第348話(終・第九章第28話) Pのカタストロフ4
~~~~ イベント特設ステージ「森林エリア」 ~~~~
「フハハッ! ついてる! ついてるぞ! オブジェクトが大量にある場所に転送されるなんてな!」
鬱蒼と草木が生い茂る暗い場所。
一人の少年が大きな木の幹に向かって剣を突き刺していた。
少年はロード・スペード。
彼は今「ギフテッド・オンライン個人最強決定戦」に半ば無理やり参加している。
そして、無駄に射程の長い『天上天下唯我独尊』のスキルで他の参加者をイベント開始早々攻撃していた。
「俺には『スキルによる消費MP0』もある! 『天上天下唯我独尊』は使い放題だ! 転送後はステータスが弱っちくなってるんだろ!? これで一気に片してやるぜ!」
剣を無造作に動かして何度も何度も大木を斬りつけるロード。
すると、彼の手に伝わってくる感触に変化があった。
「おっ! この感触は……! よっしゃ、やった! ぶっ殺したぞ! やっぱりお前より俺の方が強かったんだ! お前が俺より上なんてことはあり得ないことだったんだな! ざまあみろ、刹那! アハハハハハッ!」
セツをやった、と判断したロードの高笑いが深い森の中に響き渡った。
「……んじゃ、さっさとこのイベントを終わらせるか! 次は……、最強だって言われていい気になってたシニガミに引導を渡してやろう! くふふ……! 楽しくなってきたぜ!」
~~~~ セツ視点 ~~~~
……………………。
――ハッ!?
あ、危ないところでした……!
今、間違いなくHPが尽きていました……っ。
四つ目のスキルを取っていなかったら今ごろ黒い粒子に変わっていたところです。
……やってくれましたね、あゆみちゃん。
私が今回のイベントのために取得したスキル
――『無から有を生み出す(薬師仕様)+』――
これを使って私は復活薬を製薬していました。
ですから私は、HPが0になっても退場することなくこのイベント特設ステージにまだい続けることができていたのです。
『無から有を生み出す(薬師仕様)+』――
製薬をする時に素材アイテムを持っていなくても薬品系アイテムをつくることが
可能になる。
……明らかにバランスブレイカーなスキルです。
とんでもない性能をしているスキルですが、その分制約も設けられていて、
・薬師か精霊薬師のジョブスキルを持っていないと発動することすらできない
・このスキルを使用して製薬された薬品の使用期限はつくられてから4秒になる
・使用する際は空の容器を持っていないとつくった直後に地面へと落ちる
という、軽視することは難しいデメリットが……。
まず、このスキル単体では効果を得られない、というのは大きなネックです。
このゲームにおいて生産職、特に薬師は不遇とされていて、そのジョブスキルが必要とされるわけですから、他のプレイヤーさんが取れなかったのも納得です。
(実際には、私たちの活躍もあって最近では生産職の評価がプレイヤーさんたちの間で見直されているみたいで、何人かのプレイヤーさんの手に『無から有を生み出す』のスキルは渡っていたそうなのですが、上記の欠点と薬師への冷遇さに耐え兼ねてどのプレイヤーさんも薬師でゲームを続けることができずに手放していた、とのこと……ライザ調べ)
そして、使用期限が4秒になってしまうのはデメリットとしては大きすぎます。
あまりにも短すぎるためストックすることが叶いませんし、そうなると大事な場面でとっさに製薬して使用できるかも怪しくなります。
あと、空の容器を持っていないとその4秒すらもなくなってしまう、というのは地味に痛い制約です。
アイテムは基本40個しか持てませんので、空の容器は聖水やプディンの粘質水を入れるくらいしか用途がないため所持アイテムの枠を圧迫することになりかねません。
ですが、空の容器を持っていないと薬品系のアイテムをつくったとしてもそのまま地面へと落ちていって使い物にならなくなるという……。
初めてその仕様を目にした時は思わずその場で固まってしまったほどです……。
……ただ。
私には『有効期限撤廃(自作ポーション限定)+』があります。
つくったポーションがダメになってしまうことがなくなるスキルが……!
これのおかげで、『無から有を生み出す(薬師仕様)+』のスキルを使用して製薬された薬品の使用期限はつくられてから4秒になる、という大きすぎるデメリットが私には適用されません!
しかも、みんなに協力してもらったおかげでこのスキルをパワーアップすることができていて、その効果に、このスキルを使って製薬をした際に容器も一緒に生成することができる、という性能が追加されています!
ほぼ永久的に持っていることができるようになっています!
やはりスキルは組み合わせ方なのかもしれません。
使うことを辞退しておきながら「第四スキル解放の鍵」を使ってしまったことに申し訳なさを感じます。
相手があのプロデューサーさんとあゆみちゃんとのことで、私が元々持っていた3つのスキルでは対抗できそうにないと感じたもので……。
(一応、権利があったはずなのに人数分増やせなくて「鍵」を受け取れなかった方々には許可をもらいに行っています)
(ミックスたちが彼らの説得に協力してくれたのは少し驚きました)
何をしてくるのかわからないプロデューサーさんに、『天上天下唯我独尊』を使ってくるだろうと予測できていたあゆみちゃん。
不測の事態に備えて復活薬を大量に生成しておきましょう。
あとはMP継続回復ポーションをつくってそれに『ポーション超強化』を使ってできるだけ性能を上げて……。
それから攻撃バフポーション、防御バフポーション、素早さバフポーション、器用さバフポーション、HP継続回復ポーションをつくって服用、MPが回復し次第、順次強化していって(もちろんMP継続回復ポーションの強化が最優先)……。
デバフ耐性ポーション各種にバステ耐性ポーション各種もつくってそれらの強化も図って……。
========
名前:セツ レベル:1
職業:製霊薬師(薬師上位)
HP:9,999,999,999,999,999/18
MP:9,999,999,999,999,999/23
攻撃:----------------(×0.9)(×11,525,215,046,068,470.76)
防御:----------------(×11,525,215,046,068,470.76)
素早さ:----------------(×11,525,215,046,068,470.76)
器用さ:----------------(×1.1)(×11,525,215,046,068,470.76)
状態:デバフ無効(上書き不可)
全バステ無効
========
準備完了です。
これであの二人に対抗できればいいのですが……。
兎も角、じっとしていても始まりませんし、動き始めましょう。
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