第349話(終・第九章第29話) Pのカタストロフ5
~~~~ イベント特設ステージ「森林エリア」 ~~~~
「そら、そらっ! ……よし、感触が変わった! これで元最強プレイヤーも
「草原エリア」にあった魔法陣から転送された場所から二、三歩しか動いていない位置。
ロードはまだそこで大木を斬りつけていた。
ロードは、対象Aを攻撃すると対象Bにダメージが入るスキル『天上天下唯我独尊』を持っているため、その異様に長い射程のスキルを駆使すればスタート地点からさほど動かずにこの戦いに決着をつけることも可能であった。
さらにロードには、シニガミが一からのやり直しになってから問題を起こし続けていたアメショの対処をしている隙にせしめた『スキルによる消費MP0』もある。
よって、MPが切れて対象Aへの攻撃が対象Bに移らなくなって倒し損ねる、ということはない。
シニガミも打ち取ったと判断したロードは最後の一人に狙いをつける。
「いよいよラストだ! あいつはいろいろと融通利かせてくれたから最後にしてやった! 感謝しろよな! フハハハハッ!」
~~~~ セツ視点 ~~~~
「ひぃいいいいいいいいっ!?」
「ひゃわああああああああっ!?」
あれから、動き回って「氷山エリア」を抜けた私は今、「発電所エリア」に来ています。
(この「発電所エリア」……踏むと「麻痺無効」があっても防げない僅かな時間痺れる床というギミックがありましたが、それはさておき)
そのエリア内を慎重に探索していたのですが、廊下の曲がり角で曲がった先の廊下の様子を確認しようとした時、シニガミさんとばったり出くわしてしまいました。
(恐らく分身体のシニガミさんが私と同じように反対側からこちら側を確認しようとしていたのです)
(あと少し顔を前に出していたら彼女の顔とぶつかっていたため、すごくびっくりしました……)
それで少し話したのですが……。
「よ、よかった、セツちゃんかぁ……! え、えっと、一緒に行動する……?」
「私もシニガミさんとは戦いたくないからそうしたい……けど……」
「……どうしたの?」
「……その、それって今回のイベントの内容的にやっても大丈夫なのかな? って……」
「あー……。いちゃもんつけられそうではあるよね……」
私たちは私たちの周りを飛び回っている小型の飛行カメラを一瞥して。
文句を言われないようにちゃんと戦うことにしました。
(発電所内の広い場所まで一緒に移動して)
そして悲鳴のシーンに繋がります。
「ひぃいいいいいいいいっ!? 速い、速い、速い、速いぃ……!」
「ひゃわああああああああっ!? 多い、多い! 多すぎるよっ!」
シニガミさんは私の速さに、私はシニガミさんの数に驚愕していました。
開戦して、瞬時に私は「シニガミさんたち」に麻痺薬を使いながら彼女の本体を探そうとしたのですが、「シニガミさんたち」は恐ろしいスピードで増えていっていたのです……!
私が彼女と会った時、既にそれなりの数がいたシニガミさん。
分身体はシニガミさんのスキルが使えるので、その一体一体が一斉に複数の分身体をつくり出せば、できない芸当ではありませんでした。
しかも、私が動きを封じたはずの「シニガミさんたち」が回復していて……!
何が起きているのか、あまりの衝撃の強さで一瞬飛んでしまいましたが、なんとか思い出します。
――『巻き戻し+』……!
時間を巻き戻すことができる(消費するMPの量によって戻る時間は変動する)スキル!
パワーアップしたことで、状態異常だけ、や、MPだけ、といった限った部分だけ好きな時の状態に戻すことができるようになっています……!
さらに彼女には『エンバーミング+』があって、本体だけでなく分身体すらもやられたとしてもある程度の時間黒い粒子にならずにその場に残り続けるようになっていて、時を戻せば復活させることが可能です(私とのこの戦闘では発揮されていませんが)。
仮に本体がやられたとしても消える前に分身体が本体のHPを巻き戻せば復活できるそう……(見たことはありません……ライザによる情報です)。
加えて『メメントモリ+』の効果が分身体にも適応されるようになっているため、分身体が傷つけば傷つくほど本体と他の分身体のステータスが上がっていく……(これも私とのこの戦闘では「彼女たち」にダメージは与えていないため発揮されていません)。
シニガミさん、『黒粒子化』を失っているというのに強すぎませんか!?
あっという間に「シニガミさんたち」に囲まれてしまった私……。
部屋は「シニガミさんたち」で埋め尽くされていました。
(一面が、ではなく、空間的に)
私はステータスを限界まで強化していますし、HPは継続回復状態ですが、油断はできません。
シニガミさんには私を倒し得る戦法が存在するので……。
私がそれをされないために最大限まで気を張っていると、「シニガミさんたち」が言ってきました。
「「「「「「「「やっぱり僕に女の子をどうこうするのってできないから、僕たちに足止めしてもらう……!」」」」」」」」
その言葉の直後に聞こえてきたのは、遠ざかっていく複数の足音でした。
彼女は「彼女たち」を使ってここで私を押し止めることを選択したのです。
シニガミさんはやっぱり、私との戦闘は避けたかったのかもしれません。
バトルセンスのある彼女が、私でも思い至っていた私を倒せる方法を思いつかないなんてことはあり得ないはずですから。
思いつかなかったのではなく、思いついたけど実践しなかった、が正しい気がします。
私だって、できるならシニガミさんとは戦いたくありませんでしたので……。
シニガミさんの姿をした「彼女たち」が私を囲っています。
攻撃……できる気がしません。
ですが、やらなければあの「運営」の偉い人に難癖をつけられそうです。
……それに。
最強とかどうでもいいですが、
――私に賭けてくれると言ったマーチちゃんたちやサクラさんたちの期待には応えたい。
その思いが私を突き動かしました。
数秒後。
私の周りにいた「シニガミさんたち」はどさどさと倒れだします。
私は使っていました。
――技・アシッドレインを。
あまり印象がよくないので封印していたのですが、百体はいると思われる「シニガミさんたち」を一斉に倒すにはこの方法しか思いつかなかったので……。
『巻き戻し+』を使われて私のバフを取り払われて攻められたら、私は負けていました。
ですので、一斉に倒す必要があったのです。
しばらくすると黒い粒子となって消えていく「シニガミさんたち」。
シニガミさん本体をやったわけではありませんが、気分が悪いですね……。
ですが、これで戦う意思は示しました。
あの偉そうな人にいちゃもんはつけられないでしょう。
……たぶん。
これからどうしよう……、と悩んでいた時でした。
――私はその人物と遭遇することになります。
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