第351話(終・第九章第31話) Pのカタストロフ7(セツ視点)
コクレアタウルススとウィーペラシヌス。
攻撃対象を変えてしまうモンスターとアイテムが効かないモンスター、という組み合わせに私は焦らされました。
モンスターたちの元のステータスは私に比べたらそれほどでもなかったのですが、あの人が余計なことをしてくれます。
「運営」の偉い人……!
あの人、コクレアタウルススに素早さULT.Rank:Maxポーションをふりかけて私の素早さに対応できるようにしてきて……!
その所為で、私が手を伸ばしても相手の空間を歪める特殊効果を発動するのが間に合って相手を掴むことができず、猛毒薬を使ってもアイテムが効かないウィーペラシヌスに掛かるように標的を変更させられるのです……!
そしてその人は二種類のモンスターたちを増やしに増やしていて……!
……正直、もうどうすればいいのかわからなくなっていました。
私からは打つ手がないのに、相手は攻めてきて……。
私はとっさに猛毒薬を生成してアシッドレインを使っていました。
そんなことをしても空間を歪められてコクレアタウルススには掛からなかったのですが、その力を使用しながら攻撃も同時にするという行動はとってきませんでした。
足も止まっていて、どうやら空間を捻じ曲げることに集中しているようです。
ですから私は、大量の猛毒薬を自分の真上に投げ込みました。
どんどん大きくなっていく頭上にある紫色の雲。
「な、なんですか、それは……!?」
プロデューサーさんが愕然としていましたが、私は気にせず猛毒薬を投げ続けました。
すると、私の頭の中に閃いたような感覚があって……。
『新しい技を習得しました』
なんでも、新しい技を習得したみたいです。
縋るような気持ちでその技の名前を叫びました。
「アシッドクラウドバースト!」
私の掛け声を合図に、巨大化した紫色の雲からバケツを引っ繰り返したような黒紫色の雨が……!
コクレアタウルススたちは空間を歪めてそれがウィーペラシヌスたちに掛かるように対策を施そうとします。
ですが、アシッドクラウドバーストの雨の勢いはすごく、しかも、私がこの技を使った場所は「発電所エリア」。
建物の中だったため流れて行かなくて浸水が発生しました。
上から降ってくるのと足元から迫ってくる猛毒薬のその両方に対処することができなかったコクレアタウルススたちは黒い粒子と化して全滅します。
(ウィーペラシヌスはアイテムが効かないため一体も倒すことができませんでした)
すごい技だったのですが……これ、諸刃の剣です。
――私も死んでいました。
耐性を貫く猛毒薬を使ってしまっていたのが原因です……。
復活薬を持っていましたのでなんとかなりましたが、これ、やってることススキさんとあまり変わりませんよね……。
彼女に何も言えなくなってしまいました(今までも何も言っていませんが)……。
猛毒薬の浸水が引くまで、死んで、復活して、復活薬を生成して、また死んで……というのを繰り返していました。
そして偶に、私に余裕がないと見てその隙を攻め込もうとしてくるウィーペラシヌスを投げ飛ばして。
(復活してから死ぬまでに復活薬を一個ずつしかつくれていないわけではなかったのでウィーペラシヌスの不意打ちに対処することができました)
投げることができたらその個体がビリヤードのように他の個体に向かって飛んで行って倒してくれるので、猛毒薬の水が引くまでにモンスターたちは全て片付けることができていました。
(私はスキルのおかげで、復活が間に合えば自分に使っていた私特製のバフや耐性ポーションの効果が切れることはありませんので)
アシッドクラウドバーストにULT猛毒薬を使ったことでプラスに働いたこともありました。
「ひ、ひどい目に遭いました……っ。が! 耐えた……! 耐え抜きましたよ! あははははっ!」
プロデューサーさんに効いていたみたいなのです。
スキルで私特製のポーションを生み出せるこの人は、私と同じ状態になっている、と言っていたことから「バステ無効」の状態にもなっていたものと考えられます。
普通の猛毒薬なら防がれてしまうのですが、ULT猛毒薬は耐性・無効を貫通しますのでプロデューサーさんにダメージを与えることができていました。
大量の復活薬を所持していたようで倒しきることはできませんでしたが。
それと、アシッドクラウドバーストでダメージを与えられたということは……。
『ダメージ・バステ・デバフ全反射』は、あの人が攻撃対象として指定されたものは撥ね返せますが、範囲指定の攻撃を受けた場合は撥ね返せないのかもしれません……!
突破口が見つかったかも! と喜びかけたその時、プロデューサーさんの顔がニヤリと歪められます。
「『アイテム創造+』! 『パワーアップの秘玉・改(スキル)』創造!」
私が再びアシッドクラウドバーストを使おうとするよりも早く、プロデューサーさんは何かの球体のアイテムを生み出してそれを自身に使用しました。
そして言ってきたのです。
「大方、範囲攻撃なら太刀打ちできるとお考えになったようですが、残念でしたね! 今ので僕のスキルは範囲攻撃にも対応できるようになりました! そのようにスキルを改善させましたので! これで打つ手なしです! あなたに残された選択肢は僕にやられるというものだけになりました! あははははっ!」
もう既に対策した、と。
早い……っ。
やっと見つけた打開策をすぐに使えなくさせられたことに、私はゾッとしました。
勝てるイメージが湧いてきません……。
挫けそうになっていたところに聞こえてきた相手の言葉で、
「わかりますか!? もう勝負はついているのです! 僕のステータスもあなたが生み出したULT.Rnk:Maxポーションでカンストしている! ステータスが同じならあとはスキルの勝負になるわけですが、あなたのスキルは薬をつくるだけ! 対して僕は、瞬間移動もできますし、あなたの知らないアイテムもつくれる! そして、あなたの攻撃は届かない! 詰みですっ!」
ライザが言っていたことを思い出しました。
――「うわー……、ここまでリアルに寄せねぇでもいいのに……。
それは最後までパワーアップできていなかった私のスキル『薬による能力補正・回復上限撤廃+』の効果を見た時の一言。
パワーアップしたとこでとんでもないことができるようになっていました。
あまりにもアレな性能をしていたため使わないようにしていたら忘れてしまっていたのですが、とやかく言っている場合ではありません。
あなたが生み出したULT.Rnk:Maxポーション、とあの人は言っていました。
それなら効果があるかも……!
私はプロデューサーさんに向けて右手を
「? 何を――」
「オーバードーズ」
オーバードーズ――私特製のポーションによってステータスがカンスト状態になっている相手に使うことができる『薬による能力補正・回復上限撤廃+』のうちの一つの機能。
――対象のHPを0にすることができる。
私がその力を発動した直後、彼は白目を剥いてその場に倒れ込みました。
まさか、と思って試してみたら、そのまさか……。
彼は、製作者が私のポーション、を創造していたようです。
何回か復活薬が発動していましたが、私のつくったポーションは進化する時ややり直しになる時以外は残り続けるため……。
やがて彼は黒い粒子となって消えていきました。
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