第5話

「先生、お疲れ様でした。かなりエネルギーのある方でしたからお疲れでしょう」

 そう声をかけてくれたのは誠也。私の好きなルイボスティーを持ってきてくれた。好きなの、この香り。


「ほんと……それに声色を変えてたから喉がしんどい」

「はちみつもお持ちします。あと30分後にまたみえますから」

「ありがとう……気が利くわね」

「いえいえ」

 ほんと誠也は夏彦とは違って気が利く。マスクをしているがその下にある容姿を見たら誰もが羨む美形。身長も高くスタイルも良い。

 こんないい子が敦子みたいな女やどうでもいい女に奪われてしまったら……。

 そんなの考えたくない!! 誠也は私だけのもの、本当に本当に素敵な誠也。


「先ほどの敦子さん、有益な証拠が揃いましたね」

 誠也も事情は全て知っている。衝立の後ろでも聞いててくれていた。


「ええ……でもまだ不十分」

 SNSの投稿も全て保存済みだ。


「多分ああいう我が強いタイプ苦手だと思いますよ、大抵の男性は」

「……そうよね、私も無理」

「では弁護士先生に連絡しましょう、今回の証拠でどこまでいけますかね」

「……どれもこれもやめないことで全てがダメになるわね……敦子さん」


 私は机の上のカードを見て微笑んだ。

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