第12話

 塔から人が落ちているカード。



 やはり彼女にはこの運命なのよ。それを差し出す。


「……救いようがない。それが見えてます。それがわかってもあなたは今の言動を悔い改めませんか? あとこちらのエンジェルカード……ここには救いの手があります、今の自分を見つめ直せば助けてくれる人はいます。年の老いた天使様、そう、目上の人は大切にすれば彼らから……援助を」

 ってもう金銭面ではたくさん援助貰ってるだろうが、義弟夫婦には今後の義父母の世話をしてもらわねば……釣り合わない……。


 目の前の奈々美は私をじっと見ている。私ってバレないわよね? たまにしか会わないし声もある程度変えているし。容姿もわからないだろう。


「まぁ今までお金をいただいていたし、ずっと義兄さん夫婦……っていうか義兄さんのお嫁さん苦労してたから私が変わる番かしら」

 そうよ、そうよ……。


「……正直夫と離婚した方がいいんじゃないかと思ってるけど娘がパパ大好きっ子だし」

 あんなにラブラブな関係だったがやはりお金が絡むと離婚を考えるか。でも、子供がいると離婚できない、簡単には。私もそうだった。

 倫太郎も小さい頃パパっ子だったけど今は学費のため

「やっぱ……離婚した方がいいのかなーそれも占ってください。離婚した方がいいか、そうじゃないか」

「はい、かしこまりました。延長料金をお取りしますが」

「ええ、大丈夫です」

 私はカードを混ぜた。お金に困ってるけどいいのかしらね。


「……」

 カードを次々とめくる。彼女が離婚したら……誰が義父母たちの相手や面倒を見るのよ。


 離婚した時の彼女の周りを取り巻くカード……見通しが悪い、月に雲がかかる、先が見えない。

 そんなカードばかり出てくる。


 離婚しなかった場合も茨の道。奉仕続ける……。


「……どちらに転じても良くはなりません。確かに今のままでも同じように借金に悩みますし、離婚しても先が見えなくて不安で……」


 すると奈々美さんがフゥ、とため息ついた。

「先が見えない、それはいつもそう。ずっと耐えていたけどそれでなんとかなっていたもの。だったら離婚してもいいわ……」

「えっ」

「……あんな老人たちの世話なんてしたくないわ。お金はどうせ夫の借金返済に充てられるだけだし……義兄の嫁さんみたいに奴隷みたいにヘコヘコして生きて行くなら借金ででも離れて過ごした方がマシだわ」

 なっ……なんですって……。私はずっと耐え続けているというのに!!!


「離れるのは義実家だけでなくて夫とも。小鳥遊家ともおさらばするわ……ねぇ、杏子義姉さん」


 !!!!



 まさか、奈々美さん……私と知って?!


「ごめんなさいね、私って結構こういうーなんというかなー調べるの好きで。杏子さんが占いしているって聞いて……でも教えてくれなくて。そしたら余計気になっちゃってー。ようやく見つけましたよ」

「……」

「夏彦さんはここでやってるのは知ってるの?」

「場所までは知らないわ」

「互いに隠し事してる哀れな夫婦」

 ……本性を出したな、奈々美さん。そもそも義実家に借金をするように仕向けたのも彼女じゃない……それに実家に寄り付かなくなったのも秋利さんに言えば離れることもできる。


 くそっ。

「占いしてまで私たちに義実家の世話を押し付けようとするなんて、小賢しい」

「……小賢しいって? あなただって!」

 立ち上がった私を止めたのは誠也だった。


「ダメですよ、感情的になるのは……」

「だって、この女……!!」

 私は奈々美を睨みつける。フン、と彼女は私を睨み返す。


「……あー、もう小鳥遊家に嫁いだのがバカだった。借金隠して浮気も隠してきた秋利……妊娠しなかったのも秋利が不妊体質なのにそれを棚に持ち上げて私が不妊体質だ! とか言いがかりつけてきたお義母さん、子供に授乳してる時に鼻の下伸ばして見てこようとした気持ち悪いお義父さん! 長男の嫁だからと何も才能も後ろ盾もないのに気高く振る舞うヘコヘコした奴隷の飛鳥さん! 本当に最低、最悪な家族とはこっちから願い下げよ!」

 ……。私は誠也を見た。誠也も頷いた。


「……夏彦はどうなの?」

 そういうと奈々美さんは凍りついた。

「あ、あの男も……いい顔して見栄張りのケチ男じゃない。秋利も言ってたわ」

 まぁ確かにね。誰が見てもわかるからそれはいい。


「男としてはどうだった?」

 それを言うと奈々美はのけぞった。


 ……あの浮気調査でもう一人浮上したのは、何と、奈々美だったのだ。

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