ステータスもバランスがいい『人間族』。


 次に多い種族が、『エルフ族』という種族で、耳が長い、またの名を『森人族もりびとぞく』と呼ばれている種族。


 スピードと命中率が高い森人族――エルフ。魔力が高くて魔法攻撃が得意なかみ森人族――ハイエルフ。そして気性が荒く、攻撃力と魔法攻撃ずば抜けている森人亜種あしゅ――ダークエルフ。


 そして他にいる種族は――亜人あじん族。


 亜人族は人間族と多種族たしゅぞくの血を引いた混血族こんけつぞくともいわれ、犬の血を引いた『犬人いぬびと』。猫の血を引いた『猫人ねこびと』。蜥蜴とかげの血を引いた『蜥蜴人リザードマン』。ドワーフの血を引いた『鉱技人ドウォーフ』。巨人の血を引いた『巨人族タイタン』。人魚の血を引いた『人魚人ウンディーネ』。


 他にも数多くの多種族がいるけど、大まかにいうと、こんな感じで人間+多種族という種族が、亜人族となる。らしい……。


 亜人と対を成す種族が魔人族。


 魔人族は亜人とは反対に――多種族+魔物族の混血なのだ。魔物族はRPGにおける魔物と思ってほしい。その血を引きつつ、多種族の血を引いているので、魔力が高いことが多い。それが、魔人族。


 その魔人族よりも、最も魔物の力を引き出している混血――それが魔獣族。


 魔獣族は魔物の血を引いているにも関わらず、人間の自我を持ちつつ、魔物の力を最大限に引き出している種族で、マニアには人気らしい。


 簡単に言うと、魔物族+人間族。という感じ。


 魔獣族しか持っていない魔物の力を引き出すことで有名で、それが限界を超えると、『魔獣マスター』の称号を手に入れることができる。


 人間の姿だけど、戦うとなると、魔物の体になったり、そのままマモノの体を維持している人など……さまざま。


 最後に、MCOにはチート種族という、レア種族がいるらしく、その種族にあたる確率は……、百パーセントの確率でいうと、百分の一。当たる確率は到底ない。


 その内の一つは悪魔族というもので、HPが異常に高いこと、魔力や攻撃が高いけど、防御力、魔法防御力は異常に低い。そして三回体力がゼロになっても、三回も踏ん張って生き残るというそれを持っている。


 そして――攻撃系のスキルがなく、攻撃力が低いけど、防御力と、魔法防御力が高く、MPが異常に高い種族――天使のような種族、天族という種族がある。


 風のうわさでは……、それ以上にもっとレアな種族がいると聞いたことがあるけど……、誰も見たことがない。もっとも、そんな種族などないのかもしれないといわれているくらい、見たことがないのだ。


 私は診断の結果――天族に決まった(これは変えられない)ので、最後に決めるのは……、自分のアバターの所属、ジョブを決めて、初めてプレイできる。


 所属とは、ジョブ……、主にゲーム内でどんな攻撃ができるかという職業みたいなもので、最初はその初級所属というものを決める。これは診断で決まるものではない。自分で好きなものを選ぶのだ。


 種族と所属によって、戦況などが変わることがある。


 たとえば、MPが多い種族だったら、魔法攻撃や防御ができる所属を選ぶ。という感じで選ぶのが普通らしい。でも、種族は決められない分、所属で好きなように選んで、後悔する人が多いらしい(ラツッター談)。


 でも、初級所属でも、アバターのレベルを上げていくと、クラスチェンジもとい、上級所属になれるのだ。それも自分で選ぶことができるけど、それに該当するスキルを所持していないと、なれない。


 それもそれで、上級所属がこれだから初級でこれを選んで、何も考えずにスキルを振り分けたらこうなってしまった(ラツッター談)や、レベル上げがメンドクサイなど(ラツッター談)、私からすれば……、自分で選んだのに、その言い方はないのでは……? という心境である。


