第2話 どん底は這い上がるチャンスなんです。

僕は職場を転々としていた。

理由は色々あるけど、1番は記憶を無くしてしまうことが原因だった。

本当は仕事を続けたかった。

でも、僕は仕事でやったことさえ忘れてしまう。

大きなショックが立て続けに続いて、僕は解離性健忘というものになった。

今日で窓拭きの仕事も終わりだ。

だから、最後に僕の存在に気がついてくれた彼女と会話したかった。

僕は最後に彼女に笑ってお辞儀して、窓を拭いた。

彼女はいつもの笑顔で僕に笑い返した。

僕は彼女の笑顔を目に焼き付けるように、さよならの手を振った。

彼女にとっては、また来てくれると思った笑顔だったのかもしれない。

でも、そんな日は来なかった。

僕は今日、窓拭きの仕事をクビになった。

理由は物覚えが悪くて、人間関係に支障をきたしていたからだ。

会社には病気のことを話したが、理解は得られなかった。

僕はその日のうちになけなしのお金で小さな居酒屋でビールを注文した。

ビールを1人で見つめながら、次の仕事をどうしようかと考えていた。

その時、テレビでお笑い芸人が笑って爆笑を取っていた。

それを見て、僕もいつかテレビに出たいなといつの間にか酒の力で言葉が出ていたことに気が付かなかった。

それを横で聞いていた見知らぬ男が声をかけてきた。

彼は僕を見るなり言った。

『なあ、俺と歌手にならない?』

僕は新手の詐欺かと思った。

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クスッと笑ったのはあなたが初めてです。 ソノハナルーナ(お休み中) @eaglet

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