第347話(終・第九章第27話) Pのカタストロフ3

「それでは『ギフテッド・オンライン個人最強決定戦・バトルロワイアルイベント』のルール説明をいたしましょう。


 まず、フィールドはここ、イベント特設ステージです。

 北が『森林エリア』、西が『氷山エリア』、南が『鉱山エリア』、東が『発電所エリア』となります。

 それぞれのエリアにはモンスターが生息していますが、北にいるが一番強く東にいるのが一番弱い、という設定はここではないメインフィールドの方のエリアにあるダンジョンの難易度の設計と変わりませんので憶えておいてください。

 ちなみに、北にいるのがデンドロ・メディオクリス、西にいるのがクライオ・メディオクリス、南にいるのがメタロ・メディオクリス、東にいるのがブロント・メディオクリスです。

 また、地形ダメージは受けないようになっていますが、地形による悪影響は発生しますのでご注意を。


 さて、僕たちがこれから行うことですが、あそこに四つが纏まって回転している魔法陣が見えるでしょう?

 一人一つ選んでそれに乗ります。

 ああ、まだ乗らないでください。

 せーの、で一斉に乗りますから。

 あの魔法陣はいずれも各エリアの最奥と繋がっています。

 繋がっているというか一方通行ですが。

 回転しているのでどれがどこに繋がっているのかは僕でもわかりません。

 エリアには難易度が設定されていますから一種の運試し、ということになるでしょう。

 転移が完了次第、イベントスタートとなります。


 注意点ですが、転移されるとレベルは1に強制的に戻されます。

 持ち物は持ち込み不可、持っている場合は宿屋の倉庫に強制的に送られます。

 装備も解除……本来の性能の初期装備に強制的にさせられます。

 我々の現在の装備は、このイベント特設ステージのどこかにある宝箱の中にランダムで転送され、見つけた場合は使用しても構いません。

 もちろん、レベルと装備はイベント終了後に元に戻りますのであしからず。


 今回のイベントの概要を纏めると、スキルはこれまで使っていたものになりますがあとは初期状態でスタートし、敵を倒してレベルを上げたり、宝箱を探して装備を手に入れたりして相手プレイヤーを倒し、一人残ること……それが優勝する条件となります。

 あとはそうですね……、ぐだるのを防ぐため、開始から二時間が経過したら一カ所に集められるようにプログラムしてあります。

 最強を賭けるのですから、効率よく強くなることもできますよね?


 それでは、それぞれが乗る魔法陣を選びましょうか」


 プロデューサーさんからイベントの詳細が語られて、私は先ほどから気になっていた近くにある光る地面の方へと目を向けました。

 そこにはプロデューサーさんが言っていた通り、四つの魔法陣が一組になってクルクルと回っていました。

 あれが各エリアの最奥に転送する魔法陣……。

 私たちが今いる場所は各エリアに繋がる中央に位置している「草原エリア」の真ん中辺りで地面は芝のような植物で一面が覆われていて、魔法陣が光っていなければそこにあると気づけなかったかもしれません。


 そんなことを思っていたら、一人の人物が我先にと魔法陣の前まで行っていました。


「俺はこの魔法陣に乗るぜ! 早い者勝ちだ!」


 ……こういうのって、どうやって決めるのかをまずみんなで決めるものなのでは?

 話し合う気ゼロです。

 ほんと、いい加減にしてほしいです、あゆみちゃん……。


「おやおや。ロード・スペードさんはああ言っていますが、どうなされますか? 僕は『運営』の人間なので一番最後でいいのですが」

「……先に選んでいいよ、シニガミさん」

「い、いや、いいの? あれ……」

「あれは言っても聞きやしないから。悪いけど、諦めて?」

「う、うん……。わかった……」

「おい! 早く決めろよ、お前ら!」

「……ほんと、ごめんね」


 プロデューサーさんがあゆみちゃんの行動を見て私たちに、あれでいいのか? と尋ねてきます。

 私はあの子の性格をよーく知っていますから決め直させることは早々に諦めて、迷惑をかけてしまったシニガミさんに少しでも多くの中から選んでもらうことにしました。

 シニガミさんはあゆみちゃんの行動が許されたことに納得がいっていなかったみたいですが、あれはそういうものだ、と割り切ってもらうほかありません。

 それと私は許したわけではないのです。

 注意をするとより面倒なことになるだけなので放置せざるを得なかっただけに過ぎないのです。

 私がそのことをシニガミさんに伝えていると、もう既に癇癪を起こし始めているあゆみちゃんの声が……。

 こんなことにシニガミさんを巻き込んでしまったことに心底申し訳ない気持ちにさせられます。


 私たちは自分たちが乗る魔法陣をパパッと選びました。

(シニガミさんがあゆみちゃんと離れたものを選んで、私はシニガミさんの右隣、プロデューサーさんは残った私の正面の魔法陣に乗ることになりました)

 イベントを始める準備が整ったのを受けて、プロデューサーさんが宣言します。


「『ギフテッド・オンライン個人最強決定戦・バトルロワイアルイベント』スタートです! せーの、で魔法陣の中に入ってください。いきますよ? せーの!」


 私たちは合図に従って自分たちの目の前にある魔法陣に一斉に乗りました。

 白い光に包まれて、私はどこかのエリアの最奥へと飛ばされていきました。


 始まる前から精神的に疲れることがありましたが、イベント、開始です。



 私が転送された場所は……。


「さ、寒っ!?」


 辺り一面氷の世界――西側「氷山エリア」。

 まるで冷凍室の中にでもいるかのような冷気が私を襲いました。

 装備を初期状態のものに変えられた所為でしょう……!

 いつもは寒熱対策がばっちりの装備を着用していたため、このゲームをやっている最中に暑さや寒さを感じることはなくなっていたのですが……っ。

 現実の私は快適な場所にいるのに寒く感じるのは妙な感じがあります……。


 と、とりあえず……っ。

 ステータスの確認をしておきましょう……っ。


========


名前:セツ      レベル:1

職業:精霊薬師(薬師上位)

HP:18/18

MP:23/23

攻撃:13(×0.9)

防御:17

素早さ:22

器用さ:27(×1.1)


スキル:『薬による能力補正・回復上限撤廃+』

    『ポーション超強化』

    『有効期限撤廃(自作ポーション限定)+』

    『無から有を生み出す(薬師仕様)+』


ジョブスキル:『霊薬製造』


========


 ……ああ。

 し、しっかりレベル1になっちゃっていますね……。

 バフもきれいさっぱり消えてしまっています……っ。

(さ、寒い……!)


 こ、このイベントに挑むにあたって、私は四つ目のスキルを獲得させてもらっていました。

 相手が相手、でしたので……。

 それで得て、パワーアップも済ませている最後のスキルは――。


 私がそのスキルを使った直後でした。


「かは……っ」



――私の胸から剣身が飛び出してきたのは。

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