自由と平等と博愛……市民革命の掲げた旗は、恐怖政治と、果てしない戦争の風に翻弄されます。
王家に忠誠を捧げてきた貴族の青年エドガルドは、次々と幽閉、処刑される王族を救い、祖国ユートパクスに王政を再興するため、革命政府軍との戦いに身を投じます。
革命政府軍を率いる常勝将軍オーディンによって倒れたはずのエドガルドは、戦乱に巻き込まれた小国ウテナの王子ジウの肉体に宿って、意識を取り戻します。
ジウは、オーディン配下の革命政府軍将校シャルワーヌに、捕虜として保護されていました。
状況を理解したエドガルドは、オーディンに忠実で、革命政府軍でも比類ない実力と名声を持つシャルワーヌを暗殺しようと決意しますが、彼の意識が宿ったジウの肉体はシャルワーヌへの激しい慕情を秘めており……という、戦場の凄惨さと、行き場のない想いが交錯する物語です。
伝統主義の大国ウィスタリア、砂漠の国ザイード、東西交易の帝国タルキア、そして宿敵の海洋王国アンゲルと、歴史に即した国際情勢も見所ですが、個人的にはエドガルドとシャルワーヌにアンゲル海軍の代将ラルフを交えた、オトナゲない大人の鞘当てにニマニマと癒されました!
筆者さまが繰り返しテーマとされているフランス革命前後史を、異世界に落とし込むことで、人間関係のダイナミックな再構築と結着の自由度を得た本作、英雄群像劇としてもBL総受け戦記(?)としても、存分にお楽しみいただけます!