第343話(終・第九章第23話) 「運営」の本気10
「……ほんとなんでもありね、この人たち……」
「……イベント一位を取り続けてるパーティっすっからね。『お宝の地図』をゲットしてるんで珍しいアイテムをいっぱい持ってるんだと思うっす……」
「……なんかちょっと気が楽になってきた。こんなすごい人たちと一緒なら大丈夫かな、って……」
「転移シート」の効果を知らなかったベリアさん、アンジェさん、シニガミさんの三人がそんなことをひそひそと話していましたが……。
(ライザが「転移シート」を設置している時、何をしているのだろう? とシニガミさんたちは首を傾げていました)
兎も角!
第十四層のエリアボスにリベンジしましょう……!
大きな扉を開けると、部屋の中央に鏡のようなプディンたちが固まっていました。
ちなみに、先制攻撃を仕掛けることはできません。
全員が部屋に入るまでは見えない何か(壁ではないためクロ姉の『ブレイクスルー』では突破不可です)に阻まれて、プディンたちから一定の距離を取らされる仕様になっているようです。
扉が閉まればその見えない何かがなくなると同時にミラープディンズとの戦闘が始まります。
私は一番にエリアボスの間に入って扉が閉まらないように押さえます。
マーチちゃん、クロ姉、サクラさん、キリさん、ススキさん、パインくん、シニガミさん、アンジェさん、ベリアさん、コエちゃん、ライザ、と入ってきて。
みんながちゃんと入ってきたのを見て、私はシニガミさんに確認しました。
「シニガミさん、行くよ?」
「う、うん……!」
シニガミさんからの返事を受けて、私は扉を閉めました。
ミラープディンズ戦、開始です!
「レメディ」と階段がある空間に戻ることができなくなった瞬間、16体のミラープディンが私たちの姿に化けました。
前回は私たちの人数と同じ12体が変身して4体は少しの間プディンのままの状態で待機していたのですが、今回はいきなり全員でかかってくるようです。
16体が誰になったのか、の構成ですが、これも前回との違いがありました。
私、マーチちゃん、ライザ、クロ姉、サクラさん、ススキさん、パインくん、キリさん、コエちゃん、アンジェさん、ベリアさんが一体ずつ。
そして、
――シニガミさんになったものが5体。
……やはり。
シニガミさんだけ別の特殊効果がついた装備を着ていて強さが私たちとは異なっているため、そうなりましたか……。
こうなることは想定内です。
情報を得ていたライザが読んでいました。
ミラープディンズは、挑戦者の姿と強さを模して戦うのですが、挑戦者の数が16人に満たない場合、余ったプディンはその挑戦者の中で強いプレイヤーに化ける性質がある、と。
前回はステータスが薬でカンストしている私、装備でカンストしているクロ姉、装備でカンストできて強いモンスターであるリゼも大量に生み出せるマーチちゃん、レベルが一番高くて増えることができるシニガミさんに追加で化けていましたから、そのライザの説明にはみんな納得していました。
「美珠!」
「う、うん!」
アンジェさんがシニガミさんに呼び掛けて。
シニガミさんがスキルを発動させました。
――「『巻き戻し』!」
シニガミさんの『巻き戻し』は、消費するMPの量によって戻せる時間が変わってくるスキルです。
それでシニガミさんは、
――スキル『二人の絆』を『家族の絆』に強化したライザの時を、装備の特殊効果が変更される前まで戻しました。
『家族の絆』は、このスキルの保有者に使ったアイテムやスキルの影響を仲間全員にも受けさせられる、というものであるため、私たち全員の時(ゲーム内の肉体)がその時間まで戻っている、ということになります。
これによって今までの装備の特殊効果を取り戻した私たちは一斉に駆け出しました。
どうしてこのようなことをしたのか……それは、
――ミラープディンズはエリアボスの間に入った段階の私たちをコピーするから。
ですから私たちは、装備の特殊効果をあえて弱くしていました。
『行動鈍化(極)』
『攻撃不可』
『技不発』
『魔法使用不可』
『スキル発動遅延(極)』
『アイテム使用不可』
『最大HP1』
『最大MP0』
『攻撃1固定』
『防御1固定』
『素早さ1固定』
『器用さ1固定』
『状態異常無効の撤廃』
『デバフ無効の撤廃』
『能力値上昇不可』
『ポーションの生成及び強化不可』
『武器生成及び自身のスキルによる特殊効果の変更不可』
『アイテム及び自身のスキルによるスキル・ステータスの変更不可』
『アイテムの取り出し不可』
『お金の使用禁止』
『刀の使用禁止』
『大爆発で与えられるダメージ0』
『パラダイムシフト使用不可』
『急激な気候変動使用不可』
『神出鬼没不発』
『障壁展開不可』
『テイムモンスター召喚不可』
『増殖不可』
『天使降臨使用不可』
『天使の歌声使用不可』
『悪魔招喚使用不可』
『ダーインの遺産使用不可』
(シニガミさんだけは『最大MP0』を付けていません)
ミラープディンたちにこれらをコピーさせるために。
(私、マーチちゃん、ライザ以外は武器も持っていますのでさらに8個の特殊効果を付けられるのですがいいのが思いつかなかったようで、相手が動きやすくなっても困るためスロットを空欄の状態にしていました)
『巻き戻し』と『家族の絆』で強いステータスを取り戻して畳み込む、というのが私が立てた作戦です。
(『巻き戻し』でスキルを戻せたことから特殊効果もいけるのではないか? と踏んでいました……ライザが「調べて」できることを確認しています)
当然、相手も半透明のシニガミさんが時を戻して迎え撃とうとしてきますが、彼らはプレイヤーがダンジョンに入ってからしか存在できないようなので(以前、第五層でプディン狩りをしていた時にライザから教えてもらっていました)、時を戻すとプディンの形態に戻ることになります。
そこから私たちに変身すれば今の私たちと同じ強さになれるようですが、そのワンクッションは素早さが高い私たちを相手にするには大きな隙になります。
私たちは高い素早さを駆使し、
投げて、
射て、
叩いて、
蹴って、
斬って、
刺して、
魔法を唱えて、
突き立てて、
呑み込んで、
取り囲んで、
歌って、
切り刻んで。
ミラープディンたちを素早く倒し切りました。
彼らが立て直す時間なんて与えませんでした。
私がこの方法を思いついたのは、スキルを奪う事件を起こしていたアメショに対応した経験があったからです。
ちょっと……というか、だいぶ危険なやり方だったのでライザは思いつかなかった……というより、無意識に省いていたのかもしれません。
自分たちを弱体化させるため一歩間違えれば大惨事になりかねませんから、何気に私たちのことを大事に思ってくれている彼女ですのでその可能性はあると思います。
私たち以外には厳しいことを求めることがありますが……。
(アメショを無力化する際に、ワワワやシーヴァに命じたこととか)
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