 ともあれ、所属は大まかに六種類。上級所属になるともっと多くなる。



 最初に説明するのは戦士。


 戦士は主に前衛で戦う人が多い。攻撃要因ともいわれ、アタッカーとも言われている。


 その戦士が上級所属になると……、七つの所属に細分化される。



 剣、大剣や、レイピアなどの、剣技で戦う――ソードマスター。


 槍を使って戦い、前衛後衛に置いてオールマイティに戦うことができる所属――ランサー。


 近接特化で、己の拳で戦うスタイルの――モンク。


 モンクとは違う近接特化で、刀を使って即死効果が高く、攻撃も高い異国の戦士――武士。


 武士と同じ異国の暗殺者。しかし後衛主体のスタイルで、攪乱やサポート、連続攻撃ができる所属――シノビ。


 大きな金槌をもって、敵に大ダメージを与えることができる、殴打のスペシャリスト――大槌士。


 攻撃もできるけど、サポートも得意として、遠隔の攻撃ができる後衛のアタッカー。特別な武器『殴鐘おうしょう』を使って戦う――トリカルディーバ。



 次の騎士。


 騎士は防御の要とされて、前衛で防御しながら相手に攻撃できるという所属。生命線の一人とも言われている。


 上級所属になると、四つの所属に分かれる。



 盾を使った攻撃や、完全なる絶対防御を張ることができる――パラディン。


 マジックスキルを跳ね返したり、吸収したりすることができる所属――ガーディアン。


 槍を使って、遠距離の攻撃と防御ができる所属――ヴァルギリー。


 防御はパラディンやガーディアンに比べたら劣るけど、攻撃や魔法攻撃が高い所属――聖騎士。



 次に説明するのは――最も人気が高い魔導師。


 魔導師は前衛後衛すべてに適している所属で、魔法攻撃の火、氷、水、風、雷、土、闇、光の魔法が使える所属。


 上級になると六つの所属がある。



 魔法攻撃と支援魔法・状態魔法などが得意な所属――ウィザード。


 付加魔法『付加エンチャント強化魔法サポートスペル』が得意な所属――エンチャンター。


 状態魔法『状態異常ドラックマジック魔法スペル』が得意な所属――ドラッカー。


 召喚魔法『術式召喚サモナーバインド魔法スペル』が得意として、契約したモンスターを召還して戦う――サモナー。


 錬成魔法『術式アルケミスト錬成クリエイティ魔法スペル』が得意で、魔法道具を錬成して、チームのサポートをする――アルケミスト。


 剣技魔法『属性エレメント剣技魔法ウェポンスペル』が得意で、武器によって攻撃が変わる一番人気の――ソードウィザード。



 次は探検家という所属で、採取や探索のスペシャリスト。感知スキルも長けて、特殊なスキルを使っている所属だけど、上級になると五つに区分される。



 拳銃を使って遠距離攻撃や魔法付加の攻撃、トラップなどができる――スナイパー。


 拳銃とは違うけど、音が出ない弓矢を使って最も感知スキルに長けている所属――アーチャー。


 お金を高めに換金したり、お金を使った攻撃や武器を安く購入して戦うことができる所属――商人。


 採取と採掘、伐採に関しては一番長けていて、属性魔法の付加や属性耐性魔法を得意としている所属――シャーマー。


 物を盗んだり、開かない扉の開錠や鍵つき宝箱の開錠。宝箱に化けるモンスター、ミミックを見破ることだってできる所属――シーフゥー。



 そして暗殺者という所属もある。


 MCOにはクリティカル攻撃の他にも、攻撃した瞬間に骨折のように折れて、その箇所が使えなくなるという部位破壊……、『ゴア』というものがある。



 それが得意な所属が、暗殺者。



 暗殺者はソロでプレイする人が多く、その理由の一つに暗殺者は自分のもう一つの存在――『影』という存在と一緒に戦うことが多いからだ。だからソロで戦っても平気なのだという。暗殺者は四つの上級所属になることができる。



 ソードマスターとは違い、剣やレイピアを使って不意打ちを得意とする所属――キラー。


 モンクとは違い、部位破壊ゴア攻撃が得意で手刀や足刀を駆使して戦う――スレイヤー。


 浄化系の魔法に長けていて、少ししか回復しないけど回復スキルの同じ時間操作の死滅魔法が得意な所属――エクリスター。


 鎌を使って広範囲の攻撃、そしてドラッカーとは違った状態異常魔法『状態ドラック・異常呪術ネクロマンススペル』を使える所属――リッパー。



 最後に衛生士という回復特化の所属がある。


 これは私が選んだ所属で、回復と盾の魔法、状態異常回復魔法しか使えない所属。最も人気がない所属で、回復も回復薬などを買えばいいという人も多い。


 ゆえに衛生士は敵の囮として使われることが多いと有名なのだ。


 衛生士は上級になっても一つの所属しかない。



 それは――メデイック。



 私は傷つけることが人一倍嫌いだ。だからこの所属を選んだ。


 ハンドルネーム(HN)も決まったことで、私はアバター登録を完了した。


 長い長い登録準備で決まったアバターは……。



 HN:ハンナ。種族:天族。所属:衛生士からメディック。



 ……なお、所属や色んな情報はメグちゃんの説明から抜粋しました。

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